百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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6 鞭を伸ばして、敵に届くように

「その名乗りを聞いて、ようやく思い出した」

 

 無貌は呟いた。

 

「いつだったか、ネトルからの報告にあった。高次元生命体エンダーに力を分け与えられた人間たちが、SMの性癖を反映して暴れているとな。しかし、なぜ貴様らがここにいる。BL警察管理下にある刑務所へ送られたと聞いているが」

 

 彼女たちはエンダーの助けで一度脱獄を果たしているため、二度目の投獄では、より厳重な警備体制が敷かれている刑務所に入れられている。そう簡単に出てこられるはずはない。

 

 

「外に出られたのは他でもない、あなたのおかげですわ~!」

 

 レッド・クイーンが高らかに応じる。

 

「さっきあなたが使った『無貌天譴明王』とやらの衝撃で、この付近にあった、私たちが収監されていた刑務所も外壁が破壊されてしまいましたわ~! そこで、混乱に乗じて脱出したというわけですわ~!」

「脱獄できた理由は分かったが、なぜ私に刃向かう。せっかく自由の身になったというのに、どうしてまた勝ち目のない戦いに身を投じる?」

 

 無貌の問いかけに、ツカサたちも「そうだそうだ」と同調した。ゴークイーンズはかつて百合&BLレンジャーに敗れ、投獄されている。いわば因縁の相手だ。そんな相手に、わざわざ加勢する理由が分からない。ましてや、百合&BLレンジャー以上の強大な力を持った無貌を前に、勝算などないに等しいというのに。

 

 

「未来のためですわ」

 

 ブルー・クイーンが凛とした声で告げた。

 

「私たちが特命女王戦隊として戦っていたのは、SMの素晴らしさを世界へ伝えるため。あなたのような下賤な支配者に地球が植民地化されたら、SMの良さを広めることも叶わなくなってしまいますわ~!」

「SMという文化を未来永劫伝えていくために、私たちはあなたを倒す! 今この瞬間だけは、百合&BLレンジャーに手を貸しますわよ~! オーッホッホッホ!」

 

 イエロー・クイーンも威勢よく宣言し、彼女たちのスタンスが明確になった。

 

「――笑止千万。百合&BLレンジャーにすら勝てなかった貴様らが、この私に勝てると思うな」

 

 女王たちのやかましい笑い声に負けないくらい大きな声で、無貌は吐き捨てた。ライフルを一旦消滅させ、今度は肩に四連装ミサイルランチャーを担ぐ。

 

「蹴散らしてくれよう。多目的巡行ミサイル『ムボント』、発射」

「……行きますわよ、皆さん」

「はいっ!」

 

 

 ミサイルが撃ち出されたのと同時に、五人はバラバラの方向へ跳んだ。華麗なジャンプで爆発を回避し、それぞれが無貌へ接近する。

 

「すべてはあの日、卍帝国が洗脳を行った日からきっと、始まっていたデスティニーですわ~!」

「私たちは、逃げたりしませんわ~! 止まることなく、未来を見ましたわ~!」

 

 しかも、うるさい。

 

「魂(こころ)がリンクしてますわ~! 戦いますわ、すべての仲間と!」

「この決意、アンブレイカブルですわ~! 愛する世界に、不正なアクセスは許しませんわ~!」

 

 甲高い声で台詞を叫びながら、鞭をブンブン振り回す。

 三人の女王の能力はいたってシンプルで、鞭を高速回転させることで並大抵の攻撃ならシャットアウトでき、さらに強烈な打撃を繰り出せるというもの。あっという間に無貌の懐へ潜り込み、クイーンたちは高速で鞭を振るった。

 この鞭は何メートルも伸ばすことができ、鋼鉄に匹敵する強度をも誇っている。当たれば、普通の人間なら一発で病院送りだ。

 

 

「真っ赤に燃える、正義の血潮! 悪を切り裂け、アトム打ちですわ~!」

「怒りのエレキで鍔鳴りさせて、守ってみせますわ~! 青い地球!」

「娘十八、涙を捨てて。戦場に咲く、桃の花ですわ~!」

 

 三方向から、伸び縮みする鞭による攻撃を連続で叩き込む。リーチが変幻自在である上、様々な方角から間断なく打撃が来るため、無貌としては少々やりづらかった。

 

 

「『無貌通行』」

 

 ひとまずカウンターして怯ませるか。そう判断し、のっぺらぼうは原典の力を発動した。これを使えば、いかなる物理攻撃も跳ね返せる。

 

「女王様方、ここは俺たちが!」

 

 けれども、クイーンたちと入れ替わりにビート・タイツ、スタッグ・タイツが前に出たことで状況は変わった。ドMな彼らには、「攻撃を受ければ受けるほど強くなる」という能力が備わっている。加えて、「SMフィールド」というバリアを展開することもできる。もっとも、推し推し砲の破壊力に負けてしまう程度の防御力しかないのだが、女王たちの攻撃が跳ね返ってくるくらいなら防げるだろう。

 カウンターされた鞭の打撃、その衝撃波の塊を、タイツ男たちはフィールドを展開して防いだ。攻撃をガードして能力が上昇したところで、すかさず女王たちと交代する。

 

 

「……なるほど。少しは考えたようだな」

 

 無貌は感心してみせた。

 

「多方向からレンジの異なる技を出すことで、どの原典の力で応じるべきか、私を迷わせる。迷ったことで隙が生じれば、そこを突く。『無貌通行』で凌ごうとすれば、下僕の二人を盾として使う。攻撃を防ぐことで彼らは強くなるため、これならばいくらカウンターされようとも貴様らにとってプラスに作用する。敵ながら、見事な戦術だ」

「……え、嘘、ガチで? あいつら、そんなに高度な作戦を立てて攻撃してたのか?」

「でも、あたしたちと戦ったときも基本戦術は同じだったわよね? 無貌が相手だからって、別段戦い方を変えたようには思えないけど」

 

 戦況を見守り、カイリとツカサはひそひそ話をしていた。

 

 

 実際のところ、ゴークイーンズがそこまで緻密な戦略を練っているわけではないのだろう。ただ、百合&BLレンジャーと戦ったときには全く活かされなかった「攻撃を受けると強くなる」能力――推し推し砲の一撃でやられてしまったため、強くなった姿を見せる機会がなかった――を上手く使えて、女王たちの弱点を突かれなかっただけだ。

 彼女たちにはそれぞれ、「鳥類を見ると体がフリーズする」「戦闘が長引くと体温が上昇し、熱暴走を起こす」「お菓子などで定期的にエネルギーを補給しないとダウンしてしまう」といった弱点がある。もしも、戦闘中に鴉や鳩が視界に入っていたりしたらヤバかったかもしれない。

 ともかく、偶然が重なった結果、ゴークイーンズが無貌相手に善戦できているのは事実である。ひょっとしたらこのまま押し勝てるんじゃないか、と皆が期待した。何と言ってもあの女王たちには、「無貌通行」のカウンターがほとんど効かないのだ。

 

 

「くだらぬ」

 

 けれども、無貌がため息を漏らした刹那、状況はまた一変した。原典の力を借りて上空にテレポートし、顔を持たない侵略者はゴークイーンズの攻撃範囲から逃れたのだ。

 

「貴様らが高速攻撃できるように、私には瞬間移動さえも可能だ。あまり調子に乗ってもらっては困る」

「あら、そんな高いところに! 卑怯ですわよ、降りてきなさい~!」

 

 女王たちはムキになって抗議しているが、もちろん無貌は降りてこない。わざわざ敵の間合いに入る必要はないからだ。

 遠距離の敵を狙う手段を持たない彼女たちには、今使える攻撃手段がない。一応、ツカサたちなら銃やバズーカを使えるけれども、ゴークイーンズによるカウンター無効化ができなくなった現状、万が一「無貌通行」で跳ね返されたらひとたまりもない。したがって、うかつに攻撃できなかった。

 

 

「さっきは邪魔が入ったが、今度こそ決めさせてもらう。――『マテリアル・無貌バースト』」

 

 再度召喚されたスナイパーライフルから、一発の銃弾を射出。それが地面に到達する寸前で、とてつもない規模の大爆発が巻き起こった。まだ無事だったビルもことごとく倒壊し、街が半球状の爆炎と爆風に呑まれる。

 

「どわああああーっ⁉」

「ぎゃああああ~ですわ~⁉」

 

 何が起こったのかすら理解できないまま、百合&BLレンジャー、そしてゴークイーンズの悲鳴が轟いた。

「マテリアル・無貌バースト」とは、有名なアインシュタインの公式に則り、物質の持つ質量を光速度の二乗の倍率でエネルギーに変換する「魔法」である。質量を消し去り、代わりにそれに相当する高エネルギーが存在する空間を作り出す。この空間に触れた物質は激しく震動、加速し、燃焼や爆発など様々な現象を引き起こすのだ。

 

 

「言ったはずだ。世界を滅ぼすことすら可能だと」

 

 もはや完全に都市機能を失った街を見下ろし、無貌は笑い声のようなものを発した。凄まじい爆発に阻まれてヒーローたちの姿は見えなくなってしまったが、どのみち生きてはいまい。日本のヒーローは、完膚なきまでに叩き潰されたと言っていいだろう。

 

「私の勝ちだ。もっとも、貴様らには最初から勝ち目などなかったがな」

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・魔法科高校の劣等生
・仮面ライダーアギト
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