ガラガラガラ、と何かが崩れる音がした。大きな金属製の物体が、いくつかのパーツに分かれて道路に転がった。
「……ほう。巨大ロボを盾にして、私の攻撃を凌いだか」
もし無貌に目があれば、細めていたことだろう。
「だが、ロボを使っても時間稼ぎにしかならぬことは、貴様ら自身が一番理解しているのではないか? 貴様らが所持しているロボは、百合カイザー、BLカイザー、BLレックスロボの三体。そしてBLファイヤーが変身解除している現状、レックスロボは使用できぬはず。つまり、使用できるロボは二体。私の技を防げるのは、あと一回が限度だ」
「それはどうでございやしょう?」
崩壊するガンマン型ロボの肩から飛び降り、綺麗に着地を決めると、ロリーニンジャーはニッと笑った。
「今、お前の攻撃を防いだのは、あっしの愛機『ロリコンキング』。あと二回は耐えられやす」
最後にロボの頭部、黒焦げになったウエスタンハット型のそれが地面に落下し、ガシャアンと轟音を響かせる。ちょうどキンジの真後ろに落ちたけれども、本人は平然としていた。
「……貴様、いつの間に」
アメリカのヒーローが参戦したのを認め、無貌は驚いているようだった。
その疑問に答えたのが、裕介とナオヤである。
「ゴークイーンズが時間を稼いでくれている間に、呼んでおいたのさ」
「俺たちの仲間をな!」
彼ら三人の追加戦士組は、超次元生命体ガードノイド・マッシュとの戦いで力を合わせたことがある。巨大化したマッシュに対抗するために「おねロリ&BL合体」を敢行し、ロリコンキングとBLレックスロボが「おねロリBLレックスロボ」という形態になった――今思い返しても、ネーミングがなかなか酷い。
まあともかく、かつて共闘した仲間の声に応え、キンジ・オネガワはロボに乗って海を渡り、アメリカからはるばるやって来たのだ。
「ネトルやブラゴクウからの報告によれば、貴様のようなアメリカのヒーローは、基本的に祖国を離れて戦うことを好まぬということだったがな」
訝しげに、無貌は言う。すっと地上へ降りてきたのは、来日した忍者戦士を間近で眺めるためなのだろうか。
「だから貴様らアメリカ組は、日本を制圧した後でじっくりいたぶるつもりだった。一体、どういう風の吹き回しだ」
「あっしはアメリカ生まれのアメリカ育ち、祖国の平和を守る戦士でございやす。けれど、日本の坊ちゃんお嬢ちゃんがピンチと聞いちゃあ、黙って見ているわけにはいきやせん!」
ロリーニンジャーはそう啖呵を切り、専用武器「忍者激推し刀」を召喚した。愛用していたロリーソードガンこそ失ったが、彼にはまだこれがある。ハットマンから託されたメダルも装備しているので、戦力としては十分すぎるくらいだ。
「誰ですの~、あなたは⁉」
ところで、キンジと面識のなかった人物が無貌以外にもいた。ゴークイーンズたちである。彼女たちは皆不思議そうな顔で、突如現れて攻撃から守ってくれたヒーローを見つめた。
「あっしの名は、おねロリの星・ロリーニンジャー。無貌坊ちゃんを倒す、ハンターの名でございやさあ!」
無貌坊ちゃんは少し言いづらいし、略して「ムボっちゃん」にしやしょうかね――そんな戯言をこぼしつつ、キンジが激推し刀を構えてポーズを取ると、女王らは「まあ!」「かっこいいですわ~!」「すごいですわ~!」と素直に喜び、拍手した。
以前の彼女らは男を見つけると即座に鞭打とうとするような野蛮人だったが、刑務所に入っている間に根性を叩き直されたのかもしれない。性格が改善されている。刑務官に連日しごかれ、SだけでなくMの立場をも体感した影響だろうか。
「……さて、名乗り終わったところで、さっそく行かせてもらいやしょう」
真っ赤な刀身を持つ武器を天に掲げ、ロリーニンジャーは叫んだ。
「『激推し・ライトニングおねスター』!」
落雷を降り注がせ、無貌を狙い撃つ。同時にキンジ自身も高速でターゲットに接近し、すれ違いざまに一太刀浴びせる必殺技だ。
「――『多重次元分身』」
しかし、その斬撃は命中しなかった。正確には、本体に当たらなかった。なぜなら無貌が、瞬時に数百体へと分身してしまったからである。
「な、何っ⁉」
斬った敵が煙になって消滅し、動揺するキンジ。手当たり次第に忍者激推し刀で斬りつけてみるも、すべて分身だった。ボン、と音を立てて消え失せるだけで、まるで手応えがない。
「一体、どれが本物でございやすか⁉」
ツカサたちもVSチューナーで何体か撃ってみたが、いずれもハズレ。本物の無貌はどこに隠れているのだろう。
「貴様らの戦術はワンパターンだ。私に追い詰められたところで助っ人が現れ、形勢を逆転しようとしてくる。その繰り返しに過ぎぬ。……BLファイヤーを追い詰めれば百合&BLレンジャーが登場し、百合&BLレンジャーを追い詰めればリボンズやオメガ珈琲シルバー、来部が馳せ参じる。その次はゴークイーンズに、ロリーニンジャーと来たか。つまらん。弱者の寄せ集めで勝てる相手ではないと知れ」
どこからか本物の声がしたかと思うと、数百体の分身は一斉に刀型の武装デバイスを両手に握った。
「いい加減、飽きた。片を付けてやろう。『超次元忍法・影の舞』」
ロリーニンジャーに対し、同じ「忍者」要素を持った原典の力で叩き潰そうというわけである。
何枚もの障子が出現し、ヒーローたちを取り囲む。その中に、自らの姿を黒い影へと変化させた無貌の分身体が侵入し、次々に斬りかかってきた。影になった彼らの移動スピードは圧倒的で、ロリーニンジャーらは太刀打ちできない。あっという間に斬撃を雨あられと喰らってしまい、とうとうツカサたちは膝を突いた。
「まだよ。あたしたちは、こんなところで……」
「諦めろ、人間」
与えたダメージの総量は、限界に近いはず。既に変身解除されていても決しておかしくはないのだが、戦士たちは気力だけで耐えていた。
その勇姿に賞賛を送る代わりに、無貌はサレンダーを勧めた。
「強大な力を持つ一人の敵を、大勢が力を合わせて倒す。貴様らが思い描いているのは、大体そういった未来予想図だろう。しかし、その敵が分身能力を使える場合、数など何の意味も持たぬ。あるのは純粋な力の差だけ。所詮、弱者が強者に勝つことなど不可能なのだ」
今回、ご迷惑をおかけした作品
・NARUTO