百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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14 血と五天剣

「いやあ、えらい盛り上がってるやないの」

 

 続く第三戦は、三日月刀を携えた関西弁でマッシュヘアの男と、大鎌を構えた長髪の男という組み合わせだった。

 

「こう綺麗な決着が続くと、俺らもなんかハードル上がってまうやんなあ。泥臭い試合とかできへんで、こういうプレッシャーがかかってくると」

「よく喋る奴だ」

 

 呆れたように、長髪の男がこぼす。

 

「その下らない台詞が遺言にならないよう、せいぜい頑張ることだな」

 

 

 やがて試合開始が告げられると、長髪の男は鎌を振り上げた。

 

「俺の武器の名は、『怪奇月喰』。月の満ち欠けに応じて、この大鎌の切れ味は変化する」

「へえ、なかなかかっこいい名前やないの。で、命名したのはロングヘアのあんた自身なん? ネーミングセンスが中二病のままやと、社会に出てから苦労するで?」

「うるさい奴め。茶々を入れるな」

 

 図星だったのか、男は機嫌を悪くした。

 

「今宵は満月。ゆえに俺の大鎌は、最大級の鋭さを誇っている。かすっただけで命取りになるほどにな。降参するのなら、今のうちだぞ」

「了解や、大体把握した。ほな、俺の武器についてもちょっと教えときましょか」

 

 

 関西弁の男は相変わらずふざけた調子で、三日月刀についての解説を始めた。

 

「俺の相棒は『五天剣』ゆうて、天候に応じて五つの能力を発揮する。ここは地下やから地上の様子は分からへんけど、確か、予報やと今日の天気は……」

 

 雲一つない、日本晴れ。関西弁の男が握ったシミターは、高熱を帯びた。

 

「さあ、勝負や。月の満ち欠けのパワーで戦うあんたと、太陽によって引き起こされる気象状態に応じて戦う俺。月と太陽、どっちが強いか決めようやないの。もっとも、自力では輝けん月が、太陽に勝てるわけないけどな」

「下らん」

 

 長髪の男は吐き捨てた。

 

「日食が起き、月が太陽の光を遮れば、貴様が司る天候の力など何の意味も持たないというのに」

 

 

 両者が激突してから、数分が経過した。

 関西弁の男は、肩から血を流して苦しそうにしている。大鎌の一撃がかすめたせいで、ひどく出血していた。

 一方、ロングヘアの男はほぼ無傷。片手に軽い火傷が見られるものの、利き手ではないのであまり問題はなさそうだ。

 

「五つの天候の力を使えるというから警戒していたが、蓋を開けてみれば大したことはない。晴れの日は晴れの能力しか、雨の日は雨の能力しか使えないとは、不便なものだな。ましてや、今日のように一日中ずっと晴れている日などは、完全に一種類の力しか操れないとは」

「同情してくれるんか? おおきに」

「これから殺す相手を哀れんでいるだけだ」

 

 痛みに耐えつつ茶化してくる関西弁の男を、ロングヘアの男は無慈悲に突っぱねた。

 

 

「貴様の能力は、ランダム性が高くて安定しない。実用性という点では、俺の『怪奇月喰』に及ばなかったようだな」

「……あんまり舐められるんは性に合わんのやけどなあ」

 

 ふと、関西弁の男は目を細め、意地の悪い笑顔を見せた。

 

「ええこと教えたるわ。俺の『五天剣』は、刀身を取り巻く環境によって天候を認識し、その天候に対応した力を発揮する」

「それがどうかしたのか」

「この武器のおもろいところはな……天候を誤認させることが可能ってところなんや」

「何っ?」

 

 ロングヘアの男は刹那、彼が何を言っているのか理解できなかった。けれども、分かった途端に戦慄した。

 

「まさか」

「そう、そのまさかや。刀身の状態をちょっとばかしいじるだけで、こいつは実際の天候とは違うパワーをも使える」

 

 

 これまで五天剣が「晴れ」のパワーを発揮していたのは、外の天気が晴れだと剣が認識していたからではない。ステージを照らすスポットライトの光を受け、「どうやら晴れているらしい」と認識したからだ。

 関西弁の男が、自身の傷口に五天剣を近づける。長髪の男に斬られた傷から流れ出す鮮血は今、五天剣に新たな力を与えるトリガーと化していた。

 

「唾付けたりしても一応『雨』判定になるんやけど、せっかくやから血でも使ってみよか。さっき受けた攻撃が、こんなところで役立つなんてなあ。ある意味、あんたには感謝せんとあかんわ」

 

 おおきに、と笑みを深める男。

 

「……ほら。赤い雨が降ってきたで?」

 

 

 鮮血が滴った五天剣が、天候を「雨」と認識する。剣から発せられていた熱波は消え失せ、代わりに水流が刀身を覆った。

 

「――『豪雨斬』」

 

 関西弁の男が五天剣を振るうと、その先端から水流が超高速で放たれた。ウォータージェットのように噴射された水が、長髪の男の胴を真っ二つに切り裂く。

 

「これで終いや。ま、多少は綺麗に勝てたんと違うか?」

 

 客席へ振り返り、マッシュヘアの男はニヤニヤ笑って手を振った。

 切断され、おびただしい量の血を迸らせている死体が背後に横たわっていることを除けば、綺麗で鮮やかな勝ち方だったかもしれない。凄惨な光景を目の当たりにしても顔色一つ変えない男に、観客たちは異常性を感じざるを得なかった。

 

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