PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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「……特別行政区"サンクチュアリ"
あの場所は、一体何だったの?」
ヘリに乗り込むや否や、舞白は宜野座と雛河に問い詰める。
いきなり出動命令が出されたものの、未だ詳細は詳しく説明されず、ただただ3人は青森へと向かっていた。
緊急案件ということもあり、後ほど常守と霜月も合流するらしい。
「志恩さんも……、
わざわざ経済省から直接連絡が入るなんて異様すぎる。
内容を教えてください。」
デバイス越しに、舞白は唐之杜にも問い詰める。
すると、宜野座が小さくため息を吐くと、ようやく口を開いた。
「あの行政区は、表向きでは潜在犯隔離施設。
お前も、ある程度は調べていただろう?」
舞白が調べていた履歴を見れば一目瞭然。
明らかに、舞白はあの施設について調べあげていた。
「特区内の潜在犯は、構成プログラムの一環としてドローンの集積回路に不可欠なレアメタルを採掘していた。
鉱山労働を強いられていた訳だ」
報告書の内容をそのまま話す宜野座。
しかし、それは全て真っ赤な嘘。
「……"表向き"、でしょ?
"内実"は、一体何が?」
どうせ、現場に行けば分かること。
いい加減話せと、舞白は視線を送る。
「内実は、高レベルの放射性廃棄物の回収、そして地層封印を目的とする施設だった。潜在犯たちを利用して、悪意ある第三者に手に渡らないようにと。」
「……隠してたのね。経済省と厚生省の一部の人間が……」
一旦の真実を全て把握すると、
舞白は"まさか"とピンとくるものがあった。
極秘で一係の人間たちを動かし、公にしないように取られている気がしていた。
そうしてでも、経済省の担当者たちは何かを隠したがっている。
公に知られてしまえば、困ること。
それは…………
「……まさか、その高レベルの放射性物質が悪意ある、第三者に奪われた」
舞白のその発言に、宜野座と雛河は目を見開く。
ただの事件ならここまで動かないはずだ。
それに、大したことがないのであれば、環境省が解決をして隠蔽すればいい話。
刑事課の力を借りなければ、どうしようもない状況なんだろう。
『そう、その通り。しかも、驚いた事に、盗まれたのに気づいたのは、なんと3日前……』
「隠していた……って事ですか……」
唐之杜の言葉に、雛河が呟く。
あまりにも杜撰すぎる施設関係者の行動に、呆れさえ浮かばれる。
「((……だから、外務省……
課長達はこの事を追ってた。))」
外務省がわざわざ国内の案件に手を出すなんて、考えられない。
だとしたら、舞白を使って何かを調べさせようとした理由も繋がる。
『ちょうど、今環境省の担当者から情報が送られてきたわ。転送するわね?』
3人のデバイスに映るのは、金属の球体。
舞白は目を細め、その画像を凝視していた。
『強奪されたのは"プルトニウム"
大昔、原子力発電の燃料に使われていた放射性物質。勿論、天然に存在しない……』
かつて資源として重宝されていたもの。
しかし、今現在はどこにも存在しない、抹消された物質と言っても過言ではなかった。
「1年前捜査した時に、この球体は見つけていなかったの?」
舞白はデバイスから、向かいの2人に目を向ける。
「1年前の事件については、管轄外とされていたからな。突入して、内実は暴いたものの、経済省の管理下に置かれ続けていた。だから俺たちはそれ以上の介入は許されなかった…」
「……霜月監視官も、サンクチュアリについては多くは話しませんでした。僕も、詳しく知らなくて……」
2人の様子を見る限り嘘はついていない。
この存在については、本当に把握していない様子だった。
「処理に困った挙句、厳重な場所で管理していたのに、強奪された。
……プルトニウムが悪用されれば、大変な事になる……」
再びデバイスの画像に目を向けると、唐之杜が新たなデータを転送してきた。
日本地図が映し出され、東京を中心に左右に広がっている、赤いグラデーション。
西は愛知、東は宮城の方まで染まっているその画像の意味は、だいたい予想が着く。
『もし、このプルトニウムが東京都で爆発した場合。それを表したデータよ。東京は間違いなく放射性物質に汚染され壊滅。
他の場所も何かしらの影響を受けることは間違いないわ。
……少なくとも、この真っ赤に染った場所に、今後何百年も人が住むことは出来なくなる……』
現代、人口はほぼ都市集中。
東京が壊滅するとなれば、相当の数の人々の命も危険だった。
「まるで大昔の"チェルノブイリの悲劇"
…いや………それ以上の悲劇になる……」
文献で目にしたことがある大昔の原発事故。
舞白は、グッと唇をかみ締めていた。
「強奪した犯人は?」
宜野座は唐之杜に問いかけると、
相手は深くため息をつく。
『…それが、犯人の手がかりはナシ。
このプルトニウムを警備していたのはドローンのみ。
オマケに防犯カメラも、該当の場所は全て消去されてるの
……でも、唯一、これだけ残されてたわ』
デバイスに映し出される、壁に書かれた赤い文字。
Έγκλημα και Τιμωρία
英語とは違う、珍しい字体だった。
「……アルファベット……じゃない……」
雛河は変わった自体に眉を顰める。
遠くから離れて見ると、寧ろ字にすら見えないような……
「これ、ギリシャ語よ。
…… "エングリマ ケ ティモリア"
意味は、"罪と罰"」
『さすがね、舞白ちゃん。正解よ』
相変わらずの博学才穎さに、唐之杜をはじめ
宜野座達も一目置いていた。
『プルトニウムが管理されていた部屋の壁に、このメッセージだけが残されていたわ。あとは、現場で捜査をして、手がかりを見つけるしかなさそうね。』
舞白達はデバイスから目を離し、ふと外に目を向ける。
美しい緑の山々に囲まれた場所、
そんな自然溢れる場所に、突如と現れた人工物。
あの時は、確か雪に覆われていた。
その時とは、大きく景色は違うものの、巨大な施設に、宜野座は見覚えがあった。
「…まさか、またここに来るとはな」
かつて、ここの管理人と激闘したのを思い出す。
もうゴメンだ、なんて奥底で考えていた。
「とりあえず……、常守監視官と霜月監視官到着までに、あらかた調べましょう。」
『朱ちゃん達の到着まで、あと1時間ちょっと……。
変な横槍が入る前に、さっさと現場を見ておいた方が良いわ。
恐らく、環境省は私たち刑事課が来ることに対して、良く思ってないと踏んでる。
…頼んだわ、3人とも』
「了解です。志恩さん」
3人はデバイスをオフにすると、着陸準備に入る。
そして舞白は、羽織っていた外務省行動課のジャケットを脱ぐと、傍らに置いていた、刑事課のジャケットへと手を伸ばす。
「どうせ、担当者に名乗る時に
お前が外務省の人間だとバレるぞ?」
「まあ、とりあえず見た目からでも変えておけば、多少は大丈夫でしょ?
私は今、刑事課の監視官として、ここに捜査に来てるんだから。」
かつて、兄と宜野座が着ていたジャケットに袖を通すなんて…
色々と感慨深いな、なんて考えていた。
「宜野座さん、雛河さん
到着後、すぐに調査に取り掛かります。
雛河さんは鑑識ドローンで直ぐに解析を始めてください。あと、消去されたであろう防犯カメラを、念の為もう一度洗ってください。」
「りょ、了解です!」
勢いよく声を上げる雛河に笑顔を向ける舞白。
そして、隣の宜野座へと視線を移す。
「宜野座さんは過去に、この場所に訪れてる唯一の存在です。
……私のフォローをお願いします。
もしくは先行して頂いても構いません。」
「…………了解だ」
珍しく、舞白から"フォロー"という言葉。
いつもなら先行して、無茶をするのが普通だったが、どうやら今回は違うらしい。
「2人とも、よろしくお願いします!」
ニコッと笑みを向けると
相手の2人も微かに微笑んでいる様子。
そしてヘリは、サンクチュアリに着陸するのであった。
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