PSYCHO-PASS -confrontation of orphen-   作:鈴夢

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冷めた瞳の奥底に

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

ヘリポートに着陸する機体。

その機体から、3人の姿が現れる。

 

やけに仮設で造られたようなヘリポート。

よく見ると、崩れた建造物や、改修作業が行われているようにも見える。

 

「ここで、大暴れしたのが一目で分かるわ……」

 

チラッと宜野座を横目で見ると、何かを思い出したかのように微かに笑みを浮かべていた。

 

すると、目の前に施設の関係者と思われる人物が2名現れる。

 

 

「公安局刑事課の皆さん、遠路はるばるご苦労様です」

 

最初に声を発したのは女性。

黒髪の短髪、メガネをかけており、知的な印象を与える。

年齢は40代辺りだろうと見て取れた。

 

まるで舞白達の機嫌をとるような、下から下から話をする様子に、若干違和感を憶える。

 

 

 

「公安局刑事課一係、監視官補佐の狡噛舞白です。」

 

身分証を2人に向ける。

しかし、その女はある矛盾に気づくと、鋭く眉を顰める。

 

「……その身分証だと、外務省の方に見えますが?」

 

"外務省調整局行動課 及び

公安局刑事課一係、監視官補佐"

複雑な呼び名と、外務省のマークが入った身分証に勿論すぐに気づくと、分かりきっていた。

 

「現在、有期間で公安局に身を置いてます。

権限はなんら公安局の監視官と変わりません

……何か不都合でも?」

 

女は眉を顰めていたが、しばらくすると苦笑いを浮かべる。

 

「いえ……問題ありません。

少々、聞いた事のない肩書に驚いただけですよ?」

 

どうやら、外務省の舞白を警戒している様子だった。

そしてその女は咳払いすると、穏やかな笑みを浮かべる。

 

「私は現在こちらの管理を任されております。

経済省産業技術環境局、城ヶ崎 美也子と申します。

……そしてこちらが…」

 

城ヶ崎は背後の男性に目を向ける。

スーツに身を纏い、整った容姿。

妙に無機質に感じる瞳を3人に向けていた。

 

「統括責任者の烏間明と申します。

…いつも、公安局の方にはお世話になっていますよ」

 

サンクチュアリ建設に関わった"立役者"

そして、衆議院優生党の国会議員という肩書を持つ。

やり手の若手議員だと、メディアも彼を追っていた。

 

 

「よろしくお願いします。

城ヶ崎さん、烏間さん」

 

やけに烏間の視線が気になる。

向けられている視線は、宜野座達には一切向いていない。

舞白を一点に見据えるその姿は、気味悪さを憶える。

 

 

「予め、送っていただいたデータには目を通しています。早速現場の調査を行いますので、案内をよろしくお願いします。」

 

 

「勿論です。どうぞ、こちらへ」

 

3人は誘導されるまま、施設内へと潜入するのであった。

 

 

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施設の最奥、宜野座も訪れたことの無い場所だった。

厳重すぎる警備、何重にも何重にも続く分厚い扉の先に、

恐らく、球体が乗せられていたであろう台座が部屋の中央に佇んでいた。

 

 

雛河は傍らで、鑑識ドローンを撒くと、何も言わずとも調査を始める。

舞白と宜野座は、例の壁に目を向けていた。

 

 

Έγκλημα και Τιμωρία

 

"罪と罰"

 

 

なぜギリシャ語なのか、強奪した人物は

何を伝えたいのか?

 

 

「宜野座さん、なんだと思いますか?」

 

隣の宜野座に目を向けず声をかける。

過去にも同じような経験があった宜野座。

しかし、今回は犯人像も全く背景がわからないまま、このメッセージの意味を読み解くのは困難だった。

 

「罪と罰……、単純に考えれば

"自分の犯した罪を償うべく、最後は自身を罰へと貶める"か?」

 

罪と罰、という文言はよく使われる。もちろん文献も存在している。

しかし、相手の状況が全く分からない状態で断定はできない。

 

「"犯した罪に、罰を与える"そうとも取れるし。

よく考えると、この言葉って色んな意味に変換できるね」

 

2人は腕を組み、じっと考えていた。

 

 

 

 

「監視官!!足跡、取れました!」

 

背後で雛河が声を上げる。

2人は、鑑識ドローンが見つけた足跡に目を向ける。

 

「……この部屋、何年も人が入室する様子は無かったとか……

それにしては真新しい足跡があるんです、これ……」

 

昔、この部屋に入ったであろう人間の足跡ももちろん残されていたものの、やけに新しいものが見つかる。

 

「足跡の数を見る限り、単独犯では無さそうです。

……ただ、奇妙なのが全く同じ足跡で、

恐らく同じ足のサイズ、そして同じ靴を履いていた……」

 

「サイズからして男だな。

その形から、靴の種類は検索かけれそうか?」

 

「……それがやってるんですけど……

該当無しで……」

 

どの銘柄の靴にも当てはまらない。

だいたい、いつもだとどこのブランドのどの型の、いつ販売された……など、情報は分かるものだった。

 

「靴職人でない限り、必ず既製品を利用していれば引っかかるはず。

そんな、わざわざ靴を作って、それを履いて行動するとは考えにくい。

バレないようにと、靴底を作って貼り付けるなんてことも考えられない。」

 

と、すれば

恐らく海外製

 

しかし、若干の開国は進んでいるものの

そんな簡単に、そもそもこのような強奪を犯すような人物が入国など出来るわけもなかった。

 

「…………」

 

舞白は少なすぎる手がかりに、ギュッと目を閉じ考え込む。

そして、背後で様子を見守っていた2人に目を向ける。

 

 

「城ヶ崎さん、そもそも何故、

この事を3日間も隠したのですか?

…これほど危険なものが強奪された……、危機管理能力を疑います。」

 

舞白は眉間に皺を寄せ、城ヶ崎の前に立つ。

 

「技術開発局で独自に捜査をさせて頂いた迄です。

強奪されたと言っても、こんなに厳重に管理されている場所に容易に辿り着けるはずがありません。」

 

両手を胸の前でパンっと叩けば、微かに笑みを剥けられる。

 

「もしかすると、申請を忘れた研究員が、持ち出しただけかもしれませんし。しかし、流石に3日も見つからなければ、盗まれたとしか考えられず、手に負えないと判断し、仕方なくそちらに……」

 

「考えが甘すぎます、プルトニウムですよ?

あなた方が送ったデータにもその危険性……」

 

 

不意に、舞白の脳裏に矛盾がある事に気づく。

送られてきたデータ。

ピンッと引っかかるものがあった。

 

 

冷たく、鋭い目付きを相手に向けると、

城ヶ崎は冷徹な表情に一瞬怯む。

 

 

「城ヶ崎さん。正直に話してください。

私たちに隠していることはありませんか?

まだ、何か他に情報はありませんか?」

 

「…………どういうことかしら?」

 

呑気に首を傾げる城ヶ崎。

舞白は手早くデバイスを操作すると、先程ヘリの中で見ていた、とあるデータを映し出す。

 

 

 

「なぜ、このデータを送る必要が?

まるで、"東京でプルトニウムを爆発させる"

分かりきっているようなデータ……」

 

「………………」

 

もし、東京で爆発すれば

日本列島の3分の1の領土内に、影響があるであろうとデータ化されたもの。赤いグラデーションが東京を中心に広がっている画像り

 

 

「·····あくまで予測です。例として上げたのみ。

それくらいの威力のものが、もし爆発すればこのような事にと·····」

 

 

「違う、そうじゃない。

·····あなた方、経済庁は分かっている。そして、このとんでもない事実を隠しきれない、庇いきれないと判断した。そうですよね?」

 

 

城ヶ崎の表情が段々と焦りに変化していく。

額から汗が滲み出ている様子だった。

 

「もしプルトニウムを悪用され、東京が、日本が陥落してしまった時。責任を私たちに押し付けるためですよね?

"経済庁はやるべき行動は起こした、しかしそれを止められず、壊滅に追い込んだのは公安局の責任"だと」

 

 

「な·····、何を言って·····」

 

 

そもそも、この施設自体、厚生省の一部の人間、そして公安局刑事課一係しか把握をしていない場所。好都合すぎる状況。

何か問題が起こったとしても、隠蔽工作を共に行ったと言われてしまえば、公安局が咎められてもおかしくない。

 

それを良かれと、利用しようとしていた。

 

 

後退る城ヶ崎を追い込むように、舞白は詰め寄る。

そして怪しく口元を緩ませれば、そっと耳打ちをする。

 

 

「·····外務省が怖いですか?城ヶ崎さん」

 

 

この内容が外務省にも知れ渡れば、もうどこにも言い逃れはできない。

環境省は危険な立場に追い込まれることは間違いなかった。

 

 

「城ヶ崎さん、あなたが知っている情報を全て私に渡してください。私は今、公安局刑事課の人間です。

……従って下さるのであれば、こちらも悪くは扱いません。」

 

 

「……ッく……」

 

もう何も言えない、言い返せない。

城ヶ崎は酷く動揺した様子で固まっていた。

 

 

 

「·····俺が手を貸すまでもないな」

 

その一端を見ていた宜野座と雛河。

相変わらずの頭の回転に、迫力に、手出しは無用だなと安堵している様子だった。

 

 

 

 

そして、もうひとつの影。

部屋の片隅で腕を組んで傍観していた人物。

 

冷めた瞳で見据えたまま、

怪しげに気味悪く口角を上げる。

 

 

「やはり、君は素晴らしいよ

狡噛舞白·····」

 

誰にも聞こえないように呟く男、烏間明

 

多くを語らず、ただただ覚めた瞳で傍観するのみ。

 

"それ"は、シビュラシステムだった。

 

 

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