PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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「相変わらず、汚い手を使ってくれるじゃない?
……シビュラシステム……」
目の前で余裕な笑みを浮かべる男に、霜月は睨みをきかせる。
烏間明……、まさか再びこの場所で再会するとは思ってもいなかった。
「汚い手?」
常守や舞白達は別室にて情報を纏めていた。
そして、目の前の人物に、霜月は居てもたってもいられず問い詰める。
「あなた達、舞白を利用する気でしょう?
……都合が良すぎるのよ、何もかもが。」
さらに一歩、烏間に近づく。
「あなた達が必死に隠していた物が奪われ、このままだとこの国の進退が危ぶまれる。"諸外国にこの施設の真実が公になれば、万一の事態は免れない"。あなた言っていたわよね?」
グッと拳を握りしめ、相手をさらに睨みつける。
「"臭いものには蓋をする"
あなた達はその為に、汚れ仕事を、私達刑事課や狡噛舞白に擦り付けようとしている。この事態は全て、あなた達システムは掌握していた、だから快く狡噛舞白を刑事課に派遣した。」
あの時と同じように、相手の襟元に掴みかかると、今度は拳を振り上げる。
「……また、この前みたいに殴られたい?今度は拳で……」
烏間は余裕な笑みを崩さない。
むしろ、全てを暴かれた事に、満足しているような様子だった。
「さすが、その洞察力。だからこそ私は君を信頼して、全てを話した。」
「……ッ……」
ふるふると拳が震えていた。
「この事態、君たちならきっと解決してくれると……私は期待しているよ。報いは、もう懲り懲りだね。」
ここで怒っても仕方がない。
もう事件は既に始まってしまった。
「……人をバカにするのも大概にしなさい、シビュラシステム。もし、これ以上、あの子に重いものを背負わせるのは、私が許さない。」
「大丈夫だ、あの娘なら、今回の件も難なく解決す……」
刹那、霜月の怒りが頂点に触れ、拳が烏間の頬に命中する。
「もう次はないわよ、シビュラシステム。あんた達がそこまで言うなら、見せてやるわよ、私達の力を。
……その時、必ず今度こそ、報いを受けさせてやるわ」
パンパンっと両手を払えば、部屋から出ていく。
まさにシナリオ通りに進んでいる様子に、霜月は激しく腹を立てていた。
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とある部屋にて、
合流した常守、舞白、宜野座、雛河。そして城ヶ崎。
城ヶ崎は全てデータを開示すると、隅で静かに様子を伺っていた。
一番手がかりになったものは、容疑者からのメッセージ。
城ヶ崎に宛てて、犯行をほのめかす内容のものだった。
「"東京に、核の雨を降らす"
"汝自らを知れ"」
常守が文面を読み上げる。
文と言うよりも、ただの短い言葉。
差出人不明の不気味なメールが届いたのは、強奪された前日を差していた。
「壁に書かれたギリシャ語、
"汝自らを知れ"はギリシャの哲学者、ソクラテスの言葉です。」
舞白はじっとメールの文面に目をやる。
「汝自らを知れ、か。
どうも安い脅迫文にしか俺には見えないな」
「……なんだか、在り来り。
子供っぽいというか、幼いというか……」
宜野座の言葉に、舞白もこくりと頷く。
あまりにも単純すぎる文章。
「雛河君、防犯カメラは?」
膝にPCを乗せ、カタカタとキーボードを叩き続ける雛河。
様子からして、やはり全てのデータが消去されていた。
「ダメです……、周辺は山岳地帯で、殆どカメラの設置はないですし。移動手段は航空機じゃないと厳しいハズ……。でもどこにも、そういった痕跡すら見つかりません。」
どのようにして、この施設に入り込んだのか。
そもそも、普通ならスキャナーに引っかかるはずだった。
それさえもすり抜ける事が出来る容疑者。
舞白は、花城達がやけにこの件に首を突っ込んでいたのを思い出すと、とある可能性を考える。
「……容疑者は、外国人。
その線もあると思います。あくまでも勘ですが……」
全員が舞白に目を向ける。
「日本に恨みがある外国人に、私は今まで何度か会った事があります。とくに日本棄民。」
過去、アジア圏を放浪した時に何度か遭遇した経験があったのだ。
「一方的に帰国を許されず、システムに事実上排除された人達。一部、過激な人たちもその中には居ました。もし、外国人であればその線が濃いかと」
「日本棄……」
常守が口を開いた瞬間、部屋の外から霜月の荒れた様子の声が響き、何事かと全員は眉を顰める。
その声は徐々に近づいてくる。
部屋の扉が開かれると、現れたのは花城と狡噛。
そして追いかけるようにして、霜月も姿を現す。
外務省のマークを目にした城ヶ崎は、ワナワナと震え出す。
「なッ、なぜ外務省が!?
……もしかして、あなたが……」
キッと舞白を睨むも、全く身に覚えのない舞白は両手を胸の前に出すと"違います!"と言い張っていた。
そしてその2人の後ろから、必死に呼びかける霜月。
何やら文句を言い続けている様子だった。
「なんであなた達がここに居るんですか?ここは日本、私たちの縄張りですよ?」
「もう、そんなこと言っている場合じゃないでしょう?」
花城と狡噛は横に並び、入口で城ヶ崎に向けて身分を明かす。
「外務省調整局行動課 課長、花城フレデリカ。」
「同じく、行動課の捜査官、狡噛慎也だ。」
花城はとある写真を懐から取り出すと、常守たちの目の前のテーブルに並べていく。枚数は7枚。
全て死体の写真だった。
「これは一体何なのでしょうか?花城さん」
常守が一枚の写真を手に取ると、眉を顰め、傍らに立つ花城を見上げる。
「ここ約半年間、日本の領海内に不審な侵入者たちが立て続けに現れてね。ちなみに、最初に見つけたのは国防省。私たち外務省は依頼を受けて調べていたのよ。」
「こ……国防省ですって……」
新たに省庁の名前が上がれば、絶望した様子の城ヶ崎。
その様子を横目に、花城は話を続ける。
「目的は不明。しかし全員に、ある共通点があったの。」
花城は、視線を隣の狡噛に向ける。
狡噛は壁に寄りかかり、気だるそうに話し始める。
「全員、左腕には鷲の刺青、右腕には首のない、羽の生えた女神像の刺青が入れられていた。
そして全員が、全く同じ構造の小型潜水艦に乗って、同じ場所で降り立っていた。」
狡噛はデバイスを操作すると、部屋にいる全員にとある画像を転送する。
表示されたのは、この近辺の地図。
海に面している箇所が多くある青森、
ここから、そう遠くない場所の海岸にマークが入れられていた。
「ここに辿り着けたのは5人、残りの2人は着く前に、国防省に殺られてる。」
陸地に無事辿り着いたという5人も、即捕縛されていた。
「辿り着いた5人、そいつらから何か聞き出せなかったのか?」
宜野座は狡噛に視線を送ると、気になっていたことを口にする。
「5人とも、舌を噛み切るなり、薬物か何かを口にして自害。中には自ら頭を撃ち抜く者もいたそうだ。残念ながら、国防省の人間しか生きたヤツらに会っていない。俺が見に行った頃には既に全員死んでいた。」
その場で腕を組み、眉を顰める。
「捕縛される前に、自害しろ。
恐らくはそういう事だろう。」
「……マトモな人間がする事じゃないな。」
なかなか厄介そうな内容だと、宜野座はため息を漏らす。
そして再び、花城が口を引く。
「そして、約2ヶ月前の6月に確認された7人目。日系人女性。
…その娘の衣服のポケットに、気になるメモが入っていたの。」
7人目と思われる死体の写真を指をさし、同時に、メモの画像も全員に転送する。
「"ZEUS"、"○○作戦"、"日本棄民"
肝心な作戦名が血に濡れて、何を意味するのか分からなかったわ。
そしてこの娘は唯一の日系人だったの。だから日本語のメモを持っていたのね。」
並べられた7人の遺体写真。
人種は様々だった。
「そしてもうひとつ、これを見て」
何やら、写真付きのリーフレットのようなものが映し出される。
大昔のものなのか、かなりボロボロで、復元もできない状態。
"青森県に立地する、核燃料リサイクル施設"
"○○村―――地区"
青森県のとある施設、核燃料に関する施設名がなどが並んでいた。
「これを見た時、まさかとは思ったわ。
大昔、この一体は核燃料の施設が何件か存在していた。
……そして偶然にも、突如閉鎖された環境省の潜在犯隔離施設。問い合わせをしても一切返答はなし。厚生省にも突っぱねられてたの。」
背後で黙っていた霜月が、ゴクリと息を飲む。
「あぁ、コレねって。
彼らの狙いは、何かしらこの施設に隠されている危険なものだと、私たちは調べあげたの。」
花城はクスッと笑みを浮かべれば、城ヶ崎に視線を向ける。
その微笑みに、ゾッと背筋を凍らせていた。
「でも、どうして課長はこのタイミングでここに?
私、何も伝えていなかったですよね?」
頑なに潜入調査を行えなかった外務省。
しかし、なぜこんなにタイミング良くここへ現れたのか。
「そんなの考えたら分かるでしょう?
あなたの位置情報よ、舞白」
「……なるほど……だからここに……」
さすがに青森まで急遽移動すればさすがに怪しいはずだった。
上手くそれに乗じて、2人はこの場に現れたのだった。
「それで?常守監視官。
今ここで起こった事件について、教えて貰っても良いですか?」
花城は、空いていた常守の隣の席に腰掛けると笑みを向ける。
さすがに、もう公安局だけで何とかなる話ではない。
「もちろん、全て共有させてもらいます。
……ただし、決して公にはしないでください。
この事が、もし国民全員に知れ渡れば大混乱を招きかねます」
それはシビュラシステムの意思でもあった。
花城は常守に手を差し出すと、握手をするように促す。
「約束は守るわ。
今度こそ、しっかりと連携を心がけます。」
「よろしくお願いします、花城さん」
2人は握手を交し、協力関係になる事を誓った。
横取りされたような感覚に陥る霜月、
そして城ヶ崎は、既に言葉を発する力さえ無さそうな状況だった。
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