PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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花城や常守達がこの件の様々な憶測を話し合う。
舞白は一切会話に入ることはなく、1人静かに様々なデータと向き合っていた。
人種も様々な侵入者達、判明した者は7人。
半年間の間に、立て続けに発生した不審者の侵入。
しかし7人目以降、何故か2ヶ月も間が空いた訳。
この施設を狙っていた、そして3日前に突如現れた2人組。
国防省の網を掻い潜り、どのように侵入したのか。
「((同じ場所に現れるのを見越していた国防省。
……でもその分、他の場所の監視を疎かにしていたとすれば……))」
何かを考えている様子の舞白を、狡噛は向かい側の席から静かに様子を伺っていた。
隣の宜野座も、やけに険しい顔付きの舞白を気にかけていた。
「((……恐らく、強奪した2人組は、そもそもこの青森に始めから降り立っていない。違う方法で、もっと前から潜伏して、頃合を伺って3日前にこのに来た……))」
「ギリシャ文字……ゼウス……、腕の刺青……」
ブツブツと呟く舞白に、左隣の宜野座が声をかける。
「おい、舞白?」
「……でも……そう……、…」
声は届いておらず、ひたすらブツブツと独り言を口にする。
まるで犯人たちの思想に飛び込むかのように、深く深く沼へ堕ちていく。
見かねた右隣の霜月が、舞白の顔の前で手を叩く。
我に返る舞白、呆れたようにため息を吐く霜月。
「……ちょっと落ち着きなさいよ、舞白」
「へへへ……、つい考えすぎちゃって」
頭を掻きながら笑って誤魔化す舞白。
その様子に気づいた花城と常守は、会話を止めると、舞白に視線を送る。
尚、雛河は1人黙々と何やらPCを操作していた。
「舞白。あなたの意見も聞かせて?」
花城はジッと対角線上に座る舞白を見据える。
様子を見る限り、何か考えていることがあるのだろうと分かっていた。
舞白は改めて姿勢を正すと、口を開く。
「IDが存在しない人物達、そして人種もバラバラ。まずは国内の人間ではないことは間違いないです。」
黒人、白人、日系人。死体の写真から十分伺える。
そして何より、全員が恐らく10代。あまりにも若すぎる。
「引用されている文言はギリシャ語が多いです。残されていたメッセージもそうでしたから。
……そして、課長達が見つけていた手がかりの"ゼウス"、左右の腕に入れらてた"刺青"……」
舞白は全員の端末にとある画像を送信する。画像に映るのは男性の彫刻。
玉座のような椅子に座り、両手には何かを手にしていた。
「右手には勝利の女神ニケの彫像、左手には鷲が止まった錫杖を。皆さんも聞いたことがあると思います。ゼウス像です。 」
画像を指さしながら説明をしていく。
ギリシャ神話など、この時代知らない者が殆どだった。シビュラシステム導入後の日本には、歴史や世界史など、撤廃された必修科目は多く存在する。よほどの物好きか、哲学などに触れていないと関わることは無かった。
「ギリシャ神話の主神、ゼウス。全知全能と言われている神様です。
パッとしない方もいると思いますが……」
先程の刺青の画像にも目を通し、全員が"それ"を刻んでいることは間違いない。
「この事から、彼らは全員同じ目的を持ってる、恐らくは"ZEUS"という集団、組織、宗教……。裏で暗躍している何かしらの存在がいることも示唆されます。」
「……ギリシャ神話…、ゼウス
もう訳わかんない………」
霜月はあまり触れたことの無い神話の話に眉を顰める。
「そして、7人目の日系人、恐らくこの5人目の人物も日系人ですよね?
あとは基本的に白人や黒人、欧米人が目立ちます。
…日本棄民の存在。花城課長が以前調べていた項目……」
舞白は花城に視線を送ると、小さく頷く。
「国防省の報告だと、全員が北太平洋側から向かってきていた。乗っていた小型の潜水機も欧米製。まだ調査できていない、欧米に残された日本棄民の存在……」
「あくまでも私の勘です、勝手な妄想かもしれません。私の過去の経験からも考えると、恐らく恨みを持った欧米側からの攻撃です。それに使われている、若い少年少女、日系人。利害の一致があったもの同士の仕業としか考えられません。」
一端の話に、全員は困惑気味に眉を顰める。
その話がもし本当なのであれば、事は大きすぎる。
「その目的、この施設の核兵器を、3日前に盗み出した犯人についてはどう考える?舞白」
背もたれに深く腰掛け、舞白に問いかけたのは狡噛。
「…犯人像については、先程宜野座さんとも話したんだけど…、恐らくかなり若い人物だと思う。この7人と同じように。」
メッセージが軽すぎる、ありきたりで唐突で簡単すぎる。
直感でそう感じていた。
「そして、雛河さんが解析してくれた足跡。そこから2人組ということが分かる。今までとは違う。相手側も立て続けに作戦失敗に追い込まれて、切り札としてこの2人を送り込んだと思うの。」
実際、証拠を最小限に、目的の物を盗み出したその能力は、恐らく普通の人には出来ない。
「……そして、謎に7人目から期間が開きすぎてる。2ヶ月も。
でも、もし私なら、私がここに乗り込むなら今までと違う方法を取る」
"自分なら"と自身を犯人に見立てる舞白。
「ほかの7人達とは違う方法を考えるはず。侵入経路から、全ての方法を。だって、同じ方法だと失敗する可能性の方が高いんだから、そう考えるのが普通。」
「……ということは、もしかして」
隣の霜月は、舞白と同じことを思いつく。
「あくまでも盗み出したのは3日前。その2人は既に早い段階で、違う方法で日本に潜伏し、ここに侵入する方法を見つけて、難なく強奪に成功。
……雛河さん、そろそろ調べられそう?」
舞白は雛河に"そろそろじゃない?"と声をかける。
雛河はふー…、と息を吐くと、とある情報を転送した。
「うん……、多分これだと思います
ここの職員の……IDの履歴……」
「!?あなた……もしかして勝手に、この施設のサーバーに?」
ずっと黙り込んでいた城ヶ崎が、慌てた様子で声を上げる。
勝手にサーバーに侵入は、明らかに違法だった。
「ちょっとだけ、気になったことがあるので。もちろんデータは消去します。」
転送されたデータに目を映す全員。
そしてそのデータの異変に気づいたのは宜野座だった。
「ここ2ヶ月間、全く出勤していない職員が2人。そして、その職員が3日前に出勤した事になっている。」
サンクチュアリは閉鎖後、ここの核燃料を管理する環境省の職員だけで構成されていた。人数も以前のように多くはない。
その職員一覧、明らかに2ヶ月間、パッタリと出勤していない人物が2人だけ存在していた。
「ここの警備環境は日本でもトップだと思います。私も今日初めて来ましたが、厳重すぎて驚きました。なのに、その施設に容易に侵入できた。普通なら有り得ない。日本に入国したのが2ヶ月前と考えるなら、その人物達はそれなりに準備してるはずなんです。」
「……その2人のIDを手に入れて、その2人に成りすまして侵入した……
そういう事か?」
「宜野座さんの言う通り。
その可能性を考えるしか他ないと思います。」
対象の職員2人のIDを開き、詳細を確認していく。
遠山 洋司 23歳。幡多 直樹 26歳。
2人とも同じ部署の人物だった。
「城ヶ崎さん。ここの職員の方は、週ごとに入れ替わりで勤務されてますよね?」
「……はい、その通りです。
なので、こちらで勤務する週は、有明空港に常設されている、環境省専用の航空機に乗ってこの施設まで。そして寝泊まりはこちらの宿舎です。」
2人の勤務スケジュールを開く。
全く同じ勤務体制の2人の履歴には、違和感しかない。
「出勤しなくなったタイミングは、青森から東京の勤務に戻った次の勤務から。環境省の本庁にも出勤してません。
……本人たちから連絡等は入っていませんでしたか?」
一通りの情報を目にして、城ヶ崎に問いかける。
しかし困惑した表情を見る限り、何も把握していないようだった。
「私にはとくに何も……、長期休暇をとる職員もいますし、職員の勤務管理は私の管理範囲内では……」
「2ヶ月も、2人で仲良く長期休暇か?
杜撰な核燃料の管理に、杜撰な職員の管理、呆れるな。」
城ヶ崎の言葉に、狡噛が呆れ笑いを浮かべていた。
「私のこの一端の推測が正しければ、直ぐに両名の安否を確認した方が良いです。その続きは、そこから。調べていくしかありません。」
一端の舞白の推理は、かなりの確証を得られそうだった。
そしてその洞察力に、花城は改めて関心する。
「さすがね。その線が有力だと思うわ。」
「……私の考え、あまり充てにしないで下さいね?
まだ未回収の部分もありますから……」
うーーん、と腕を組み
まだ明かしきれない内容について首を傾げる。
「とにかく、直ぐに2人の安否を確認する必要がありますね。私たちは直ぐに東京に戻って捜査をしましょう。」
常守がその場を空気を変えるように、サッと立ち上がると一係のメンバーに目を向ける。
その言葉に、宜野座や霜月、雛河も立ち上がる。
「城ヶ崎さん。
犯人から、もしまた何か連絡があった場合、直ぐに報告を。もし都合が悪く、隠蔽を図ろうとした場合、こちらも手を打たせていただきます。」
「……はい、申し訳ございませんでした…」
常守の言葉にシュンっとした様子。
はなっから、この人物が早く通報していれば事はここまで複雑にならなかったはずだ。
「ほら、舞白。
ぼーっとしてないで、私たちは東京に……」
「その必要はない。
舞白、あなたは行動課で捜査をするのよ。」
霜月が舞白の腕を引くと、それを制止するように花城が間に立つ。
突然の事に、霜月は眉を顰め、相手に睨みをきかせた。
「はぁ?何言ってるんですか?
今、狡噛舞白は刑事課の監視官補佐です。そういう取り決めになっていますよね?花城さん」
「もう結構。事は重大よ。
すぐに国外捜査に入らなければならない。舞白の手が必要なの」
「そんな勝手すぎます!こっちだって国内捜査で必要な人材よ!」
花城の言動に困惑する舞白。
決定権は舞白にはない。
「ちょっと2人とも……落ち着いて、」
言い争う2人の間に挟まれ、なすすべのない舞白。
すると、その間に常守が加わる。
「花城さん。でしたら局長を通してください。霜月監視官の言う通り、きちんと取り決めで決定した事です。あと2ヶ月、舞白さんは刑事課の監視官です。」
「……先輩」
あまり口出しをしない常守の行動に、目を丸くする霜月。
それは同じく、花城もそうだった。
「恐らく、国内捜査はかなり困難を極めると思います。勿論、国外も同じだとは思いますが。その為にも、彼女の力が不可欠です。」
「……常守監視官、しかし……」
花城が再び反論しようとした瞬間、狡噛も間に入る。
「公安局の局長に話を通す時間はない。俺たちもさっさと国外捜査に出向かないと手遅れになるぞ。
…俺だけじゃ、そんなに力不足か?課長さん」
狡噛も現れると、さすがに花城はそれ以上何も言わなかった。
観念したかのように、額を手で押えため息を漏らす。
「そうね、仕方ない……」
しかし、表情は微かに緩んでいく。
「うちの優秀な人材が、そこまで求められるのは嬉しいものね。
……悪かったわ、取り決め通り、きちんと従うわ。」
「課長……」
諦めたように笑みを浮かべる花城の言葉に、舞白は口角を上げる。
その様子を気に入らない様子で見据える霜月。
「((……やっぱり……いけ好かないわ、この金髪……))」
背後でグッと拳を握り睨みつける。
それをそっと静止するのは、宜野座と雛河だった。
「落ち着け、霜月。」
「監視官…怒らないで……」
「わかってるわよ!……ふんっ……」
腕を組み、いつものように不機嫌さを醸し出す霜月を、面白がるように笑みを浮かべながら舞白は見つめていた。
「では、早速。捜査に取り掛かりましょう?
狡噛監視官補佐。」
常守はニコッと舞白に微笑みかける。
皆の言葉に、一係のメンバーの思いに、舞白は嬉しそうな様子だった。
そして、兄の狡噛は監視官のジャケットを身につけている舞白の背中を叩くと、口角を緩ませる。
「こっちは任せろ。お前はそっちで、成すべきを成せ。」
「……了解です」
グッと拳を兄に向け、互いにぶつけ合う。
その光景を常守は微笑ましそうに見つめていた。
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