PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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「兄さん、やっと気づいたみたいだよ。」
青い目の少年はPC画面に映る人物たちに目を向ける。
遠山洋司、 幡多直樹の自宅に、それぞれ潜入する刑事達。
そして、何故かその人物達は簡易的なマスクを装着していた。
その言葉に反応した"兄さん"は、弟の座る椅子の背後に立つと、画面を覗き込む。
「日本の警察は、案外骨があるんだな。」
「彼らが、"あの施設"に赴いて、たった数時間後に手がかりを掴んでる。それに、僕たちが確実にプルトニウムを盗んだ犯人だって、理解してるみたい。」
あのマスクは、恐らく対放射性物質の為に装備されたもの。
早い対応に、少年は驚いた様子だった。
「国防省、法務省の入国管理の杜撰さには驚いたが…。
警察……、公安局刑事課か……」
2人が身を置いている部屋。
複数のPCやデスクトップ、壁には、ここ2ヶ月間で調べあげた様々な情報などが貼られていた。
そして、部屋の一角に、頑丈そうな箱が。
その中には、あのプルトニウムが保管されていた。
「"玲(レイ)"、この刑事課の人間を調べてくれ。
恐らくこの中に、やたら機知に富んだ奴がいる筈だ。
……まあ、その前に死ななければいいけど。」
「確かに、気づくかな?この人達?
……了解だよ、"琉(リュウ)"兄さん」
琉と玲
美しい顔立ちをした、少年達
その青い瞳からは、殺戮に復讐に満ちた、冷酷な雰囲気を漂わせる。
微かに開いた窓からは、潮風の香りが入り込む。
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とあるマンションの一室。
その扉の外にマスクを付けた人物達が、ドミネーターを構えていた。
「志恩さん、住人の避難は大丈夫ですよね?」
霜月がデバイス越しに、唐之杜に確認をする。
『オーケーよ。
朱ちゃん達の方のマンションも、問題なし……』
遠山洋司のマンションには常守、宜野座、雛河。
幡多直樹のマンションには霜月と舞白が訪れていた。
その言葉を聞いた2人は、互いに目を合わせ頷く。
舞白を先頭に勢いよく室内に突入する。
「公安局刑事課です!幡多直樹さん?いらっしゃいますか?」
舞白は室内を見回すも、何も気配がなく眉を顰める。
部屋は荒らされているような痕跡もなく、むしろ綺麗だった。
「……誰も……いない?」
背後から霜月も辺りを見回す。
「うん、誰もいないみたい。
……常守監視官?そちらは?」
『誰もいないみたいです。
室内は荒らされた痕跡も、何もありません。』
どちらもハズレのようだった。
しかし、このまま何もない訳がないと
2チームはそれぞれ部屋の捜索に入る。
「舞白はそっちの部屋から調べて?
私はこっちから……
……環境省のエリートは、なかなかいい部屋に住めるのね。」
室内はかなり広く、羨ましい〜、なんて呟く。
舞白は霜月の指示通り部屋を調べていく。
キッチン、洗面所……そして浴室へと続いていく。
「何もなし……
……あとは、浴室……」
広い洗面所を抜け、浴室の電気のスイッチを着ければ、
その先の扉を開く。
すると、浴室の壁に赤い文字が書かれていた。
サンクチュアリで確認できたものと全く同じ筆跡。
"κεφάλι"
"εκρήγνυμαι"
「ケファーリ…、エクリグニメ……
……頭……爆発……?」
刹那、霜月の驚いたような、悲鳴が聞こえる。
慌てて舞白は浴室から飛び出すと、
寝室で、動揺していた霜月の傍へ向かう。
「美佳ちゃん!何があっ……」
ベッドの上の箱の中。
そこに入っていたのは人間の頭部。
マスクを着けていたせいか、臭いに気づかなかったようだ。
「こちら狡噛!たった今被害者と思われる頭……」
"頭"
先程の赤い文字を思い出す。
"爆発"
『こちら宜野座。
浴室にて、サンクチュアリと類似している赤い文字を見つけた。
……舞白、これは……』
宜野座から映像が送られてくる。
"ζωή σε λόγου σας"
ゾイセローグサス
"お悔やみを申し上げます"
ハッとした舞白
直ぐに霜月の腕を引っ張ると、寝室を飛び出す。
「常守監視官!そこから直ぐに待避を!!
爆発物が仕掛けられてる可能性があります!」
『爆発物?』
『か、監視官!
頭が……』
常守と雛河の言葉に、舞白は声を荒らげる。
「すぐに退避を!!その頭が爆発します!」
玄関のドアノブに手を伸ばす。
同時に、常守達も急いで室内から飛び出す。
刹那、同じタイミングで2つの頭は大爆発。
一気に室内が炎に包まれれば、その衝撃で舞白達は吹き飛ぶ。
「……ぐっ………」
舞白は霜月の体を抱き留めるように、外へ吹き飛ぶ。
あと1秒でも遅れていたら、2人は間違いなくあの炎に焼かれていただろう。体をゆっくりと起こすと、霜月と舞白は燃え盛る室内へと目を向ける。
「…助かったわ、舞白……」
霜月はポンっと舞白の肩を叩く。
互いに少し怪我は負ったものの軽傷で済んだ。
「美佳ちゃんも……
あの頭を見つけて無ければ、逃げるの遅れてたよ」
2人はその場に立ち上がると、唐之杜から通信が入る。
『美佳ちゃん、舞白ちゃん!無事!?』
かなり慌てた様子の唐之杜。
突然の事に驚いていた様子だった。
「大丈夫です。2人とも無事ですよ。
常守監視官達は!?」
『こちらも…何とか大丈夫です。
雛河くんも、宜野座さんも、軽傷で済んでます。』
「…よかった…………」
ふぅ……と胸を撫で下ろす2人。
しかし、部屋が全て燃えてしまえば、もう中の痕跡は全て焼かれて無くなるだろう。
『それより、なんで爆発するって分かったの?』
常守が舞白に問いかける。
「幡多の部屋にも同じ赤い文字があったんです。
ギリシャ語で、頭、爆発。
それで、宜野座さんの言葉を入れると、明らかに私たちを爆発死させるつもりだろうと予想しました。」
『……なるほどね……
……でも、とにかく助かったわ……』
互いに協力をしなければ気づかなかった。
明らかに犯人は弄んでいると考えていた。
まるでクイズのような、謎を提示して、私たちを試しているようだと。
「鎮火させたら、すぐにまた調査に入った方が良いかと。
少しでも、なにか手がかりを探さないと……」
『そうね。
…あとでまた合流しましょう』
切られる通信。
傍らの霜月に目をやると、やけに神妙な面持ちだった。
「……犯人達…、まるで私たちを面白がってるように感じる。謎かけみたいに、メッセージを残したり。嫌な奴ら……」
「防犯カメラ映像も無し。
そして遠隔操作に、爆発物を作ることができる。
…普通、作った時点で犯罪係数は上昇するはずだし、相手はかなりの手練なのは間違いない…」
「やっぱり、あんたがいて助かったわ。
じゃ無ければ、みんな死んでたかも。」
霜月はボソッと口にすれば、スタスタと歩き始める。
舞白はその言葉に笑みを浮かべれば、後ろを追いかける。
「"必要な人材"、だもんね?」
昼間に、霜月が花城に言い放った言葉を発する舞白。
その言葉に"うっ……"と声を漏らせば、誤魔化すように更に歩くスピードを速めていた。
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「……気づかれたね。
それに対処も早い。」
玲は取り付けていたカメラや盗聴器で、刑事課の全ての行動を監視していた。
素早い判断能力、チームワーク。
刑事課一係は警戒すべきと、情報をかき集めていく。
「この銀髪の女は?日本人?
それとも、帰化移民か?」
真っ白な銀髪に、少し日本人離れしているような風貌、そしてギリシャ語を直ぐに読みとった事に、どこかの移民なのでは?と兄の琉が推測していた。
「……ううん、違うみたい、日本人だね。
このID情報の人物だよ。」
画面に映し出される舞白のID。
しかし奇妙なことに、殆ど過去の経歴は載っていない。
"外務省調整局行動課 特別捜査官"と記されていた。
「"新麻布高校中退"、あれれ?
兄さんが今通ってる高校だね?すごい、偶然……」
2人は現在、偽のIDで日本の学生として生活していた。
兄は、かつての舞白の母校に身を置いている事になっていた。
「……なるほど……」
不可思議な経歴を見ると、琉は面白そうに画面を見つめていた。
そして再び、カメラ映像へと切り替わる。
「"狡噛舞白"、彼女が全部気づいたみたいだね。
……それに、コレ見てよ?」
映像を進めると、カメラに目線を向ける舞白が映る。
カメラの存在に気づいていたようだった。
「この女……面白いな。
これはなかなか、遊びがいがありそうだ。」
「ね?面白いでしょ?
……もうちょっと色々調べておくね?
次の作戦は頼んだよ、兄さん」
"わかったわかった"と怠そうに話し、部屋から出ていくも、その表情は不気味な程、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
そして、ベランダに出ると夜風にあたる。
視線の先には海が見える。
山々の草木に囲まれたこの場所は、誰も近づかない、静かな場所だった。
もう少し、海の近くに身を置きたかった、などと考えていた。
「……この国は、青い空に美しい海、平和で羨ましいよ……」
自分たちの故郷と脳内で照らし合わせる。
比べ物にならないくらい、故郷は酷い惨状だ。
「お前らだけ、甘い蜜を吸うなんて、許さない。」
瞳の奥底で、フツフツと闇の部分が滲み出ていた。
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