PSYCHO-PASS -confrontation of orphen-   作:鈴夢

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3章
埋め込まれていたその"遺"物


 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

爆発事件の翌日。

一係の面々は分析室へと集まる。

 

事はかなり進展が早く、休む間も無さそうだった。

 

 

「爆発現場から、遠山洋司と幡多直樹のDNAを感知。首は殆どが燃えていたけど、うちの優秀な鑑識ドローンが見つけてくれたわ。」

 

画面に映るのは、両名のID情報。

そして、爆発物の断片も表示される。

 

人間の頭部の画像。

埋め込まれていたであろう爆発物。

ふと、舞白は自分の左首に手を伸ばす。

 

「爆発物の元はセムテックス。高性能プラスチック爆薬の一種よ。小型で、人間の頭に埋め込むことなんて容易いわ。」

 

爆薬の名前に、須郷はすぐに反応する。

 

「セムテックス。微量で家屋が全壊できる威力ですよ。

まさか、TNT爆弾の1.5倍の威力のものを…そんなものをどこで…」

 

まず、日本では手に入れることはできない。

明らかに、海外から持ち込んでいるとしか考えることは出来なかった。

 

「分析したけど、ほんの微量しか含まれてはいなかったわ。でもそれだけのものを、もし他の場所で使用されたら、このノナタワーだって破壊することができる」

 

相手はとんでもないものを所持しているのは変わりない。

あんな、いとも簡単に人を殺せる、躊躇することなく、弄ぶように。

普通の人間にはできない事だった。

 

「何か、他に手がかりは?志恩さん」

 

常守は画面に食い入るように睨みつける。

かなり憤怒している様子が見て分かる。

 

「…それが、マンション内のカメラもすべて消去されてる。近隣のスキャナーにも何も怪しい反応はない。プルトニウムが強奪された日、2人が生きているはずなら、必ずどこかで反応するはずなのに、どこにも見当たらない。ハッキング能力に、かなり優れた人間が背後にいるわ」

 

青森に向かう専用の航空機内、そして当日の施設のカメラ、全てが真っ黒。

 

「あの、目撃情報を、昨日の施設で聞いてます」

 

雛河はそっと手を挙げると、2人を見た、という目撃情報を集めていたことを話し始める。

 

「遠山洋司と幡多直樹、2人は確かに、有明空港に居たって。

いつも通り、航空機に乗り込んで、そのまま出勤する姿を確かに見たという職員がいました。

……ただ…」

 

雛河が言葉を詰まらせるも、続きを話す。

 

「…やけに口数が少なかったって。

特に遠山洋司は、まるで人が変わったかのように物静かだったとか…」

 

 

「……ホログラム。

しかも、スキャナーにも、何にも引っかからない、高レベルの全身ホロ…」

 

隣の六合塚は雛河の話した内容に、ひとつの可能性を口にする。

というものの、恐らくそれしか考えられない。

 

「さすがに、その人物を演じるまでの余裕はなかったか。」

 

宜野座も、六合塚の言った可能性しか考えられないと言うように、口を開いた。

 

「意外と抜けてるマヌケな容疑者。そんな危険なものを、いとも簡単に作れるのに」

 

霜月は腕を組み、意外と抜けている犯人を小馬鹿にするように言い放つ。

 

「…志恩さん、爆発現場から他になにか見つかりませんでしたか?例えば、防犯カメラのようなものとか…」

 

「カメラ?

…室内に、ホームセキュリティ用の防犯カメラは確かに見つけてるけど?」

 

あの家のリビングに取り付けられていた防犯カメラのようなもの。

かなり違和感があった。

 

「もちろん、そのカメラも既にデータは全て消されて、何も掴めずよ」

 

舞白は必死に、唐之杜に問いかける。

 

「そのカメラの本体ってどこにありますか?」

 

「どこって…、もちろん証拠品管理室に…」

 

 

「分かりました、ありがとうございます。

少し調査したいことがあるので、席を外しても?」

 

舞白は常守に視線を向ける。

 

「勿論よ?でも、一体…」

 

「引っかかることがあるんです。

…確認したら直ぐに戻るので、失礼いたします」

 

全員に一礼すると、舞白はすぐに部屋から飛び出す。

その様子を隣で見ていた宜野座は、ため息を漏らし、常守へ視線を向ける。

 

「宜野座さん、舞白さんをお願いします

念の為、一緒に」

 

「そのつもりだ、全く…」

 

後を追うように、宜野座も部屋から出ていく。

 

唐之杜はタバコを口にすると、何かに気づいている舞白に期待を寄せていた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

公安局 証拠品管理室

 

倉庫のような場所。

そこには数々の事件の証拠品が丁寧に保管されていた。

 

そして、今回の事件に関するものが保管された箱に触れ、デバイスでロックを解除し、中身を開ける。

 

「何だ舞白。

映像は全て消されていたと…」

 

隣で同じように箱の中身を確認する宜野座。

一直線に、一心不乱に何かを探す舞白の様子に、疑問を浮かべていた。

 

「……あった、このカメラ…」

 

酷くボロボロに破損している様子の、防犯カメラ。

あの時、やたら視線が合ったような不思議な感覚を忘れていなかった。

 

 

「宜野座さん、少し離れていてください」

 

「…何を…」

 

刹那、そのカメラを思いっきり踏みつける。

すると破片が辺りに散らばると、その行動に宜野座は目を見開く。

 

「おい、舞白。証拠品を破壊…」

 

何をやっているんだと、問い詰めようとした瞬間。

そのカメラの内部から、何かが出てくる。

 

人差し指ほどのサイズの白く薄い金属片の様なもの。

特殊で頑丈な素材なのか、傷一つ付いていなかった。

 

「宜野座さん、もう1つのこのカメラも破壊して貰えますか?」

 

もう1つ、それぞれの家の中に1つずつ設置されていたカメラ。

計2個、それは存在する。

 

「…ッ!」

 

 

もう1つも破壊する。

するとそのカメラからも、全く同じ形状のものが現れる。

 

舞白はその物体の臭いを嗅ぐ。

そして、なにかに気づいたのか、胸ポケットからライターを取り出す。

 

「お前、何でそんなものを持って…」

 

「癖でつい。お兄ちゃんが、使ってたからさ」

 

ふふふっと笑みを浮かべると。

ライターから火が灯される、

 

そのライターを、カメラ内に仕込まれていた白い鉄板を炙るように動かす。

傍から見れば、何をやっているんだと思われてもおかしくない。

 

「私の勘が正しければ…」

 

入念に火を当てていく。

そして暫くして、じわじわとその板から文字のようなものが浮かび上がってきたのだった。

 

"πολίτευμα"

またしてもギリシャ語

「ポリーテヴマ、意味は政治体制とか政治…」

 

 

そしてもう1枚の板も、同じように炙っていく。

 

 

"συναυλιακός χώρος"

「シナヴィアコス ホーロス、音楽ホールや舞台…」

 

 

その内容を確認すれば、直ぐに唐之杜に連絡する。

待たずとも、直ぐに出てくれた唐之杜。

舞白は見つけた証拠の文言を口にする。

 

 

「政治、音楽ホールもしくは舞台、コンサートホール…

なにか近々、演説や講演会など、開かれる予定って分かりますか?」

 

『…オーケー、ちょっと待ってね』

 

カタカタとキーボードを叩く音が聞こえる。

分析室では、他の面々も静かに見守っていた。

 

 

『…あったわ。新宿区の大型コンサートホールで、肯定党と優生党の討論会が予定されてるわ。しかも…今日の12時からよ。』

 

今の時間は、10時30分過ぎ。

 

政治関係の何かが、コンサートホールで行われる。

この板に隠されていた謎かけのようなものだった。

 

 

「志恩さん、直ぐにその討論会、止めることはできますか?」

 

『さすがに無理だと思うわ。それにそこまでの権限はない』

 

唐之杜がそう口にすると、常守も会話に入る。

 

『舞白ちゃん、どういうこと?』

 

その言葉に、舞白は直ぐに目の前の証拠の写真を写し、全員に転送した。

 

 

「室内のカメラはホームセキュリティじゃありません。容疑者たちが意図的に設置したものです。その中に、隠されていたメッセージ。それは間違いなく、今日の討論会を指していると思われます。」

 

狙いは政治家なのか、ただ単に大量の人殺しを行いたいだけなのか、意図は不明。

しかし、そこで何かが起こることは間違いなかった。

 

『直ぐに、現場に行きましょう。

関係者にも、私が何とか説明出来れば…』

 

「はい。

少なくとも、必ず何かが起こるはずです。

…討論会中止が出来なかったとしても、何とかその場で突き止められれば…」

 

 

そしてデバイスを切る。

 

舞白は何とか見つけられた証拠に安堵するも、その反動か、ふらっと体が大きく揺れる。いつもの発作だった。

 

「舞白!」

 

「……ッ…こんな時に……」

 

直ぐに様子に気づいた宜野座が体を支え、舞白は左の首元を押さえ、座り込む。

 

 

「お前、無理をしすぎだ…。まともに休んでもいないだろう?」

 

宜野座も傍らでしゃがみこむと、舞白の手の上から自身の手を添える。

冷や汗が滲み出ている様子に、相当辛いのだろうと察していた。

 

 

「…大丈夫…、いつもの事…」

 

「もっと自分の身を案じろと…」

 

舞白は深呼吸すると、宜野座の手をそっと掴んで体から引き剥がす。

そして、微かに笑みを浮かべると、懐に入れていた痛み止めの錠剤を口に放る。

 

「現場で無茶しないように、見張っててください。

…宜野座さん」

 

ゆっくり支えられながら立ち上がると、証拠品を箱に入れ、棚へと戻す。

痛み止めが効いてきたのか、何とか呼吸も安定していた。

 

 

 

「…ッ……」

 

そして急に、舞白は頭を宜野座の胸元に埋める。

すーーーっと深呼吸をすると、顔をひょこっと上へと向ける。

 

 

「充電完了…、

…ね?大丈夫でしょ?」

 

ほら、行きましょう。と

何らいつもと変わらぬ様子で、スタスタと歩いていく。

 

「…舞白」

 

その様子に、宜野座は何も彼女を止められず、ただ後ろ姿を追いかける。彼女の身に、何も起こらないようにと、無事を願うばかりだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

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