PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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区民ホール 控え室廊下
慌ただしく準備に追われる議員たちを横目に、舞白と雛河は目立たないように様子を伺う。
プログラムを確認すると、まずは優生党の議員の代表2名が登壇。
そしてその後、肯定党の議員の代表2名が同じく登壇。
その後休憩を挟み、いよいよ両党の討論会がスタートする。
さすがに大きな会場を使っている以上、かなり大きな催事だという事に改めて気づく。
「凄い…こんなにも人が出入りするんですね…」
廊下には忙しなく動く人々の姿。勿論それは議員だけではない。
「議員一人に秘書官がついてるし、それにメディア関係者。あとは衣装小物を取り扱うスタイリスト。まるで芸能人みたいな扱い…」
ここに出入りしている関係者名簿の一覧を眺める。
秘書官、スタイリスト、大物議員にはSP。
メディア関係者や食事を手配する役目を担う者まで…
細すぎる名簿を見るだけで、頭が痛くなりそうだと眉間を指で摘む。
「…そういえば、さっき唐之杜分析官が話してた"小宮カリナ"、監視官は興味あったりしますか…?」
「一応、大ファン…です。」
雛河の問いかけに嘘偽りなく答える舞白。
その顔は少し綻んでいた。
「やっぱり……。この前、六合塚さんと話していたのを聞いてて。よかったですね、アイドル活動兼任で政治家として活動するみたいで…」
「正直、私も聞いた時はショックだったけど。歌って踊る姿をまだ見れると思ったら嬉し…」
そんな事を話していると、やけにオーラを放つ人物が控え室から現れる。
間違いなく、小宮カリナ。隣には秘書官の姿もあった。
「…………」
2人はじっと、視線を伏せ通り過ぎるのを待つ。
やはり、ほかの議員とは全く違うオーラを放つ小宮は、政治家としての人気も、そして期待される理由も分かる気がしていた。
そして、舞白はとある疑問を浮かべる。
「…あの秘書官、外国人でしたよね、雛河さん」
「だと思います。…名簿…」
雛河はすぐに検索をかける。
小宮カリナの秘書官の情報を映し出す。
「アン・オワニー秘書官。外国人ですね。」
「小宮カリナって、肯定党所属…。移民反対派なのに、秘書官は外国人なのね。不思議…」
まあ、そんな気にすることでもないか、と呟く。
そして2人は場所を変え、舞台袖へと向かう。
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「…馬鹿馬鹿しい…」
若者で埋まる客席の中に1人、
綺麗な黒髪の青年が演説をする優生党議員に目を向ける。
そして、ふと会場を見回すと、片隅に公安局の人間たちの姿があることに気づく。
『兄さん、裏口の防犯カメラに公安局の護送車を発見。』
耳元のイヤホンから、弟の声が聞こえる。
「早いな、恐らくあの女だ。
俺たちのメッセージに気づいたらしい」
ボソボソと周りに聞こえないように声を出す。
『タイミングは計画通りで大丈夫?』
「あぁ、問題ない。頼んだよ、玲」
黒縁眼鏡をかけた青年、琉は、ふたたび壇上へと視線を戻す。
来るタイミングまで、内心くだらないと思っている演説を聞いていた。
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『こちら三係の如月、とくに外の状況は変わりなく、不審者もいません』
何事もなく進む演説。いよいよ休憩に入ると、次は両党の討論会が始まろうとしていた。
『本当に、テロなんて起こるんですか?狡噛監視官補佐?』
『これからがこの討論会の目玉ですよ?引き続き警戒をお願いします。』
宮舘の相変わらずの小馬鹿にしたような発言に、舞白の冷静な発言。
霜月は何か言ってやろうかと構えていたが、宜野座に止められていた
「……あのクソ監視官……すぐに殴ってやりたいわ」
「落ち着け霜月。放っておけ……ッ……」
突如、誰かが宜野座の体へぶつかる。
傍らへ目をやると、ホールの段差に躓いたらしく、黒髪の青年が宜野座の足元で膝をついていた。
「すみません……躓いてしまって……」
黒縁眼鏡姿の青年は、頭を掻きながら申し訳なさそうに眉を下げる。
黒いTシャツにスキニーデニムを履いた青年、顔立ちを見ると綺麗な顔立ちでオッドアイ。恐らくは移民だろうと、宜野座は直感でそう考えた。
「いいや、こちらこそ邪魔したな……大丈夫か?」
手を差し出すと、その手を掴み、立ち上がる少年。
「大丈夫です。
……へぇ〜、すごいですね、本物の刑事さんだ。」
霜月の着ているジャケットを見て気づいたのだろうか。
ニコニコと少年は嬉しそうにほほ笑む。
「お仕事頑張ってくださいね、刑事さん」
その少年はそう口にすると、ホールの外へ出ていく。
休憩中という事もあり、他にも多数の人達が外へと向かっていた。
「あの子……移民?綺麗な顔……」
「霜月は、あーいうのが好みなのか?」
「やめてください、気持ち悪い、ていうかセクハラ発言ですよ」
ふいっと顔を背ける霜月。
「若年層もそうだが、やけに帰化移民の傍聴者も多いんだな。」
「そりゃ気になるでしょ?特に今回は反対派と賛成派の討論会がメインですから。自分たちの行先も、賛成派の議員たちにかかってるし……」
刹那、アナウンスが流れる。
討論会開始まで残り5分。
続々と席へと人々が戻っていく。
「…………何も無ければいいけど……」
霜月は壁に寄りかかり、壇上を見据えていた。
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控え室や他管理室の確認を終えた舞白と雛河は、舞台の上手側へと移動。下手側には常守と須郷の姿を確認できた。
「……小宮カリナの演説……よかったなぁ……」
舞白は思っていたことがついつい口から盛れると、慌てて手で口を覆う。
その様子をしっかりと見ていた雛河は、思わずクスクスと笑っていた。
「捜査中にこんな事、口にするなんて……
……雛河さん、今のは内緒ですよ……」
「も……勿論ですよ、監視官……」
舞白の意外な姿に、思わず笑ってしまう雛河。
それを不甲斐ないと、小さくため息を漏らす舞白。
そして舞台上では白熱する議員たち。
段々とそれぞれの主張も激しくなると、舞白は舞台袖からその様子を伺う。
「ねぇ、雛河さん。もし雛河さんがここで大量殺人を行うなら、どのような方法を考えますか?しかし、条件はこの会場とは違い、なんでも持ち込めるとします。」
背後の雛河へ視線を向けると、突然の問いかけに驚いた様子の雛河。
しかし、冷静に何かを考えている様子。
「……そうですね……。
収容人数は2000人、しかも1階席のみで出口は4箇所のみ……。密閉空間で簡単には逃げられないこの場所。もし爆発物を使うなら、投げ込むだけで複数の死傷者を出せるかと……。あとは天井を破壊するか……誰かに爆発物を仕掛けて自爆させるか……」
彼はあくまでも"潜在犯"、考えることは犯罪者と同じ。
どれも悲惨な話に、舞白は微かに笑みを浮かべる。
「じゃあ、条件を変えます。今回と同じく、会場内に入るには厳重なスキャナーによる不審物のチェック。勿論、登壇予定の議員たちもです。爆発物は簡単には"持ち込めません"。どうしますか?」
うーーん、と顎に手を当てかなり考え込む様子。
暫くすると雛河はハッとした表情を浮かべ、舞白へ顔を向ける。
「"持ち込めない"。ならばもともと搬入されるものに目をつけます。大きな金属片は見つかる可能性がありますし、爆発物以外……」
「私もそう思ってました。じゃあ爆発物以外で持ち込めそうなもの、パッと見怪しまれないもの……」
「液体とか……蒸発するもの、無臭……」
「……そう、それです。
犯人=爆発物という概念を消すこと。そして搬入される物に目をつければ……」
舞白はそう口にすると、デバイスに触れて
とある人物へ連絡をとる。
『はいはーい、舞白ちゃん。どうかした?』
「志恩さん、調べて欲しいことがあります。良いですか?」
『勿論よ〜、何かしら?』
唐之杜はタバコの煙を吐き切り、灰皿へと押し付ける。
そして両手をキーボードの上へと乗せていた。
「この施設に搬入された物を調べていただきたいんです。警備ドローンでも議員たちの衣装でも、とにかく何でも構いません。」
『オーケーよ。ちょっと待ってね。』
カタカタとデバイス越しにも聞こえてくる、キーボードを叩く音。そし数秒後、舞白と雛河の元にとあるデータが転送される。
『搬入物のリストよ。搬入元の会社や日付もぜーんぶ載ってるわ。議員さんが手にしてるマイクから、外の警備ドローンまで……』
「早くて助かります。志恩さん」
2人はリストを確認していくと、雛河がある事に気づく。
「……会場内の人型警備ドローン、搬入されたのが3日前。でも何故か昨日故障扱いにされて、新しいものが今日の午前中に搬入されてます……
……、しかも違う会社から」
「今日の午前中?だったら、下手したら中身のチェックもされてないんじゃ……」
唐之杜はすぐにその会社を調べるも、その結果に眉を顰める。
『……そんな会社は存在してません。
それに、再搬入されたのは人型警備ドローンじゃない。スパーリングロボットよ』
「スパーリングロボット?
……有り得ない……たかが警備に……」
ただの討論会、議員たちが揃っているとしても、そもそも警備にはスパーリングロボットを使うなんて聞いたことがなかった。
『配置されてる場所は……っと……
その会場の客席の出入口4箇所、計4体。ちょっと臭うわね』
舞台袖から出口を探す。会場の左右に1箇所ずつ、そして上部に2箇所。
近くには宜野座と霜月、そして三係の宮舘達がいるはずだ。
「嫌な予感……、すぐに共有します!
志恩さん、ありがとうございます。」
『何も無ければいいけど……気をつけて。』
切られる通信。
舞白は雛河と視線を合わせ、こくりと頷くと、舞台裏から回り込んで客席へと向かう。
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