PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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客席まで向かう途中、下手で待機していた常守と須郷の元へ向かうと、先程の内容を全て伝える。
「スパーリングロボット……、あの4体が?」
常守は舞台袖の脇から覗き込む。
しかし会場はかなり広い為、上手側の出入口の警備員しか確認出来ない。
普通の警備ロボットと変わらない様子で、その場で静かに立ち尽くしていた。
「はい。それでドミネーターを使おうとしたんですけど。」
舞白はドミネーターに触れ、眉を顰める。
「常守監視官、須郷執行官。ドミネーターに触れて、リンクしてみてください」
「……どういうこと……」
常守と須郷は言われるがまま、ドミネーターを取り出す。
そしていつもの音声が流れ始める。
『ユーザー認証 常守朱監視官――
使用許諾確認 ―――』
使用許諾を確認された後、エラー音が聞こえるとドミネーターから青い光が失われていく。
『通信エラー システムとのリンクを構築できません』
ドミネーターの台詞に、2人は目を見開く。
「ドミネーターが使えない……、いつの間にオフラインに」
「こちらも使えません、監視官」
いつからか分からないが、妨害電波が何かが張り巡らされているのか、ドミネーターの支援が受けられなくなっていた。
この公式の場で、公にドミネーターを出すと混乱を招いてしまう可能性が高いと、使うのを拒んでいた為か、誰も気づかなかった。
「最悪、あの警備員に扮したスパーリングロボット。デコンポーザーで壊せるとも考えたのですが、まるでそれを見越していたかのように使えなくなっています……」
「僕と、狡噛監視官も試しましたが……同じでした……」
きっかけは舞台袖からドミネーターを取り出した時。
その時にオフラインになっていると舞白と雛河は気づいたのだった。
「……恐らく、相手方はハッキング能力に長けています。そして公安局の事を知り尽くしている可能性もあります。下手に動く訳にもいかないと、指揮官の常守監視官と合流を。」
下手に動けば、もしかするとこのホール内の人間全てに危険が及ぶかもしれない。最悪の場合、死人も考えられる。
「あの4体の中に、何かが隠されてる。舞白ちゃんはそう考えてるのね?」
常守はドミネーターをしまい、向かいの舞白へと視線を送る。
今までの舞白の捜査時の予想は外れたことは無い。今回もこの内容が当たっていれば、とんでもない事態に襲われると考える。
「恐らくそれしか方法は無いかと。雛河執行官と2人で控え室以外も調べたのですが、そこには何もありませんでしたし。そうなると、この客席、そして壇上……、そうとしか考えられません。」
ドミネーターも使えなければ簡易スキャナーも使えない。スパーリングロボットは4体。しかも配置されているのは客席内の出入口。そして、中に何が隠されているのか、それさえも分からない。
「この討論会が終わる予定時刻まで残り40分。その間に、あの4体が何かしら動く可能性が高い。それまでに、この妨害電波を何とか排除するのが得策ね」
常守は全員に連絡を図る。
『こちら常守。皆さん聞いてください。特に客席にいる霜月チームと宮舘チームはそのまま、自然に、目立たず、動かないで聞いてください。』
常守の言葉に該当のチームのメンバーたちは眉を顰める。
「……何……どういう事よ……」
霜月は命令の通り、客席の後ろの壁に背をつけたまま、自然に舞台上を眺める。少し離れた場所の宜野座も同じく指示に従う。
『現在、このホール内、もしくは施設内全体に妨害電波が張られています。シビュラシステムとのリンクができません。六合塚さん、そして如月チームはすぐにドミネーターが同期できるか確認を。外の状況を教えてください。』
六合塚は外の車両内でドミネーターに触れる。
『こちら六合塚。外は問題なさそうです。使用できます。』
『こちら如月。ホール外問題なし、執行官たちも全員使用可能。』
2チームの話を聞く限り、恐らくこの客席内のみが使用できない状況だった。
「正に、袋のネズミですね」
舞白の隣で須郷が呟く。ドミネーターは鉄くず状態、無闇矢鱈に動けない状況に眉を顰めていた。
『討論会が終わるまで、残り40分ほどです。その間に、恐らく何か動きがあると思います。』
ふと舞台上に目を向けると、討論会もさらに盛り上がりを見せ、この状態だともう止めることはできないと考える。
逆に止めたとしても、相手に怪しまれる可能性が高かった。
『唐之杜さん、六合塚さん。お2人で、この妨害電波の遮断をお願いします。内部からは雛河さんにもダンゴムシを経由して動いてもらいます。』
『はいはーい、任せて』
『了解よ』
すぐに2人は妨害電波を取り除くために行動に出る。
雛河も同じく、この施設の制御部へ行こうとその場を離れていく。
『そして、残りのメンバーは変わらず警戒を。
私と須郷さん、狡噛さんは舞台裏から。客席のメンバーはできるだけ自然に、各4体の様子を警戒してください。』
常守の作戦内容に眉を顰める三係のメンバー達。
作戦の主導権は一係に担われているが、どことなく納得いかないような様子だった。
「フン……
万が一、スパーリングロボが動いたとしても、片付ければ造作もない……」
宮舘は向かいのスパーリングロボに目を向ける。
共に付き添っていた2人の執行官も、まるで従う気が無い様子だった。
『では、よろしくお願いします。
何かあればその都度報告をお願いします。』
常守はそのように口にすると通信を切る。
「客席組が肝になりそうですね?
……私も客席に行こうと思ったんですけど、やっぱり辞めておきます。目立っちゃうと良くないし……」
つんつんと髪の毛に触れると小さく笑みを浮かべる舞白。
この白髪、銀髪はやけに暗めの空間内だと目立ってしまう。
そんな事を話していると、裏に向かったはずの雛河が慌てた様子で戻ってきた。
「はぁ……はぁ……大変、です……」
「雛河君?どうしたの?」
常守が心配そうに駆け寄ると、雛河は顔を上げる。
「……控え室、外の通路までの、扉。全部ロックされてます。入口何ヶ所もあるから、全部調べたけど……、どこからも出られない……」
舞白はその言葉に慌てた様子で裏口の扉に触れる。
扉は開かず、全てロック状態。
「まずい……これじゃ裏口からも出られない」
舞白はデバイスを駆使してロック解除を試みようとするも意味をなさなかった。
この会場内から一切出ることが出来ない状況。しかも運悪く、目玉の討論会のプログラムという事もあり、控え室にいた人物たちはほぼ全員この会場に身を置いていた。討論会不参加の小宮カリナでさえ、舞台裏で討論を聞いているような状況。
「この施設の関係者、要人、全てが今この場所に閉じ込められてる。
……早く動かないとまずいかもしれないわね。」
常守は再度唐之杜に連絡をとる。
「志恩さん、解除までにどれくらいかかりそうですか?」
いつもなら意気揚々と返答があるはずが、なかなか返ってこない。カタカタとキーボードを叩く音だけが聞こえてくる。
『かなり苦戦しそうよ。翔君がダンゴムシを撒いてくれたお陰で少しはマシなんだけど。お相手さん、かなりの手練よ。間違いなく今まで出会ってきた中でダントツ。』
「こうなれば……もう強硬手……」
舞白が口にしようとした瞬間、会場から悲鳴が響き渡る。
同時に舞白は舞台袖から顔を覗かせると、一体のスパーリングロボットが壇上に向かって走り向かう姿が目につく。
「!?
須郷さん!2人で止めに!!」
「はい!」
須郷と共に舞台へと飛び出す。
見た目はそのまま、普通の人間の顔をした警備員風のスパーリングロボット。表情が無いその姿は、やけに恐怖心を彷彿させた。
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「宮舘監視官、そんな悠長に待ってられないですよ。だったら、あの4体、一気に俺たちで倒して、一係をギャフンと言わせましょうよ?」
三係の男性執行官が両手を組みながら、へらへらとした表情でスパーリングロボへ目を向ける。
「……いや、下手には動くな。
もしこれで何か起これば、全部一係の責任にすればいい。俺たちはだまって見ていよう。」
宮舘は男を静止するように首を振る。
「でも、常守監視官の話が正しければ
あの4体を最悪会場内から叩き出して、デコンポーザーで処理すればいい話ですよね?そもそも、あのスパーリングロボ、出入口の前に立ってるし、1発蹴りでも入れて吹き飛ばせば?」
もう1人の女性執行官も、フランクに話し始める。
3人は薄暗闇の中で、やけに話し込むと、視線をちょこちょことスパーリングロボットに向けていた。
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「……おい、あいつら何やってる……」
その様子をかなり遠くから見ていた宜野座。
常守の指示で、目立つなと言われていたはずだと眉を顰める。
宜野座は微かに首を動かし、霜月へ目を向ける。
霜月も冷静を装いながらも、彼らの行動を気にしていたようだった。
「((……あのバカ共……、指示を聞いてない訳……?))」
グッと唇を噛み締める霜月。
すると、霜月から15m程先の下手側の出入口に立っていたスパーリングロボットの首が微かに動き出す。
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カタカタとキーボードを操作する音。
そして、なにかに気づくと、その手を止める。
「あらら〜……バレちゃったかな……
……にしても、何?この3人組。1人は監視官っぽいけど……」
目の前のPCに映るのはスパーリングロボットからの視界カメラ。
ハッキリとこちらを見ている様子で、何やら揉めていた。
「もうそろそろ頃合かな……」
カタカタと再び手を動かすと、会場の外のロビーで待機しているであろう兄に連絡を取る。
「琉兄さん、ちょっと予想外の事態発生。計画より、早く動いてもいいかな?」
イヤホンマイクに手を添え、椅子をクルクルと回しながら笑みを浮かべる。まさか、スパーリングロボットに気づかれるなんて、考えていなかった。
『こっちはいつでも大丈夫だ。
……どうした?問題でもあったのか?』
「多分、ヤツら、スパーリングロボットの存在に気づいてるよ。たぶんだけど"アレ"にはまだ気づいてないみたいだどね……」
"アレ"に気づいていないと聞いた琉は、クスクスと笑みを浮かべていた。
『さすがに、"アレ"には気づかないだろう?ヒントは残してるが、それさえも分かるかどうか……』
ロビーの人混みの中で携帯を片手に、歩き続ける琉。
遠く離れた客席への出入口を見れば、その笑みは不気味なものへと変わっていく。
「まあ、今日ここでやるべき事は達成できそうだし。有能な刑事課の一係さんを殺しちゃうのは残念だけど、今後の障害になるくらいなら、思い知って殺っちゃおう♪」
玲は椅子の回転を止め、キーボードのエンターキーを押す。
「さーてと……、4名のスパーリングロボットの皆さん。……じゃなくて、4名の"狡噛舞白"さん。派手に暴れてね?」
意味深な言葉を口にすると、画面のスパーリングロボットの視界カメラ映像が一気に舞台の方面へと向けられていた。
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