PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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公安局 51F 展望テラス
渋滞にハマったものの、余裕もって自宅を出た為、結局いつもより早く職場に着いた舞白。カフェオレの入った紙コップを手に持ち、ベンチへと腰かける。
デバイスを操作し、厚生省推奨のニュースに再び目を向ける。トップに上がっていた"あの記事"。あの2人がおそらくは開設したであろう怪しいサイトへと足を踏み入れる。
匿名掲示板には、更に書き込みは増え続けており、中身はかなり過激なものが多かった。今のシステム社会への否定的な書き込みばかり。シビュラシステム、サイコパス、色相、政治家、移民問題……ジャンルを上げれば更に様々な内容が並べられていた。
神格化された危険な2人組。たった数時間で、ヒーローのように崇め奉られる危険人物。彼らが書き込んでいる内容は、過激でありながら神秘的、謎の2人組、カストルとポルックスという肩書きが余計にそれを際立たせているようだった。
「……簡単に人を殺めることの出来る人物。色相も濁らない、そもそもスキャナにも、IDも何もかもに引っかからない透明人間。」
容易に爆発物を作り、VXガスのような危険薬物をも使用出来る。そして高度なハッキング能力。昨日のような大規模な施設のシステムを、簡単に操ることも出来る、そしてどこで手に入れたのか、コピーされたスパーリングロボットのデータ……
「((さすがに、昨日今日で次の犯行を起こすのはなかなか難しいはず。派手に動けば尻尾も掴みやすくなる。……わざわざ、あんな動画を送ってくるのであれば、すぐにプルトニウムを使った事件は起こさない気がする……))」
彼らのあの様子から察し、お恐らく刑事課を弄ぶような行動は続くだろう。まるで弄ぶかのように、ゲームを楽しむかのように……
「まずはあの2人の情報を少しでも見つけ出さないと……、日本にどうやって入り込んだのか……、薬品は製造?それとも持ち込んだのか……。」
掲示板に目を向けながら、ブツブツと呟く舞白。背後からとある人物が近寄っているものの気づく様子はない。
「舞白。」
トントンと肩を叩かれ、ビクッと体を揺らせば背後に目を向ける。
同じく片手にコーヒーの紙コップを手に持った宜野座が立っていた。
「おはようございます、宜野座さん」
サッとデバイスの画面を閉じれば、背後の人物に笑みを向ける。宜野座は隣へと腰を下ろすと、コーヒーを口にしていた。
「……例の掲示板、見たのか?」
「うん。何かあの2人に繋がるものが無いかなって。」
舞白もカフェオレを口に含むと、空を仰ぐように首を後ろに倒す。昨日の事件の刺激が強すぎてなかなか疲れも取れず、悩みは増えていくばかり。
その様子を誰よりも分かっていたのは宜野座だった。
「眠れてないんだろう、その様子だと。」
「…なかなか眠れなくて。お兄ちゃんと夜な夜な喋りこんじゃって、余計にね?」
「体調は?」
「元気だよ、大丈夫。」
うーーーん、と体を伸ばし、視線を正面に戻す。朝の涼しい風が舞白の白髪を揺らせば、気持ちよさそうに目を閉じる。
「あと2ヶ月。どうにか私が公安局にいる間に、あの2人を逮捕したいな。」
「……もう8月末か、早いな」
「ね。私がここに来て、もう1ヶ月が経つ。毎日刺激が強すぎて、一日一日があっという間なんだよね」
グビっとカフェオレを飲み干すと、空になった紙コップをゴミ箱へと投げ入れる。舞白の頭の中は、あの犯人のことで頭がいっぱいだった。昨日のように、切羽詰まった状況まで苦しめられたのは初めてだった。1歩でも誤った行動をしていれば、間違いなく死んでいた。
シビュラシステムを、この国を忌み嫌う犯人達。舞白自身も、別にこの国の全てが好きな訳では無い。一度はシステムに見放されたようなもの。しかし、自分が置かれているこの立場を、シビュラが導いたであろうこの状況を、成せるべき事があるからこそここに居る。それを自分で必死に言い聞かせていた。
「さてと、行きましょうか、宜野座さん」
「あぁ、監視官」
この言い回しもようやく慣れてきた。2人は目を合わせ微かに笑みを向ければ、オフィスへと向かう。
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舞白、宜野座、六合塚
朝からの勤務はこの3人。常守と霜月は昨日から夜通し調査をしていたらしい。その結果が引き継ぎで残されていた。
宜野座と六合塚は舞白のデスクに集まり、舞白は引き継ぎ文面を読み上げる。
「検出されたVXガスは、おそらく国内では製造されていない"持ち込まれた物"。ブローチは日本製、購入経路は不明……」
引き継ぎ内容に目を通す3人。
「あの動画の発信元、細かく逆探知は出来なかったものの、ある程度場所は絞れたみたいね。志恩からその解析結果も届いてるわ」
犯人が潜伏してるであろう場所、都内のマップがデスクトップに表示されると、
「……江東区、港区、渋谷区、目黒区、品川区……。都内の南側に潜伏してる可能性……」
どうやらダミーの電波網も張られているらしく、確実な場所までは特定に至っていない。
「スキャナにも引っかからない。もしくは全くの別人のIDを作って、何も怪しまれずに過ごしているのか……」
「そんな事が可能なんですか?六合塚さん」
「……普通は有り得ない。でも、あんな高度な技を軽々と使ってくる相手なら、不可能なことを簡単に可能にできるはず。デタラメなIDで、のうのうとその辺を歩いてるかもしれない。」
3人は他の情報にも目を向けるも、確証づけるようなものは見つからず、ため息を零す。
「次の一手を打たれる前に、少しでも私達で犯人の尻尾を掴まないと。恐らく彼らは、また何かを仕掛けてくる可能性が高い。」
舞白は他の情報にも目を向けつつ、常守達が集めてくれた情報を無駄にはできないと眉を顰める。
「六合塚さんは、唐之杜さんが集めてくれた位置情報の解析をさらに進めてください。分析は私と宜野座さんは不得意ですから。」
「了解よ」
「宜野座さんはこの情報の……」
指示を出す瞬間、舞白のデバイスが鳴り始める。相手は常守。非番なのにと不思議に思うと応答する。
「お疲れ様ですです。狡噛……」
『舞白ちゃん、今すぐテレビをつけて。 』
「…テレビ……?」
宜野座はすぐにオフィスのスクリーンにテレビ画面を映す
『みなさん、おはようございま〜す!』
仮面を被った少年2人の姿
『俺たちは…
カストルとポルックスでーす』
昨日、あのホールで流された動画とは違う。新たな動画、それに……
「録画でも何でもない。コイツら、テレビ局を乗っ取ってる……」
宜野座はありとあらゆるチャンネルに変えていくも、全ての映像が彼らの動画になっていることに気づく。
『刑事さん、俺たちと勝負をしましょう』
カストルがそう口にすれば、突如舞白のデバイスにキャッチが入る。
"NO Data" "NO Image" 予想がつく、恐らく相手はこの2人。
「常守監視官、彼らから電話が入りました。…何故か私宛に……」
『どういうこと……』
「理由は分かりません。とにかく、電話に出ます」
舞白はそのキャッチに応えるため、常守との通話を遮断すると、彼らからの電話に応答する。
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クラス中の生徒たちが1人の少年に注目する。
嫌悪、陰険、怖気……、はたまた関心、憧憬、好奇。様々な視線を浴びる少年は小さくため息を漏らす。
「今日からこのクラスの一員になる、帰化移民の"琉・セルリアン・サラシス"君だ。帰化移民の受け入れが進む中、麻布高校でもついにその政策を受け入れることになってね。皆、仲良くな。とは言っても、あと少しで夏休みなんだがな……」
オッドアイの瞳は神秘的で、日本人にはない雰囲気を持つ。整った容姿に、クラス中の女の子たちが騒ぎ立てていた。
「……琉・セルリアン・サラシス。出身はロシア。よろしくお願いします」
淡々と、口から放たれる冷徹な声色。しかし、そのクールな空気が良かったのか、コソコソと好奇の目を向けてくる女子生徒達。それとは逆に、悔しそうな表情を浮かべる男子生徒。
琉・セルリアン・サラシス、もちろん偽名。ロシア人だと偽れる程の、容姿が役に立った。
彼らは、偽のIDを使い、日本の高校へと通っていた。同じ高校だとさすがに目立ちすぎてしまう為、弟は違う学校へ
それは今年の六月の話だった。
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「玲・コバルト・ルラキス で〜す!みんな仲良くしてね」
もともと明るいキャラクターの玲も、とくに難なく怪しまれることも無く高校へ。
兄と同じく様々な視線を向けられるも慣れっこだった。
青い瞳に吸い込まれるように、全員が見入っていた。
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「犯罪係数とやらは0、色相もGhost White。シビュラシステムは、どうやら俺たちを迎えてくたみたいだな、玲」
「んー、まあ、偽のIDだし。それもデタラメだけどね、多分」
セルリアン サラシス
コバルト ルラキス
それぞれの意味は、"海のような青さ"
「在り来りすぎる名前だな」
「え〜文句?いいじゃん別に、偽名だし。ID作ったのは僕だよ?文句言わない!」
デバイスのID情報に目を移す。
設定上、ロシアからの帰化移民としてこの国へと入国。母はロシア人、父は欧米の血が混じったロシア人として。幸いにも顔つきは日本人離れしていた為か怪しまれることもないだろう。
欧米人の母の血を濃く受け継いだらしい。
「兄さんと僕の力があれば、この国を壊すことなんて簡単だよ。"父さん"の為にも、頑張らないとね」
「全てはゼウスの為にだ。俺たちを救ってくれた挙句、復讐の機会も与えてくれた……」
「俺たちで、moG作戦を成功させる」
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