PSYCHO-PASS -confrontation of orphen-   作:鈴夢

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死のボーダーライン

 

 

・・・・・・・・

 

 

『こちらシェパード2、

ハウンド2、3と共に南側の廃棄された高層ビルに侵入成功、

そっちは?』

 

シェパード2、霜月。

対象が潜んでいると思われるビルに、侵入したとの報告が。

霜月たちは、あくまでも援護。

陽動は舞白達の役割。

 

「こちらシェパード3。こちらは現在、ビルの7階にいるわ。隣の建物の屋根から問題なく侵入成功よ。

そして、ハウンド4が対象者の人質のものと思われる、破られた衣服を発見。衣服には血痕が大量についてる…」

 

須郷が見つけた白いTシャツ。

ベッタリと赤い血液が付着しており、微かに建物内の床に、ぽたぽたと滴った跡。

その跡は、上層階へと続く階段へと続いていた。

 

「対象は恐らく、20階の屋上に向かってる。

ハウンド1、ハウンド4と共に上へ向かいます」

 

『オーケー、気をつけて。

私たちは下層階で待機、保護対象者の確保にもすぐ行けるように、ハウンド2を15階で待機させるわ

…万が一、地上に逃走した場合は、私とハウンド3で追いかける』

 

「逃走させる前に、捕まえてみせる。

…了解」

 

通話を切ると、共に行動している2人へ視線を向ける。

須郷が血液を調べると、間違いなく水瀬の血液だと判明する。

 

「量からして、かなりの深手かと。

血痕の跡を見る限り、背面にナイフで縦に切られたか…」

 

「…恋人に怪我を負わせるなんて…」

 

よほど気が狂っているのだろう。

最愛の相手を切りつけるまで、男は堕ちているらしい。

 

「舞白、あんまり考え込むなよ。

連日こんな事件ばかりじゃ、お前の色相も心配だ」

 

苦しそうに眉を顰める舞白の表情を見兼ねた宜野座。

 

だが、舞白の色相は濁るなんてことはありえない。

心配はない、と宜野座に笑みを向ける。

 

「大丈夫大丈夫。私が濁りにくいのは1番分かってるでしょう?

宜野座さん」

 

そう口にすると、舞白は先頭を切って階段を登っていく。

寂れたビルに乾いた足音が響き渡る。

気味が悪いほど物音は聞こえず、ザーザーと激しい雨音しか聞こえなかった。

 

血痕は途切れることなく、上へ上へと、予想通り上層階へと続いていた。

 

20階にたどり着いた時、舞白は改めてドミネーターを握り直す。

屋上へ続く階段には、湿った血液と微かに足跡が残されていた。

 

手首のデバイスを霜月をはじめ、

六合塚、雛河へも繋ぐ

 

「こちら、シェパード3、今から屋上へ突入。」

 

『ハウンド2、15階にて待機してるわ』

 

『ハ…ハウンド3…了解』

 

六合塚、雛河も所定の位置で構える。

 

そして舞白は、宜野座と須郷へ視線を送ると

3人は同時に頷く。

 

刹那、舞白を先頭に

錆びれた階段を踏み込み、駆け上がっていく。

 

現れる両開き扉。

ドアノブは血に染まり、触れた瞬間ぬるりと気味の悪い感触。

思いっきり扉を強く引き、屋上へと足を踏み入れる。

 

 

「……ッ…」

 

踏み入れた瞬間、ドミネーターを構える舞白。

左右背後から、宜野座と須郷が現れ、舞白の左右前へと立つ。

 

ビルの平面積そのままが屋上になっている為、異常に広い空間となっていた。

元々、人が立ち入るような場所では無いのか、屋上には柵や手すりはなく、複数のパイプや排気口などで埋まっていた。

 

雨で視界が悪い中、必死に目を細めて辺りを見回す。

屋上へと続いていた血痕は、雨のせいで消えていた。

 

舞白は深呼吸をすると、男に呼びかけるように声を上げる。

 

 

「公安局刑事課です!

深山 隼人、すぐに人質を解放し、投降しなさい!」

 

しかし、反応は無い。

 

「……おかしいですね。

間違いなく血痕はこの先…」

 

須郷がドミネーターを降ろし、舞白に目を向けた瞬間。

背後の高さのある場所から、何かが飛び込んでくる影が見える。

 

 

「!?

監視官!!」

 

「!?」

 

須郷が舞白の腕を引き、その影の攻撃をなんとか免れる。

荒い呼吸をする大柄な男が、姿を現したのだ。

しかし、人質の姿はない。

 

無闇に動く訳にも行かず、3人は男の様子を伺う。

そして舞白はそっと声をかけた。

 

「深山隼人…、投降しなさい。」

 

「フーー…フー……ッ…」

 

かなり刃渡りの長い包丁のようなものを手にし、3人を睨みつけながら、肩を上下させる。

雛河が言っていた通り、何か興奮剤を摂取しているのか、目の様子がおかしいと感じる。

 

舞白はそのままドミネーターを向ける。

 

『犯罪係数 オーバー303、執行対象です。

セーフティを解除します。

執行モード、リーサル・エリミネーター。

慎重に照準を定め、対象を排除して下さい。』

 

「…303…」

 

手元で変形するドミネーター。

それを目にした深山は、再び激しく暴れ始める。

 

「ぐっ…、やめろおおおおおおおおおおお!!!」

 

舞白に完全に狙いを定める男。

咄嗟に前に立つ宜野座に、思いっきり体当たりをし交戦する。

 

「須郷さんは人質の捜索を!!

深山は私と宜野座さんで止めます!」

 

「了解!」

 

すばやく指示を出すと、今度は霜月達にも指示を出す。

 

「人質の安否はまだ不明!

すぐに救護ができるように、1番近い廃棄区画外へのルートの確保と、その場所に、救護ドローンの手配を!」

 

『了解、

お願いだから無茶しないでよ、舞白』

 

プツッと通信が途切れると、持っていたドミネーターを腰に戻す。

宜野座と交戦している深山へ、舞白も飛び込む。

 

「ッ……舞白、こいつは興奮状態で歯が立たん!

恐らく痛覚遮断ドラッグも使用してる」

 

雨が降りしきる中、よく見ると深山も傷を負っている様子だった。

腹部を刺されたような跡、自分で傷つけたのか、はたまた水瀬によるものなのか…

 

刹那、様子を察知していた霜月から連絡が入る

 

『何をしてるの!早く執行しなさい!』

 

犯罪係数303.エリミネーター。

舞白はどうしても、299まで数値を落としたかった。

 

「もう少し時間をちょうだい?

…必ず……執行するから」

 

『ちょっ…舞白!!』

 

一方的に通信を遮断すると、刃物を握りしめ、唸り声を上げる深山を見据え、宜野座に合図を送る。

 

「危険だ、お前一人でどうにかなる相手じゃ…」

 

「大丈夫、私に任せて。」

 

その言葉を発すると同時に、舞白は相手と交戦する。

体格差もあり、相手は刃物を振り回しながら格闘技を繰り出す。

興奮剤もあるせいか、通常よりも力も強く、異常にスピードもある動きに苦戦していた。

 

鋭く、強い拳が舞白の顔の前ギリギリを掠める。

久しぶりの強敵だった。

 

「((…雨で足元も滑る…

……せめて人質の確保が出来れば…))」

 

そんなことを考えながらも、隙を着いて相手の手元に蹴り技を落とせば、刃物は地面を転がっていく。

横から宜野座の拳を喰らうと、深山は体をよろけさせ、地面に倒れる。

 

「…ッ…ぐぅ……」

 

雨に濡れるコンクリートの地面に、そのまま押さえつけ、男は苦しそうに顔を歪める。

 

 

「…はぁ…はぁ…

…水瀬香澄はどこなの!?」

 

2人がかりで男の体を抑え込む。

男は抵抗していたが、暫くすると観念したのか、落ち着き始めた。

 

「…かすみ……ッ…香澄は…」

 

「……この様子だと、埒が明かないな」

 

体を観察すると、腕には注射痕の痕。

複数の薬物にしてやられたのか、瞳孔の様子もおかしい。

 

刹那、須郷から通信が入る。

 

 

 

『…見つけました、水瀬香澄…』

 

そう言い放つ須郷。

しかし、声色の様子が、良くない状況なのだろうと感じさせる。

 

「須郷さん、すぐに確保…」

 

『いえ、こちらもすぐには確保は厳しいかと…』

 

 

須郷の目の前に、確かに水瀬香澄の姿が。

背中に大きな切り傷、下着姿の彼女の様子も、また異常だった。

 

舞白達から70mほど離れた、屋上の隅に佇む彼女。

少しでもバランスを崩れば恐らく落下は免れない。

 

 

『犯罪係数 オーバー298

執行対象です―――』

 

須郷がドミネーターを向けると、とんでもない数値を叩き出していた。

しかし、運良くエリミネーターまでは作動しない。

 

ドミネーターを放つことももちろん可能だが、

彼女の手にも同じくナイフが、自らの首に刃を突きつけ、震えた様子で須郷を見据えていた。

 

撃てば恐らく落下する、さすがに距離的に

掴むこともできないだろう。

須郷は相手と対峙していた。

 

 

『狡噛監視官!どうしますか?』

 

舞白は一旦を把握すれば、ふと深山を押さえていた力を緩める。

刹那、それを待っていたかと言わんばかりに、

再び深山が暴れ出す。

 

「!?」

 

不意をつかれた舞白は、屋上の際へと思いっきり突き飛ばされる。

そして、バランスを崩し、屋上から落下しかけてしまう。

 

 

「舞白!!」

 

宜野座は慌てて深山の体から手を離せば、突き飛ばされた舞白の元へ駆け抜ける。

舞白の姿が屋上から消えた、と思いきや

ギリギリ両手で屋上の縁を掴んでいた。

 

 

「っ…宜野座さん!私は大丈夫です!!

深山を……」

 

「馬鹿か!お前がここから落ちたら死ぬぞ!」

 

難なく宜野座に体を引き上げられる。

舞白は大丈夫だったものの、深山の姿が無くなっていた。

恐らく、水瀬の元へと向かっただろう。

 

宜野座は即、須郷へと連絡する。

 

「須郷!深山がそちらへ向かった可能性が高い、

俺達も直ぐに向かう!」

 

しかし、須郷から折り返しが来ない

嫌な予感しかしなかった。

 

「…不意をつかれるなんて、

とにかく、須郷さんの所へ行かないと!」

 

「あぁ、急ぐぞ」

 

雨が酷く降り頻る中、2人は須郷の元へと駆け抜ける。

 

 

 

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