PSYCHO-PASS -confrontation of orphen-   作:鈴夢

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元軍人と元流浪人

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

『マシロさん。あなたに、プレゼントを贈りますね?"良い便り"を俺たちから……』

 

 

カストルのあの言葉が頭に残る。しかし、今の今まで彼らから何も連絡は来ない。

あれから6時間以上が過ぎていた。

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

48F トレーニングルーム―――

勤務を終えた人物2人が激しく競り合う

 

 

 

「監視官!貰いますよ!!」

 

「ちょっ、えっ、あっ!!」

 

隙をつかれた舞白は、容赦なく須郷に足を取られ、その場にねじ伏せられてしまう。須郷の拳が顔前スレスレで止まると、2人は激しい息遣いを落ち着かせるように息を吐く。

 

現在3勝3敗。いつもより調子の良い須郷。

 

そっと須郷の拳が離れると、須郷は手を伸ばし、グイッと舞白を引き上げる。一勝した喜びに、どことなく晴れ晴れとしている様子の須郷に、舞白は思わず笑みを零す。

 

 

「……須郷さんって……面白いですよね?」

 

「お……面白いですか?」

 

2人は傍らの椅子に置いている、タオルとスポーツドリンクに手を伸ばせば、汗を拭き、休息をとる。長い白髪はポニーテールに結われ、セパレートのトレーニングウェアからは、抜群に割れた腹筋が覗いていた。

 

「すみません、なんか軽々しく面白いなんて言っちゃって……」

 

「そんな!監視官が気になさることじゃないですよ。むしろ、そのように思われていたのであれば、それはそれで光栄です。

……自分はどちらかと言うと堅物だと思われがちなので……」

 

真っ直ぐと背筋を伸ばし、キリッと舞白を見据える姿。その佇まいを見るだけで、彼の人柄が伺えるなぁ、と考えていた。

元軍人、エースとして活躍していたと、以前花城から聞いたことがあった。軍事的な話にも詳しく、分け隔てなくどんな事も話してくれる存在に、舞白は密かに、そんな相手を尊敬していた。

 

そして、花城曰く。行動課に引き抜きたい人物であるということも聞かされていた。どうやら断られたらしいが……。

 

理由は分からないものの、彼は彼で、この場所で成す事があるのだろう。舞白が聞くことではないと、特に何も触れるつもりは無かった。

 

 

「…………」

 

じっと、須郷の視線を感じる。

舞白はパッと目を向ければ、何か聞きたがっている様子を汲み取ると、首を傾げる。

 

「須郷さん、何か……私に聞きたいこと、ありますか?」

 

「……なんで分かったんですか?」

 

「いや……何となく。須郷さん、考え込む時とか、何かを口にする時の前、その時の視線で分かるんですよ」

 

須郷の行動を読み取る限り。間違いなく当たっているだろう。須郷は小さく笑みを零せば、深く息を吐き、舞白にとある事を問いかける。

 

 

「監視官は、なぜ外務省に入局しようと決めたんですか?」

 

まさか、須郷からそれを問われる日が来るなんて。この2ヶ月間、おそらくずっと聞き出したかったことなんだろう。相手の様子を見ればハッキリと分かっていた。

 

「……うーん……そうですね……

…言ってしまえば、自分を護るために入局を決めました。変ですよね?」

 

シビュラから自分の身を守るために、なんて言えるはずもない。そして成すべきことを成す、ただそれだけだった。

 

「護る……ですか?」

 

「まあ、色々あったんですけど。兄と一緒に世界を旅して、その背中を見てきて、そして最後には1人で自分の道を切り開いて。……死にかけたところを皆さんに助けていただいて…」

 

汗を拭いていたタオルを首にかけ、傍らのドリンクに目を向ける。

 

「1人で突っ走って、世のため人のためって、とにかく駆け抜けました。そして、自分の体は傷ついていくばかりで、いつの間にか自分のことはすっぽかしてたんですよ、私」

 

横腹の痛々しい刺傷の痕。親友から受けた傷。胸には焼印、左脚にも痛々しい傷跡……

数々の任務で、須郷もそれを目にしたことはあったが、凄まじい傷跡に慄いた記憶もあった。

 

「ウイグル自治区で、皆さんに救われて、もっと自分の人生にも向き合ってみようかなって思ったんです。自分が思ってるより、色んな人に心配かけてたんだな〜とか……。だからこそ、日本に戻って、私の能力を買ってくれるって花城さんが現れて……恩返しもしたいと思ったし。」

 

なかなか上手く言葉が並べられない舞白は、恥ずかしそうに須郷へと視線を戻す。

 

「自分を護るために、向き合うために。そして、自分の能力で、成すべきを成す……。ですかね?すみません……なんだか上手く話せなくて……」

 

「いえ!そんな事ないです。自分こそ、いきなりこんなことを聞いて申し訳ないです」

 

「……ていうか、須郷さん、そんなにかしこまらないでくださいよ?もっと私のことは気楽に……というか……。こんな小娘に……」

 

須郷はその言葉に首を振るうと、舞白の気遣いに小さく口元を緩ませる。

 

 

「これでも、監視官に気楽に関わらせてもらってるつもりですよ。こうやって、たまにトレーニングに付き合ってくださったり、任務中でもフランクに接して、様々な会話も交えて。頭脳明晰・文武両道、それをひけらかさず、常に謙虚な姿勢で……」

 

「……褒めすぎですよ、それに大して……」

 

 

言葉を続けようとした瞬間、舞白のデバイスから聞きなれないエラー音が鳴り響く。

 

画面には"Alert"の文字。

どうやら何かの警告を示していた。

 

 

「監視官、それは……」

 

「……私の自宅に何者かが侵入してます。リビングの窓ガラスが破られたみたいで……」

 

「もしかして、彼らでは!?」

 

須郷はバッとベンチから立ち上がる。舞白も同じく立ち上がるも、そこまで焦っている様子ではなかった。

 

「もしかしたら、これが彼らの言うメッセージかもしれませんね?自宅に戻ってみます。」

 

「!?1人でですか?危険すぎます!

……だったら俺が……」

 

「大丈夫ですよ?私の勘が正しければ危険物はないと思います。勘ですけどね?」

 

デバイスの音声をオフにすると、ぐーっと体を伸ばす。そして、出入口へと向かえば、須郷へと振り向く。

 

 

「何かあれば必ず連絡しますよ。大丈夫です。またトレーニング付き合ってくださいね?次は絶対負けません!」

 

「監視官!」

 

閉められる扉。須郷はそこまで強く言い放つことは出来ず、その場に立ち尽くしていた。

 

 

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