PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
カルマ
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46F 分析室 ラボ―――
―――9月5日 月食まで残り3日
昨晩、舞白の部屋で見つかった彼らからのメッセージ。
花菖蒲の花束に、暗号の記された英字新聞、暗号化されたメモ。それらを分析室のテーブルに並べ、全員で取り囲む。
「じゃあ、舞白ちゃん」
「はい」
常守は横の舞白に声をかけると、舞白は分析室のモニターも使い、情報をまとめたものを映し出す。
アンデレの十字架や花菖蒲の画像、ポリュビオス暗号表。様々な情報に全員が目を凝らしていた。
「もう既に、皆さんには伝わっていると思いますが。次の犯行場所は、ざまざまな情報を加味した結果、渋谷区一丁目の渋谷スクランブル交差点です。皆さんの意見も聞きたいです。」
画面に表示されるのは、住所や座標、詳細情報。スクランブル交差点は昔から多くの人が集まる場所。昔は一度に3000人が行き交うなどとも言われ、今ではそこまでの人数はさすがに行き交うことはないが、人口集中地区である事は間違いなかった。
「まずは……昨日、私の家に置かれていた花菖蒲。」
そっと紫の菖蒲を、一輪手に取る。
じいっと霜月はその花を見据えると、ニヤリと口角を上げる。
「分かった、花言葉でしょ?」
横槍を指すも、舞白は小さく笑みを浮かべ首を振る。
「確かに、メッセージとしては合ってるんだけど、花言葉で場所は示せない。……花菖蒲、これが表す場所は……」
モニターの画像が切り替わる。
シンプルなデフォルメ化されたような花のイラスト。花菖蒲の特徴を汲み取ったデザインのものだった。
「渋谷区。緑を大切に、より緑豊かな街となるように……と。そのシンボルとして「区の花」「区の木」を制定しています。その区の花こそが花菖蒲。捕らえた対象者の部屋からも、同じ花が生けられていました。」
「…それで、その交差点を?」
須郷はモニターから舞白へ視線を移すと、?、というような表情を浮かべていた。
「まさか、それだけじゃないですよ?あとはこのメモの暗号、元のメッセージの処刑台の話です」
暗号が書かれたメッセージの紙を翳し、トントンと指をさす。全員がその小さな文字に視線を送ると、全く意味不明の文字に眉を顰めていた。
「エス……ケー、ドット……」
雛河が羅列された文字を口にする。
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「これ、実はポリュビオス暗号表を使えば数字が現れるんです。一般的なものだと記号は使われてないんですけど、いくつか種類があって。」
ポリュビオス暗号表、またはポリュビオスの換字表とも言われるもの。古代ギリシアの歴史家、ポリュビオスによって発明された換字式暗号の一種。最初に行われた文字がギリシャ文字という歴史もある為、まさかと考えた結果、記号を含む表を照らし合わせ、数字に変換したのだった。
「基本、私なんでも勘で動くタイプなので……、ピリオドの位置も気になったんです。あと文字、桁数も。他にもカエサル暗号とか、前から調査も兼ねてたまたま調べていたので、唯一記号が使えたのはポリュビオス暗号表だったものですから……」
モニターに映し出された表に沿って、スラスラと変換していく。
徐々に現れる数字に、椅子に腰かけていた唐之杜が微笑を浮かべていた。
「なるほどね……場所を示すなら、その数字は……」
カタカタカタとキーボードの音を鳴らし、数字を打ち込んでいく。
「35.65945……、139.70049……っと……」
エンターキーを押した瞬間、地図が現れると、渋谷スクランブル交差点を示す。
「座標ですよ。隠されていたのは。それを見つけ出すまでの過程は大変でしたけど、見つけてしまえばあとは大したこと無かったです。」
シェイクスピアの悲劇の本に隠されていたり、正直そこにたどり着く方が大変だったと嘆く。
「で、十字架、X十字。スクランブル交差点を上から見ると……十字とX字架にみえるので。ここで殺しをすると言うなら、そのメッセージに当てはまるなぁ、なーんて思ったんです。処刑台と言ってますし。それにスプレッドは問題や障害を意味してますから。」
ふぅ……と息を吐くと、モニターから視線を外し、全員に目を向ける。特に異論を出すものは居らず、むしろ全てが繋がったことに安堵している様子だった。
「……と、こんな感じなんですけど……。どうですか?」
ポリポリと、右手の指で頬を擦り小さく笑みを浮かべる。正直、突発的に思い浮かんだことが、たまたま運良く繋がった事に、本人もまさかと驚いていたのだった。全てが正しいかは正直分からない。
しかし、舞白が考えている以外の事を思いつく者もおらず、それ以外の可能性も考えられなかった。
「異論はないわね、皆」
常守がそう問いかけると、全員がこくりと頷く。何とか落ち着いた……と舞白本人もホッと安堵する。しかし、そもそもの大問題に、宜野座が舞白を問い詰める。
「それよりも、自宅住所がアイツらにバレてる、それについては何とも考えないのか?下手をしたら、殺される可能性も……」
「彼らは高度なハッキング能力を有してます。おそらく、私のことは隅々まで調べてるはずです。覚悟の上ですよ。」
「…その為には、自分を犠牲にしてもいいのか?お前は変わる気がない、自分を盾にすれば、それで丸く収まると思ってる大馬鹿者だ。昨日も、本来であれば執行官と同行すべき…」
止まらない言葉に、宜野座の隣に立っていた霜月が腕を引く。
「ちょっと、宜野座さん…」
真正面に立つ舞白を鋭く睨みつける。
昨日の言動に引き続き、相変わらずの舞白の様子に苛立っている様子だった。
「兄の真似事のような行動は慎め!あの6年間でお前は学んだはずだろう?その勝手な行動に、振り回されるのは…」
「宜野座さん!落ち着いてください」
「…宜野座、言い過ぎよ」
霜月に続き、六合塚も腕を引く。
舞白はじっと相手を見据えたまま、表情は変えない。眉を下げ、小さく笑みを零すのみ。
「…別に、そんなつもりは無いです。ご心配、ご迷惑をおかけしたのであれば謝ります。」
"兄の真似事" そんなつもりは無かった。
しかし、そう伝わっていたのかと、少しショックだった。
舞白は深々と頭を下げる。
するとその状況を静かに見守っていた唐之杜が、タバコの煙を吐き出す。
助け舟にはならないかもしれないと、心打ちで思いつつも、とある提案を口にした。
「一先ず、舞白ちゃんの家には鑑識ドローンも入れてる。手がかりは無いだろうけど…。ただ、私からも言わせて?あの家には暫く戻らない方がいいわ。」
「その通りね。暫くは私の家に来てもいいし。…」
常守も舞白に笑みを向けると、提案を口にする。
舞白は顔を上げ、いつもと変わらない様子を振る舞うものの、自負する気持ちと、なんとも言えないモヤモヤとした気持ちが渦巻いていた。
彼が放った言葉は正しい。
宜野座の言う事が、どストライクに突き刺さっていたのであった。
「…一先ず、舞白ちゃんが解析してくれた内容に沿って、私達もできることを進めましょう。時間もありませんから。対象の日のスクランブル交差点の閉鎖、そしてジャミング対策。相手が何を仕掛けてくるかは不明です。作戦を立てて、備えましょう。」
それぞれが、それぞれの役割を果たすために散っていく。
舞白は、宜野座の顔が見られなくなってしまった。
グッと拳を握り、分析室を後にする。
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