PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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スクランブル交差点を何度も行き交いする舞白。
宜野座と須郷も同じく、それぞれ別方向から警戒にあたる。
信号が青に切り替わる度に、大勢の人間が行き交う光景は、やはりここでしか見られない特別な場所だった。
しかし、公安局のジャケットを身につけ、白い髪をした舞白はやたら目を引くらしい。やたらと視線を感じ、何やらコソコソと話をしている様子も目につく。カストルとポルックスの件で、一般市民はいつにも増して、警察には敏感になっているようだった。
舞白はデバイスに触れ、宜野座、須郷と連絡を繋ぐ。
「こちらシェパード3。今のところ怪しい動きは何も無いです。」
「ハウンド1、問題ない」
「ハウンド4、こちらも何も問題ありません」
17時58分。月が最も欠けて見える"食の最大"時間は18時6分。既に月食は始まっており、人々は空へと視線を移し始めていた。今のところ、特に怪しい人物や、スキャナーに異変はない。
舞白も、ふと空に視線を送る。
幻想的な月の様子、その反面、気味悪さも感じる。
信号が赤に変わり、複数の車が行き交い始め、足を止める人々の視線の殆どが空へと向く。
「……しかし、あの人が強攻策を押し進めるのは珍しいな。投降を呼びかけるのが公安のセオリーなんだが。」
デバイスから聞こえるのは宜野座の声。
あの人、とは常守の事だろう。宜野座が急に口を開いたと思えば、そのような内容に舞白と須郷が反応を示す。
「無差別テロの可能性がありますからね。できるだけ犠牲を抑える為に、そう考えたんでしょう。…自分も作戦を考えるとすれば、そのように対処します。今回はイレギュラーな事が多すぎますから。」
下手をすればドミネーターさえ弾かれる可能性も視野に入れる。6年前、槙島が起こした、一般市民を巻き込んだヘルメット事件。あのような状況に再び陥る可能性が高い。須郷は、むしろそれ以上の危険を感じていた。
「……最も穏当な手段はこちらがが公安である事を告げ、投降を呼びかけること……。執行を勧告することで脅迫としての効果も期待できますからね。でも…」
舞白は20m程離れた、宜野座と視線を合わせる。
「奴らに、それだけの理性が備わっていれば、という事か……」
「恐らく、そのような理性は持ち合わせてないでしょう。…それに、格闘戦向きなのは、私たち3人しかいませんから。……ある程度、乱暴な手を使ってでもリスクを回避する、そう考えるのが妥当です。」
再び信号が青に切り替わる。月食が進むにつれて人々の量もさらに増えていく。唯一、この周辺はビルの高さがそこまで高層ではないものが多い。空が広く見える空間に、想定通り、かなり人が集まり始めていた。
舞白は、腰に隠したドミネーターに手を伸ばし、そっとグリップを握りしめる。
『携帯型心理診断 鎮圧執行システム―――』
瞳が青く光り輝く。どうやら、ドミネーターは作動する様子で、通信は問題ない。
再び手を離せば、何事も無かったかのように真っ直ぐと交差点を渡っていく。
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「月食を見たいがために、わざわざこんな人混みに飛び込むなんて……みんな暇なのね。」
「どうやら、今日は天候にも恵まれてますし、ここまでいい条件の月食の日は数十年ぶり、なんて言われてるみたいよ。」
渋谷駅、出入口付近でスクランブル交差点の様子を見据える霜月、六合塚。食の最大時間に合わせて、地下から次々と人が溢れ出てくる。
もちろん、ここでテロが起こることは一般市民が知るはずもない、そして100%ここでテロが起こる可能性があるとはもちろん言いきれない。
舞白の推理が全て外れていれば、何事もないはずだ。
「……にしても、先輩は何を考えてるの……全く……」
数メートル先の護送車付近で待機をする、常守と雛河へと視線を向ける。珍しく容赦のない作戦に、霜月は眉を顰めていた。
「舞白ちゃんが狙われる、確かにそれは不可避だったかもしれないわね。…奴らにとって最大の障害は私たち公安局刑事課、そして次々と謎を解いていく人物。根本を壊してしまえば、ローリスク・ハイリターンで先の犯行を実施できる。」
六合塚は、そんな様子の霜月に対して発言していく。
「かといって、舞白ちゃんの力は現場に必須。常守監視官も冷静を装っているけど、1番苦しんだのは、指揮官でもある彼女に違いないはずよ。舞白ちゃんも、待機と命じられたとしても従わないでしょう」
「……わかってます。きっと、先輩は先輩で、考えがあっての事でしょうから。」
ふぅ、と息を吐くと、霜月は空へと視線を向ける。
時刻は18時3分、最大時間まで残り3分だった。
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「……あと3分ね。」
常守は時計を確認し、傍らで共に待機する雛河へと視線を送る。
「ドミネーターは問題なく作動してます……、ジャミングも妨害されている様子はなさそうです……」
雛河は唐之杜から送られてくる情報や、待機させている警備ドローンの最終チェックを行っていた。あちらこちらで待機している公安局の警備ドローンの信号も問題なく、何が起こった場合、すぐにスクランブル交差点を封鎖できるように計画を立てていた。
「ありがとう、雛河君。唐之杜さんとそのまま連携して、後方支援の管理を続けてね。」
「了解、です」
人で溢れる交差点、そして空を見上げれば怪しい雰囲気を醸し出す月食の様子。暗闇へと包まれていく渋谷の街は、ネオンの光で幻想的な景観へと変わっていく。
再び交差点へと目を向ける。そんな暗闇の中でも目に留まるのは、白髪の人物。鋭い眼光で周りを見据えるその人物の姿は、やはり兄の狡噛を思わせる、まるで猟犬のような雰囲気を感じさせる。
プルトニウム強奪から今の今まで、彼女の嗅覚が無ければ、恐らく複数の死人を出していただろう。もしくは、前回の事件で自分も命を落としていたかもしれない。
常守の運命をひたすら揺れ動かしてきた"狡噛兄妹"。
彼ら兄妹の嗅覚は並外れた異常なものだと、常々感じていたのだった。
「……絶対に、死なせる訳にはいかない。舞白ちゃん。」
信号が青になると人々の波が動き、白髪の人物も波の中へと消えていく。
刹那、唐之杜から全員に通話が入る。
それぞれの位置で監視をしていた面々は、デバイスへと視線を送る。
『緊急事態発生よ!交差点から2km北側のファイアー通りで、大型トラック2台が暴走。進路予想を立てると、そのまま井の頭通りへ直行。向かう先はスクランブル交差点―――』
唐之杜の声が飛び込むと、全員は一気に身構える。
『ちなみにトラックの荷台のスキャナは反応しない。恐らく、なにか特殊な膜でも張られてるみたい』
映像がデバイスに送り込まれる。真っ白な車体の大型トラックが猛スピードで他の車を蹴散らしながら暴走していた。交差点到着まで僅かの時間しか残されていない。
「まずいわ!交差点に突っ込むつもりよ!すぐに警告を流して、市民の避難を…………」
常守が続けて全員に指示を出す。
しかし、その瞬間、まだ何も起こっていないはずの交差点から騒ぎ声が聞こえ始める。
「シェパード3!ハウンド1、4!!!状況を……」
常守は声を荒あげ、舞白達に応答をするように願う。
人々が逃げ惑うような様子、それと同時にスクランブル交差点のど真ん中で、何やら野次馬が集まっている様子も見て取れた。
『……っ!!まずい!!』
デバイス越しに聞こえたのは、舞白の荒い声。
どうやら、青信号のスクランブル交差点のど真ん中で、すでに何かが始まっていた。
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