PSYCHO-PASS -confrontation of orphen-   作:鈴夢

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6章
仮面に覆われた素顔


 

 

・・・・・・・・・・

 

 

18時6分

食の最大を迎えた空は、怪しく光り、気味悪く月が色付いていた。

 

 

 

 

 

 

「…くっ…………大丈夫か……」

 

「ぅ……うわああああああぁぁぁぁん!!」

 

自身の腕の中で幼い少年が泣き喚いていた。ギリギリで救ったものの、爆風に巻き込まれ、数m吹き飛ばされる。幸いにも少年に怪我はなかった。

 

しっかり抱き留めたまま、その場から立ち上がる。その瞬間、白い大型トラック2台が交差点目掛けて突っ込むみ、複数人の一般市民が巻き込まれ、道路に転がるように倒れていた。

 

 

「…クソっ……無茶苦茶だ…」

 

その場から離れるように駆け抜け、一先ず少年を交差点から離れた場所へ連れていく。刹那、唐之杜からの音声に耳を傾ける。

 

 

『依然としてトラックの中身はスキャンできない!すぐにドローンの増援を手配するわ!』

 

スクランブル交差点のど真ん中で停車したままの2台のトラック。運転手はもちろん居らず、無人の自動操縦のようだった。

 

 

シンっと静まり返る路上、傍らでは避難する市民たちの姿。そして相変わらず、自身の身の危険を全く感じていないのか、呑気に野次馬となる者たち。

 

それを塞ぐかのように、警備ドローン……コミッサに扮した公安局の専用ドローンが辺りを囲む。

 

 

『トラックに巻き込まれた人達の救助、規制線外の野次馬達の対応は私たちに任せてください。シェパード3、ハウンド1、4はトラック周辺の警戒を!』

 

「了解だ」

 

 

常守からの指示に宜野座はすぐさま反応する。保護した少年を警備ドローンに預け、爆発物であろう破片が散らばり、炎に包まれている路上へと再び足を踏み入れる。

 

スクランブル交差点一体を警備ドローンが囲み、規制線が張られていく。その規制線の中に身を置くのは、舞白、宜野座、須郷。

 

気味が悪いほど静まり返るトラック。ドミネーターを向けても一切何も反応しない。

 

 

 

「舞白、須郷、無事か?」

 

既にトラックの近くで様子を伺っていた2人に近寄ると、多少傷を負っていた2人を心配する。目の前で爆発物と遭遇した2人は、呼吸を荒くし、眉を顰めていた。

 

 

「はい……なんとか……」

 

須郷曰く、彼の前に現れた人間は女性。

"我が名はエイレイテュイア、生の神"と名乗ったらしい。

 

胸元でチカチカと点滅する怪しいものにすぐに気づき、その場から市民たちを避難させたそうだ。

 

 

「………………」

 

舞白は両手でドミネーターを握りしめ、呼吸を荒く、瞳はどこか遠くを見つめている様子だった。目の前で肉片が飛び散り、下半身だけがなんとか形を生したまま、地面に倒れ込んでいた。その光景は、まさにあの時と同じだった。

 

救えなかった親友の体が吹き飛ぶ瞬間。木っ端微塵に、ぐちゃぐちゃに散りばめられた肉片、だらりと地面に張り付く下半身。地面を染めていく真っ赤な鮮血。

 

 

狂ったように泣き叫んだ、舞白のあの時の背中。宜野座はその時の舞白の後ろ姿を、忘れられるわけがなかった。

そしてその姿が、再び目の前で再現されていたのだった。

 

 

「……気をしっかり持て。」

 

肩を掴み、ゆさゆさと揺さぶると、舞白は肩をビクッと揺らし深く息を吐く。

一瞬、咲良の死体と重なった目の前の肉片。

 

 

「……大丈夫、ごめん。」

 

 

自らを奮い立たせるように首を強く揺すれば、足元に転がっていた仮面に手を伸ばす。真っ白だった仮面は血に濡れ、余計に気味悪さを感じさせる。舞白は全員に状況を説明していく。

 

 

「こちら…シェパード3。目の前で仮面を被った人間が爆発。残念ながら爆発物は木っ端微塵で、どんなものが使われたかは不明ですが、記憶の限り、上半身の着衣物に小型の爆発物が取り付けられていました。」

 

手元のドミネーターを向け、死体の情報を読み取る。

 

 

「…千里川 徳寿(センリカワ ノリトシ)、16歳。最後の色相判定の記録は、ゴーストホワイト……犯罪係数は11……」

 

その情報を口にした舞白は目を見開く。同時に、その場にいた2人も、あまりにもクリアすぎるサイコパスに驚きを隠せない。

 

「こんなにもクリアな人が……爆発物を……」

 

「自分が遭遇したエイレイテュイアと名乗った女性の情報も報告します。」

 

須郷もスキャンした死体の情報を口にする。

 

「難波 暦(ナンバ コヨミ)、15歳。残されていた色相記録は、パウダーブルー、犯罪係数は27です。」

 

2人とも10代、それにかなり若い。中高生を使った悪質すぎる内容に、一係全員が、勃然と憤怒が湧き上がっていた。

 

『舞白ちゃんの予想通り、になりそうね。……だとしたら、このトラックの荷台の中身は……』

 

唐之杜がそう口にした瞬間、トラックの荷台の扉のロック解除音が聞こえる。その音を耳にした3人は、ドミネーターをトラックへと構えると、次襲いかかるであろう状況に身構えていた。

 

恐らく、この荷台の中には同じような人間が入っていると考える。

 

「……ドミネーターで裁き切れない場合はスタングレネードやスタンバトンで強硬手段に出ます。千里川と難波の状況を考えると、犯罪係数が規定値以下の可能性が高いです」

 

舞白はキッとトラックを睨みつける。

荷台が揺れ動くと、何かが外へと歩みだそうとしていた。

 

「爆発物を抱えた人間がいた場合、脅威判定が更新されれば、デコンポーザーが起動するはず。…ですが…もし、爆弾の解除が出来れば重要な参考人になります。出来れば起爆前に解……」

 

「そんな事をしている場合じゃないだろう。自分が吹き飛ぶ可能性がある。…俺たちが巻き込まれるわけにはいかない」

 

「その通りです。監視官。"多少手荒でも、更に犠牲を増やされるくらいなら"と常守監視官も作戦で口にしていました。容赦なく執行すべきです。」

 

「…………ッ……」

 

3人でそんな会話を交えていると、ゾロゾロと大勢の人間たちが降り立っていく。そしてその姿に、舞白はいち早く声を上げた。

 

 

「……あの仮面……カストルとポルックス……」

 

静かに、交差点に降り立つ人間たちに目を向ける。誰しも声を出すことも無く、ただただその場に降り経てば、こちら3人を見据えていた。見る限り、全員にランダムでカストルとポルックスと同じ仮面が付けられていた。

そして手には、バールのようなものや、長い棒を持つもの。在り来りな簡易的に用意されたような武器を手にしていた。

 

 

「…舞白、中に形状の違う仮面を付けた人間が紛れてる。爆発した奴らと同じだ。」

 

宜野座は大勢の中に数人だけ、少し様子が違う人間がいると気づく。そしてやけに厚着をしていた。

 

しばらく3人はドミネーターの銃口を地面へと向け、相手に刺激を与えないように様子を伺う。

 

あくまでも彼らは一般市民。カストルとポルックスに利用された"被害者"でもある。無闇矢鱈にスタングレネード等を使って制圧も簡単には行う訳には行かなかった。

 

トラックから人が全員出たのを確認。すると舞白は、両隣で身構える、宜野座と須郷より1歩前に踏み出し、15mほど離れた彼らに向けて口を開く。

 

 

「厚生省 公安局です!手に持っている武器をその場に捨て、全員動かないでください。」

 

じいっと、そんな舞白を見つめる仮面たち。声も発さず、1ミリたりとも体を動かす気配もない。

 

「あなた達の行動によっては、ドミネーターを使用します。犯罪係数によっては命を失うことも――」

 

「「くくくっ……」」

 

かすかに聞こえる笑い声。

 

 

 

 

 

 

 

「「ふふっ……」」

「「……ははははっ!!」」

 

舞白の発言を嘲笑うかのように、徐々に徐々に笑い声が増えていく。仮面のせいで顔が見えない分、その光景は気味悪く、独特な雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

「何だ……コイツら……」

 

「気味が悪いですね……」

 

背後から、宜野座と須郷もその君の悪さに声を漏らす。その様子に埒が明かないと察した舞白はドミネーターをついに彼らに向ける。同時に背後の2人も同じく、地面に向けていた銃口を仮面の集団へと向ける。

 

 

 

「もう一度警告します!手に持っている武器をその場に……」

 

ドミネーターを向ける3人の瞳が青く光る。そして同時に、その目を大きく見開けば、彼らの犯罪係数に驚き、慄く。

 

 

 

『犯罪係数 アンダー30―――』

『犯罪係数 18 執行対象ではありません―――』

 

誰をスキャンしてもドミネーターは彼らを正常だと判断する。常守や霜月達もその状況を把握すれば、驚きを隠せない様子だった。

 

 

「…こんな事、有り得るの……?」

 

 

「よっぽどの細工がされてない限り、有り得ないさ」

 

宜野座は過去のヘルメットの暴動を思い出した。しかし彼らにはそのような機会を取り付けているような様子は伺えない。

全く意味不明な出来事に警戒する。

 

 

目の前で不気味に笑う仮面の集団。彼らはドミネーターでは裁けない。であれば、危険な行動を起こす前に、強硬手段に出るしか方法はない。宜野座と須郷はドミネーターを下ろせば、スタンバトンに手を添える。

 

舞白はデバイスを通して、一係の全員、唐之杜へ言葉を発する。

 

「彼らを強行的に拘束します。救護ドローン、及び護送車の手配をお願いします。……二次被害を起こされる前に蹴りをつけ……」

 

 

舞白がドミネーターを腰に戻そうとした瞬間、仮面集団の中から1人の人物が姿を現す。その瞬間、笑い声を挙げていた集団が一斉に静まる。異様な光景に、舞白はゴクリと息を飲む。

 

 

カストルの仮面、仮面から除くのは黒髪。動画と同じ服装、黒のTシャツに、デニムを履いた高身長な男。パッと見背丈は宜野座と同じくらいだろうか、しかし線は非常に細く感じる。

 

その人物が醸し出す雰囲気は他の人間たちと明らかに違っていた。その男は舞白に向けて指をさせば流暢なギリシャ語を口にする。

 

 

「Έγκλημα και τιμωρία」

 

 

"エングリマ ケ ティモリア"

罪と罰

サンクチュアリに残されていたメッセージ。

 

 

 

 

「…あなた……カストル………」

 

舞白はすぐにドミネーターを向ける。しかし何も反応はしない。相手の男……カストルも何も言わず、ただ舞白を見据えていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

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