PSYCHO-PASS -confrontation of orphen-   作:鈴夢

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それぞれの意志

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

地下道に響く2人の足音。

依然として、地上との通信は絶たれたまま。

 

須郷、宮舘とも、ルート的にまだまだ合流はできない。しかし、彼らと合流して向かう、という選択は時間的に考えられなかった。その間に、先行しているであろうカストルに先手を打たれてしまえば、何が起こるかわからない。

 

 

 

 

「宜野座さん。もし、敵と遭遇した場合…」

 

舞白は宜野座の背後から、今後の作戦を口にする。

 

 

万が一、カストルが現れた場合、ドミネーターが反応しない以上、体当たりで捕えなければならない。決して殺さず、ある程度怪我を負わせても構わないから、とにかく彼を"捕まえる"。相手がどれだけの戦闘力を持っているか不明。傷を負った舞白だとリスクは大きいと考え、宜野座が先行して、カストルを捕獲する、という作戦だった。

 

「爆弾を抱えた人間、そいつはどうする?」

 

宜野座は先を歩き、当たりを警戒しながらも、舞白の作戦に耳を傾ける。

 

「今のところ6人とも、全員が10代の若者です。戦闘力はほぼゼロに近い。爆弾解除のギミックも分かってる…。起爆前に、私が止めます。…予想に過ぎないけど、最後の1人は、恐らくカストルと現れる可能性が高い気がします。保管庫手前でまだ現れてないし…」

 

「もし、単体で現れた場合は、俺が先行して止める。異論はないな?」

 

「…私は何もするなってこと、だよね。」

 

「当たり前だろう?その怪我で、いつものように動けるはずがない。それに、お前は狙われてるんだ、自覚しろ」

 

チラッと後ろを振り向き、舞白の様子を心配そうに見据え、眉を顰める。舞白は困ったように、微かに口角を上げる。

 

「今じゃ、私は足でまといになりかねないのは事実…。大人しく言うことを聞くよ。」

 

「…そもそも、監視官の役割はそういうものだ。お前は執行官じゃない。」

 

 

舞白はその言葉に、微かに眉を顰ませる。

 

そもそも監視官の役割とは、どういったものなのか?

 

執行対象に適切な執行をする主目的に対し、対象と思しき人物の犯罪係数を把握し、執行官に適切な指示を出す事。そして、執行官が職務を逸脱した行為をした場合に適切な処置を行う事。

 

監視官が本来行うべきことを、執行官がその手足となって動く。そして執行官個人の技量、技能を理解した上で操作する。昔で言う、警官と警察犬の構図そのものをだった。

 

だからこそ、舞白の日々の行動は異常だったのだ。汚れ仕事を自ら行う姿勢は常守と類似しているものの、それは少し違う。

 

 

「お前は外務省の人間でもある。…だが、今は監視官のという責務を務めなければならない。それがお前の仕事、だからこそ汚れ仕事を行う必要性は無い。」

 

「…………」

 

舞白はドミネーターを両手で握りしめ、足元に視線を向ける。宜野座の言っていることは間違いない、正しい事だった。

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

そしてしばらく進んでいくと、保管庫へと続く関係者入口の扉前に辿り着く。その瞬間、2人の脳内に指向性音声が響く。

 

『通信エラー システムとのリンクを構築できません―――』

 

ドミネーターの通信が切れてしまう。

恐らく、設置していたジャミング装置が破壊されたに違いない。

 

 

「…ジャミング装置がやられたか。まずいな」

 

「恐らく、地上でも何かしら被害が出てるはず。…結局、彼らの掌で踊らされる状況に陥っちゃったね。」

 

前回と同様に、まんまと彼らの作戦にハマってしまう。恐れていたことが起こってしまった。

2人は扉前で肩を並べ、持っていたドミネーターを腰へと戻す。

 

「でも、あの男はドミネーターで裁けない。それも予想した上で、常守は俺や須郷、舞白を前線に入れたんだからな。」

 

「力で捩じ伏せる…」

 

「お前の手を煩わせる事はしない。」

 

隣の宜野座と視線を交える。舞白はこくりと頷き、2人は再び扉へと視線を送る。宜野座がロックを解除しようとした瞬間、舞白は咄嗟に宜野座の手を掴んだ。

 

 

 

 

「…絶対にカストルを捕らえる…」

 

「当たり前だ。」

 

「お互い、どちらかがどんな危険な目に合おうとも。…カストルの捕縛を優先することを約束して。」

 

グッと掴む手に力を入れる。舞白の表情が怒りへと満ちていく。

 

「絶対に…許せない。人間を簡単に…あんな残忍に殺しておいて、少年少女の気持ちを弄んで楽しんでる。

…次の被害者をこれ以上増やさないためにも、約束して。」

 

「………」

 

「監視官、執行官、それぞれの責務を全うする。それが私たちの仕事。私情は挟まない。…そういう事ですよね、宜野座さん。」

 

自分たちの仕事の意味目的。今はこの先にいるであろう犯人を捕まえなければならない。ジャミング装置にも手をかけられた以上、必ず彼を捕らえ、これから更に行われるであろう悪行をすぐに止めなければならない。

 

 

舞白はグッとその手を引けば、宜野座を見上げ、じっと見つめる。

 

 

「監視官命令です。宜野座執行官。必ず責務を全うしてください。それは私も同じ事ですから。」

 

 

"私が死にそうになったとしても目的は皆同じでしょ。犯人を捕まえる、市民を守る、シビュラと共に。それが根本の目標…"

 

 

舞白が宜野座に言い放った言葉を宜野座は脳内再生した。

 

 

「…了解だ。監視官」

 

宜野座は何か諦めたような、そのような表情を浮かべる。そして舞白もその手を離せば、じっと扉を見据える。

 

傍らの機械を操作し、ドアのロック解除を行えば、頑丈そうな扉が開く。

 

2人はスタンバトンを片手に、ゆっくりと倉庫内へと突き進んでいく。

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

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「…また妨害電波…、どうなってんのよ…」

 

霜月は拘束した仮面の集団の傍ら、頭を抱えていた。

 

地上でも妨害電波の影響は発生しており、ドミネーターや通信機器の使用ができなくなっていた。

 

だが、国土交通省や二係、三係の協力もあり、何とか前回のヘルメット事件のような強大すぎる被害まで広がっていない。

しかし、仲間内で通信は取れず、ドミネーターも使えなければ相手の犯罪係数も読み取ることは出来ない。

 

スタングレネードやスタンバトンを頼りに、抗う人間たちをひたすら拘束していく。

 

炎に包まれる白いトラックを遠目に、グッと眉を顰める霜月。すると、誰かが霜月へと駆け寄ってきた。

 

 

「美佳ちゃん、常守監視官から…。道玄坂方面の暴徒は二係が全員制圧。そのまま、交差点付近の死傷者の対応をと、こちらの現場の指揮を任せたいって」

 

息を切らした六合塚が、常守からの司令を口にする。通信機器が使えない以上、連絡手段はない。アナログな方法でしか互いの状況を確認することが出来ず、かなり手間を取らされていた。

 

「了解です。先輩は?」

 

「…まだ、暴徒達が残ってるみたいで、その制圧に二係の執行官と向かうと。それと、雛河はハッキングの対応に追われてるわ」

 

「…全く…、相変わらず危険な事を自分で被るなんて。」

 

常守も舞白も、相変わらずだと呆れ口調でため息を吐く。すると、六合塚があることを口にする。

 

 

「…美佳ちゃん。1つお願いがあるの。」

 

「何?」

 

お願いがある、なんて珍しいことを口にする相手に、まっすぐ体を向ける。

 

「この渋谷一帯をジャミングするには、それなりの中継機器が必要なはずなの。この前はホール内だけ、あの程度なら外部からのちょっとした攻撃で妨害する事は容易…」

 

「…中継機器?」

 

「うん。独自でこの電波網を解析してみたんだけど、多分この街の地上のどこかで、誰かがその機器を操作してるはず。」

 

「地下深くでは予め用意していた装置の破壊…、それで地上でも同じようなジャミングを仕掛けられてるって事…?」

 

六合塚はこくりと頷く。

 

「それに、タイミングが良すぎる。舞白ちゃん達が地下へ潜った瞬間。まるでそれを見計らったかのように、志恩と連絡がつかなくなって、ジャミング装置が壊されたであろう瞬間に、ついにはドミネーターが作動しなくなった。」

 

「…なるほどね。誰かがどこかでこの状況を見て、徐々に隙をついて妨害を仕掛けてきた…」

 

トラックが交差点に現れ、仮面の人間たちが暴れ、爆発騒ぎ。そして、舞白の通信であの場にカストルがいた事は判明している、共有された防犯カメラにも映っていた。

 

しかし、あと1人。

カストルとペアを組んでいるポルックスが一切現れないのは違和感があった。

 

「私に、ポルックスの捜査を行わせて欲しいの。」

 

六合塚は鋭い眼光を霜月に向ければ、懇願している様子が見て取れる。現実問題、おそらくそれを何とかしなければ、このまま連絡すら取れず、更なる困難に陥る可能性も高い。ハッキング攻撃が続けられ、雛河も苦戦している以上、その根本を破壊する必要があった。

 

 

「目星もついてる。地上の妨害電波の発信源の場所は突き止めてるわ」

 

六合塚は目の前のビルに目を向けると、それにつられるように霜月も視線を向ける。

 

「地上47階建てのスクエアビルよ。あの頂上から、やけに濃い電波網が張られてる。……行動許可をちょうだい、美佳ちゃん」

 

ポルックスもどんな罠をしかけているか分からない。情報解析や分析に優れた執行官の六合塚を向かわせるのは妥当だった。しかし、1人で向かわせるにはリスクが高い。

 

常守、舞白。2人も危険な場所へ自ら足を踏み入れ、対処している。霜月は自分も何かできないか?無謀なことかもしれないが、黙ってそんな2人を見続け、密かに恥の感情が暗く疼くような気分だった。

 

「……私も行きます。執行官の単独行動はそもそも許せませんから」

 

「だけど、美佳ちゃんは現場の指揮…」

 

「大丈夫です。三係の如月監視官にお任せします。…それに私も…成すべきことを…。」

 

グッと拳を握りしめ、六合塚を見上げる霜月。

そんな姿を見て、微かに笑みを浮かべていた。

 

 

「美佳ちゃんも来てくれるなら心強いわ。……なら、早く行きましょう」

 

2人は視線を交え、頷く。

近くで対応に追われていた如月にその場の指揮を任せると、霜月達は巨大なビルへと駆け出すのだった。

 

 

 

 

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