PSYCHO-PASS -confrontation of orphen-   作:鈴夢

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戦意と亢進と奮然と、

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「……どういうつもり?シビュラシステム……」

 

 

公安局ビル最上階の局長室に常守の姿があった。顔には憤激の色が漲っており、納得のいかない様子。

禾生のデスクに両手を乗せ、鋭く睨みつける。

 

「何度も言わせるんじゃない、常守監視官。"彼を移送する"それだけだ。」

 

「まるで槙島聖護、狡噛舞白の時と同じじゃない?…何を企んでいるの?」

 

禾生は無表情のまま、両肘を立て顔の前で手を組む。そして、常守の怒りの表情とは裏腹に、微かに笑みを浮かべれば再び口を開く。

 

 

「あの少年、結局弟の身元は明かさなかった様じゃないか?今後の行動さえ、吐かせることもできなかった。そうだろう?」

 

「……それは、あなたが途中で横槍を入れたからじゃないの?」

 

「フン……責任転換はやめて欲しいな。少なくとも、あの少年は弟の居場所を語るつもりはないだろう。本気でこの国を潰そうとしているからね」

 

舞白からの報告書を見る限り彼らは諦めている様子など感じられなかった。

 

 

「無駄に時間をかけるより、もっと効率よく動こうじゃないか?」

 

禾生はPCを操作し、常守にとある映像を見せる。映るのは厚生省ノナタワーの地下20階に隠されたこの国の真実"シビュラシステム"。ケースに入れられた複数のコアが映されるその光景を目にするのは、常守も久しぶりだった。

 

「彼らの目的は、単にこの国の破壊だけじゃない。恐らくはシビュラシステムの真実を探っている筈だ」

 

とある人物のID情報も傍らに表示する。

 

「外務省の調査結果。狡噛舞白からの情報に目を通したよ。…恐らく、全ては開示する気は無いだろうが。――宇和城環、彼は若く優秀な脳科学者だった。そして、数少ないシビュラシステムの開発に携わった人物の一人。」

 

「……何故、彼を欧米国に引き渡したの?」

 

「こちらにも"色々"と事情があるんだよ。当時は欧米国とも友好、同盟関係は続いていたからね。……面倒な組織に目をつけられたのが運の尽きだ」

 

「勝手すぎる……。だから彼らは報復の道を選んだ、この国を潰す為に……、犠牲者も複数出たのよ?」

 

気づけばデスクの上に乗せた拳が白くなるほど強く握りしめていた。被害にあった市民、そして刑事課からも負傷者を出したこの事件に、今まで以上に怒りを顕にしていた。

 

「……シビュラシステム、私、言ったわよね……」

 

デスクから手を離し、真っ直ぐと姿勢を正し相手を見据える。

 

「人間を甘く見ないで……私たちはいつだって、よりよい社会を目指してる。……いつか誰かがあの部屋の電源を落としにやって来る――」

 

その言葉に、目の前の禾生は余裕そうに、不気味な笑みを浮かべ、常守の瞳を吸い込むようにじっと見つめる。

 

「……我々に未来はない―――だったかな?」

 

その様子にこれ以上話しても埒が明かないと判断すれば、常守は背を向け部屋の出入口へと向かう。

 

「―――誰も使い捨てにはさせない。」

 

"失礼します"と呟けば、その部屋から姿を消す。外の扉の前で深く息を吐く。ふと手元に視線を送ると、握った拳が小刻みに震えていた。まるで自分の中の何かと闘っているように――

 

そっとその拳を開くと、手のひらに爪の赤い痕が幾つもついていた。また握る。強く、痛いほどに。

 

 

 

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舞白が間借りしている執行官宿舎の一室。

そこには霜月と唐之杜、そして舞白の姿があった

 

「何か……よりヤバい奴に見えるわね、舞白」

 

霜月は苦笑を浮かべ、ソファに腰掛ける人物を見据える。パンツスーツに上はキャミソール姿。そして、右腕に取り付けられた義手。最終調整の為に、唐之杜がパーツに触れ、その度にデバイスで確認をしている様子だった。

 

「そう?より強く見える?」

 

「あんたの元の風貌が変わってるから、人間離れしてるというか……」

 

舞白の左側に腰掛け、ひょこっと顔を覗かせれば、唐之杜の作業を観察する。まるで本物の人間の腕のように動く"それ"を、不思議そうに見つめていた。

 

「……ふぅー……、こんなものかしら。どう?もっと動かしてみて?」

 

右側に座る唐之杜が調整を終え、トントンと義手を指で叩く。その言葉に舞白は頷くとグルグルと腕を回せば、右腕を思いっきり前へ突き出す。風を切るようなその威力に、舞白は手応えを感じる様子だった。

 

「うわぁ、すごい!本当に自分の腕みたい……」

 

「ちなみに、相当頑丈な素材よ?うまーく使えばスパーリングロボとか、ドローンあたりも簡単に貫ける事も可能よ。手刀とかで」

 

唐之杜は面白がるように手刀を落とす仕草をする。

 

「実戦で使うのが楽しみです。」

 

「……ヤバすぎるでしょ、それ……」

 

目をキラキラと輝かせながら右腕に視線を送る舞白に、じとーっと視線を送る霜月。しかし、舞白はこんな凄い代物をこんなにも早く準備できたことに驚いていた。

 

「ありがとうございます。唐之杜さん。…こんなに凄いものを短期間で……」

 

「いいのよ〜。ちょっとしたツテがあってね?ちなみに、征陸執行官が使ってる義手と同じ所から仕入れたのよ?…それに、今後もどんな危険なことが起こるか分からない以上、準備は早くしておいた方が良いに決まってるわ」

 

唐之杜はデバイスに触れると、もう1つの義手のサンプルのようなものを映し出す。それは左腕仕様のものだった。

 

「あと、宜野座君の義手も手配済み。病院のスタッフと連携して、すぐに使えるように調整もしてもらってるの。…………早く、目を覚まして欲しいわね」

 

バイタルは安定しているそうだが、未だに意識を取り戻さない。むしろ、命を落とさなかったことが奇跡だと担当医も口にするほどだった。舞白は微かに俯くも、表情は曇らない。それは同じく霜月もだった。

 

 

「早く戻ってきてくれないと、今後の一係存続の危機。あと半月もすれば舞白も外務省に戻るし、いよいよ人手不足も更に深刻……」

 

「それまでには目を覚ましてくれるでしょ〜?代わりって言うのもおかしいけど、舞白ちゃんが居てくれてるんだし、タッチ交代って感じでタイミングよく起きてくれれば良いわね〜」

 

「でも、残りの半月、舞白のストッパーとして動けるのが私しかいないから大変…。今までは私と宜野座さんで止めてたけど、もう無理よ?」

 

 

 

「……美佳ちゃん、そんな感じで考えてたの?」

 

「むしろ自覚してなかったの?あんた、私と宜野座さんがいなかったら、もっと危険な目に合ってたわよ……」

 

魂も一緒に抜け出ていきそうな、深いため息を吐き出せば、頭を抱えソファの背もたれに体を預ける。つい数日前はあんなに泣き腫らし、腕も失くなってショックなはずなのに、呑気に今まで通りの様子を横目で見ると、相変わらず不思議な子だと思っていた。

 

霜月と舞白のやり取りを面白そうに観察していた唐之杜。この光景も、残り半月もすれば見れなくなると思えば寂しく感じていた。

 

 

「さーてと!義手も大丈夫そうだし、私は仕事に戻るわね。取り扱い方法は教えた通りよ。何かあればすぐに連絡ちょうだい?調整してあげるから」

 

職務中の合間だった事を思い出し、唐之杜はソファから立ち上がると、ヒラヒラと手を振り、出入口へと向かう。

 

 

「あ、そーだ。……これ極秘だけど、送っておくわね。」

 

それだけ呟くと、部屋から出ていく唐之杜。

舞白のデバイスに送られてきたものは、厚生省の極秘データ。

 

公安局、ましてや刑事課には絶対に送られてくるはずのないもの。それは宇和城環の息子、宇和城琉の移送計画。ルートや日時などが明記されていた。

 

不意にこんなものを送り付けてくるなんて、と。改めて唐之杜のデータ収集力に驚かされる。

 

 

「……宇和城琉の移送計画。よくもこんなデータを簡単に手に入れるわね、唐之杜さん」

 

「そりゃ、うちの分析官は有能だから。…って、あんた、また無茶するのは止めてよね。」

 

「事件捜査はまだ続いてる。問題はプルトニウムの隠し場所。弟も早く見つけないと、取り返しのつかないことになる―――」

 

止められた尋問、そして移送計画。常守が直談判したにも関わらず、結局ゴリ押しで計画は進むらしい。勿論、違和感しか感じられなかった。

 

 

 

 

「舞白。あんたの中で、もう既に今後の目処は立ってるんでしょ?」

 

トントンと左肩を叩かれれば、結んだままの唇にかすかな笑いを浮かべる霜月。

 

 

「勿論。……公安局監視官補佐として、必ずこの事件解決してみせる。だから、あと少しだけ。私のストッパーとして手網を握っていてね、美佳ちゃん。」

 

左腕を持ち上げ、霜月に笑みを向ける。そんな舞白の様子に、小さくため息を漏らすも、表情は変わらなかった。

 

「……仕方ないわね。この貸しは、あんたが外務省に戻ったら返してもらうわよ。もちろん、あんたの課長にもね。」

 

2人は腕を突き上げると、コツンと腕をぶつけ合う。そして、電気のようなものが、迸はしり出した。

 

 

 

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