PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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ノナタワー入口に乗り捨てられた大型バイク。傍らにはなぎ倒された警備ドローンが転がる。
六合塚は直ぐに解析をすれば、ある人物の指紋が検出される。
「バイクの指紋と宇和城玲の指紋が一致。おそらくこの中に居ることは間違いないです。」
「……宇和城琉は地下水路からこの中へ。弟の玲は正面突破。大胆すぎる行動ね。」
倒れた警備ドローンの操作を行おうと、常守もそばに寄るがやはり作動せず、データも何も消滅している状況。中のカメラを確認することも無意味だろう。おそらく、渋谷の時のように既に電波をジャックされてるのは間違いない。
「志恩さん。状況は」
『……想定通りよ、朱ちゃん。相変わらず高度なジャミングがかけられてる。こうなれば、ダンゴムシを利用するなりして、内部から介入しないと無理ね。』
タワー前で立ち止まる一係の面々。
移送日、アマランサス、ソクラテスの言葉、ノナタワー、公安局ビルが爆発する様子が描かれたキャンバス。あれから様々な憶測を立てれば、彼らは今日この場所で決着をつけるつもりだと考えていた。
しかし、いざ建物の前へと来たものの何もアクションはない。そろそろ相手側から何かがあってもおかしくない状況だった。
「どうしますか?常守監視官。突入しますか?」
須郷が常守に問いかけるも、相手は首を振る。
「……いえ、少し様子を見ます。今まで証拠を残してこなかった彼らが、今回は堂々と様々な痕跡を残してます。…明らかに、今夜決着をつけるつもりです。安易に動くのは危険だわ」
「でも、このまま待ち続けるのも危険ですよ?……ただでさえ……この場所は……」
霜月が常守の横でボソッと呟いた瞬間。誰かのデバイスから通話を知らせる通知音が鳴り響く。全員が音のなる方向へと視線を向けると、向けられた本人は険しい顔つきでデバイスを睨みつける。
「……私です。出ますね。」
舞白の左手首に巻かれたデバイスが延々と通知音を響かせる。送信者は相変わらず不明。そっと応答に触れ、相手の言葉を待つ。
『こんばんは、狡噛舞白さん。』
宇和城琉の声。落ち着いた声からは余裕を感じられる。先程まで移送され、大破した護送車に乗っていたのが嘘のようだった。
「……宇和城琉。」
『到着の早さからして、俺たちがここに来ることはお見通しだった。さすがです。』
「御託は結構。謎解きは得意なのは知ってるはずでしょ?……で?私に電話をかけてきたってことは、何かの要求?」
その場にいる全員が、宇和城の言葉を待ち続ける。
『狡噛舞白さん。あなた1人だけで、このタワー内に入ってください。』
その言葉に全員が目を見開く。舞白は鋭く眉を顰ませれば、怪訝な表情を浮かべる。
「私1人だけで、この中――」
『何度も言わせないでよ〜、白髪の刑事さん♪』
刹那、明るく呑気な少年の声。宇和城玲の声だった。
『もし。約束を破ったら……、ドッカーーーン!だよ?』
相手が今、どのような表情を浮かべているのか想像ができる。今まで配信されていた動画のように、ふざけた身振り手振りで面白おかしく口にしているだろうと脳裏に浮かべば、怒りが激しい波のように全身に広がっていく。
「そんな無茶苦茶な要求……許せるわけ―――」
霜月がそう口にした瞬間、ノナタワー入口、及びガラス面になっている箇所全てにシャッターが下ろされていく。無機質なガチャガチャとした音が鳴り響くと、余計に気が焦ってしまう。
『ほらー閉まっちゃうよ?強行突破するなんて考えた時には、もうこの国は終了を意味する。……チャンスは今だけしか与えない。そこで静かに、仲良く全員でこの国の終わりを見据えるか―――』
既に半分ほどシャッターが下ろされる。考える余地すら与えられない。
「ッ……行きます!!」
「舞白ちゃん!!」
常守の声は届かず、舞白はすぐに駆け出す。体を滑り込ませるようにスライディングをすれば、何とかギリギリ中に体を入り込ませる事に成功した。そして同時に、シャッターが閉まる寸前、手のひらサイズのケースが滑り入って来ると、雛河の声がシャッターの隙間から、微かに耳に飛び込んでくる。
「か、監視官!!ダンゴムシです―――」
その声を遮るように全てのシャッターが閉じられる。ノナタワーには何度か訪れたことはあるものの、通信も遮断された状態ではほぼ丸腰状態。
そして、体をゆっくりと起こし、辺りを見回す。誰も人の影すら無ければ、音もしない。自分の足音だけが、やたら広い空間に響き渡るのみ―――
『あなたは正しい選択をした。あの場での咄嗟の判断、その選択をすると分かってましたよ。』
「……1対2なんて卑怯すぎると思うけど?」
『狡噛さんの能力を加味しての結果です。……それに、他の奴らとは話す気になれない。』
琉の落ち着いた声。そして、同時にデバイスに彼らからとあるデータが送られてくる。
『地下20階で待ってます―――』
プツッと切れる通信。送られてきたノナタワーの案内図面。それを目にした瞬間、舞白は驚愕し、目を見張る。
「((……厚生省ノナタワーは地下4階までだったハズ……こんな深くまで図面が―――?))」
ゾッと血の気が引くような感覚に襲われれば、過去に、霜月が不意に口にした言葉を思い出す。確か、ノナタワー地下にシビュラシステムの本体があるとか……確かそのようなことを話していた。
ひとまず地下へと続くエレベーターへ進む。そして、雛河から預かったダンゴムシを起動すると、通気口へ数機解放すれば、ダンゴムシ達は内部からジャミング装置を壊すために、消えていく。
そして、腰に右手をのばし、ドミネーターを手にし、使用できるか否か確認をする。
「……ドミネーターは使える。でも彼らを読み込めないのであれば意味がな―――」
『こんばんは。狡噛舞白。』
突如、指向性音声が脳内で再生される。いつものドミネーターの声は変わりないが、まるでその場で話しかけられるような気味の悪い状況。ドミネーターは青く光を放ち、それがやけに気味悪さを更に際立たせる。
「……ドミネーター?
……いや違う……、あなたは―――」
「シビュラシステム……そうでしょう?」
舞白の目付きが鋭く、眼光を光らせていた。
『そうです。そして、今からあなたは、シビュラシステムの本体を目にすることになる。あなたが、取り込まれる予定だった楽園に―――』
色のない無機質な音声。それが、やけに恐怖を彷彿させるような気がしてしまう。微かに心音がトクトクと早くなっていく感覚を感じる。
舞白はドミネーター握り締め、エレベーターへと乗り込む。4階から、更に下位層に何が隠されているのか―――
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