PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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舞白がタワーへ潜入して20分弱。
外で待機している一係は胸をざわつかせていた。一体、中で何が起こっているのかは想像もつかなければ、下手にも動けない。
「……ダメね。通信は愚か、舞白ちゃんの居場所も何もかも特定もできない。勿論連絡すらとれないわ」
六合塚は車両から、予め準備をしていた大掛かりな中継器を設置し、分析室で試行錯誤する唐之杜と共に、ジャミングを解こうと相手へ仕掛ける。今までの経験を踏まえ、今回はそこまで苦戦を強いられそうにはなかった。
『全部予想通り。中継器を用意しておいて正解だったわね。…翔くんが機転を聞かせてダンゴムシを渡してくれたおかげよ。助かったわ』
「いえ……当然のことをした迄です。」
どうやら、ダンゴムシが内部から上手く働いてくれているらしい。唐之杜は何重にも掛けられているセキュリティロックと睨み合っていた。
『まだ時間はかかりそうだけど、相手のジャミングは何とかなりそうよ。……ただ、内部で何が起こっているか分からない以上安心は出来ないわ。』
唐之杜の言葉に全員が視線を交わす。すると常守が神妙な面持ちで口を開く。
「ありがとうございます、志恩さん。……何が起こるかわからない以上、私達も備えておきましょう。今はとにかく、通信機能の回復を待って、内部からの連絡を待つしかない。」
「……((舞白……))」
霜月はノナタワーを見上げれば、やたらと胸騒ぎを覚える。神殿のように佇む不気味なタワー。それを怯えたような色の瞳で見据えていた。
「自分と雛河は、各ドローンの手配と配置を行います。…何か起こったあとでは遅いですから。」
「須郷さん、雛河君。ありがとうございます。その件は全て任せます。」
2人はその場から離れ、着々と準備を始める。2人の背中を見送った常守は、ふとデバイスに触れ、とある人物にメッセージを送っていた。
「……先輩。」
霜月は常守の瞳をじっと見つめる。常守はメッセージを送り終えれば、霜月へと同じく視線を向け、口を開く。
「美佳ちゃんが考えていること。……おそらく私と同じことを考えてるわ」
「もし、万が一舞白が姿を消したら―――」
「……ええ。それも視野に入れてるわ。」
「だったら何で!タワーの中に行かせたんですか?やっぱり、…あの時止めるべきだった……」
シャッターで塞がれていく入り口に、滑り込んでいく舞白の姿が再び脳内再生されると、霜月はため息を漏らす。
「どちらにしても、選択の余地は無かった。もし、あの時、舞白ちゃんが違う判断をしていたら、既にプルトニウムを使われていたかもしれない。……局長が何を考えているのか、正直私も理解が出来なかった。とにかく今は、内部からの連絡を待つしかない。」
閉じられた入り口を2人はじっと見据える。
「憶測だけど、私はそんな簡単に、シビュラが下手な行動を取るとは思えない。」
「そうでしょうか?……たまたま運良く、宇和城兄弟が現れた事で、それに乗じて舞白を上手く利用しようとしている気もしますけど。」
「……そんな事はさせないわ。」
常守は右手でドミネーターを取り出し、じっと見据える。
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コツ、コツ、コツ――
静けさは場所の広さに比例する―――
自分の足音だけが、不気味なほど広く、深い空間に落ちていく。
地下5階以降の階層。その入口はブロック状の壁で隠されており、ブロックの一部がホログラムになっていた。導かれるまま、スライディングブロックパズルのように開閉された場所。
そこから先は完全に電波暗室になっている様子で、電波が回復したとしても通信はとれないだろうと考えていた。
どれだけ降りただろうか?そろそろ目的の場所へとたどり着く手前で、デバイスに彼らからの連絡が再び入る。
『そろそろ目的地に着く頃ですね。』
「……あなた達が示した場所まで残り僅かよ。その場所であなた達を取り押さえるわ」
青く点灯したままのドミネーターをギュッと握りしめ直す。そしてしばらく進んでいくと、頑丈な、大きな円盤型の扉が現れる。傍らには扉解除のために使用されたであろうPCや機械が置かれていた。そして、その扉には微かに隙間があり、中に誰かが入っていた事は間違いなかった。
―――おそらく、この先に彼らが待っている。
そしてシビュラシステムの本体もあるに違いない。
『……これが、父さんが関わっていたシステムの姿……。』
『僕達の全てを奪った諸悪の根源。実に醜い存在だよ。』
デバイスから漏れ聞こえる2人の声。舞白は大きく息を吐くと、扉を開け中へと歩み進める。あれから、シビュラからの言葉は何も発せられない。ただドミネーターが青い光を点滅させているのみ。
「はぁ……、こういう所苦手なんだけどな。私―――」
薄闇のトンネルを進んでいく。微かに奥から眩しい程に光り輝く空間があることに気づく。
地下の奥底に隠された真実。それを目の前にすると、珍しく足が竦む。先のない暗い身の上のことが、暗雲のように頭上に被さるような感覚に眉を顰める。
こんな気持ちが込み上げるのは、6年ぶりだった。過去、咲良を救うために、あの処刑場のような場所を駆け巡った記憶が蘇る。泉宮寺豊久が握っていた猟銃のリロード音、冷たい鉄板床を裸足で駆け、不気味な犬型のロボットと激しい戦いを交えた、あの時の事。サーーッと血の気が引き、背筋が冷えきっていく感覚。
この6年間、それ以上に危険な事に襲われていたはずなのに、妙にあの頃の記憶が蘇ると、額から汗が滑り降ちる。
そして、目の前に広がる眩しい空間。
舞白は目を見開き、その先に佇む2人の人物へと視線を送る。
「……シビュラシステム、聞いてた通りの―――」
背後から聞こえた声に、2人の少年は同時に振り向き、舞白に笑みを向ける。
「「やっと突き止めた」」
2人は同じタイミングで同じ言葉を放てば、妖しげな笑みを浮かべる。3つの青い瞳、落ち着いた茶褐色の瞳が炯々と光り輝いていた。
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―――湾岸方面 首都高速道路
護送車、それを守る車両がひっくり返り、轟轟と黒い煙が舞い上がる。未だに火災は収まらず、ドローンによって消火活動が続けられる。
破壊され、落下した道路のコンクリート片の傍らで、三係の面々が処理に追われている様子だった。
「一係からの情報通り、生存者はゼロ…。全員が上位組織、厚生省の機密部隊…」
「如月。とにかくこの現場を早く片付けて、俺達も合流しよう。…渋谷の時のような事は二度と―――」
如月、宮舘は執行官たちに指示を出し、早々に調査や片付けを切り上げよう、と考えていた。
犯人たちが消えたと思われる地下水路への扉は、青いランプを灯らせ、チカチカと点滅する。
すると刹那、黒い車が勢いよく現れれば、三係が停めていた車両郡の傍にそれは停まる。見慣れない車。まさか、犯人の関係者では?と宮舘達はドミネーターを構え、じっとその車を見据えていた。
しかし、車から出てきた人物達は全くもって予想していない人物。宮舘は目を見開き、そっとドミネーターを降ろせば、口を開く。
「……"君たち"―――」
降り立った2人の人物。目的は地下水路だった。
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