PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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「禾生壌宗局長。前も思ったんだけど、あの人って感情ってあるのかしら?」
88Fのエレベーター前にて。
到着を待つ間、ふいに思ったことを隣の霜月に問いかける。しかし霜月は怪訝そうに眉を顰め、エレベーターの所在を知らせる電子版の数字に目を向けていた。
「…私にそんなこと聞くのやめてください。回答に困ります、花城さん。」
あれから霜月は、花城を局長室へと案内し、舞白を公安局刑事課監視官補佐としての任期を本日終える上での礼や、今後の協力関係について言葉を交わしていた。ただ隣で見守っていた霜月。最終的に花城と禾生は握手を交し、どうやら関係は良好のようだった。
外務省と公安局。国外と国内。それぞれの縄張りを安全に保持するためにも、今後の関係性は良好であるべきだとは、霜月も承知の上。
しかし、この"いけすかない金髪"こと、花城フレデリカに対して。どこか気に入らないのか、未だに腹を割って話せるような関係ではなかった。
今後、日本の開国政策は進んでいく。今回のような危険極まりない事件も増えることは予想されていた。確固とした外務省との連帯性は、今以上に必要でもあり重要となる。
―――とは分かっているものの、やはり好きになれない、この金髪……と心の中で何度も唱えていた。
エレベーターの電子版は"88F"と表示される。
霜月は花城の問いに答えぬまま、エレベーターへと乗り込むと、"41"を押す。
そして、無理やり笑顔を作れば、隣の花城に視線を向けると、とある提案を口にする。
「花城さん。そろそろ昼食でもどうですか?ここのカレーうどん絶品ですよ〜?食堂は60階なので、押しておき――」
「いいえ、結構よ。それに、まだ一係にも用事があるの。あなたと同じく41階で降りるわ」
バッサリとその案を切り捨てる花城。
さっさと別れたいのに、と眉を顰める霜月。扉が閉まれば、エレベーターは降下していく。降下する度に、耳に不快感を感じれば、霜月は無意識に耳に触れていた。
「一係にまだ何か用ですか?舞白なら出動したばかりですし、報告書も含めたらまだ戻れませんよ?」
「用事があるのは舞白じゃないわ。……あなたの部下、須郷徹平と宜野座伸元――」
「須郷さんと、宜野座さん?」
何故その2人に?と不思議そうにすれば、漸く花城に視線を向ける。それに気づいた花城も、隣に佇む霜月へ視線を向けていた。
「あの2人に何か?」
「それは、何れあなたにも話すつもりよ?今日は私個人の目的もあって、少し話をしたいの。それだけだから、安心しなさい」
"個人の目的"。
外務省行動課の課長が直々に、何のために潜在犯でもある彼らに近づくのか。何となく察しは着く。
「……まさかとは思いますけど。外務省に引き抜くなんて事――」
エレベーターが停止をすると、目の前の扉が開く。刑事課オフィスのある41階。霜月の問いに答えることなく、花城はクスッと笑みを浮かべるだけでそれ以上何も口にすることは無かった。
「ちょ、……ちょっと!何か話してくださいよ」
エレベーターから降り立つ花城を追うように小走りになる霜月。
「だから。それは何れ話すって言ってるでしょう?」
ふふん、と余裕そうに笑みを浮かべる花城に、霜月は余計に苛立ちを見せていた。自分の知らないところで、何かが動いている様子に気に食わなかったのであった。
そして、花城は一係オフィス前にたどり着くと中に入ることはせず、背後の霜月へと体を向ける。先程の穏やかな表情とは打って代わり、口元を引き締めて霜月を見据える。
「あなたにも、礼を言っておかないとね。霜月監視官。」
「……何なんですか、いきなり。」
急に表情を変え、改まった様子の相手に、ギョッとした表情を向ける霜月。
すると刹那、花城は姿勢を正し霜月へと頭を下げる。
「あの子に、直接的に指導してくれたのは霜月監視官でしょう?無茶苦茶で破天荒な部下だったと思うけど、あなたの存在は舞白にとって、いい刺激にもなったと思うわ。ありがとう。」
"ありがとう"と花城にストレートに言われると、なぜだか擽ったい気持ち。いけすかない相手であろうとも、やはり感謝の言葉を真剣に述べられれば心が揺れ動く。
「別に……私は当然のことをした迄です。無茶苦茶で破天荒で、言うことは聞かないし、監視官より執行官みたいな行動に……振り回されっぱなしでしたけど。」
花城はゆっくりと頭を上げると、呆れかけているような霜月の表情が目に入る。しかし、徐々にその表情は雑念のない顔へと変わっていく。
「…私も、こんなこと言うつもり無かったですけど、彼女のお陰で気付かされたことも多くありました。そこだけは感謝してます。"そこだけは"」
念を押すように2度口にする言葉に、思わず花城は笑みを零す。
「刑事課一係に、あなたが居てくれて本当に助かったわ。」
「((……何か、上から目線ね、やっぱりいけ好かないわ……))」
やはり、どんなに礼を述べられても、霜月にとって花城は"いけ好かない"
相手に変わり無かった。
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