PSYCHO-PASS -confrontation of orphen- 作:鈴夢
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手首のデバイスが鳴り響く。
"狡噛慎也"
「…………ん……」
音に気づくと、目を擦りながら、ゆっくり上半身を起こす。
下着姿の舞白は、傍らに投げられていたTシャツに手を伸ばし、着用すれば、横で眠っていた人物を起こさないように、そっと床に足をつけ、寝室の外へ出る。
気配に気づいたダイムが傍によれば、舞白は優しく微笑む。
「……ちょっと待ってね、ダイム」
デバイスに触れると、兄の声が室内に響く。
『やっと出たな、舞白
寝てたのか?』
「うん、ごめんね気づかなくて。
ずっと寝てて……」
部屋の時計は夜の7時過ぎを差していた。
履歴を見るとその間に、3回ほど着信があったらしい
『お前、今家か?』
その問いかけに、少し気まずさもあるが
隠す必要も無いと、舞白は事実を伝える。
「ううん、ノブ兄の所。」
『…………そうか』
兄はそのことに関して、あえて何も口にしなかった。
舞白ももう子供じゃない、兄だからと、もう口煩く言うつもりもなかった。
「どうしたの?何かあったの?」
兄と連絡をとるのは2週間ぶりだった。
いつもなら、他愛のない話をするのみ。
しかし今回は、何となく相手の雰囲気を感じると、用事があるとしか思えなかった。
『近くにギノはいるか?』
「ううん?ノブ兄なら、まだ寝室で寝てて……」
チラッと寝室に目を向ける。
扉は閉められているし、先程見た感じだと、まだぐっすり眠っている様子だった。
『なら、大丈夫だな。お前に頼みがある。
本来であれば、花城から連絡をする予定だったんだが、急用でな』
今現在、公安局に身を置いている舞白に、何を頼むのか?
疑問しか浮かばない。
『公安局の閲覧ファイルから、ある機密事項を調べて欲しい。
"特別行政区"、"サンクチュアリ"、"烏間明"、"レアメタル"。
このワードから検索をかけて、何でもいい、引っかかったファイルを全て俺に送ってくれ』
聞きなれないワードを次々と並べられる。
それに、なぜ自分がわざわざ動かないといけないのか。
外務省の権限があれば、そのファイルごと公安局から送ってもらえばいいのに、と。
「……でも、機密情報なんじゃないの?」
『そうだ。だから監視官補佐のお前に頼みたい。
他局の人間とはいえ、今のお前の権限があれば閲覧可能なはずだ。』
ただならない内容なのでは無いかと、舞白はギュッと拳を握る。
まるでスパイのような事をさせられている気がして、乗り気にはなれなかった。
「ちょっと……、ちょっと待ってよお兄ちゃん。
いくら何でも、機密情報なら……」
躊躇する舞白
すると、通信相手がもう1人追加される。
『舞白。あなたにしか頼めないの。』
「……課長……」
花城が横槍を入れるように言葉を挟む。
「……確かに、私は今、仮にも公安局刑事課の人間です。
でも、機密情報を盗み見するなんて事……」
『何を言ってるの?あなたは外務省調整局行動課の人間よ。』
強気の花城の発言に眉を顰める。
『あなたを何のために、
公安局刑事課の監視官補佐に有期限で入れたと思ってるの?』
『おい!花城!』
舞白を公安局に研修、育成と入れ込んだのはそもそもスパイとして、汚れ仕事担当、そういう事だったのだろうと、舞白は変換していた。
『……私たちは外務省調整局行動課
行動こそが全て、分かるわよね?』
グッと拳に力を入れ、小さくため息を吐く。
そして、何か意を決したかのように口を開く。
「そうですよね、課長。
その通りです。
……必ず調べて報告させていただきます。」
舞白の発言に、フッと笑みを浮かべる花城。
『私の人選は間違ってなかったわね。
頼んだわよ、舞白』
「はい。
……ですが、明日以降でもよろしいでしょうか?
さすがに非番の時に動くのは、周りの目もあるので……」
『勿論よ、あなたに任せるわ。
……期待してるわよ。』
プツッと切れる通信。
だらりとデバイスを巻いている左手を落とせば、再びため息を漏らす。
……そう、私は外務省調整局行動課の人間、
公安局にうつつを抜かす訳にはいかない。
「……クゥゥン……」
舞白の様子を察知したダイム。
そっと傍らに寄れば、体を擦り寄せていた。
「ごめんねー、ダイム、心配しないで……」
しゃがみこんで、いつもの様にぎゅうっとダイムを抱きしめる。
柔らかなふわふわとした毛並み、暖かい体温に癒される。
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『おい!花城!
……あの言い方はないだろう?…』
先程の花城の物言いに納得していない狡噛から、
花城の元に、すぐさま連絡が入る。
「ああでも言わないと、あの子だって動かないでしょう?」
『だからって、あんな嘘を……』
スパイとして、汚れ仕事をさせる為に公安局に……
なんて言うのは真っ赤な嘘だった。
たまたま舞白を送り込んでいた先に、
たまたま有力な情報潜んでいた、それだけだった。
「……あなた、いい加減妹離れしなさいよ。
それに、あの子はそんな事でいちいちクヨクヨするタイプでもないでしょ?成すべきことを、あの子はやりきるわ」
『…………分かってるよ』
はぁ、とデバイス越しに狡噛のため息が聞こえてくる。
相変わらずの様子に、微かに笑みを浮かべていた。
「狡噛。
あなたも、きちんと任務を成し遂げなさい。」
花城は通信を切ると、椅子に深く座り込む。
スクリーンに再び目を移せば、眉間を指で摘み、彼女もまた小さくため息を漏らしていた。
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いそいそと帰る準備をする舞白。
すると寝室の扉が開く音と共に、上半身裸の宜野座が現れる。
「帰るのか?」
「うん。明日は当直だし……
急遽、仕事が入っちゃって、少し早めに出勤もしたいし……」
いつもと何ら変わらない様子の舞白。
宜野座に目を向ければ穏やかに笑みを浮かべていた。
しかし、宜野座は感じていた、分かっていた。
あぁ、そうだ、知ってる
この顔をしている時。
何か思い詰めている時、考えている時、隠している時。
じっと見つめていると、舞白は鞄を手にして
外へと繋がる扉を背に宜野座にニコッと笑みを向ける。
「お風呂に、お昼ご飯に、色々ありがとう。
…また来るね?」
「……あぁ。
俺も、お前と過ごせて良かったよ。
…また明日の勤務でな」
無邪気に微笑み、手を振る姿。
そして部屋から立ち去る後ろ姿。
ただただ、見守ることしか出来なかった。
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