ムーの栄光よ再び   作:starship

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文章を書き直しています。ストーリーの大筋は変わっていません。ただ、日本国が大幅に強化されています。その理由は後ほど。


第1章《バタフライエフェクト》
『転生』


 

「この超常現象は一体何なんだ? 訳が分からない。不可思議にもほどがある」

 

ケネディス・ノヘルカは天井を見つめていた。

 

自室のベッドに横たわり、大の字になりながら。全身の力を抜き、クッションに身を預ける。

 

(落ち着かない。ずっとソワソワする、いつもと全然違う。やっぱり……)

 

この悩みごとはかなりのくせ者なんだろう。どうしても深く、深く考えこんでしまう。

 

頭の中は冴えわたり、氷のように冷たい。先ほどの熱気はどこに行ったのか。自分でもいささか不釣り合いに思える。一応、10代真っ最中の若者なのだから。

 

「まあこうなっても仕方ないか。この人生は2周目だし」

 

自分の誕生日も血液型も同じ。銀髪と直毛の組み合わせ、ホクロの位置まで見慣れたもの。嫌というほどに知っている。

 

厳格な父親、温和な母親、愛嬌たっぷりの兄弟姉妹。家族構成も変わっていない。

 

(そう、ずっと前から……以前とまったく変わっていない。あの日に目覚めて気付いたんだ)

 

1週間前、ケネディスは突然自宅で倒れ、意識を失っていた。家族の呼びかけにも周囲の状況にも無反応。完全に意識不明の状態だった。

 

原因はまったくの不明。医者たちが何度調べても特に無し。まさに万事休す、あとは死を待つだけ。

 

のはずだった。しかし、翌日の朝にあっさりと復活。目覚めて早々に御手洗を済ましていた。

 

意識は極めて明白。少々眠りすぎたと感じるくらいだった。そして、周囲の反応から事態の重大性を把握。

 

今までの症状はどこに行ったと自分で驚愕していた。

 

医師の質問にも難なく答え、リハビリもせずに当日退院。奇妙な後遺症を残して。それは深く鮮明に残っている。

 

(そして、今の人生がおかしいと気づいたんだ。前世とまったく同じ。いわゆる人生2周目だということ。まあここまではいい、単なる偶然かもしれない。神様だって間違えることはある。完璧な存在はあり得ないのだから)

 

ただ、懸念材料はそこではない。もっとスケールが大きいものだ。何を隠そう。

 

世界情勢も以前と同様。

 

しかも、自分と同じような者、つまり逆行転生者が居るのだ。その数は2~3人どころではなく、数千人という明らかに異常な規模。タイミングは同時期で祖国『ムー』のみに出現。

 

皆、ケネディスと同様な状況に置かれていた。謎の意識不明から目覚め、前世の記憶を取り戻すというもの。

 

些細なきっかけで事態は発覚した。

 

(同様の人間が他に居るかもしれない。念には念を入れておこう。きっと空振りに終わるだろうなあ……そう思っていたんだ)

 

「まあ、予想外の結果に終わったが……あまりにも斜め上すぎて、明後日の方向に飛んでいきそうだったぞ」

 

ケネディスは本を手にとった。さっそく表紙を開き、ページを一つ一つめくる。内容に最初の段落から最後の段落まで一通り目を通して。ただひたすらに淡々と読み上げる。

 

「マイラス・ルクレール、ラッサン・デヴリン、ミニラル…懐かしいな。いつ見ても豪華な顔ぶれだ。国内有数の傑物しか居ない」

 

これは転生者たちのリスト。各個人の名前から身体的特徴、家族構成と現在の住所まで載っている。前世では何に着手していて、何を志していたことさえも。

 

「有力政治家の長男という肩書きはこういう時に役立つ。普段もこんな感じに活かせればなぁ。今に限ったことではないが」

 

深々とため息を漏らす。今の社会的地位は便利でもあり、不便な一面も存在する。前世でも現世でも一生付いてくるものだ。

 

(まあ悩んでいても仕方ない。現実は変わらないからな)

 

ケネディスは手元に視線を向ける。このリストは分厚く重い。数千人の情報で重いのか、心理的な圧力で重いのか。その答えは分からない。

 

彼自身上手く判断出来ずにいた。

 

(これが足元に落ちたら、どうなるんだろうな? 物理的な重さで足の骨を砕くのか、情報の価値でショックを受けるのか。きっと残念な結果に違いない。それはさておき、本題に入るか)

 

「数千人の転生者が過去の平行世界に転生。この現象はあまりにも不可思議だ。日本国のライトノベルでも見かけないし、あり得ないんじゃないか?」

 

「いや待てよ……紺○の艦隊があったな。あれは良いものだ。何度見ても面白いし、少年のようにワクワクできる。多少奇妙なところもあったが。あっ!?」

 

ケネディスはカッと目を見開いた。

 

(この状況ってチャンスじゃないか? 数千人の転生者、同一の世界情勢。そして、私自身の人脈と権力。これを活かせば、紺○会の真似ができるんじゃあ……何もしなければ、きっと同じことの繰り返しになる。だったら)

 

我々(転生者)の政治団体を設立するべきだろうな。個人の影響なんてたかが知れている。だからこそ、転生者は一つ集まって力を合わせなければいけない。お互いの長所を伸ばし、短所を補うために」

 

彼の鼓動は早まり、いつも以上に音を鳴らす。もしかしたら実現できるかもしれない。そんな希望が膨れ上がることに比例して。

 

(やるべきことを進めなければ。その役割を果たさないと同じことの繰り返しだ)

 

「現世の歴史は必ず変えてみせる。前世よりも素晴らしく、希望に溢れたものに。悲劇はできるだけ起こさせない。よし、後はやるだけだ」

 

ケネディスはリストを机に置いた。そして、ベッドから立ち上がり、身支度を開始。足早に自室を後にする。

 

(これは苦難の道だろう。決して楽することはできない。それでも、私は逃げたいと思わないし、諦めたくもない……前世はハッピーエンドで終わった。人類はラヴァーナル帝国に打ち勝ち、光翼人を完全に殲滅。その後、お互いに手を取り合い、宇宙へと進出していった)

 

(ただ後悔がないわけではない。あの時こうしておけば、そう捉えていたら。後悔は数えきれないほどある。だからこそ、私はこの計画を進める。祖国の繁栄に近道など無いのだから)

 

その後、ケネディスは計画を進めていった。

 

数千人の転生者と無事に接触。歴史改変の計画に参加を呼びかけたところ、即座に了解を獲得する。

 

彼自身が驚き恐ろしさを抱くほど、物事は順調に進んでいった。

 

まあ何はともあれ。ムー人転生者の政治団体『太陽会』はこうして結成された。組織の存在は完全に隠されており、世間一般的には知られていない。

 

ただ荒唐無稽な都市伝説として語られている。いったいどこから漏れたのか。

 

そして、彼らは大規模な国家改革を始めた。

 

前世の知識が鮮明に残っているため、未来の不確定性に悩むこともない。先人たちの道しるべを辿っていく、ただそれだけでいい。月日はあっという間に過ぎていき──

 

 

 

 

──中央暦1638年10月25日 ムー連邦 首都『オタハイト』首相官邸──

 

 

「オタハイトの光景も随分と変化したものだな。胸が熱くなるよ。ただ東京にかなり似てきたような……」

 

ムー連邦首相『ケネディス・ノヘルカ』は首をかしげる。首相官邸の窓際から見て思う。東京のコンクリートジャングルに近づいてきたと。あそこまでは流石に行っていないが。

 

レンガとタイルは完全に姿を消した。歴史的な建造物以外はもう残っていない。鉄筋コンクリートとアスファルトに居場所を奪われたのだ。レンガは性能と費用面でコンクリートに劣り、あっという間に置きかえられた。

 

高層建築物が広大に建ちならぶ、グレー色の摩天楼は留まる事を知らず、地平線の先さえも覆いつくしている。

 

交通網は計画的に張りめぐらされ、渋滞や遅延に悩まされていない。ヒトとモノはスムーズに行きかう。

 

ジェット旅客機は既に真新しいものではない。都市部の上空に時々姿を表し、ターボファンエンジンの作動音を微かに響きわたらせる。そして、市街地郊外の空港に着陸するのだ。この光景は日常生活の一部として馴染んでいる。

 

先進的な国産自動車も存在する。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載して、空力配慮型のボディで低燃費タイヤを走らせる。

 

一部の高級車はハイブリッド駆動方式まで採用していた。

 

日本人がオタハイトの光景を見たとしたら、2000年代前半の東京23区を連想するだろう。

 

私はこの光景を見て思う。太陽会を作って本当に良かった。我々の苦労は正しく報われたんだと。何事も地道に続けるべきだと悟った。

 

(祖国は劇的に生まれ変わった。国力、軍事力、技術力、前世の時とは比べものにならない。戦争の火種も取り除けた。そろそろ、グラ・バルカス帝国も動きはじめるだろう)

 

私は前世の出来事を思い返す。

 

『グラ・バルカス帝国』

 

新世界国家とファーストコンタクトが失敗してしまった。それは同情に値する。ただ、後の行動は決して擁護できるものではない。自国以外の存在を野蛮と見下す。そして、高圧的な支配を一方的に押しつけようとした。

 

あの態度は傲慢すぎる。今でも時々不愉快に思う。

 

(前世の憎しみは忘れるべき。頭では分かっている。ただ上手く飲みこめないのだ。どうしても、新世界大戦時の記憶がチラついてしまう)

 

「ケネディス様失礼します!」

 

「入って良いぞ」

 

首相執務室の扉がゆっくりと開かれる。そして、立派な体格の男性が姿を表した。随分と大きい。

 

身長は190cmくらいだろうか、体重は100kgを超えているに違いない。黒色のスーツ姿でサングラスを身につけているせいか、マフィア映画のヒットマンにも見えてしまう。

 

(あの胸章は太陽会の諜報員。呼吸が結構荒いな。わざわざ廊下を走ってきたのか? つまり私に直接伝えるべきだと考えている。これは……)

 

「報告します! グラ・バルカス帝国の外交団がパガンダ州の西方海域に到着。地方艦隊の誘導を受けて、パガンダ島に向かっています。また同国の皇族も同乗しているようです」

 

「なるほど……私も外交団の対応に参加する。専用機を手配してくれ。一刻も早くパガンダ州に向かうぞ」

 

(グラ・バルカス帝国と本格的に接触するのか。しかも、皇族が同行している。今回は一筋縄ではいかないだろう。無事に上手くいけばいいが)

 

私は太陽神様に祈りを捧げる。このファーストコンタクトが順調に進むことを願って。





【用語解説】

『ムー』
日本国召喚の登場国家(味方) 1万2000年前、作中の異世界に大陸ごと転移してきた。その原因はまったく不明。作中の数十年前まで現地住民の侵略を受けまくっていた。

それでも排他主義や人種差別は極めて少ない。聖人集団かな? また異世界唯一の科学文明国である。


『ラヴァーナル帝国』
日本国召喚の登場国家(ラスボス) 技術水準は現代の地球と変わらない。ただ一部の技術は軽々と超えている。反重力って何だよ(地球人並感)

しかし、ナチスドイツ以上の人種差別国家である。自国民の種族“光翼人”以外は動物&家畜扱いする。同格国家『インフィドラグーン』の竜人族を革バッグに加工したこともある。

色々と一悶着あって、現在の異世界には居ない。
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