ムーの栄光よ再び   作:starship

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甘い塩さま、晶彦さま、誤字修正ありがとうございます。

<(_ _)>


『接触』

 

──中央暦1638年10月25日 第二文明圏外 西方海域 客船『ディース』──

 

 

「私は『ジャン・マクスウェル』と申します。帝国軍の第1近衛旅団に所属しており、今回の護衛隊を率いております。以後お見知り置きを」

 

ジャンは2人に深々と頭を下げる。そして、2人の視線は彼の姿に釘付けだった。

 

(これは興味深いな……純粋な帝国人では少なくともない。おそらく極東地域の血を受け継ぐものだろう)

 

ハイラスは目を大きく見開いた。

 

顔の彫りは薄く、全体的に平たい。頭髪と瞳は石炭のように黒い。典型的な黄色人種である。

 

しかし、2人の態度は一切変わらない。眉をひそめることも、軽蔑の視線を送ることもない。ただ純粋に尊敬の念を抱いていた。ジャンの愛国心に対して。

 

胸元の勲章が明確な証拠だった。20代前半にも関わらず、随分と多く身につけている。その数は15個。帝国に対して多大な功績をあげてきたのだろう。

 

周囲の偏見は間違いなくあった。帝国内の東洋系はかなり少ない。本国内になれば更に減る。好奇な目で見られたに違いない。

 

それでもジャンは近衛兵の道を突き進んできた。彼の愛国心は疑いようがなかった。

 

ハイラスは疑問の言葉を投げかける。

 

「ジャン、君が我々に会いに来た。つまり何かしら起きたという事か?」

 

「はい、ムー連邦海軍の第7地方艦隊と接触いたしました。同艦隊の無線通信によれば、彼らがパガンダ島の中心都市『サルマリア』まで案内してくれるようです。また歓迎の言葉をいただきました」

 

「なるほど、基本的な礼節は弁えているか。ユグドの連中とは大違いだな。あまりにも礼儀正しすぎる。カイザル君の意見は間違っていなかったというわけか……」

 

ハイラスは口元をゆるませる。そして、カイザルの方にふり向き、ニコニコと微笑んだ。

 

 

 

 

ムー連邦海軍の第7地方艦隊はディースの周囲を取り囲む。おそらく案内と護衛を兼ねているのだろう。

 

彼らに攻撃の意図はない。しかしグラ・バルカス側は無意識に身構えてしまう。戦闘艦20隻の威圧感はそれだけ凄まじいものなのだ。

 

各艦は艦橋上部マストに派手な色の旗を掲げている。深紅の真円と黄色の斜線。ユグドの同例から考えれば、ムー連邦の国旗に違いない。モチーフは太陽だと思われる。

 

艦橋の観測員曰く、現在のムー艦隊はディースの速度に合わせている。合流時の速度は30ノット以上出ていた。加速減速はかなり速く、帝国の駆逐艦以上だったと。

 

3人は彼の話を淡々と聞く。彼らは周囲の艦隊に視線を向ける。

 

ムーの戦闘艦、その姿は高度な科学技術を表していた。リベット止めは一切見当たらず、小さな突起さえもない。帝国の造船技術では考えられないことだ。リベット止めは減少傾向であるものの、完全廃止に至っていない。

 

また船体の方も興味深い。形状が高度に洗練されており、水の抵抗は明らかに小さいだろう。帝国の流体力学を超えているに違いない。

 

煙突から灰色の煙を出しており、化石燃料を動力源にしているようだ。ただあまりにも澄んでいる。燃料を効率的に燃焼させているのか、煙突の煤煙フィルターでも付けているのか、実態はまだ分からない。

 

帝国の船舶とはまったく違う。まさに別次元の領域だった。

 

ジャンは口を重々しく開いた。

 

「第7地方艦隊の司令官によれば、あれは『ラ・デルタ級巡洋艦』『ラ・グリスタ級駆逐艦』と言うようです」

 

「どういう訳か、130mm級の単装砲を1門だけ搭載しています。ただ砲身長自体はそこそこあるため、威力は口径の割に高いでしょう。また箱型物体が船体甲板の前後に埋めこまれています。30cm級の3連魚雷発射管も船体左右に1基ずつあります」

 

彼の説明は続く。

 

「非常に理解しにくいのですが……駆逐艦と巡洋艦、その両方が20mm級のガトリング砲を2基搭載しています」

 

ハイラスとカイザルは首をかしげた。ユグドの一般常識とあまりにも違う。それ故に戦闘艦の設計思想を読みとれない。

 

火砲と魚雷は可能な範囲で搭載する。単装よりも連装を、連装よりも3連装を。今までもそうだった。そしてこれからも続いていくと思っていた。

 

しかし、ムー連邦の戦闘艦はまったく違う。帝国の常識を鼻で笑っているようだ。

 

カイザル以外は困り果てた。この矛盾点をどう解釈するべきか、自身の常識と照らし合わせるべきかと。ハイラスはカイザルに視線を送る。

 

「カイザル君はこれをどう解釈する? 専門家の意見を聞きたい。私はお手上げだ」

 

「私個人の勝手な考察になりますが……」

 

カイザルは一呼吸置く。

 

「ムー連邦の戦闘艦は未知の武装を搭載しています。性能は間違いなく高いでしょう。そうでなければ、火砲や魚雷を疎かにしません」

 

「なるほど……その見方はしていなかった。完全に盲点だったな。やはりカイザル君は素晴らしい。流石の洞察力というべきか」

 

 

グラ・バルカス帝国の客船『ディース』はパガンダ島の港湾施設に到着。外交団は島の中心都市『サルマリア』まで案内され、現地の宿泊施設『ラ・イラー』で休息を取ることになった。




【用語解説】

『パガンダ王国』
日本国召喚の登場国家(小悪党) 原作の世界線ではグラ・バルカス帝国の皇族を処刑するという、大戦犯ムーブをやらかした。そのため、本作世界線のムーは宗主国のレイフォル共々併合している。
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