ムーの栄光よ再び   作:starship

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第3話『接触』

──中央暦1638年10月25日 第二文明圏外 西方海域──

 

 

グラ・バルカス帝国海軍のタウルス級重巡洋艦『エルナト』の艦橋内部では、ハイラスとカイザルがエルナトの艦長から挨拶と説明を受けていた。

 

「ハイラス様、カイザル様、本国からはるばる来てくださり、本当にありがとうございます……私はエルナトの艦長を長年務めています、グラ・バルカス帝国海軍大佐の『マイギス・シャルマス』と申します」

 

マイギスは深く使い込まれた真っ白な軍服を着ており、その胸元にはカラフルな勲章がビッシリと付けられている。そのため、歴戦の海軍将校だということが一目で分かった。

 

また、顔の彫りがかなり薄く、全体的に平たい。頭髪と瞳の色は高品質な石炭のように真っ黒だった。そのため、彼が純粋な本国人ではないと明らかに分かった。

 

しかし、ハイラスとカイザルは態度を少しも変化させなかった。なぜなら、マイギスの数々の勲章は祖国に対する多大な功績を物語っており、その愛国心は全く疑う必要性がないと判断したからだった。

 

ハイラスは疑問の言葉を投げかける。

 

「やはり、何かあったのか?」

 

「はい……先ほど、ムー地方艦隊から無線通信が送られてきまして、歓迎の言葉を受け取りました。それによると、ムー側がパガンダ島の中心都市『サルマリア』まで案内してくれるとのことです」

 

「それは大変ありがたいな……やはり、カイザル君の意見は正しかったようだ」

 

ハイラスは口元をゆるませる。

 

そして、3人が視線をパガンダ島方向に移動させてみると──

 

 

ムー連邦の軍艦20隻がエルナトの前方海域に先行していた。各軍艦の艦橋上部マストには真っ赤に光り輝く太陽を主に示した国旗が掲げられている。その国旗はエルナトの艦橋内部からでもハッキリと見えた。

 

また、エルナトの対水上艦用レーダーによれば、ムー連邦の軍艦は30ノットで移動しているようだった。

 

スマートな船体各所から内燃機関特有の煙を吐き出し続けており、化石燃料を動力源としていることも確認できた。

 

 

マイギスは深いため息を吐き、5秒間ほど沈黙する。そして、彼は口を重々しく開いた。

 

「ムー地方艦隊の司令官いわく……あの軍艦たちは『ラ・デルタ級巡洋艦』『ラ・グリスタ級駆逐艦』というらしいです」

 

「なぜか、130mm~200mm単装砲1門しか搭載されていません。ただ、船体前後の不可解な空間には箱型物体がビッシリと大量に埋めこまれています。また、30cm3連装魚雷発射管が船体左右部分に1基ずつ搭載され、合計2基あるようです」

 

「そして、非常に理解しがたいところなのですが……巡洋艦と駆逐艦の両方にレーダー搭載型20mmガトリング砲が2基搭載されているようなのです」

 

マイギスの説明を聞き、2人は首をかしげた。

 

なぜなら、軍艦は火砲や魚雷を色々と無理のない範囲で複数搭載する。それが惑星ユグドの軍事的な一般常識であるからだ。しかし、ムー連邦の軍艦は全く当てはまっていない。

 

この矛盾点をどう解釈するべきなのか。カイザル以外の者は考察が全く進められず、非常に困り果てた。

 

そのため、ハイラスはカイザルに助言を早速聞くことにした。

 

「カイザル君はどう解釈する?」

 

「私個人の勝手な考察に過ぎませんが……ムー連邦の軍艦には先進的な科学技術が贅沢に使用されており、未知の武装が標準的に搭載されている。そんな可能性が十分にありえると思います」

 

「なるほど、その見方は完全な盲点だったよ。やはり、カイザル君の洞察力は素晴らしいな」

 

「ありがとうございます!!」

 

カイザルは頭を深々と下げた。

 

 

──その後──

 

 

重巡洋艦『エルナト』はパガンダ島の中心都市『サルマリア』の港湾施設に到着、現地沖合いに停泊する。

 

グラ・バルカス帝国外交団はパガンダ島の宿泊施設に案内され、明日の昼間まで休息を取ることになった。


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