デストリームアーカイブ   作:トマトーラス

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プロローグ-01 「first death」

窓から差し込むのは暖かい陽の光か、それとも朽ち果てたビルから立ち上る赤黒い炎の光か。

 

もはや、その区別すらつかない。

 

そう、ヘイローを壊され、普通の人間と大差ない肉体へ成り果てた彼女にとっては。

 

その証拠に彼女の心臓は、本来掠り傷程度にしかならないたった一発の銃弾で容易く撃ち抜かれ、純白の連邦生徒会の制服には斑点のように血が滲み出ている。

 

もう、視界すらもぼやけ、身体もまともに動かせない。すぐ傍に置かれた自動拳銃で頭を撃ち抜き、自決することも出来ない。

 

「……すべては、私のミスでした」

 

ーーーこれから、最期に紡ぐ言葉は、決して序章(はじまり)を告げる高尚なものでは無い。

何もかも虚しく、(くう)へと帰す、無意味な行為だ。

 

そうとは分かっていてもーーー。

 

「結局、この結末に辿り着いて初めて……あなたの決断が正しかったことを悟るだなんて。……今更図々しいですが、お願いします」

 

向かい合う()()に語りかけるように、彼女は話す。

もう、一言一言を紡ぐ度に激痛が伴う程の身体へ劣化してもなお。

 

「……大事なのは、()()。あなたにしかできない数々の選択」

 

たとえ、虚しく(vanitas)とも、明日へ繋げなければならない。こことは違うどこかの明日へ。

 

「…責任を負う者に関して、話した事がありましたね。あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら、理解できます」

 

もうーーー左目には何も映らない。

それどころか、左半身がまるで錆び付いたブリキの人形のようにびくともしない。

 

「大人として、子供を守る責任と義務。そして、その延長線上にあったあなたの選択」

 

「……それが意味する心延えも」

 

 

「………」

 

 

そう言い、彼女は静かに思念する。

たしかにーーーこの世界は最初から行き詰まり、滅ぶ運命だったのだろう。だが、それでも、そうだとしてもーーー

 

 

 

 

ーーー彼が、そして自分が愛した世界(キヴォトス)だ。

 

「ですから、先生」

 

「私が信じられる()()であるあなたになら、この捻れて狂い切った終着点とは違うトゥルーエンディングをーーー」

 

 

ーーーXXXX.XX.XX(不明)

ーーー有り得たかもしれない もうひとつの世界

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「……先生、起きてください」

 

ーーー鋭く凛と響く女性の声が鼓膜を揺さぶる。一体、誰が呼んでいるのか。

彼としては、もう少し寝させて欲しい一心である。

 

「先生!!」

 

「……………………へぇあ!?へ、ひゃぁい!!」

 

一際大きく響いた声にパチリと、彼は思わず目を見開く。

そして、まだ覚醒しきっていない目が写し出す景色は、どこかのビルの待合室のような所だ。

 

「……少々待っていてくださいと言いましたのに、起きないほどとは……。よほどお疲れだったようですね」

 

「へ、へ?ねて、寝てた……?えっ……?」

 

ペチペチと頬に触れ、いつの間にか着込んでいたスーツを見下ろし、彼ーーー五十嵐(いがらし)元太(げんた)は困惑しきった表情で反応する。

 

「……まずは自己紹介を。私は七神リン、学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属の幹部です」

 

目の前の女性が放った『キヴォトス』『学園都市』『連邦生徒会』という三つのキーワード。

 

元太はこの三つに何一つ心当たりがなかった。それどころかここに来る前ーーー正確には眠る前ーーーに何をしていたのかすら思い出せない。

だが、少なくとも自分自身の記憶に欠落は何もない、と言い切れる。

 

「そして貴方はおそらく、我々がここに呼び出した先生……の様ですが」

 

「え?せん、せい…………?なの……?俺……」

 

……自分はあくまで銭湯(しあわせ湯)の経営者だ。子供たちの授業参観に足を伸ばした覚えはあるが教師の仕事をしてきた覚えは少なくともない。

 

 

ーーーだが、さっきからやけにこの光景に見覚え(デジャブ)を感じていたというのは否定できない。

 

 

ここが、どこかも分からないのに。

 

 

たとえるなら、我が家にいるかのような感覚で、居心地の良さすら感じるほどだ。

 

 

 

まるで、脳髄の奥深くの本能が、自分自身に対して『思い出せ』と訴えかけているように。

 

 

 

いや、待てよ。なぜ、自分は()()()()()()()

 

 

 

ふと、そう意識した瞬間ーーー

 

 

 

「……ヴッ゛!?あ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!!」

 

ーーー激痛が頭に迸った。まるで、薬漬けにされた脳に起きる禁断症状のように。

 

 

「!?先生!しっかり!!大丈夫ですか!?」

 

突然頭を抱え絶叫した元太の身を案じ、リンが駆け寄る。

元太は彼女の心配に聞く耳を持つ暇もなく、忙しなく激痛が流れる頭を掻き毟る。

 

 

彼が絶叫を挙げてる最中、彼の頭に流し込まれていたのはーーー

 

 

 

 

ーーービルが、家屋が、何もかも焼け、或いは火が燻る町

ーーービクとも動かない、まだ齢半ばの透き通った白い躰から滲み出る血によっててらてらと紅く彩られた通学路のアスファルト

ーーー無差別に、互いに互いを殺し合う少女たち

ーーー夕日か、或いは町が焼け落ちる炎の光が差し込む一室で滂沱の血を流しながら『自分』に話しかけるダレカ

 

 

 

そう、『地獄』であった。それも選りすぐりの吐き気を催すような、黝く、唾棄すべき、抹消しなければならないほどの、『地獄』。

自分が経験してきた『あの地獄(二十五年前)』が、生温く感じる程の。

 

 

 

だが、そんな地獄のような記憶の中でもーーー

 

 

 

 

ーーー子供たちと共に歩き、他愛のない話をして、一緒にバカをやり、行事(イベント)を楽しみ、彼女らの誕生日を盛大に祝う。

 

そういうありふれた日常を思いっきり、まるで子供みたいに楽しむ誰か(大人)のーー或いは自分かーー姿があった。

 

 

 

 

その光景を見て、彼は独りごちる。

 

 

 

 

あぁ、そうか。

 

きっと、この光景はホンモノの、自分などではなく本来()()にいるべきだった『先生()』の過去。恐らく何もかも、まやかしでも幻覚でもない、『彼』が歩んだ記憶。

 

行き詰まり、()()ならざるを得なかった、亡きもう一つのキヴォトス(らくえん)の結末。本来は何処にも届かなかったであろう記憶を、ダレカが自分に託したのだろう。

 

地獄だけではなく、ありふれた日常があったもう一つの世界のことを。

 

そうか。

 

そうと分かれば、自分が果たすべき役目は自ずと理解出来たーーー。

 

 

 

 

「…………ッハァ!!ハァ…ハァ…ハァ……ゲホッ!ゲホッ!!」

 

朦朧としていた意識が覚醒し、元太は思わず空気を求めるようにその場で咳き込んだ。彼を介抱(と言ってもほんの一分くらい)していたリンはその様子を確認すると、安心したかのように息を吐く。

 

「良かった……。いきなり頭をお抱えになってとても苦しんでいたので……」

 

「ゴホッゴホッ……。いらないしんぱいさせちゃってごめんね……、ゴホッ……。」

 

「いえ、お気になさらず。ところで先生、状況の説明は「大丈夫」…………はい?」

 

「俺が今、何をすべきか、なんとなくだけど理解出来た。

 

 

 

ーーーだから、大丈夫」

 

そう言う彼の目は、先程までオロオロしていた情けない大人の目では無い。覚悟を決めた、そんな目をしている。

 

その目を見たリンは野暮な事は聞かず、おそらく大丈夫なのだろうと判断し、彼をロビー近くのエレベーターまで案内し、共に乗り込む。

 

そして、彼女は行先を指定するボタンを押し、元太が乗り込んだのを確認するとドアを閉める。

目的地の最上階への短いようで長い道のりの最中、喩えるならキヴォトスの町並みを堪能出来る穴場の絶景スポットをバックに、柔らかく笑みを浮かべ、こう口を開いた。

 

「ーーーーキヴォトスへようこそ、先生」

 

「キヴォトスは数千もの学園が集まり構成されている巨大な学園都市です。これからあなたが働くところでもあります」

 

「おそらく先生がいらした所とは勝手が違い、最初は戸惑うかもしれませんがーーー」

 

「ーーーでも先生ならそんな心配も杞憂で済むと思います、なにせ()()連邦生徒会長がお選びになった方ですもの」




……えー、本当に申し訳ございませんでしたァァァァァァァ!!!!!!!!

プロローグ書き直すため削除しますって言って書き直そうとしたらあまりに手間取っててしかもリアルも立て込んでたのでこの有様だよ!!!!このクオリティだよ!!!!はい、もう本当に待っててくださった方々には本当に申し訳ない。

ちなみに、プロローグは文量がやばいので「せや!分割すればえぇんや!」という感じで3つくらいに分割して投稿する予定です。ちなみにこれが1つ目です。
タイトルは……某電ノコ悪魔が大暴れする作品に脳を焼かれた結果こうなりました。

とにかく、待っててくれた皆様、繰り返しになりますが誠に、本当に申し訳ございませんでしたァァァァァァァ!!!!!!!!!
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