デストリームアーカイブ   作:トマトーラス

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プロローグ-03 「starting from Zero」

残存敵勢力の無力化、そして違法改造クルセイダーをスクラップにしたことで、ひとまずシャーレ付近で起こった騒ぎは急速に収束しつつあった。

 

そのタイミングを見計らってなのか、元太の持つ携帯端末が震え、無機質な着信音が流れた。着信元は言わずもがな、別働隊として行動していたリンである。

 

『先生、そして皆さん。シャーレ部室の奪還お疲れ様でした。先生は先にシャーレの地下室へ向かっていてください。私も直ぐに合流します』

 

そう言い終えたリンはブツリ、と通信を切った。通信を終えた元太はポケットに端末をしまい、ここまで協力してくれた四人に向き直り改めて礼を言った。

 

「みんな、ひとまずお疲れ様。俺はまだ最後の一仕事が残ってるみたいだから、シャーレに向かうよ」

 

「はい、お疲れ様でした。先生」

 

「……あ、もし機会があれば是非ミレニアムに来てくださいね!先生!」

 

「お時間があれば、是非ゲヘナにもいらっしゃってくださいね」

 

そう、口々に一時の別れの挨拶を遠ざかっていく元太に告げる四人。それを見届けた元太は満面の笑みで四人に大きく手を振り、シャーレへと向かうのであった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「では……すこーし、失礼しますね」

 

ーーーシャーレの地下室。騒ぎの渦中に乗じて狐坂(こさか)ワカモは備品などでごちゃついた部屋を抜き足で進み、真ん中のテーブルに無造作に置かれたタブレットらしき端末を手に取り、いじくり回していた。

 

「あら?これは……んん?うんともすんとも言いませんねぇ……」

 

いじくり回してみたのはいいが、電源らしき背面のボタンを押しても液晶に画面が映る気配は全くと言っていい程にない。これじゃただのガラクタなのではないか?ワカモはそう思い始めていた。

 

「これが何なのかも分かりませんし壊そうにも……」

 

そう。実際問題このタブレットもどきが何なのかすら、彼女は分からない。

 

と、慣れぬ機械に彼女が珍しく四苦八苦してたその時ーーー

 

 

ーーーガチャン、と地下室のドアが開く音がした。

 

「……あら?」

 

「ん?んー……こんにちは!君は、どこの生徒かな?」

 

入ってきたのは、この学園都市(キヴォトス)では珍しい長身の男性であった。おそらく、この背なら俗に言う大人だろう。だが、彼は自分たち(生徒)とは違い、銃も何も持っていなかった。そう、あまりに無防備な丸腰であった。

 

普段のワカモであるなら、その手に持つ銃剣を向け、数秒も掛からずに物言わぬ肉塊にしていただろう。だが、今の彼女は違っていた。

 

まるで、時が止まったかのような、あまりの衝撃に言葉すら出ずに絶句しているようなものであった。

 

「あら、あら……、ら?」

ーーーそう。彼女はこの瞬間、初めて内から湧き上がった業火のような恋心に心を焼き焦がされていた。

そう、なにしろ初めてだったからだ。

あんなに優しい顔で、声音で、こんなにも魅力的な異性に、笑顔を向けられることが。

 

「し、しししし……」

 

 

 

「失礼いたしましたー!!!!」

 

「……?」

 

ワカモは紅潮し、だらしなく熔けた頬を必死にお面で隠し、脱兎の如く地下室から抜け出したのであった。ちなみにその様子を、元太は狐につままれたような顔で見送った。

 

「失礼します。……?どうかされましたか?」

 

入ってきたリンに問われるも彼は適当にはぐらかす事にした。

 

「いや…大丈夫」

 

大丈夫などと表面上では言ってるが、本音としては台風のような出来事だったので何が何だかさっぱりなのだが。

 

「そうですか。……あらためて、ここに連邦生徒会長が残したものが保管されています」

 

「……幸い、傷一つなく無事ですね。それに、()()も無事なようで何よりです」

 

そう言い、リンは暗く静まり返ったオフィスの机に置かれていたタブレット端末、そしてさらに()()()()()()()()()()()()()()()()()()を手渡した。

 

「……受け取ってください」

 

「これは……そうか。でも、このケースは……」

 

元太は受け取ったタブレットを傍のテーブルに置いてから、中身が不明瞭のジュラルミンケースを同じように置き、中身を確認する事にした。

 

「ん?……!?な、はぁ!?」

 

中に入っていたのはーーー

 

 

ーーー赤やオレンジと言った暖色を基調にしながらも、背面の青等といった寒色を基調にした装置が付けられている、アンバランスな異形のベルト。

 

そう、自身の変身アイテム『デストリームドライバー』であった。

 

「なんで、これが……」

 

「先生。その事なんですが明朝、シャーレのオフィスに来た際に『シッテムの箱』の隣に無造作に置かれてまして……。幸い、危険物では無いものの、それが一体なんの装置なのか我々には見当もつかず……」

 

リンはそう言い、気難しい思案顔になる。それを見た元太はとにかく都合の良さそうなでっちあげを数秒で構築させ、即興で話し出した。

 

「あ、あー……、これなんだけどさ、俺の私物なんだ!うん!いや、それでも……なんでここにあるかは分からないけどね……とにかく、俺の私物!うん!」

 

勿論(一部を除いて)嘘である。だが、時には嘘も方便だ。小狡いやり方ではあるが仕方ない。

 

「……」

 

それを聴いていたリンは一瞬眉を顰めるものの、まぁいいだろうと黙認した。この間、僅か0.5秒である。

 

「……先生の私物なら深くは触れません。まぁとにかく、そのみょうちきりんな装置はおいといてーーー本題に入りましょうか。先生、テーブルに置いてある『シッテムの箱』をお持ちになってください」

 

「(え?みょうちきりん?これ、みょうちきりんって言った?ちょっと?)」と言いかけそうになった元太はすんでのところで抑え、取り敢えずリンの言われた通りにする事にした。

 

「その『シッテムの箱』、見かけ自体は普通のタブレットなのですが、実は正体の分からない物です。製造会社、OS、システム構造、動く仕組み。全てがブラックボックスに包まれています」

 

それもそう。エンジニア部(マイスターたち)ですら匙を投げざるを得ず、ヴェリタスの元部長ーーーヒマリのハッキング能力をもってしても、ロックすら解除できない。そして、そのヒマリすらも凌駕するキヴォトス全土すらも覆うことの出来る大規模なハッキング能力。

 

キヴォトスでは技術の最先端を往くミレニアムのプロフェッショナル達でもマトモに太刀打ち出来ないレベルのオーバーテクノロジーがふんだんに使われてる、まさにオーパーツ紛いのシロモノである。

 

「連邦生徒会長は、この『シッテムの箱』は先生の物で、これを先生が使えばサンクトゥムタワーの制御権を回復させられるハズだと仰っていました」

 

ーーーこれは俗に言う丸投げなのでは?ボブ、もとい元太は訝しんだ。いや、ここまでは脳みそに無理矢理捩じ込まれているあやふやな記憶と大体一致するので予想はできていたが。

 

「私たちでは起動すら困難な代物ですが、おそらく先生ならこれを起動させられるのでしょう。兎に角、先生に全てが懸かっています。……私は邪魔にならないように離れていますね」

 

(……)

 

タブレットに触れ、液晶に映し出されるのは、記憶にあったログイン画面。

ーーーここから先は朧気で霞がかかっている記憶ではあるが、きっとこれにパスワードを打ち込んだら、きっと自分は凄絶な戦いに身を投じなければいけないのだろう。

 

だが、彼にとってそんなものはとっくに慣れ親しんだものだ。

人の醜さも、優しさも、酸いも甘いも、なにもかも啜りながらただひたすらに我武者羅に生きてきた。だから、せめて良き大人として、紛い物の先生だとしても、彼には何も勝てなくとも、せめて、子供(生徒)たちの夢だけは、死んでも守りきってやる。

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

そんな思いを抱きながら、元太はパスワードを打ち込む。……後になり、歳に似合わずクサいなこれはと、思わず少し苦笑が零れてしまったが。

 

接続パスワード、承認。

『シッテムの箱』へようこそ、五十嵐元太先生。

生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。

 

ーーーー瞬間、元太の視界が暗転し意識が途切れた。

 

 




今回は短めです、クルセイダー戦かこうかとおもったんですが、泣く泣くカットしました…すいません許してください!何でもしますから!!後、いつもいつもお待たせしてしまってて申し訳ない…。

あと、プロローグ3話で終わらすなどとほざいてましたが、4話構成になってしまいました(無計画)

許し亭許して……。
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