デストリームアーカイブ   作:トマトーラス

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大変お待たせしました。


第3話 交わらぬS/苦悩のバイト戦士

 

 

ーーー数時間前。

 

『……え?先生、正気!?自分から囮役を買って出るとか自殺でもしたいの!?バッカじゃないの!!??』

 

『どうどうどうどう!大丈夫だって!一応ちゃんと策はあるから……落ち着いて落ち着いて』

 

『んへぇ〜先生、流石にその作戦はおじさんも同意できないかもなー。だって銃弾一発で容易く死ぬような身体なのに態々囮になるとか狂気の沙汰だよ』

 

『ん、これに関しては私もホシノ先輩に同意。危険すぎるよ』

 

『……気持ちはとても分かるけれども、とにかく!ちゃんと策はあるから大丈夫だよ!心配しなくても…………多分』

 

 

『『『『『…………………』』』』』

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

老朽化と自治区そのものの縮小と砂漠化の影響により閉鎖された旧アビドス商店街。現在はカタカタヘルメット団の前哨基地へと様変わりしたこのシャッター街では現在、もはや一方的と言ってもいいほどの蹂躙が行われていた。

 

「ひっ、や、やめ」

 

恐怖に悶え、咄嗟にその場から逃走を図る不良(ヘルメット団員)は瞬速で此方に迫るナニカに襟首を掴まれ、そのまま無造作に放り投げられる。そして近くの車輌にアクション映画もびっくりなダイブをかまし、車輌に大きなクレーターが出来ると同時に、彼女は拭えぬ恐怖心と困惑に溺れながらブツリと意識を失った。

 

「……ひぇ〜、底冷えしちゃうなぁ。まるであれじゃ蹂躙だよぉ」

 

そんな元太ーーー仮面ライダーベイルの戦闘スタイルをこっそり観察していたホシノは欠伸をしながら自身を狙う銃火をすんなりと避け、AKを我武者羅に乱射する不良をシールドバッシュで蹴散らしつつ、溝に愛用するショットガンを滑らせて固定し、コッキングレバーを引き絞る。

スラッグ弾の薬莢を排莢し、バックショット弾を装填。トリガーを引き、二時方向にいた二人組の団員を吹き飛ばした。

 

「おらおらおらぁ!!百人だろうが千人だろうがかかってきなさぁぁぁぁい!!」

 

「全弾発射、いきますよ〜♣︎」

 

それに続き、セリカとノノミも後方からアサルトライフルとミニガンのトリガーを引き、銃弾をありったけ叩き込む。

 

「ーーードローン、作動開始。ターゲット設定完了」

 

シロコは遮蔽物に身を隠しながら多連装ミサイルポッドを搭載したドローンを起動させ、セリカとノノミが蹴散らし数を減らした不良たちへ更に追い打ちと言わんばかりに爆撃をお見舞いする。

 

左の頬を殴られたら、右の銃を撃ちなさい。やられたら(弾丸で)やり返す、それがキヴォトスのやり方である。

 

「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

弾丸(とミサイル)のゲリラ豪雨を叩きつけられた不良達は多くがアスファルトに伏し、泡を拭きながら気絶した。

 

「ひっ、か、勝てっこない!アタシは逃げてやーーー」

 

そんな惨状を目の当たりにし、前後不覚になり逃走を図ろうとした不良もいた。

だが時すでに遅し。不良のヘルメットには拳がめり込み、その余波で彼女は近くのシャッターが降りたビルに吹き飛ばされる。

 

刹那、鳴り響く轟音。

あまりの衝撃で、シャッターどころか壁すらも突き破り、周囲には噎せ返るような粉塵と瓦礫の山が形成された。

 

「!?お、おい!大丈ーーーー」

 

心配して助けに行こうとした不良も憐れなことに、腹に(威力10%の急所を外した)パンチを叩き込まれる。元太からすればデコピン程度の威力だがそれでも約7tもの破壊力。当然不良の身体は吹っ飛びーーー

 

 

「な!?よ、よりにもよってこっち来るnぶべぇ!!??」

 

 

ーーー傍にいた不良がクッション代わりとして巻き込まれてしまった。

 

 

「……クソッ、逃げるぞ!拠点は放棄して今は逃げるぞ!!」

 

その様子を物陰から見ていたヘルメット団員は、全身から吹き出る脂汗を拭い、撤退することを選択する。

 

「で、でもまだ……「仲間を手に取るように潰したバケモノ(ライダー)にアタシらが勝てるって言うのか!?えぇ!?」……わ、わわ分かりました!」

 

当然っちゃ当然の考えである。あまりに彼と戦うには一端のチンピラである彼女らでは分が悪すぎた。

 

「な!?アイツら逃げるつもりぃ!?こーノーヤーロー!!逃げんなぁぁぁぁ!!」

 

その様子を見ていたセリカは愛銃をギリギリと握りしめ、追おうとするが優しくアヤネに宥められる。

 

『セリカちゃん落ち着いてください……。とりあえず当初の目的は果たしましたから』

 

「ーーーえ?ってことはもしかして……」

 

『はい!カタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊の完了が確認できました!』

 

アヤネは通信越しでまるでガッツポーズをしてるかの如く上擦った声を挙げる。やはり先生のサポートがあったものの、崖っぷちであったアビドス(母校)を守ることが出来て嬉しい気持ちが溢れてるのだろう。

 

「ん、これで少しは大人しくなるはず」

 

「よーし、さくせんしゅーりょう。じゃ、学校に戻ろうか」

 

「……へ?あ、終わったのか。ちょっと待ってね」

 

一瞬ボーッとしていた元太もすぐさまベルトに手を掛け、変身を解除する。

 

「…………一体それ、どんな仕組みなのよ」

 

それを見ていたセリカは怪訝そうにボヤいた。

 

 

「あはは……まぁ、それはおいおいってことで」

 

 

 

(…………………………)

 

そんな、まるで人が変わったかのように朗らかな笑いを浮かべる元太に対し、ホシノは内心底冷えするような思いであった。

 

もし、不良たちに振りかざされたあの暴力が、自分たちに降り掛かったらーーーーそんな良からぬ妄想をしてしまうほどには。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「お帰りなさい。みなさん、お疲れ様でした!」

 

対策委員会・教室にて。

無事に任務を終え、帰ってきた五人にアヤネは労うように声をかけた。

 

「うへぇ〜ありがとうアヤネちゃん……。おじさんはもうくたくただよぉ」

 

「あーもうホシノ先輩そんなところでねーなーいーのー!……あ、アヤネちゃんもお疲れ!」

 

帰還して早々、気怠そうに床に突っ伏しそうになってる先輩をセリカは引きずるように椅子へと誘導してアヤネに労いの言葉をかけた。

 

「とにかく、火急の事案だったカタカタヘルメット団の案件は片付きましたね!これで一息つけそうです☆」

 

「そうだね。これでやっと、目の前の重要な問題に集中出来る」

 

「うんうん!それも先生のおかげだね!ありがと、これでやっと借金返済に取り掛かれるわ!」

 

対策委員会にとって、ヘルメット団の襲撃祭りは一つの壁に過ぎない。だが、それでもここ数日の悩みの種が解決したのは大きい前身だ。

 

「いやいやいや!俺は別に大したことはしてないよ。あくまで指揮官としてあれこれ指示出してただけだからね。最終的にあの勝利をもぎとったのは、間違いなくみんなの力の賜物さ」

 

元太は笑みを浮かべながらそう言う。

 

少しライダーに変身して自分も戦いはしたが、あれはあくまでちょっとした支援。だからあの勝利は自分の力ではなく、対策委員会の面々が勝ち取ったものだ。

 

「で……借金返済、って?」

 

「あ

 

 

 わ、わわっ!!」

 

元太がそう疑問符を浮かべると、セリカは分かりやすく狼狽し始めた。だが、既に口を滑らせてしまってる時点で手遅れとしか言いようが無い。

 

「……そ、それは」

 

「ま、待ってアヤネちゃん!!それ以上は……!」

 

慌てて話そうとするアヤネを必死に止めようとするセリカ。

ーーー自分は知るべきでないことを知ってしまったのか?彼女(セリカ)の疑心暗鬼に満ちた目を見てそう元太は思った。

 

「いいんじゃない?別に先生が知ってもさ」

 

「……へ?ホシノ先輩、何言ってるの!?先生は部外者!態々事情を話す必要なんてーーーー」「確かにパワードスーツ紛いのアレはおじさんだって何も分からないけどさ、先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?別に罪を犯した訳でもないんだから、信頼してもいいとおじさんは思うけどなぁ〜。参考までに、シロコちゃんはどう思う?」

 

「先輩の言う通り、先生は信頼して大丈夫だと思うよ」

 

 

「そ、そうだけどーーーーッ!」

 

ホシノの述べた意見はご尤もだ。なにしろ目の前の先生(大人)はなんの対価もなしに指揮をし、囮役を買って出るなどして対策委員会(自分たち)を窮地から助けてくれた。

 

だから信頼しても大丈夫だろう、信頼するに足るだろう。全くもってその通りだ。

だがそうだとしても、セリカは今日来たばかりの大人ーーーー部外者が自分たちの抱える問題に首を突っ込むのはどうも納得がいかない。

 

「そうだけど……結局先生だって部外者でしょう!?何も知らない!!部外者でしょう!!!???」

 

「確かに先生がちょちょいのちょいと解決できる問題ではないと思うけどさ、先生以外に耳を傾けてくれる大人がいるとはおじさん思わないんだよねぇ〜」

 

必死に叫ぶセリカをホシノはあくまで優しく諭す。ホシノだってセリカの言わんとしてる事は分かる。だが、問題解決をするならば猫の手だろうがなんだろうが借りたいと思ってた矢先にやってきた千載一遇のチャンス。

 

誰も差し伸ばそうとしなかった救いの手を差し伸べようとしてくれる先生(大人)が目の前にいるのだ。これを逃したら、アビドスは今度こそ()()()

 

「悩みを打ち明けてみれば何か解決法が見つかるかもよ〜?それともーーー何か他にいい方法があるのかな、セリカちゃん?」

 

「うっーーーうぅ……!」

 

セリカはギリギリと歯軋りをして、スカートの端を跡が出来るほどに握り締める。

 

もう何も反論のしようがない。ホシノが言ったことは尽く正論だ。だが、それでも、理屈では分かっていて何も知らない部外者の大人風情に自分たちの苦労が分かってたまるか。手を差し伸ばそうとしなかったくせに今になって都合よく助けてくれるなぞーーー

 

「でも、さっき、さっき来たばっかの大人でしょ!今まで大人たちがこの学校を気にかけたことなんてあった!?私たち(アビドス)の問題は私たち(対策委員会)がどうにかしてきた!!それを、今になって関係の無い大人が首を突っ込むだなんて……」

 

 

 

「……認めない。私は認めないッ!!」

 

そう、血を吐きそうな程に悲痛な思いの丈をぶち撒けたセリカは、荷物を手に取り部室を飛び出した。

 

 

 




次回はようやっと対策委員会と元太の事情を深掘りできるかもしれません。
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