デストリームアーカイブ   作:トマトーラス

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第4話 交わらぬS/それぞれの事情

「セリカちゃん!!」

 

教室を飛び出してどこかへ行ってしまったセリカを引き留めようとアヤネは叫ぶ。その様子を見て、心配そうな顔をしたノノミがそっと廊下を見る。

 

「……私、ちょっと様子を見てきます」

 

ノノミはそう言い、セリカの後を追うかのように部室を後にした。

 

「……分かってはいたけれど。そりゃ今日来たばっかの素性もよく分からない大人だし、信用されないよね……はは……はぁ……」

 

元太はその一連の流れを見て、悲しそうに溜め息を吐く。ただ、これに関しては無神経にデリケートな話題に触れた自分(元太)にも責任があるなと痛感した。

 

「……ごめんね。ウチの可愛い後輩が、あんな失礼なこと言っちゃって」

 

「いや、全然大丈夫だよ。寧ろあれに関しては空気読まずにデリケートな話題に触れた俺に非があるから」

 

元太は自分の至らなさに酷く腹が立っていた。一人の大人として、子供たちの意思を尊重するのは当然のことなのに。

 

 

 

■□■□■□

 

 

  

「えーと、簡単に説明するとね……この学校、借金があるんだ。んまぁ、ありふれた話だけどさ」

 

重苦しく沈んだ空気を拭う為か、ホシノはぽつりぽつりと事情を話し始める。どこか軽薄なのは先生と後輩たちを気遣うためだろうか。

 

「……どれくらい?」

 

「…………ざっと、9億くらい?「9億6235万円です。先輩」……うげぇ〜、前より増えてない?」

 

ホシノが述べたおおよその値段。それを上塗りするかのようにアヤネが正確な値段を述べる。その金額を聞いてホシノも思わず、げんなりとした嘆息が口から漏れ出た。

 

「これが私達、アビドス……いえ『対策委員会』が返済しなくてはならない借金の総額です。もし返済できない場合、学校は銀行の手に渡って廃校手続きをしなければならなくなります……」

 

「ですが、実際に完済できる可能性はゼロに等しく……ほとんどの生徒たちは諦め、()()()()()()()()()、去ってしまいました」

 

「そして、私達が残った」

 

シロコはことも無さげにそう付け足した。ーーーーまるで、さも当然であるかのように。

  

「……なんだよ、それ」

 

元太は思わず苦虫を潰したかのような顔となる。明らかに、彼女たちが背負うべきモノじゃないだろうーーーいや、子供達が背負うべきものではない、背負ってはいけない、そんな重荷を。

 

「学校が廃校の危機に陥り、生徒がいなくなって街がゴーストタウンと化したのも、全てこの借金のせいです」

 

「……そう、か。でも、なんでそんなことになっちゃったんだ?なにか事情があるとは思うんだけど……」

 

何故、彼女たちが借金を背負わなくてはいけなくなってしまったのか。元太はアヤネへそう質問をなげかけた。ーーーあまりに残酷なことを聞いてるのは彼が一番理解している。だが、事情が分かれば自分でも少しでは彼女達の力になれるのでは無いかと元太は考えたのだ。

 

「……数十年前、この学区の郊外で大規模な砂嵐が発生しました。元々この地域では砂嵐が頻繁に起きてたのですが、それはあまりに規模が大きく……学区の至る所が砂に埋もれ、砂嵐が去っても砂が埋もり続け、俗に言う砂漠化現象が引き起こってしまったんです。」

 

「……そうか、だから至る所に砂が積もってたのか」

 

元太が呟いた言葉に同意を示すよう首肯したアヤネは再び話を続ける。

 

「そして、その復興のために我が校は多額の資金を投入せざるを得なかったんですが……このような片田舎の学校に、しかも巨額の融資をしてくれる銀行なぞ当然見つからず……」

 

「結局、悪徳金融業者に頼るしか無かった」

 

「……最初からどん詰まりだった、ってワケか」

 

「はい……。ですが、最初は直ぐに返済できるほどの金額だったんです。しかし砂嵐は年を重ねる程に規模も大きくなり……学区の半分以上が砂漠化し、借金も返済できないほどにみるみる膨れ上がりーーー毎月の利息を返済するので手一杯で弾薬すらも底をつく寸前だったんです」

 

膨れ上がり、増え続ける借金と止まらない砂漠化。もはや嘗ての華々しいマンモス校としての姿はなく、いつ砂に埋もれても可笑しくない。いや、砂に埋もれる寸前だったのだ。もはや、弾薬すら底をつきかけていたのだから。

 

「きっと、セリカが神経質になってるのはこれまで誰もこの問題に誰もまともに向き合おうと()()()()()()()。話を聞いてくれたのは先生が初めてだよ」

 

「……ま、そういう面白みの欠けらも無いつまらない話だよ。で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が無事に解決したからこれからは借金返済にしっかりと腰を据えて向き合えるってわけー」

 

ーーー彼女達は、理解はしているのだろう。もはや借金返済なぞ無駄な足掻きであると。茶番じみたことをしてるのだと。だが、それでも自分達の母校(アビドス)を、見捨てたくは無いのだろう。

 

「…………まぁ、もし、もしもこの委員会の顧問になってくれるなら借金のことは気にしなくていいから。正直こんなに親身になって話を聞いてくれただけでもおじさんは有難いからさぁ〜」

 

「ん、そうだね。先生はもう十分力になってくれた。もうこれ以上迷惑をかけられ「……見捨てる訳、ないだろ」……え?」

 

たとえどんな理由があろうと、子供達が犠牲になる世界なぞ、自分が許せない。そんなこと、許してたまるか。

 

「ーーーーーーシャーレの先生(一人の大人)として、絶対に助ける。アビドスを、砂に埋もれさせはしない」

 

「そ、それって……」

 

 

「これからは顧問としてよろしく!……ってところかな?」

 

一瞬見せた不慣れな畏まった口調をすぐさま引っ込め、彼は朗らかにそう言ってみせた。その言葉を聴いた対策委員会の面々は、先程までの沈んだ空気から打って変わって喜色と驚愕に満ちていた。

 

「あっ、は、はいっ!よろしくお願いします!!」

 

「……へぇ?相当な面倒事なのに自分から首を突っ込もうだなんて、だいぶ変わり者だねぇ〜先生は」

 

「よかった……。まさか『シャーレ』ーーー先生が助けになってくれるだなんて。これで私たちも、少しは希望を持っていいんですよね?」

 

「そうだね、希望が見えてくるかもしれない」

 

「とにかく先生として、みんなの力になれるよう頑張るよ。

 

 

……あ、そうだ」

 

「「「?」」」

 

突然、何科を思い出したかのような気の抜けた声を出した元太に、三人は頭上にクエスチョンマークを出す。

 

「対策委員会の事情は聞かせてもらったのに俺の事情はまだ何も話してなかったね。じゃあ…………あのベルトと、()()姿()……うーん、何から話せばいいんだか、ハハ……」

 

元太は乾いた笑みを浮かべながら頬をかいた。その姿は、先程まで見せてた快活そのものの彼からは程遠かった。

 

少なくとも、三人からはそう見えた。

 

「とにかく……まぁ、荒唐無稽だろうし、俺からも全部信じろだなんて大それたことは言えない。

 

 

 

 

……話半分で聞いてくれれば充分なほどに、くだらなくて、救いようのない、過去の話さ」

 

彼はそう前置き、ぽつりぽつりと語り出した。

 

 




大変遅れてしまい申し訳ない……今回は難産でした……。

それはそうと、お気に入りが160件………160!!!????こんなクソ小説に!?!???しかも赤バー!!!!!????正気か!!!!!????

………とにかく!お気に入り&評価してくれた読者の皆様、本当にありがとうございます!これからも遅筆でございますが、元太と生徒たちの物語を見届けてくれれば幸いです。
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