麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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第93話 パウリー

 

 船の査定を待つ間、私たちは1番ドックの見学をさせてもらっていた。

 

 木材を肩にのせて素早く運んだり、まるで剣士のようにノコギリを扱ったり、トトトってハンマーで釘を次々と打ち付けたり、大きな紙の設計図を見ながら指示していたり。

 

 あちこちに職人さんたちがいて、協力し合って船を造っていた。あっちなんて、骨組みができているところに、どんどん隙間を埋めるように板を貼っている。

 

「すっげぇ~」

「すご~い!」

 

 こんな風に船って造られてるんだって思う。

 私は幼い頃から船で暮らしていたし、ルフィとエースとサボとカタログを見ていた頃も懐かしいし。

 

「おおっ、大砲まで造ってやがるのか!」

 

 四角い鼻のカクさんが戻るのを誰よりも待っているのか、そわそわしていたウソップも、気になるものを見つけて走っていったみたい。

 2つもカバン持たせちゃってるけど、足取りが軽かったね。

 

「ナミ、私たちもあの船を見てきていい?」

「ええ。2人揃って迷子にならないようにね」

「ウタ! あそこに登ってみよう!」

 

 お腹にくるくると腕を巻かれるから、私は背中に手を回してギュッとする。そして、ルフィがビヨーンってもう片方の腕を伸ばす。

 

 周りの職人さんたちがまるで目が飛び出るくらい驚いて、さすがの彼らでもゴム人間にはビックリなんだね。

 

 木でできた展望台? 、まあ高いところに降り立ってくれた。

 

「あれも海賊船になるのかなぁ~」

「なんにせよ、海を自由に航海できるといいよね」

 

 なんとなくだけど、造りかけの船からワクワクする感情が伝わってくるように思える。私たちの目に映っているのは、まだ帆も掲げていない骨組みなのにね。

 

 特等席に何がつくんだろーとか、メリー号は羊さんだよねーとか、あれこれと話していると。

 

「ぬおっ!? ハレンチな!?」

 

 そういう驚く声が地面のほうから聞こえてきた。木材に座っているナミがナンパでもされているのかな。

 

「足を出しすぎだ! ひざ丈のスカートにしろ!」

 

「はぁ~ なんなのこの人...」

 

 私たちは慌てて、金髪のおじさんのところへ向かう。

 

「「あぶない!」」

 

「うぉ!? ハレンチ女が増えた!?」

 

 ハレンチって言われても。

 眼鏡だし、長袖ジャケットだし、ネクタイだし、ミニスカートだし、今日の私はクールビューティーなんだけど。

 

「そんなことより! 声をかける女子は選ばないと!」

「お前あぶないぞ! ナミを怒らせると殴られる!」

 

「そうねー」

 

 コツン、ガツン ってナミにゲンコツされちゃった。

 

「うー、なんで私たちが」

「ごべんなざい」

 

「おっかねぇな、ハレンチ女」

 

 ガシガシと頭をかきながら、チラチラと私たちの太ももを見てくる。視線に敏感じゃなくても分かりやすいけど。

 

「それで? あんたも職人?」

 

「まあな。麦わらと、ハレンチなてめぇらは海賊か?」

 

「お前、海賊に興味あるのか!」

 

 『は?』ってルフィを軽く睨み付けてから、おじさんは葉巻に火をつける。

 

「俺はガレーラの船大工だぞ」

「俺たちは船大工で仲間になってくれるやつを探してるんだ!」

 

 ルフィったら、押しが強いんだから。

 そこもあんたらしいけどね。

 

「海賊は歌って踊って楽しいぞ!」

 

 ルフィがそう言うと、『こいつマジか』って表情で、残念だけど、海賊でもピースメインって少なそうだよね。

 

「どちらにせよ、それはてめぇらの事情だろうが。アイスバーグさんの作ったガレーラを俺は気に入っている」

 

 汗水を垂らしながら、みんな楽しそうに船を造っているよね。

 

「他の職人たちの多くもそうだろう。俺たちにはここでやりてぇ夢もある」

 

「夢って?」

 

 私がそう尋ねると、頬が緩んだ。

 

「さらにガレーラをデカくするのは当然のこと」

 

 その視線の先にはアイスバーグさんがいて、さっきからずっと彼は職人さんたちに囲まれていた。さっきはあんなにダラけてたのに、今は真剣にあれこれと教えているっぽいよね。

 

「俺たちで海列車の2号機を造り上げ、3号機や4号機、どんどん造っていく」

 

 夢を語っている彼の笑顔は、キラキラ輝いていた。

 

「そうすりゃ、このウォーターセブンは世界の中心になるだろう」

 

 私とルフィとナミもワクワクしてくる。

 1本の線路が島々を繋いで、あの海列車でみんなを運べるだけでもすごいのに、この島を経由して、世界中が航路で結ばれるかもしれないもん。

 

「なんだお前、すげぇ面白いやつだな!」

「バシバシ叩くな、麦わらァ!」

 

 私としてもこの人のことが気に入ったけど、仲間として誘うのは無理そうだね。笑っているルフィから肩を叩かれて、照れたように顔が赤くなってるや。

 

「騒がしいな、ふるっふー」

 

 うわずった声の人が近づいてきた。

 肩には可愛いハトが乗ってるね。

 

「「ハトがしゃべった!?」」

 

 ルフィやナミが驚いてるけど、黒髪のおじさんが話してたよ。口は全く動かしていないように見えたから、腹話術なのかな。

 

「こいつらは海賊らしいが、大切なお客様だ。丁重に扱えよ?」

「喧嘩っ早いお前にしては珍しいな」

 

 『やっぱりハトがしゃべってる~!?』ってルフィやナミはすっかり騙されてて、またまた面白い職人さんが来たね。

 

「そういや言ってなかったな、俺はパウリー、こいつはルッチだ。ここガレーラの船大工だ」

 

「そして俺がハットリ、俺の相棒だ、ふるっふー」

 

「俺はルフィ、海賊王になる男だ」

「私はウタ、世界の歌姫になる女よ」

「私はナミ、よろしくね...って」

 

 私やルフィだけじゃなくて、パウリーさんたちも、じ~っと見ていて。

 

「世界地図をかく女よ! これでいいんでしょ!?」

 

「「「「お~」」」」

 

 照れているナミに、私たちは素直に拍手する。ハトも翼をパタパタしてて賢いね。

 

「それにしてもお前も強そうだなぁ~」

「やめろ... ふるっふー」

 

 ルフィはルッチさんの腕をバシバシ叩いちゃってて、確かにすごい鍛えているよね。あれだけ高速で走っていったカクさんよりも強いと思う。

 

 表情は変わらないのに、一瞬だけ寒気を感じた。

 

「なんだ? お前はしゃべれないのか?」

「こいつ恥ずかしがり屋なんだよイデデデ!?」

 

 パウリーさんの肩に手を置かれて、力を込められたみたい。涙が出るくらい痛がっている。

 

「てめぇ! 相変わらずの馬鹿力だな!」

「バカはお前のほうだろう」

 

 酒場に大量の借金があったり、女性に免疫がなかったり、こっそり太ももを見るのが好きだったり、そういうのをバラされてた。

 

「昨日も女にそそのかされて、ブルーノの酒場で奢らされたと聞いたぞ、ふるっふ~」

「ああん!? それはそうだがな!」

 

 言い合いで喧嘩してるとこ、なんだがゾロやサンジを見ているようで、仲良しでほほえましいね。

 

「そこの女たちにも何度視線を向けていたことか、だから騙されるんじゃないか?」

「ハレンチ女たちがミニスカートを履いて見せているのが悪い! 視界に入っただけで俺は悪くない!」

 

「「さいてー」」

 

 別に見せるためじゃなくて、可愛いからに決まってるじゃん。まあルフィになら、照れるけど見てほしい気持ちもある、ちょっとだけね。

 

「はっはっは! お前ら仲良しで面白いやつだな!」

 

「誰がこいつと!」

「あり得んな」

 

 パウリーさんは大声で否定するけど、ホントは満更でもないんじゃないかな。ルッチさんは全く表情が変わらないとはいえ、声が柔らかかったね。

 

「ったく、それで? お前らは船を買いに来たのか?」

 

「ううん、修理だよ」

「今はカクって人が査定に行ってて、それを待っているの」

「スゴかったな~ すげー速くてよ」

 

「あいつは真面目だ。信頼していいぞ、ふるっふー!」

 

 そういう雰囲気がにじみ出てたけど、ルッチさんが評価してるから、戻ってくるのが楽しみになってくるね。

 

「新世界も目指すんだろう? お前らの船はどういうタイプなんだ?」

 

「「羊?」」

「キャラベルね」

 

「ほほーその船でよく前半の海を乗り越えたな、ふるっふー」

 

 ハトが翼を、ルッチさんが指を向けた先には、ほぼ完成間近の海軍の軍艦があって、見るからに丈夫そうに見えちゃった。

 

「あれが海軍本部の軍艦、その最新の型だな。新世界は勿論のこと、船底には海楼石が敷いてあるから、カームベルトの航海も可能だ、ふるっふ~!」

 

 ルッチさんの解説、めっちゃ早口で用語いっぱいだから、全部は分からなかったけど。

 

「あの力が抜けるやつか!」

「なんて贅沢な使い方よ...」

「あんなに大きい大砲まであるね...」

 

 メリー号って、こんな船を相手に海で戦ってくれているんだね。こうして陸で見ると、ますます軍艦の大きさを感じる。

 

「ははっ、海賊のお前らからすれば、イヤな話だったか! まっ、俺は海列車が最高の船と思っているがな!」

「いやいや、海賊船を追いたてる軍艦こそが」

「メリーだって凄いんだぞ! 空島にだって行ったんだ!」

 

 あーもう、ルフィまで混じって、口で喧嘩始めちゃった。

 

 

 そんなとき、スタタタって足音が聞こえてきた。どうやってるのか分からないけど、ホント静かに素早く走ってるよね。

 

「なんじゃ、お前ら2人が、客と親しくなってるのは珍しいのう」

 

「あっ、四角い鼻のやつ!」

「メリー号の羊さんが可愛かったでしょ!」

 

 『それはそうじゃったな』って笑顔でカクさんが頷いてくれた。

 そして、パウリーさんやルッチさんに向かって、挨拶するように軽く手を上げた。

 

 こんなに良い職人さんたちがいるんだもん。

 メリー号はちゃんと直る...よね?

 

 

 

 

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