・あまり文章に書きたくない漢字については、わざとひらがなだったり、別の漢字で書いておりますのでご了承ください。必札技とかね。
風の赴くままに私たちは進む。
島が見えれば冒険をして、食糧調達をした。
海の上で歌いながら釣りを楽しんだりお昼寝したり。
そして。
「島が見えたぞォ~!」
日課の筋トレを終えて、昼寝をしているゾロもルフィの声に反応したようだ。
私は書きかけの楽譜を片付けながら、ルフィが指差す方向を見る。シェルズタウンより大きな町で、お買い物も楽しみになってきた。甘い果物も、お肉も、お酒も、全然足りなくなっているからね。
「ありゃあ、海賊船か?」
ゾロの呟きに、私たちは目を細めて、大きな船に掲げられて風に靡く黒い旗を見る。赤と白で描かれたドクロ、ジョリーロジャーを掲げていて、町に海賊が滞在しているのだろう。
「お~! どんなやつなんだろう!」
「町の人、襲われたりしてないかな」
海賊にもいろいろいる。私たちは赤髪海賊団の印象が強いけど、シャンクスたちが航海中に戦ってきた海賊団は町を襲っていたり、こっちの船に乗り込もうとしてきたりしてきた。冒険を楽しむピースメインとは表裏一体で、略奪すら行うのがモーガニアって呼ばれている。まあ、区別は難しいからドクロの旗を掲げている時点で海賊は警戒されるんだけどね。
「飯屋を襲うやつは悪いやつだ」
「まっ、一戦交えることには賛成だ」
ルフィもゾロも好戦的な笑みを浮かべているし、たった3人だけれども、挑む覚悟はとっくにできている。近づくにつれて、たぶん大砲でところどころ大きく破損した町の様子が見えてきたけど、とても悲しくなる。
私たちは港へ船をつけて。
率先してゾロは錨を下してくれている。
「ん、思ったより静かだね」
ヘッドホンをはずしていろんな音を拾っても、ルフィが『うおおおおお』って町の中へ向かって駆け出していく声しか聴こえない。船長が先陣をきるってのも珍しい海賊団だろうし、ていうか、私たち的には先を越されるのはずるい。敵が残っているといいけどな。
「追いかけるよ、ゾロ!」
「へっ、似た者同士ってことかよ!」
途中でゴムゴムのロケットでも使ったのか、ルフィはだいぶ奥まで行ってそうだ。こういう建物が多いところだと、まるで猿のように駆けずり回るからね。
「おっと、ようやく1人目だよ」
「1人だぁ?」
十字路の曲がり角から、槍を構えたおじいちゃんが飛び出してきた。ガープさんみたいにあの年齢で人外もいるから世間は広いものだけど、その衰えて細くなった腕からして、たぶんこの町の人なんだろう。
「海賊どもめ、わしらの町に立ち入るな! これ以上何を望む!」
「酒」
「甘いもの」
槍を向けられた状態で言葉をぶつけられたけど、町の人に対しては私たちに戦意はない。でも3本の刀を特に警戒しているらしいし、おじいちゃんは冷静さを失っているようだ。
「
ドタドタと走ってきて、ゾロのほうへ槍を刺そうと突っ込んでくる。ゾロは少し身体を逸らして、槍の柄を掴んだだけで、そこからビクともしない。
「は、はなせぇ!」
「いいぜ」
槍を決して離さないように握り込む、おじいちゃんの心意気へニヤリと笑って、槍ごとその身体を石畳の上へ軽く放り投げた。
「ッ! ゲホッ、ゴホッ」
腰を抑え、息を整えようとしている。
いまだゾロに対する敵意は失われていないようだ。
「~~♪」
ゾロはめんどくさそうに頭をかいた。
「……俺たちは敵じゃねぇよ」
「そ、そのようだな。すまん」
槍を杖代わりにして、立ち上がるその姿は年相応って感じだ。
「申し訳なかった……! わしはてっきり、あの道化のバギー一味かと」
「ん? 道化の、バギー?」
「それが町を襲った連中か」
バギー、ってどっかで聞いたような。
よくシャンクスがお酒に酔って楽しそうにその名前を。
懐かしみながらも、なんだか酒の肴に笑い話に使われていた気がするし、そういう意味では道化ってのは合ってるのかもしれない。
「そうじゃ。ある日突然やってきて酒場に陣取り、わしらから金品を巻き上げた。町民は避難させたため皆は無事だが……」
1つの建物を見つめた。
大砲で抉れた跡だ。
「海賊めっ!」
その怒りをバギーってやつらにぶつけたとしても、返り討ちに遭うだけだろう。
「私たちも海賊だよ。だからそいつらぶっ飛ばしてくるね!」
グッて親指を立ててサムズアップする。
あり得ないみたいに目を見開くけど、珍しいのかな。
「……やめときなさい、お嬢さん。たった2人であいつらには」
「3人だよ。絶対おじいちゃんのお宝守ってみせるから」
今度は指で3を見せる。どの指も強いよ。
もう守られるだけの少女の時代は終わったんだ。
ルフィだっているし百人力、りき……
「ルフィが……ルフィが……」
「まさかなにかあったのか!?」
青褪めていく私の表情に、ゾロも焦ってくれている。
ヘッドホンを外していてよかった。
その音を拾えた。
「し、知らない女とおしゃべりしてる!!!」
「……は?」
はわわわわ、ルフィが危ない。
肉に釣られて
やっぱり見てないとこですぐ女を惚れさせるんだって、いつも私が直感してる通りなんだ!! 大丈夫だよ、ルフィは私が守るからね!
ルフィの気配はこっちからする。
他は聴こえないようにその気配だけに集中する。
こんな壁なんて! ぶちぬくッ!!
「どりゃあああ!」
「うぎゃァァァ!」
「「「えぇーーー!?」」」
あ、ごめん、勢いのまま誰か蹴ったみたいだ。
って!
「ちょっと! 今はこれルフィのものなんだけど!」
ルフィは縄で縛られているし、ヘンなやつが麦わら帽子持っているし、やっぱり知らない女がいるし、ちょっとルフィから目を離しただけで危険なことになっていた。ナイフで縄をザクザク切って、黒い髪の上に麦わら帽子をグリグリと被せて、赤いシャツの皺をパンパンと伸ばす。
ん、これでよし。
「ルフィ、無事!?」
「おう! ウタのおかげでな!」
よかった、無事だ。
「ハデにやりやがったなァ!」
ドゴンと、酒場の机の下敷きになっていたらしい、赤い鼻のおじさんが起き上がった。三角の目っぽくなっているし、とても怒っているみたいだ。謝っても許してくれなさそうだけど、シャンクスとルフィの麦わら帽子を持ってたから私も怒ってるからね。
「女てめぇ! そのヒョロヒョロのどこからあんな怪力を!」
「……さぁ?」
そういえば、我を忘れて、ウタってもいなかった気がする。まあシャンクスたちなんて壁の破壊くらい指1本でできるだろうし、それと比べればどうってことはないでしょ。酒場の壁が脆くなってたとかで、たまたまだよね。
「とぼけやがって! 麦わら帽子も、その赤髪も、ハデに気に入らねェ!」
「いいじゃん。赤髪! かわいいでしょ!」
伸ばしている赤髪を手にとって、しっかりと見せる。
「ハデに忌々しい色だ」
「このぉ~! ぶっとばしてやりたい!」
こいつ、私とシャンクスの赤髪をバカにしやがった!
もうすぐに喧嘩を始めてやりたい。
「そもそもてめぇらはなんだ。ここに何しに来やがった」
「「海賊。」」
赤い鼻のおじさんも、たくさんの船員も、私たちを嗤う。
まあ、勝手に嗤っていいけどさ。
「海賊を名乗るのは勝手だがな、その名にはそれなりの覚悟ってもんが必要なんだ。てめぇらこのバギー様に盾突いて生きて帰れると思ってんのかァ!」
「ああ、思ってる。」
「生きて会わないといけない人がいるからね」
ルフィは麦わら帽子を返しに行くし、私は娘として会わなければいけないから。こんなところでしぬわけにはいかない。
「ハデにフザけんな麦わらどもォ! だったら教えてやる……野郎どもォ、バギー玉用意ッ!」
「「「へいキャプテン!」」」
「どうすんのよ、この状況っ。こんな距離で大砲なんか撃たれたら絶対避けられない!」
「ルフィ、このおん……この人はだれ?」
「うちの航海士だ。さっき仲間にした」
ぶ~、仲間ならいいかな。
でも幼馴染は私だけなんだからね。
「仲間じゃないわ! っていうかそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
おもしろそうだから大砲の準備を待っていてあげるけど。
そんなことより。航海士さんって、珍しいオレンジ色のかわいい髪で、健康的にスタイル抜群だし、なによりもいろんな男を誘惑できるくらいに美人で容姿が整っている。
でも私だって世界の歌姫に相応しいくらいかわいくて、赤い髪も白い髪も綺麗で、チャームポイントいっぱいだもん。
「すっげぇー! おもしろ大砲だ!」
「ちょっとあんた、どうにかしなさいよ!」
「無視しやがって! ムカつくやつらだ! こうなりゃこの町ごと消し飛ばしてやる!」
ほんのちょっと目を離した隙に仲が良さそうな、ルフィと航海士さんの馴れ初めが、幼馴染としては気になるなぁ。私のこと置いて、2人で楽しそうだし。
『ねぇルフィ、モテるのやめなよ』
・こういう展開を期待するウタが聴こえたので。
・女の子1人だけならまだしもどんどん増えていく気がする!