麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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・めんどくさくて重い女の子とか好きです。そこがかわいいまであるからね。


第8話 ウソップ

 

 航海士のナミが加わり、私たちの船の進路は確かなものになった。見えた島にとりあえず寄るという気ままな航海も楽しかったけどね。そのおかげでゾロやナミにもあえたんだから。

 

 とある場所から東の海を出て、シャンクスやエースたちがいる偉大なる航路(グランドライン)を目指しているけど、その果てにワンピースはある。ふと思う。私を拾ってくれた赤髪海賊団はあえて偉大なる航路(グランドライン)を一度出て、わざわざ東の海へやってきたことになるけど、一体何が目的だったんだろう。

 

 うーん。

 まあいいや。

 

こいつらあり得ない。あと2週間は航海できる予定だったのに、もう補給が必要になるなんて

「「やっほ~~!」」

 

 ナミがぶつぶつ言いながら頭を抱えているけど、航海士のナミはいろんなことを考えてくれる。

 

 船から出た私たちは砂浜に足をつけて、ぴょんぴょん飛び跳ねた。鳥のさえずりや波風の音がよく聴こえるくらい静かな島だ。でも少し遠くのほうから賑やかな声が聞こえるから村があると思う。

 

 ん、誰かが恐る恐る近づいてくる。あまり足音を立てないようにしているみたい。

 

「なんだなんだ、こんな島に旅行客か? すげぇ紅白だな

 

 長い鼻だな。オーバーオールの服なので、細い腕や頼りない肩が見えるけど、たぶん村の人だろう。警戒が解けて、むしろ友好的な雰囲気を見せている。

 

「俺はルフィ、海賊だ」

「ウタだよ! 海賊団の音楽家♪」

「2人とも海賊ぅ? おいおいウソつけ」

 

 目を細めて、訝しむようにそう告げる。そして、ニヤリと笑って、腰に手を当てて堂々とした雰囲気を見せた。

 

「ふっ、俺の名はウソップ。このシロップ村を占拠するウソップ海賊団の船長だ」

 

「「へぇ~! 海賊なんだ!!」」

 

 人は良さそうだし、占拠といっても、シャンクスたちや白ひげみたいな感じで海賊と村の人が共存してそうだ。基本的にピースメインだと思う。

 

 さらにウソップは誇らしげに親指で自らの胸を差した。

 

「気をつけた方がいいぜ海賊共。俺には8000人の部下がいる」

 

「8000人!?」

「ん~?」

 

 ルフィが大喜びで指でがんばって数えている姿はかわいいけど、この閑散とした入り江に他には誰もいない。もしかすると、8000人に分裂する能力かもしれないけれど。

 

「俺の狙撃はすごいぞ~ 蟻の眉間だって撃ちぬけるからな。人々は俺を称える。キャプテ~ン・ウソッ」

「嘘でしょ」

「8000人はどこだ?」

 

 ナミとゾロが船からやってきてそれぞれ発した一言に『バレたぁ!?』ってウソップは飛び跳ねるように驚いた。

 

 騙されたことに加えて、話の上手さや驚き方にルフィは大笑いしていて、その横顔を見ながら私は微笑む。シャンクスの海賊団にも『蟻の眉間だって撃ちぬける』って言いながら狙撃の腕を自慢していた人がいたよね。

 

「この島の村の人なの?」

「まぁな。てか、お前らこそなんだよ」

 

 その言葉に、私とルフィはお互いゆっくりと首を傾げて、こつんってやる。さっき伝えたはずなんだけど、聞きそびれたのかな。

 

「海賊だぞ?」

「海賊だよ?」

「ウソじゃねぇのか。てかお前らウソ吐けなさそうだしなぁ…‥しっかし海賊かぁ……人は見かけによらねぇっつーか」

 

 腕を組んで、うんうんと唸っているけど。

 そろそろこんな面白い人がいる村にも行ってみたい。

 

「なぁ! うまいメシ屋あるか!?」

「あっ、ダメ元で聞くけど、大きい船とかないかな?」

 

 ナミが加入した今は、船の室内になぜか女子部屋を作ることになったため、雨の日とかに生活スペースが少し狭く感じてきた。私は今までルフィやゾロと一緒にグースカ寝ていたんだけど、ナミに半強制的に寝室を分けられてしまったんだよね。

 

 まあゴムの抱き枕が欲しくなるから結局ルフィのところへ行くんだけど。その度になぜか叱られるし、お姉ちゃんができたみたいだ。でもたぶんマキノお姉ちゃんなら笑って許してくれるのに。

 

「メシ屋はともかく、欲しいのは海賊船だろ? 村にそんな大きい船は……いやあるな」

「「あるの!?」」

 

 ウソップに近づいて、私たちはキラキラと目を輝かせる。今の船も結構気に入っているけど、偉大なる航路(グランドライン)に入る前には丈夫で大きい海賊船を手に入れておきたい。赤髪海賊団の『レッド・フォース号』くらいすごい船が欲しい。

 

「あ、ああ。こっちだ」

 

 急かす私たちに背中を押されるように、ウソップは道を歩いていく。私たち4人も付いていく。

 

「大きな屋敷が一つだけあるんだけどよ。もう使っていない商船を持ってるはずだ。……なんだあの後ろ髪生きてるのか?

 

 私たちを先導しながらウソップが私の髪が気になっているみたいだけど、たぶんウタウタの実の影響で、テンションの度合いでぴょこぴょこ動くんだよね。まあルフィのゴムの身体ほど、大きな変化ではないけれど。

 

「……なぁウソップ、俺の仲間になれよ」

 

 私が口を開いて教える前に、ルフィがウソップの背中へ声をかけた。……へ?

 

「……はぁ!?」

「またこいつは急に...」

 

「……。」

「ん? 遅れるなよ」

 

 あくびをしながら最後尾をのんびりと歩いていたゾロが、歩くペースを落とした私を追い越しながらそう伝えてきた。

 

 へぇー、ルフィ、そんなにこの男のことを気に入ったの。もしかして、シャンクスにかなりなついていたし男のほうが好ましかったりするのカナ。そういえば私って女として認識してくれてるのカナ。昔よりずいぶん大きくなった胸で腕に抱きつくけどグッスリ眠ってるし私を女なんて思ってないのカナ。そんなに偶然歩調が合って隣を歩いているナミのほうがいいのカナ。

 

「なんか懐かしい感じがするんだ。なっ、ウタ?」

「うん! そうだね♪」

 

 白い髪をくるくると指でいじるのをやめて、歩きながら一度振り返って見つめてくれるルフィへ向かって、笑顔でうんうんと大きく頷いた。

 

 なんだか懐かしい感じってのはわかるけどね。

 

「そう言われてもな……本物の海賊かぁ……」

「俺は海賊王になるんだ。だから一緒に冒険しようぜ」

 

 悩むウソップへ向かってますます勧誘する。へぇー、そんなにウソップがいいんだー。私なんてあそこまで積極的に誘われなかったのに。

 

 『エースとは別に海に出ることにしたけどさ、ウタは俺といっしょに海賊やろうぜ!』

 『うんっ! やるやる♪』

 

 あの頃のルフィにはまだ舌足らずなとこがあって、でもお互い幼かったときの大切な思い出だけど、もっと悩むフリすればよかったの?

 

「か、海賊王!? そりゃおめぇ、あのワンピースを見つけるってことじゃねぇか!」

「本気でやるぞ。俺はガキの頃からずっと決めてたんだ。ウタと一緒にな」

「うん! そうだよねっ!!」

 

 あっ、あぁ、やっぱりルフィは幼馴染の私が1番なんだよねっ! 幼い頃から海賊王と歌姫になろうっていっぱい夢を(ウタ)ったもんね。

 

「おいおい お前にもこんな良い幼馴染がいていいな~ このこの~」

「ししし ウタも世界の歌姫になるやつだからな」

「うん!私もルフィも本気で目指してるからね!」

 

 ウソップが歩くペースを落としてルフィへ肘でツンツンする。ウソップのこと気に入ったよ! 絶対船に乗ってね。

 

「まあ、そう簡単にこいつらからは逃げられないわね」

「経験者は語るってやつだな」

「お、おう、そうか」

 

 少し冷たい感じを出して会話に入らなかったナミだけど、大きく溜め息をついて、ウソップへ同情するように伝えた。ゾロもナミも最近楽しそうなのに、なぜだろう。

 

「さっ、ここが俺の故郷、シロップ村だ」

 

 大きな屋敷があって、自然に囲まれたのどかな村だ。

 木々が風に揺れる音が心地いい。

 

「いい村だね」

「そうだろ! さっ、カヤの屋敷はこっちだ!」

 

 そう言いながら、ウソップは笑顔で屋敷を指差した。私とルフィは少し足早になるウソップに従って案内されていく。

 

「船のことは任せるか。俺は酒でも探してくる」

「ちょっ! 私とゾロは買い出しに行ってくるわ! 

 (方向音痴どもが分かれたらまずいでしょ!!)」

 

 交渉が苦手そうなゾロがそう提案すると、ナミも村へ向かっていった。ルフィだけなら2人も付いてきたんだろうけど、屋敷の人と知り合いらしいウソップがいることと、何よりもルフィにとって頼りになる私がいるから、その判断に至ったんだと思う。

 

 まあ今から会いに行くのは女性だと直感したし、今回はルフィから目を離さないよ。

 

 唐突にルフィはポンと、拳と手のひらを合わせた。

 

「思い出した! なぁヤソップの息子なんだろ!?」

「な、なんで俺の親父の名を!?」

 

 ウソップは立ち止まって驚きながらこちらを向いた。

 長い鼻は似てないけど、確かに顔立ちに面影がある。

 

「俺と同じくらいの息子がいて、家族と別れるのは辛かったけど海に出られずにはいられなかったって。海に出たのは海賊旗が俺を呼んだからだっていつも言ってた」

「蟻の眉間だって撃ちぬける、ってヤソップも言ってたね」

「そうか! そうかっ!」

 

 ウソップは嬉しそうに、手のひらを握りしめて喜んで聴いてくれている。

 

「元気かなぁ。シャンクスの船にまだいるよな?」

「うん。なんたってシャンクスの船の1番の狙撃手だからね」

「ん? シャンク、ス……? 赤髪の!?」

 

 赤髪といえばシャンクス、シャンクスといえば赤髪。

 私は自慢の赤髪のほうを指でいじる。

 

「おまっそれっ、大海賊の名前じゃねぇか!」

「そうそう! 世界一の大海賊なんだよ!」

「俺の麦わら帽子、シャンクスから預かったんだ」

 

 証拠を見せるべく、ルフィは自分の麦わら帽子を指差して宣言した。私のお父さんのことを大海賊だって尊敬してくれているし、赤髪海賊団の1番の狙撃手はウソップのお父さんだし、ルフィと同じくらい私もウソップのことをますます気に入った。

 

「ウソじゃ、ねぇんだな……俺の親父は勇敢な海の戦士なんだ……そうか、そうかっ!」

 

 くぅ~と唸りながらウソップは身体を縮こませて、さらに嬉しがった。

 

「……この声」

『面倒なことをせずにころして奪えばいいだろ』

 

「ど、どうした?……!」

「……。」

 

 ヘッドホンをはずして耳をすます私を見て、顔にギューって力を入れて黙っているルフィが人差し指を口にあてた。私とルフィの様子に、ウソップも慌てて口を手のひらで閉じる。

 

『いや、政府に追われることなく財産を手に入れたい』

『まどろこっしいな』

『お前は計画に従えばいい』

『へいへい』

 

 海賊か、盗賊か。

 その密談といったところかな。

 

『明朝、部下どもを率いて村を襲撃し、騒ぎを起こせ。その間にお嬢様に催眠術で遺書を書かせろ。内容を間違えるな。全ての遺産は私が最も信頼する執事、クラハドールに譲る、だ』

『オーケー、キャプテン・クロ』

『その名を軽々しく口にするな。この計画のために何年かけたと思ってる』

『そう怒るな。俺はあんたの指示に従うだけさ』

 

 話はそこで終わり、2人の男の距離は離れていく。

 1人は海岸へ、もう1人は屋敷へ。

 

「もういいよ」

「「ぷはぁー!」」

 

 呼吸を止めるくらい、息を潜めていた、ルフィたちがかわいい。

 

「まとめると―――」

 

 屋敷のお嬢様がクラハドールという執事に命が狙われていることや、彼の部下が村を襲うことを伝えると、居ても立っても居られないウソップが屋敷へ向かって1人で走っていく。

 

「カヤが……危ない……

 海賊が来るぞォー!!

 

 その叫びは私たちの耳へ響く、とても悲痛な声だった。

 

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