麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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・たくさんのウタ作品が増えてて嬉しい。

・書いててふと思った。ウタじゃなくてサンジに、ルフィの胃袋をつかまれちゃってる! これが三角関係!?


第13話 クリーク

 

 重傷のゾロをレストランで治療させてもらっていたら、いつの間にかメリー号が消えていた。ウソップはナミだけ逃げたんだって憤慨してたけど、私とルフィは絶対に追いかけて問いただすつもりだ。何か力になれないかって。

 

 ゾロをこのあとの戦いから避難させる意味もあって、皆には小舟で追いかけてもらい、私とルフィだけがレストランへ残ることにした。

 

 確かナミは『村を買う』って使命のように言ってたし、満足して帰ったミホークさんはともかく、クリークの艦隊の残党とリスクを冒してまで戦いたくなかったのかな。

 

「くそっ、くそっ、まさか鷹の目がまだ追ってきていたとは!!」

 

 船の切断面の道を強く叩きながら、クリークが何人か引き連れてレストランへ近づいてきた。もしかすると、その額の包帯はミホークさんから逃げる時にできた傷かもね。

 

「だが俺は運がいい。航海日誌のついでに、この船を貰ってやる」

「余裕がなさそうだな、クソゴリラ」

 

 ライターで煙草に火を付けて、煙を吐きながらサンジが挑発した。

 

 このレストラン自体の戦力は全く減っていないのに、ミホークさん1人で艦隊を壊滅状態にしてくれたもんね。ホントに運がいいのは一体どっちなのか。

 

「船を失っただけだ!! 兵士はまだまだ残っているし、船と物資さえあれば建て直せる。いずれ俺はあの海を制覇して海賊王になるんだ!!」

 

「海賊王?」

 

 すでにコック服を脱いでいて、代わりにシャツの上へ赤いパーカーを羽織ったルフィが前に出る。でも私は着替える暇なかったし、ミニスカートのまま戦うのは初めてかな。

 

 ルフィは麦わら帽子を被りなおしながら、笑みを浮かべた。

 

「お前が海賊王だって? そりゃ無理だな」

「なにィ? 俺は東の海の覇者、首領クリーク様だぞ?」

 

 東の海の覇者って胸を張っているけど、ガープさんよりもずっと弱そうだよね。

 

「それを貴様、何様のつもりだ!!」

「モンキー・D・ルフィ、海賊王になるのは俺だ」

 

「ほう、ガキたちで海賊ごっこか?」

「試してみるか?」

 

 挑発を受け取り、ルフィは喧嘩の相手を見つけたらしい。サンジたちコックも、開戦を今か今かと待っている。

 

「サンジさん! 船を渡してくださいッ!」

「いらねぇお世話だ」

 

 とても痩せているおじさんが、サンジへ向かってトンファーで攻撃するけど、革靴の裏で受け止める。

 

「このままじゃ、首領は皆殺しにする気なんだ!」

「お節介、だっての!!」

 

 足技で弾いておじさんの腹に蹴りを入れる。でもまだ立ち向かってこようとしてるし、心構えからして結構強いね。

 

「パール、その女を人質にでもしておけ」

「了解しましたァ、首領!」

「なっ!(いと)しのウタちゃんをだとぉ!? 」

 

 真珠のついた盾があちこちについた鎧で、両手にも小盾を持っている。防御特化の相手ってわけね。サンジは心配してくれるけど、私もそれなりに強いよ。

 

「ゴムゴムの(ピストル)!!」

「ウタウタ指揮者(コンダクター)♪」

 

 ルフィの伸びた腕がクリークの頬を捉えているうちに、私は指で五線譜をまとめてレイピア(ウタ)にする。

 

「ガッ! てめぇら! 悪魔の実の能力者かっ!?」

 

「えっ、金ぴかなのに違うのか!?」

「えっ、パルパルの真珠人間とかじゃないの!?」

 

「ハーッハッハッハ! 能力者相手にも鉄壁!」

 

 ガチーン、ってレイピアと小盾が音を立てる。

 やっぱり力では負けるか。

 

「ウタウタのなんちゃってピストル♪」

「へぶぅ!」

 

 レイピアから手を放して、がら空きの頬にパンチを当てる。重厚すぎる鎧を纏っていることで動きが遅すぎるんじゃないかな。小盾を闇雲に振るうけど、当たる気がしない。

 

 ふわりとミニスカートが揺れて。

 

「よっと♪」

「えっ……」

 

 足首に盾がないので、足払い。

 真珠鎧のおじさんは思いっきり転んだ。

 

「エイサ、ホイサ~♪」

「や、やめろぉーー!」

 

 持ち上げるのは大変なので、ウタいながら両肩を押しながら、ヨイショと海へ落としちゃった。かわいい鎧だけど、やっぱりそんな鎧は重すぎるよね。

 

(いーち) (にーっ) (さーん)♪」

 

 ブクブクと泡を立てながら沈んでいったけど、だんだん浮き上がってくる影が見える。

 

 ウタいながら私は五線譜を指でいじりながら、グルグルと毛糸みたいにまとめるように、思い通りの形にしていく。

 

 準備に時間がかかるけど、硬さを活かせる武器を思いついた。

 

せーのっ!

「ウタウタハンマー♪」

 

 ゴーーン、って頭の真珠に当たって白目を向いた。

 

 海で重い鎧を脱ぎ捨てたようだけど。

 柔なきなんとかに、なんとかってね。

 

 

「これならどうだァ!」

「わっ! 今度は爆発するのかっ!」

 

 金ぴかの鎧の肩からは、まるでビックリ箱のようにいろいろ出ているらしい。おもしろいし、ハデだけど、ルフィの周りには数々の武具が飛び散っていて、どれも有効打には至っていないらしい。鉄球もゴムの身体には効かないからね。

 

「よっと。これいいな」

 

 ルフィは落ちていた鉄の槍をバトンのように回して爆発する槍を弾き、空中で爆発させた。ルフィは武器を使うのはあまり得意じゃないけど、直線的な武器攻撃を防ぐくらいならできるみたい。

 

 それ、先端が折れてまるで鉄パイプみたいで、なんだか懐かしいな。

 

「まだなんか出てくるのか?」

「これならどうだァ!!」

 

 ルフィは『あぢぃ!』って慌てて飛び退けど、籠手には火炎放射器が付いているらしい。

 

「いいことを思いついた。お前ら能力者はカナヅチと聞く」

「おう。そうだぞ」

「うん。そうだよ」

 

 今ここにいないウソップからツッコミされた気がするけど、それはクリークが鎧に収納された小さな火薬玉を取り出すのを見たからかもしれない。

 

 ドガーン、という音。

 ルフィは避けるけど、大穴が空いて海面が見える。

 

「てめぇ! ジジイの船の当たったらどうしてくれんだ!」

 

 サンジやコックたちが非難した。次々と撒き散らし、海に浮く真っ二つの船は破壊されていっている。クリークもだいぶヤケになっているみたいだ。

 

「これもくれてやる。猛毒ガス弾『M・H・5』」

 

 自分はガスマスクを付けたけど、肩から飛び出した砲弾は紫色のガスをまき散らしている。このままじゃ、気絶している真珠おじさんも、地に伏せて戦況を見守るおじさんたちも危ないんだけどな。

 

「死ねぇーー 麦わらァ!!」

 

 ルフィが私を見たので、大きく頷き返した。

 ウタうために大きく息を吸う。

 

 大きく大きく...

 

せーのっ!

「ウタウタのバズーカーー♪」

 

 (ウタ)の衝撃波が毒ガスを直線的に大きく吹き飛ばし、両腕を伸ばしながらルフィは切り拓かれた道を走る。

 

「なんだとっ!」

「ゴムゴムのぉ~!!」

 

 ルフィやっちゃえ!

 

「バズーカーー!」

 

 その一撃は何度もパンチした鎧の右肩を砕き、毒ガスの砲弾はこれ以上出せなくなった。

 

「くそっ、これならどうだ!!」

「なっ!?」

 

 鎧の腹部が開き、鉄の網がルフィへ絡みついた。

 冷静に私はウタいながら五線譜をいじって弓を作る。

 

「なんだこれ! 取れねぇ!?」

「海の藻屑になれ! 麦わらァ!!」

 

「ウタウタ弓矢(アロー) セット」

 

 鎧の仕組みらしく火薬の衝撃で、ルフィは海へ向かって射出されてしまう。読めてたよ、そういう手段に出るって。

 

「ミルキーウェイ♪」

「助かった!」

 

 信じていてくれたから、ルフィは空中にある五線譜に両足をつけて、それを足場にステージへ勢いよく戻ってくる。

 

「くそっ! あの女さえいなければ!!」

「最高の相棒だろ?」

 

 ルフィはパンチをするべく腕を構えた。てか、相棒だってさ! そうだよ、私とルフィのコンビは世界最強なんだよねっ!

 

「ゴムゴムのぉ~」

「串刺しにしてやる!」

 

 クリークはマントを盾に向ける。

 

銃弾(ブレット)!!」

「ガハッ!」

 

 クリークがまるで針の山のようになったマントを盾にしたけど、ルフィは突き刺さることを気にせず強力な拳がクリークの頬を捉えて、ドンッて殴り込んだ。

 

「お、俺は海賊王になる男だぞ!!」

「ゴムゴムのガトリング!」

 

 無数の拳が、ステージへ倒れたクリークの鎧を次々と破壊していく。上から叩きつけることでいつもより威力が増している。

 

「こんなガキどもにぃー!!」

「うおおおおーー!!」

 

 貴方は結局、自分の可能性を信じていないんだろうね。いろんな武器を身に纏って海賊らしく戦ってるけど、どれも極めてはいなくて、破片になっていく金色の鎧からは武装が溢れてきて、ツギハギな衣装に思える。

 

 メッキが剥がれて見えた、その鍛え上げた身体を活かしきれていない。

 

「俺が海賊王になるって言ってるだろ!!」

 

 ルフィは気絶したクリークへ向かって宣言した。その堂々とした迫力はやっぱり昔より凄くかっこよくなった。

 

「そうだよねルフィ。だけどね?」

 

 なんだか、私の身体が横に揺れている気がする。

 

「なんか揺れてない?」

 

「アッハッハ! やりすぎたな!!」

「あっ、そっかぁ! アハハゴボゴボ」

 

 なーんだ、ルフィったら。

 もう半身が海に浸かっちゃったし、笑うしかない。

 

「ったく、しまらねぇやつらだ」

「「お、おぼれりゅ~」」

 

 視界が真っ暗になったけど、足だけで器用に泳げるらしいサンジが、海から助けてくれたらしい。ルフィを甲板にそっと投げて、私はゆっくりと横にしてくれる。

 

「「ありぎゃとうごじゃいましゅ……」」

「能力者も大変なんだな。さて」

 

 クリークたちも船員に助け出されているみたいだけど、人数が多すぎて残っている船はギューギュー詰めな状態だ。あれだけの船員を揃えるカリスマはあるのかもね。

 

 かなりこっぴどくやられただろうし、懲りてくれるといいんだけど。

 

 

 

***

 

 今日で最後になるということもあって、涙を流すコックたちと、戻ってきてくれたお客さんたちに向けて、いっぱい歌った。

 

 ルフィとサンジはテラスにいるみたいだ。

 サンジは毎晩最前列で聴きにきてくれたんだけどな。 

 

「なぁ、サンジはなんでこの船で働いてるんだ?」

「あ? なんだいきなり……昔クソジジイに命を救われてから、船で海上レストランを始めた。ここも元々は2人だったのさ」

 

 フー、っと白い煙を吐いた。

 

「苦労させられたぜ。海の上だから客はほとんど来ねぇし、ジジイは片足だし、俺はガキだったし。コック募集で来るのはチンピラだけだ。せっかく客が来ても怖がってな」

「でも楽しかったんだろ?」

 

 ルフィの質問に、サンジは再び白い煙を吐く。

 

 えっ、なんなのこの雰囲気、男同士だから分かるみたいな感じでしょうか。出会ってまだ数日なのに、もうゾロくらい阿吽の呼吸じゃん。あっ、そうじゃん、音楽家よりコックがまず欲しいって言ってたじゃん。そりゃあサンジのご飯は美味しいけどさ、そこまで胃袋を掴まれちゃったのカナ。ねぇルフィ、私も料理の練習するよ。

 

「ウタちゃんとナミさんもいることだし、お前らの仲間になるのは面白そうだがな。俺はジジイに育てられて、色んな物を叩き込まれた。返しきれねぇ恩がある。だからお前らとは」

 

「うーん、なぁサンジ」

 

 ルフィは呟くように、名を呼ぶ。

 

「恩返ししてほしいとか、そんなことのために助けたわけじゃねぇだろ」

「何……?」

 

「俺も昔、助けられたことあるんだ。シャンクスって言うんだけど知ってるか?」

「確か、大海賊の……」

 

「シャンクスはさ。この帽子と、それにウタを、俺に預けて行ったんだ。いつか2人で会いに来いって」

「それがなんだってんだ?」

 

「上手く言えねぇけど、あのサンジの父ちゃんも好きに生きて元気でいてくれればいいって思ってるんじゃねぇか?」

 

 ルフィをじっと見つめていたサンジは笑う。

 盗み聞きしてるゼフさんはお父さんなんだろうね。

 

「夢はあるか?」

「ああ。俺もいつか偉大なる航路へ行こうと思ってたんだ。オールブルーを見つけるんだ」

 

「オールブルー?」

「おっ、知らねぇのか?」

 

 いつも大人びている雰囲気だけど、サンジは子どものような声を発した。

 

「オールブルーってのは海域の名前だ。全ての海に居る全種類の魚が住んでる海でな。伝説の海と呼ばれているんだ!」

「へぇ~ 魚食い放題だな」

 

「コックにとっちゃ楽園なんだよ。そんな海はさぞ美しいだろうなぁ」

「ふーん、それなら俺だって全ての音楽がある島を知ってるぞ」

 

 全ての音楽かぁ~

 ...はぁ、まさかあの島のこと?

 

「なんだ、ルフィはそこに行きたいのか?」

「シャンクスから聞いたんだ。いつかウタを連れていってやりてぇ」

 

 私は白い髪をかき上げながら、その場を離れる。

 

 あまり気が進まないけれど、海賊王の音楽家としては行くべきのかしらね。ねぇルフィ、貴方と一緒ならアレと向き合えると思う?

 

 

***

 

 

 早朝。

 そろそろ料理の仕込みが始まる時間だけど。

 

 私たちは船を一隻もらえることになり、コックたちが日持ちする食材を積んでくれた。これからナミが1人で乗ったメリー号と、それを追いかけたヨサクたちの小舟を追いかける。

 

 あっ、もしかして、久しぶりに2人旅!?

 たまにはそういう時間があってもいいよねっ!

 

「あっ、サンジが来るぞ!」

「えっ、ほんと!?」

 

 荷物を持ったサンジが私たちへ近づいてくる。

 あと少し、あと少し、って待っていたおかげかもね。

 

「すまん。レストランをクビになっちまった。良かったらお前らの仲間にしちゃくれねぇか」

 

「ししし ! これからよろしくな、サンジ」

「うん! これからよろしく」

 

 ゼフさんが何か言ってくれたのかもしれないけど、他のコックたちには別れを告げず、船へ乗り込もうとしている。

 

「いいのか、あいさつ」

「いいんだ」

 

「おいサンジ」

 

 ゼフさんが名を呼ぶ声は、確かにサンジへ届いた。

 

「風邪ひくなよ」

 

 たったそれだけだ。

 でも父親からの何よりもの激励。

 

「オーナーゼフッ!」

 

 振り返って甲板に額をつけ、父親へ叫んだ。

 

「長い間、クソお世話になりました!! 

 このご恩は一生……忘れませんッ!!」

 

 涙を流しながら、感謝を叫んだ。

 

 

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