麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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・書き上げたものを2話分に分けたので、短めです。
・だって町デートだもの。


第17話 ロジャー

 

 ルフィに先を越されたのは悔しい。私の赤髪のほうがほんの少し映ってるし、ココヤシ村で宴してた時に撮ったんだろうけど、どうせなら拡大しすぎないで私もしっかり映してほしかった。

 

 私ってそんなに海賊らしくないのかな。

 

『あっはっは! 俺賞金首だ~!』

『なんでルフィのがあって私のがないの!?』

『俺、映ってるよな! なっ!?』

『ただの背中じゃねぇか』

『これで海軍や賞金稼ぎに狙われるのね……』

『ナミさんとウタちゃんは俺が守るからね~♡』

 

 まあ、マキノたちやシャンクスたちへ、『私たちが元気だ』って伝わるかな。東の海としては破格らしい3000万ベリーの手配書でひと悶着あったけど、これ以上に名を挙げていく予定だし、次こそは私も世界に知られてみせるからね。

 

 私たちは、着実にグランドラインへ近づいていた。

 

 ローグタウンという町は『始まりと終わりの町』と呼ばれているらしい。あの海賊王ロジャーが生まれ、そして処刑された町だとシャンクスからも聞いたことがある。海軍が駐留しているみたいだけど、ルフィも私も興味を引かれないはずもなく、補給も兼ねて町の港へ船を付けた。

 

「よしっ、俺たちは処刑台を見てくる!」

「ごめんね。待ちきれないからっ!」

 

 ルフィと私はメリー号を飛び出して、町へ繰り出す。

 今日は雨が降るらしいからお揃いの赤いパーカーで。

 

 頼れる航海士としてナミが言うには、すごく晴れているけれど今日の夜は嵐が来るらしいし、一晩はこの島で過ごす予定だ。麦わら帽子のマークが描かれた帆も畳んでしまえば、かわいい羊の船にしか見えない。

 

「すっげー!」

「人がいっぱいだね!」

 

 処刑台は観光地として扱われているらしく、そこまでの道には露店も多い。ルフィは鼻をヒクヒクさせて、涎を垂らす。いくら賞金首になってもまだまだ子どもなとこがあるよね。やっぱり私がいないとダメなんだよね。

 

「ウタ! あっちから美味そうな匂い!」

「えっ、そっち!?」

 

 ルフィが指差したのは、なぜか裏路地に出していて、だいぶ売れ残っている様子の露店らしい。いきなりフラフラ~とどっか行っちゃうし、手を繋いであげたほうがいいのかな。いや、でもゴムがビヨーンってして、私があちこちへ引っ張られるだけか。

 

 冷めきった串焼きを大量に積んだまま、自分は瓶のお酒を飲んでいる店主さんが私たちへ気づいたようだ。

 

「へっ、言われた通り、気まぐれで店出してみりゃあ、まさか本当に客が来るとは」

「爺さん! これ全部くれ!」

 

 『ぜ、全部か!?』とおじいさんが驚くけど、待ちきれないルフィは並べられたものをムシャムシャと食べていく。お肉で口の中がまるでリスみたいに満たされたため、それこそ前に喧嘩したクラハドールみたいに、それぞれの指の間に串を挟んだ。

 

 お会計を済ませた私も、残してくれている3本を手にした。

 

「今日は大食いが2人、べっぴんさんも1人来るとはな、世の中まだ捨てたもんじゃねぇな」

 

 ん、美味しい。

 しっとりと甘辛なタレのおかげで冷めてても美味しい。

 

 私やマキノやナミがかわいいのは知っているけど、そういう褒め方は初めてだ。私はモグモグしながら笑顔で手を振った。

 

「坊主、嬢ちゃん、こんな腐った町に2人で観光か?」

「ゴクリ うんっ! 航海の途中だけどね。」

「ゴクリ 俺たちもうすぐグランドラインへ行くんだ!」

 

「ほう!? あの魔の海へ!?」

「ああ。ワンピースを手に入れて、俺は海賊王になるからな」

 

 私は串を丁寧にまとめて、ルフィと一緒に『ごちそうさま』を告げるけど、お爺さんはなぜだか固まったままだ。あまり気迫を感じられない瞳だったけど、今は目を見開いてなんだか輝きを取り戻している。

 

「まるでロジャーだ……」

「あっ、俺たち処刑台に行くんだった!」

「いつかまた来るから。元気でねっ♪」

 

 私たちはそう言い残して、再び広場へ向かう。

 

 まあ、ルフィだけならあれこれ興味を引かれて、こういう裏路地に入り込んで迷うだろうけど、今のルフィには私がいるもんね。私もぶっちゃけここがどこか分からないけど、1番賑やかな場所が目的地だろうし。

 

 この辺り、すごいガムが貼りついてるけど。

 私たちは駄菓子屋へ寄った。

 

 駄菓子屋のおばあちゃんに教えてもらったように、ガムを風船みたいにプクーって膨らませながら歩いていると、ようやく広場が見えてきた。おばあちゃんは食べたガムは船の甲板にでも付けておけって言ってたけど、私はルフィのと合わせて、くるくると捨てるための紙に包んだ。

 

 そして、これが。

 

「これが海賊王が処刑された場所……」

「なんだか、すごい……」

 

 人で賑わう町の広場には本来合っていないけれど、太陽に照らされる処刑台を見上げれば不思議な感覚がする。ボロボロで朽ち果てそうなのに決して崩れず、そして上から誰かが見ているような感覚というか、なんというか神々(こうごう)しい。

 

 

 シャンクス、私とルフィもここへ来たよ。

 

 『ローグタウンってとこで?』

 『ロジャー船長は故郷を死に場所に選んだのさ』

 

 『なんで? すごくつよかったんでしょ?』

 『そりゃあ新時代に懸けるためだな』

 

 『ねぇ、新時代って何?』

 『ロジャー船長はこう言ったのさ。よく聴けよ』

 

 ちゃんと憶えてるよ、シャンクス。

 

 

「――― オレの財宝か。欲しけりゃくれてやる。探せ。この世のすべてをそこへ置いてきた。」

 

「なあウタ、それってもしかして」

 

 もう何かを察しているルフィへ向かって、笑顔で大きく頷く。

 

 私がシャンクスから託された海賊王ロジャーの(ウタ)は、これで次に海賊王になるルフィにも伝わったよね。本職は音楽家だけど、さっきのは吟遊詩人っぽくて私ってすごいよね。まあ、なんだか、慣れないことしちゃうと恥ずかしいってことかな。

 

「ど、どうだった?」

 

 私は、手のひらでパタパタと顔の熱を冷ます。

 ルフィの顔を今ちょっと見れないかも。

 

「なんだ、その、ありがとな!」

「う、うんっ! どういたしましてだよ!」

 

 それにしても。

 

 私に伝えたシャンクスはその時を思い出したように、古びた麦わら帽子で隠そうとしていた目からすごく涙が溢れていたけど、大切な人だったんだろうな。処刑されるところを、こうやって処刑台の下からシャンクスも見上げるしかなかったのかな。死ぬって、大切な人に会えなくなるって、とても辛いことだと思う。

 

「ここで新時代が始まったんだね」

「新時代かぁ~」

 

 この東の海でもいろんな海賊団と喧嘩したし、世界の海にはまだまだモーガニアっていう悪い海賊がたくさんいるみたいだけど、シャンクスや私たちのような夢見る海賊たちはまだワンピースを追い求めている。

 

「すげぇな、前の海賊王も」

 

 ししし、とルフィは笑う。

 次の海賊王は自分がなるもんね。

 

「俺ちょっと登ってみてくる!」

「はいはい」

 

 楽しそうにルフィは処刑台の上へ手を伸ばして、ロケットのようにビューンって上がって行った。

 

 

「ねぇルフィ」

 

 もしルフィがそこで処刑される光景なんて見てしまったら、たぶん私は耐えられないよ?

 

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