麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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・数日前から、Youtubeのワンピース公式にて映画連動エピソードの1029話、1030話が公開されておりますね。今日はそれぞれ3回ほど見直して映画のことを思い出して心を砕かれました。

・この小説は『独自設定』と『ヤンデレ(保険)』を含みますので、改めてご了承ください。
・それと『残酷な描写』もあるかもしれませんから、ご注意ください。




第18話 ウタ

 あれ、あのプカプカしているあのバラバラなやつって赤い鼻のおじさんだよね。それに周りをよく見れば、見たことのあるハデな船員もいるし、ライオン君だっている。

 

 私たち、処刑台に夢中で気付かなかったんだ。

 

「ルフィ! 敵の海賊が来てる!!」

 

 処刑台の上にいるルフィへ呼びかけるけど。

 

「な、なんだこりゃ!?」

「ふっふっふ、よぉし、上手くいったぜェ!」

 

 ここからじゃ様子が詳しくは見えないけど、倒れ込んだルフィは首と腕を、鉄で拘束されていて、まるで処刑を待つような姿となっている。もしかすると、あいつら先回りしてこの町で待っていたのかもしれない。

 

 早く助けに行きたいけど、あの処刑台を破壊できるほどの即興の(ウタ)はないし。下手に動けば、数でやられてしまう。

 

「なんだ赤っ鼻か」

「処刑されるって分かってんのか!?」

 

「へぇ。処刑って初めて見るなぁ」

「緊張しろ! てめぇが死ぬ本人だよ!?」

 

「なにぃー! ふざけんなーっ!!」

「てめぇがふざけんなァ!」

 

 まだ楽しそうにやっているおかげでほんの少し時間はあるけど、今のところゾロやサンジは近くにいないみたいだし、どうにか私だけでまずルフィを助けるしかないかな。この数を相手にいつまで(ウタ)い続けられるかどうか分かんないけど。

 

「やるしかないよね」

 

 これから始まる戦い(ステージ)のために、私は大きく深呼吸した。

 

「残念だけど、麦わらも終わりね」

「この声、まさかアルビダ?」

 

 ずいぶんと痩せたしそばかすもないけど、肩に担いだ金棒は見覚えがあって、痩せて高さが少し変わったとはいえ声がほとんどそのままだ。ここまで追いかけてくるなんて、どれだけルフィにリベンジしたいんだろう。

 

「フフッ、そばかすが消えたのによく気づいたわね」

 

 いや、そばかすだけじゃないよね。

 むしろ体型が1番変わったよね。

 

「今ではあんたと同じく、アタシも悪魔の実の能力者さ。このスベスベの肌は、歌なんかよりよっぽど優れているわよ」

 

 確かに、世の中のたくさんの女性が羨むくらいにスベスベの肌だけど、私はそんな能力に頼らなくてもスベスベだもん。私の後ろ髪だって、プンプンと怒りを主張しているよ。

 

「なに、またウタをバカにしてる?」

「ええ。男とライオン1匹に苦戦したと聞いたもの」

 

 毛皮おじさんは鞭をしならせているし、ライオンくんも構えているけど、あの時より私だって強くなったし油断もしないからもう苦戦はしない。

 

 でも言われた通り、2輪車の剣士とか、スベスベの実の能力も未知な状態で私だけでルフィを助け出すのはかなりきついかな。

 

「この人数を相手に、体力が持つかしら?」

「さあ。やってみないと分かんないよ」

 

 ルフィのことが気がかりで時折り見てたけど、そんな私に気づいたのかアルビダは不敵な笑みをこぼした。

 

「そんなに気になるのかしら」

「処刑されるまで時間の問題さ」

「俺たちに泥を塗ったことを後悔するんだな!」

 

 あれこれと幸せそうに、笑顔で言ってるけど、なんかイライラしてきた。そして、アルビダはうっとりと自分の頬をスベスベとさする。

 

「アタシの顔を初めて殴った男、勿体ないわね」

「……は?」

 

 まさかルフィのことを好きになったのかしら。

 他の奴らもルフィを処刑するのがそんなに幸せ?

 

「……もういいわ」

 

 その幸せそうな表情(かお)、壊してあげる。

 

「さあ、戦争を始めましょうか。」

 

 白い髪をかき上げて、宣戦布告を行う。

 

「なに、この冷たい空気!?」

「所詮は小娘1人っすよ!」

「前回は油断したが今度こそ!」

「ガウ~」

 

 本能で怯えている獣が、1番賢いわね。

 

 そもそも他の能力と違って、この能力は逸脱して最強の部類なのだから、この程度の奴らは相手にもならない。始まりの(ウタ)を聴いてしまって私の世界に入った時点で、その時点で終わりよ。

 

「殲滅するわ。

 ウタウタの独唱(ソロ) 第一楽章」

 

 王の貴方が君臨するために私は(ウタ)おう。

 太陽の影として、魔女と恐れられようとも。

 

「う、動けない。アンタは一体なんなのよ!?」

「どうでもいいでしょう、(みな)死ぬのだから。」

 

 それにしても。あの赤い鼻のヤツを制御できないのは誤算だったわ。早めにこいつらを殺して、今扱える中でも最高の(ウタ)でどうにかして能力ごと消しておかないといけない。廻る中でいつか覚醒したのなら、いろいろと厄介な敵になるでしょうから。

 

「さあ、(ウタ)にひれ伏しなさい。」

 

 私は腕をゆっくりと上げて準備する。

 すでに断頭台は用意してあげたから。

 

「歯向かう愚民ども、己の首を差しだ……」

俺は、海賊王になる男だ!!

 

 バキバキバキと、処刑台が割れ始める音がする。

 恐らくギア2を使って脱出しようとしている。

 

「……そう」

 

 私は振り下ろそうとした号令(ウタ)を途中で終わらせた。こういうやり方、貴方はあまり好きじゃなかったわね。だったら自分で運命に抗いなさい。『だから死なないで。』

 

「なっ、どこにそんなハデな力が!?」

 

「よくわかんねぇけど、悲しい歌が聴こえた!!」

 

 だったら。

 元気よく(ウタ)わないとねっ!

 

「がんばって、ルフィー♪」

 

 いつの間にか暗雲が立ち込めて広場は暗くなり、処刑台の上の様子が見づらくなっちゃってる。

 

 それでも私はルフィへ届くように、全力で応援するために(ウタ)う。みんな太陽を見るかのようにルフィたちがいる場所を見つめているし、今なら無防備な私を襲ってこなさそうだし。

 

 それに。

 

「あの処刑台さえ斬り倒せば……!」

「どけぇ! ザコに用はねぇんだよ!」

 

 頼れる実力者のゾロやサンジも。

 

「ウソップ、あんた狙撃しなさい!」

「風はともかく、さすがに距離が遠い!」

 

 頼れる知能のナミやウソップも。

 

ルフィ、絶対生きてーー!!

 

 私はルフィが死ぬ気で海賊王を目指しているのは知っているけど、でも死んでほしくないの。大切な幼馴染にはずっと隣で笑っていてほしいから。

 

「ここでハデに死ねェ! 麦わらァ!!」

 

「死ぬかァー! あと少しなのにぃ~!!」

 

 ギシギシ メリメリと処刑台は音を立てる。

 

 海賊王ロジャーの死に場所で、死ぬ気で処刑されることを決して諦めない姿を、多くの(ヒト)が見つめた。あと少しのところで解放されようとしているけど、振り上げられたサーベルの刃はギラギラと光り輝く。

 

「だめぇーー!」

 

 いくら手を伸ばしても、全然届かない。

 

 もっとウタウタに頼ればよかったのかな。

 また私は過ちを繰り返した。

 

俺は死なねェーーー!!

 

いやあああああ

 

 ピカッと光って。

 ゴロゴロゴロと音を立てる。

 

「る……ふぃ……?」

 

 雷が落ちて燃え始めた処刑台は炎に包まれ。

 やがてガラガラと崩れ落ちる。

 

 もしかして、天罰?

 

「かみなり、うたれて……」

 

 あっ、はやくあれ、消さないと

 ウタわないと。

 

「やだ……やだよルフィ……」

 

 身体がふるえる。

 ぽつぽつと地面が濡れてるし雨かな。

 

ルフィがいなくなる……?

 サボのようにいなくなる?

 エースはいなくならないっていった

 

シャンクスはお仕事だよね。どうしよう火が消えないよ。教えておとうさん。ルフィといい子にしてろっていってたけど。ウタがわるいんだよね。だってルフィはわるくないもん。

 

だって

あなたをずっとまもれるセカイはつくったのに

 

 こんなせかい

 

 ふるえるし さむいし つめたいよ

 

 こおりとあめがふるよ?

 

 『みぞれ』っていうんだよね?

 

 やだやだやだ

 

 はやくきえて

 

 じゃないと

 

 ぜんぶけすよ?

 

 

「……ルフィ?」

 

 

 嵐のように降り始めた雨が火を沈めてくれたみたいだけど、瓦礫を吹き飛ばしてドンッと立ったのは1人だけだ。グググと背伸びをしていると、その黒髪へパサっと麦わら帽子がかぶさった。

 

「ルフィ!!」

 

 そして貴方はグイッと両腕を天へ突きあげた。

 この嵐の中で太陽のように輝いている笑顔。

 

ウタ~! 俺生きてるぞ~~!!

 

 ルフィはニカっと笑って、他の誰でもなく、まず私にそう宣言してくれたんだ。

 

「うんっ! ちゃんと! 生きてるっ!」

 

 ずずずーっと、私は鼻水をすする。

 私も精いっぱいの笑顔を返したいから。

 

「ウタ、ごめん」

「ううん、いいよ」

 

 ルフィは私の前に来てくれた。

 ドクンドクンと心臓の歌が聴こえる。

 

「これからもいっぱい心配かけると思う」

「うん、知ってる。だってルフィだもん」

 

 お日さまのように温かい。

 もう震えは収まったよ。

 

 ルフィのおかげで、私はちゃんと笑顔でいられるんだよ。

 

 

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