麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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・『R-18版番外編』を気まぐれで投稿したので、18歳以上の方は検索して読んでいただければ幸いです。といっても本編はこっちでメインに書いていくので、年齢問わず引き続きお楽しみください!!

・この時点では、まさかラブーンの待ってる海賊団の音楽家が登場して、さらに一味入りするとは思わなかったなぁ。


第21話 ラブーン

 

「さて最初から話そうか―――」

 

 おじいちゃんのリゾートに案内してもらって、話を聴いた。

 

 世界一大きいクジラの種、このクジラさんはラブーンって言うらしいけど、王子様とお姫様は食糧として狙っていたみたい。そして、この身体の中にいるときの地鳴りは、東の海とグランドラインの境界とかにそびえ立つ山にラブーンが頭突きでぶつかってるからだって。境界を壊せば会えるかもしれないからって。

 

 ある海賊さんたちの仲間だったラブーンは、仲間の帰りをひたすら待っているんだ。

 

「50年も前の話だがな」

 

 50年、待ち続けているんだ。

 私はたぶん10年だって耐えられないよ。

 

 いつも側にルフィがいるおかげで、私はなんとか耐えられたけどね。だって、シャンクスはよく無茶をするし、ベックさんはすぐモテるし、ルウは食べすぎだし、ヤソップは胸を張って歩いて転ぶし、他のみんなもお酒飲みすぎで心配だし、酔ってお腹出して寝てるし、だから、早くみんなに会いたいんだ。

 

 立派になって、あんまり言葉にして伝えられなかった『ありがとう』を届けたいって思ってる。

 

 

 メリー号は出口へ向かって、ラブーンの中にある水路を進んでいた。

 

「やっぱすっげー 爺さんが作ったのか!?」

「おじいちゃんは船大工なの?」

 

 私たちはクロッカスさんのリゾートの船をメリー号で引っ張りつつ、一度ラブーンの中から出ることにした。鉄板で張り巡らされたこの巨大な通路はメリー号だって通れるほどだし。

 

「なに、医者の遊び心だ」

「お医者さんだったんだ!」

「じゃ、うちの船医になってくれよ!」

 

 新聞を読んでいるクロッカスさんは、フッと笑みをこぼした。だって、こんなすごいものを作れるお医者さんで、50年もラブーンを守っているくらい優しいし、なんかすごく強そうだし、ぜひ船に乗ってほしい。

 

「遠慮しておく。無茶をするのはもうこりごりだ」

「「ぶ~」」

 

 私たちが不満を漏らすけどもそれには応じてくれず、リゾートの島から身軽に降りてガチャガチャと操作してくれて、出口の門が開いていった。

 

 ぼーっとしているラブーンの身体の扉から船は本物の海へ出た。

 

「「出れたー!」」

 

「あっ、こいつらどうする?」

「捨てておけ」

 

 クロッカスさんに言われるがままに、ルフィは気絶していた王子様とお姫様をポイッと海へ落とした。またラブーンを狙うかもしれないけど、クロッカスさんがいるなら絶対に無理だろうし。

 

 衝撃で起きたみたいだけど、あれこれ言い残してどこかへ泳いでいった。まあ、町のためには他の手段を考えてもらうしかないね。

 

「でっけぇ~」

「ホントに山みたい」

 

 クロッカスさんの岬の家で、ナミたちはグランドラインの詳細を聴いてくれているから、手持ち無沙汰となっている私たちはラブーンを見上げる。

 

 頭の先は傷だらけで、何度も何度もそびえ立つ山にぶつかったんだ。まだ諦めていないし、仲間の生還を信じている証拠なんだ。だって生きて会えないなんて、つらすぎるもんね。

 

「あと何年で帰ってくるか楽しみだな」

「だって友達と約束したんだもんね」

 

「……恐らく死んださ」

 

 まだ聴いてくれないだろうけど、私たちが空を見てボーっとしているラブーンへ話しかけていると、何かの紙を持ってきたクロッカスさんがそう呟いた。

 

「グランドラインはそう甘いものじゃない。季節、天候、海流、風向き、一切の常識が通用しない海だ」

 

 私もとても怖かったのは憶えている。

 

 急に曇って氷塊が落ちてきたり、ずっと雷がゴロピカドンしてたり、砂を運ぶ強い風が続いたり、目の前で火山が噴火したり、たとえ安全な船の中にいてもとっても寒かったり暑かったんだ。そんな時シャンクスはずっと抱きしめてくれた。

 

「この海の果てにワンピースはあるんだろ?」

「シャンクスたちだっているもんね!」

 

 たぶんシャンクスもいろいろ忙しいのに、幼い私を守ってくれたんだ。安全な私だけのウタの世界だってあるのに、あまりそこに閉じこもらないでほしいって、少しでも海が穏やかなときは『新世界』へ連れ出してくれた。

 

 だから行くんだ、最高のステージへ。

 

「お前たちは海賊王を目指すというわけか。その道は険しいぞ」

 

 まるで体験したかのように、クロッカスさんはそう呟いた。

 

「すごい冒険が待ってるってことなんだな!」

「みんながいるから乗り越えられると思う!」

「そうか。ならば何も言うまい」

 

 たぶん、いっぱいつらいことがあるんだろうけど、それ以上に、冒険がうずうずするし、夢を叶えるためにワクワクするよね。

 

 なんにせよ、と呟いてクロッカスさんはラブーンへ目を向けた。

 

「あいつらが旅立ってあれから50年だ。その海賊団の名を聞くこともないからな。つまり奴らは死んだか、仮に生きていてもこの海には来れまい」

 

 私とルフィは首を傾げて、コツンってした。

 

「海賊たちの故郷もこいつの故郷も西の海だ。今は穏やかだが、前半の海のここですら激しく荒れるときがある。そして何より、人知を超える程の強さを持った海賊たちもうようよいる海だ」

 

 それこそ、ミホークさんの領域はまだまだ遠く感じちゃう。

 

「グランドラインの海にトラウマを持って、故郷へ逃げ帰ったヤツは多いというわけだ」

 

 そういえば魚人島も確かグランドラインにあるし、もしかするとアーロンたちも逃げてきたのかな。この魔の海から。

 

「これはあいつの形見だ……どうした?」

「ブフッ これすごいメロディーじゃん!」

 

 古びた楽譜を見せてくれたけど。

 これは歌詞もひどい! 最高だね!

 

「楽譜を読めるのか?」

 

「うん、私も音楽家なんだ!

 世界の歌姫になるのが夢!」

 

 たぶん弦楽器かな。

 この音楽家の演奏を生で聴いてみたい。

 

 普段はあまり歌わなさそうだけど、走り書きで書いた楽譜のメロディーへ充てた歌詞は面白くてセンスがある。

 

「う~ん、う~ん、よしっ!!」

 

 唸っていたルフィも、何か閃いたようだ。

 

 足がポンプのように膨らんで、ゴムは蒸気を放ち始める。

 

「ウタ、1発だけ使うぞ。ギア2」

「あやつ何をする気だ?」

「ルフィらしいことだよ♪」

 

 ルフィは勢いよくジャンプして、ラブーンの頭の上に乗った。

 

「ゴムゴムのJET(ピストル)!!!」

 

 バキューンって、強力な眠気覚ましの一撃が大きな音を立てた。

 

ブオ~ン!?

 

 予想外の痛みに泣いてる。

 ようやく聴こえてきたよ、君の感情(ウタ)が。

 

 私も(ウタ)うから、眠気覚ましを。

 

「白いハンカチ♪

 見つかるなヤツに にげろ♪」

 

ブーン! ブーン!

「よっしゃ! チャ~ンス!」

 

 ラブーンがイヤだイヤだと頭を振るっているところへ、ギア2を解除したルフィの振り落ろした拳が当たる。

 

 やっぱり眠気覚ましの楽譜(ウタ)なんだね。

 ラブーンも聴いたことがあるみたい。

 

「白いハンカチ♪

 つかまるなタコに♪」

 

「うわっ! やるじゃねぇか!」

ブンッ!

 

 どうだと言わんばかりに、山へ叩きつけたルフィへ向かってラブーンがしっかりと目を向けた。

 

 笑顔でルフィは立ち上がって、再びラブーンをドガドガと殴り始めた。ラブーンも鍛え上げた頭突きでルフィを弾き飛ばす。

 

 もうごちゃごちゃで楽しそうに喧嘩してるよ。

 今ラブーンは私たちを見てくれている。

 

「白いハンカチ♪

 スミだらけ 幸せの黒いハンカチ~♪」

 

 黒い海賊旗のことかな。

 

 そういうの海賊らしくて、きっと楽しい海賊団なんだろうな。賢いラブーンにいっぱいの音楽を聴かせてたんだと思う。瞳に輝きを取り戻したラブーンはリズムに乗って楽しそうに笑っているし、いつかまた弦楽器の演奏で歌えるといいね。

 

「引き分けだ!!」

ブーン??

 

 ルフィが急に、ドンッと手のひらを向けた。

 

「俺とお前の勝負はついてねぇ。だから俺がライバルだ」

 

 ししし、っと挑戦的にルフィは笑う。

 じーっとラブーンはその瞳を見つめる。

 

「俺達がグランドラインを一周したらまた会いに来るから。そしたらまたケンカしよう!!」

 

ブオオオオーーン!!

 

 望むところだ、だってさ。

 

 

 そして。

 

 ルフィと私はメリー号からペンキを持ってきて、ラブーンの頭にペタペタと塗っていく。

 

「できた!」

「次来るまでに消すなよ!」

 

 麦わら海賊団のマークをでっかく描いてあげた。

 

 ラブーンはメリー号の帆を見て、それと同じものが描いてるんだ~って思ってくれて、嬉しそうに頷いた。これでもう山に頭突きすることもしないと思う。だってルフィと喧嘩するためには、次に会う時も元気でいてくれないといけないからね。

 

「フッ、お前たち……」

「なんだ?」

「まずかった?」

 

 古傷がいっぱい残る頭に重なるように、勝手に描いちゃったけど、クロッカスさんは笑顔だし、大丈夫そうかな。

 

「2人とも麦わら帽子がよく似合っておる」

「ししし だろ?」

「べ、別にこれ日焼け防止だからねっ!?」

 

 お揃いなのは偶然なんですけどね。

 クシクシと赤髪のほうを手で()く。

 

 クロッカスさんは、年老いた優しい表情で空を見上げた。まるで誰かへ語り掛けるような。

 

「そ、そうだ! ラブーンも一緒に歌おうよ!」

 

 せーのっ!

 

「ビンクスの酒を届けに行くよ♪」

 

「「海風 気まかせ 波まかせ♪」」

ブーン♪

 

 ラブーンもすごく大きな声で、穏やかな波の中でゆらゆらと歌ってくれる。

 

 ルフィは相変わらず、こぶしがきいた歌い方。

 ゴムみたいに伸びてて、私は大好きなんだ。

 

「「ヨホホホ ヨホホホ~♪」」

 

 なんだか不思議。

 キュイキュイ、と幼い声も聴こえるんだ。

 

 

 また会おうねラブーン。

 





・歌詞コード
 (ビンクスの酒~ルンバー海賊団VER.~)
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