麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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・ウタのすべての歌がyoutubeでAdoさんが投稿してくださってますね。歌声は最高だし、ミュージックビデオもいろいろ妄想させられる。

・前話で出た『ビンクスの酒』もありますよ。筆者は聴く度に泣いてますよ。
・今回の歌は「風のゆくえ」を出しますので、良かったら聴いてみてください。


第22話 魔女

 

 私たちは今、ウイスキーピークと呼ばれる町を目指していた。

 

「雪やこんこ あられやこんこ

 降っては降っては ずんずん積もる♪」

 

 Mr.9とミス・ウェンズデーっていう名前の、長いからミスミスコンビでいいか、面白い恰好の王子様とお姫様に頼まれたからだ。乗ってきた小舟がいつの間にか沈んでたみたいで、気品とかプライドとか捨てて土下座までしたのだから、ちゃんと送り届けてあげないとね。

 

「できた! 雪の白い熊さんのシロクマ!」

 

 ぬぼーっとしてる表情とか難しかったけどね。がんばってフワフワな雪のまま作りたいから力加減が大変だった。私はパンパンと両手を叩いて、しもやけ防止の手袋についた雪を払った。

 

「どうだ! 海賊王に近い男、雪だるマン!」

 

 黒いマントをつけて大きな樽を無理やり頭に乗せた、まんまるカワイイ雪だるまがドーンと現れた。樽の下へ頭から被せた赤い布は、もしかするとシャンクスの赤髪のつもりかも。

 

 ルフィはどうだ、と言った感じで私を見てくるけど、シャンクスはこんなにまんまるじゃないもん。でもありがとね、ルフィ。

 

「フッ、これを見よ、スノウクイーン!」

「すげぇー!」

「すごーい!!」

 

 白い素肌はとっても美しくて、たぶんカヤをモデルに作っているから、ほんとに綺麗な雪像だ。

 

 じゃあ第2ラウンド、いこうか。

 

「よし、雪だるパーンチ!」

「俺様の魂の…って何しとんじゃ!?」

 

 ルフィの雪だるまの両手から木の棒が飛び出して、バスッって雪像は吹き飛ぶけど、私の白クマちゃんの中身はすごく硬く作ってるから致命傷で済むんだ。

 

「あまいよ! シロクマビーム!」

 

 あとは、硬く作った雪玉を私が投げれば、シロクマビームで、シャンクス雪だるまの頭はペコッとへし折れる。

 

「あー!? 俺の雪だるマンがぁ!?」

「はい! 私のやつがいちばーん!」

 

 帽子代わりの樽が重すぎた感じかな。

 そういうとこが昔から甘いとこだよね。

 

「ずりぃぞ! ウタが投げたじゃねぇか!」

「ふふん、でたでた♪ 負け惜しみだ~♪」

 

「お前ら最初からその気だったのかァー!?」

 

 泣いているウソップに刺さった枝を蹴り上げられると、さすがのシロクマちゃんも限界で崩れ落ちてしまう。

 

「私の白クマちゃんをよくも~!」

 

「よっしゃ、第3ラウンド!」

 

「お前らずるいぞ!?」

 

 ウソップは雪像の準備で忙しくて、雪玉を作ってなかったんだね。私はシロクマさんの後ろに積んで隠していたけど、ルフィも樽の中からドッサリと出てきたし、幼馴染はさすがに手強いな。

 

 3人でギャイギャイしてたけど。

 あれ、いつの間にか雪がやんじゃったみたい。

 

「ウソップ! 船底がヤバいわ!」

「ウソだろォ!?」

 

 氷山で一瞬ドガッてしたり、ずっと遠くでは雷が鳴っていたり、風に乗って砂がやってきたり、なんだか急に暑くなってきたり、なんだかナミたちがバタバタしてるけど、まあなんとかなるでしょ。

 

「ちょっとタンマ、汗かいてきちゃった」

 

 毛皮のコートを脱いだから、これでよし。

 ルフィとまた雪合戦を再開しよっと。

 

「あんたらも働けーー!?」

「「はいッ!」」

 

 ナミに叱られたので、しぶしぶ海の様子でも見ることにする。

 

 すごく荒れてるくらいで。

 私的には別に異常なしなんだけど。

 

「あっ! イルカが跳ねたぞ!」

「ほんとだ! あっち行ってみようよ!」

「行くかァーー!?」

 

 ミスミスコンビへテキパキと指示しているナミにまた叱られたけど、現状の船大工を担っているウソップは水漏れの修理に忙しそうだし、サンジは緊急用の料理をしているし、ゾロはグーグー寝てるし。

 

 私たち何してようかなって顔を見合わせたりキョロキョロしたり、ルフィの顔をビヨーンしたり、私の髪のわっかで遊んだりしてた。

 

「ギャー! 俺の特等席がヤバそう!?」

「ギャー! ルフィが落ちるぅー!?」

「ああもう! あんたらそこにいなさい!!」

 

 応急処置のためにクロッカスさんに貰った鉄板で船首をくっつけているけど、強風でギシギシ鳴っているから、ルフィはグルグルと伸ばした腕で抱えた。そして私は心配だから、ルフィの背中を両手でグググと押しつける。

 

 それなりの時間、こうしてたけど。

 

「づ、づがれだ~」

「ナミさん、ミス、リラックスティーをどうぞ」

「あら、気が利くわね」

「「え、俺らには?」」

 

 よくカナヅチなのにここ座れるよね。

 ギュってルフィにしがみつく。

 

「ルフィヤバい! ここ真下が海じゃん!?」

「え~ 俺の特等席は最高なのに」

 

 ようやく穏やかな海になったとき。

 ゾロも春のような心地よさの中であくびをする。

 

「おいおい、いくら気候がいいからってだらけすぎだぜ?」

 

(((……クソマリモ)))

 

「ハラ減ったなぁ」

「さっき食べたでしょ」

 

 なんだか、ナミとサンジとウソップの目が怖かったけど。

 

 私たちはグランドライン最初の航海を無事に終えたんだ。

 

「あっ、島だ! 」

「でっけぇサボテンがあるぞ! 食えるかな!」

 

 でもあのサボテン、奇妙な感じがする。

 

「ん? どうしたウタ、腹減ったのか?」

「ううん、大丈夫だよ、ルフィ」

 

 あの山を見てると肌寒くなってきた。

 もう夕方だからかな。

 

「やれやれ、ようやく着いたか」

「送ってくれてありがとうハニー達」

 

 ミスミスコンビはやっぱり王子様とお姫様みたいな仕草で、優雅にお礼を告げて海へ飛び込んだ。

 

 どうせなら港に船をつけるまで待っていればいいのに。

 

「海賊が来たぞ!」

「ようこそ我が町へ!」

「グランドラインへようこそ!」

 

 私は耳を澄ます。

 歓迎の声といろんな管楽器の音が聴こえる。

 

 グルグル髪の町長さんがオペラ歌手みたいに、このウィスキーピークが『お酒と音楽が盛んな町』って教えてくれるけど、私は早く町へ行ってみたいってうずうずしてた。

 

「ゴホン マーマーマーマーマ~ もてなしは我が町の誇りなのです。ぜひ宴の席をもうけさせては頂けま゛ぜ……ゴホンマーマーマ~ 頂けませんか?」

 

「「「「喜んでー!」」」」

 

 私、ルフィ、ウソップ、サンジは、すぐにでも町の人たちと宴を始めたい。

 

「肉あるか!?」

「俺様の武勇伝を聞きたいやつはどいつだ!?」

「きれいなお姉さまたち~♡」

「ライブするけどステージあるかな!?」

 

 ルフィはいっぱい食べて。

 ウソップは楽しそうに語って。

 サンジはたくさんの女の人に囲まれて。

 ゾロはお酒を飲み合って。

 ナミはもっとお酒を飲んだみたい。

 

「みんなー! 今日はありがとう~!」

「「「「ウタちゃーん!」」」」

 

 20曲を超えてから数えてなかったけど、いっぱい(ウタ)を聴いてもらえたし、何度もアンコールしてもらえて、グランドラインでもいっぱいファンができたことが嬉しい。

 

「みんなまた明日ね!」

 

 そういえば、いつまでここに留まるかそういえば分からないな。ログとかなんとか言ってたけど、そういうことはナミに任せたままだった。

 

 向かった酒場ではもうぐっすり眠っていて、ルフィなんてルウのおなかよりプクプクでパンパンになってる。マキノのバーでシャンクスたちがおなかを出して寝ていたのを思い出しちゃうよね。私もルフィもよく混じっていたけど。

 

「ねぇルフィ、大きくなったね」

 

 起きたらまずはお片付けとお掃除かな、と思いながら私はプニプニなルフィのおなかを枕にした。

 

 おやすみ~

 

 

 明日もいっぱい笑顔で

 いようね。

 

 

 

幸せに眠りなさい。

 

 少し(うな)されているルフィを撫でてから私は麦わら帽子を深く被って、先に向かったゾロを追うことにする。サンジやウソップは呑気にグッスリだけど、ナミもどこかへ行ったみたいね。ともかく。

 

 さっさと奴らを潰して、彼を気持ちよく寝かせてあげたいわ。

 

 雲1つない空に、半月は浮かぶ。

 所詮(しょせん)は太陽に照らされないと輝けないけれど。

 

「ねぇ……、月が綺麗よ」

 

 一度振り返って私は(ウタ)った。

 カーディガンをひらりと(ひるがえ)す。

 

 ゾロは昼間眠っていたこともあるのだけれど、あらかじめ警戒していたみたいね。酒に酔った様子はなく、ルフィたちが眠る酒場を守ってくれるように、屋根の上で白い刀を月光へ輝かせていた。

 

「相手になるぜ バロックワークス」

「な、なぜそれを!?」

 

 ゾロが呟いた言葉に彼ら彼女らの一団は驚いている。夢を見させてお互いを争わさせて、そういう情報を全て吐き出させても面白そうだけれど、今宵は久しぶりに暴れたい気分だわ。

 

 (うるさ)くて、私もイライラしているから。

 

「……てめぇ何者だ」

 

 屋根の上から刃のような眼を向けられるけれど、そういう貴方の仲間思いなところは高評価よ。世界一の大剣豪は海賊王の左腕には相応しいわね。彼の右腕はすでに私で決まっているけれど。

 

「ちっ、面倒なやつでも飼ってやがるのか?」

「ひどい。私たち仲間じゃない」

 

 クスクスと声が出ちゃうけど、やはりいじりがいがある良い子ね。

 

「お前、煙のヤツが言ってた魔女か?」

「ええ。魔女と呼ばれることは多いわ」

 

 悪魔と呼ばれるよりはマシね。

 

「山から聴こえる(こえ)もお待ちかねのようね。早く始めましょう」

 

 ウタいながら私は指で黒い五線譜を弓なりに引き、月光に照らされて紫に輝く(ウタ)を顕現する。

 

 でもゾロは『1人でこの程度の奴らは十分だ』って表情をしているけれど、さっさと終わらせたい理由もあるから。

 

「救う気はないけれど、怨念(ウタ)(うるさ)いの」

「……あのサボテン山、そういうことか」

 

 山に無数の墓標が立っているから、遠くからサボテンに見えたってわけ。

 

「オシ、()るか」

「殲滅するわよ」

 

 開戦の合図に、けたたましい銃声が鳴った。

 

 銃弾を斬って雑音(ノイズ)ごと斬る。

 もし銃声で彼が起きたらどうしてくれるのよ。

 

「消えなさい」

 

 ザクッ スパッ

 

 呻き声

 悲鳴

 恐怖

 

 月夜に相応しくない音は排除する。

 血飛沫(ちしぶき)もできる限り静かに。

 

 別に、その脆い心臓へ刃を突き立ててしまってもいいけれど、後始末も面倒ね。こいつら程度では(ウタ)を止めることはできない。舞台にすら立てない存在なのに数だけ多い。

 

 やりすぎないように、歌っていましょうか。

 

「目覚めたまま見る夢

 決して醒めはしない」

 

 それに、この身体は(ヒト)の死を恐れるから。

 

「水平線の彼方

 その影に手を振る」

 

 とても繊細で優しくて、私の大切な友達のように、いつも笑顔で幸せそう。

 

「いつまでもあなたへ

 届くように 歌うわ」

 

 貴女も心の中で生き続けているから。

 だから見守っていて。

 

「大きく広げた帆が纏う

 青い風になれ……」

 

 夜風の音

 波の音

 風のゆくえ

 

 赤い髪の私の幼馴染のように、この身体は白い髪のように真っ白な状態で生まれて、だから悪意や哀しみに染まりやすかった。でも、黒く染まりやすい私たちを支えてくれるのは、何度目かになるけれど、太陽のような笑顔の貴方だ。

 

 廻る中で私たちが彼らに救われることは決して運命などではないから、『奇跡なのだ』と何度でもウタいたい。

 

 それなのに私は慌てて、(ウタ)を中断する。

 

「ちっ」

 

 (わず)らわしい。

 捧げる(ウタ)雑音(ノイズ)が邪魔をした。

 

「ヒィ!?」

 

 幼い首、あと少しで斬り飛ばしかけたじゃない。

 月夜の静寂を折角(たの)しんでいるのに。

 

「うわ~ん!」

「ど、どうかこの子だけは!」

 

 子どもにそう教育するなんて、世も末ね。

 その十字架も単なる飾りってわけ。

 

 ニヤリと修道女の母親の口元が嗤った。

 

「くらえ 目潰しッ!」

「しねぇ!」

 

 拙い戦術を躱して親子の背に回る。

 慌てているけれど、これが死角の利点。

 

「ど、どこへ!?」

「お母さんどうしたらいいの!?」

 

 私は月を背にして、静かに構える。

 

「そういう手段は心の綺麗な人に使うことね」

 

 スッ

 

 刃を眠りに特化させて(ウタ)を振るえば、親子は重なって倒れる。母親の腕に抱きしめられてスヤスヤと眠れるこの子は、今は幸せでいられるのでしょうけれど。

 

 子は、悪意に染まりやすいのに。

 

「どうして子をきちんと愛してあげられないの」

 

 はぁ、やるせないわ。

 それにしても。

 

 ゾロはあっちこっちで暴れているわね。バロックワークスとやらに気づいたのも彼だし、見た目からして彼を警戒するのは仕方がないのでしょうけど。まだ彼のほうが優しく手加減してくれるでしょうからそちらを選んだ人は幸運だったわね。

 

 ライブに参加せず、(ウタ)のファンにならなかったことが命運を分けることになったのかしらね。サーベルを持った奴らに囲まれたけど、むしろ纏まってくれるのは好都合ね。

 

鎌威断(かまいた)ち」

 

 (ウタ)をクルリと月を描くように振るい、ウタの衝撃波の刃で斬り裂いた。

 

 さて。

 

 周囲が華のように赤い血で汚れているし、盤上(ステージ)はゴミで溢れてきたから、ちょっと片付けようかしら。

 

「ウタウタの独唱(ソロ)

 

 魔女を見るような目で怯えて、蜘蛛の子を散らすように逃げるけれど、そのうちの何人かを操ってゴミも運ばせる。今までこの町で散々奪って殺してきたのだから、いつか運命に粛清されるのは時間の問題だったのでしょうけれど。

 

 まだ治療すれば間に合うでしょうから、命があることを幸せだと思いなさい。

 

 

「ルフィの気配はあっちからだけれど」

 

 さっさと残りを片付けて最高の枕に戻りたい。

 ルフィの近くに知らない女? いやあいつね。

 

 刃を腹に突き立てるような光景が。

 

「っ!? ルフィは無事ね」

 

 ふぅ。

 一瞬心を乱したけれど。

 いえ、私っていつも冷静だから。

 

 どうやらルフィが人質にされたみたいだけれど、ゾロが残りを全て片付けてくれたのね。私は彼のところへ慌てて飛んで向かったけど、ポツンと置いていかれて、無事に満腹でスヤスヤと眠る姿を見て、心の底からホッとする。

 

 彼の温かいおなかを撫でる。

 太陽のようにポカポカしている。

 

「ふふっ、大好きよ」

 

 やはりよく似ている、似てきている。

 貴方もここに宿っている証拠よね。

 

「ねぇジョイ……、起こしちゃったかしら

「う~ん?」

 

 寝ぼけている表情が可愛くて、とても(いと)おしくて、チュッと頬にキスをあげた貴方は、よく分かってないまま目をゴシゴシとする。私はこんなに胸が高鳴るのに、いつも貴方はずるいんだから。

 

おやすみなさい

 

 だから。

 私の視界もぼやけて、きて

 

「あれ~、なんで外なんだ~?」

「う~ん?」

 

 ルフィが呟いたけど寝言か。

 魘されてた気がするけど、気のせいかな

 

「ルフィ~?」

 

 ねぇルフィ、まだ夜だよ?

 

 ぼやけた視界に、プニプニでおなかの枕が目に入るのでそこへピョーンって飛び込む。

 

「ウタ~」

「ん~ ルフィ~ すき~」

 

 ボヨーンってゴムの感触が気持ちいい。

 ルフィの隣で寝るのがやっぱり好きなんだ。

 

「おやすみ~」

「お~ おやすみぃ~」

 

 お日様のようにポカポカと温かい。

 幸せでユメみたい。

 

 心臓の歌は今日もトクトクしてる。

 

 

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