麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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第24話 ビビ

 

 6人ならなんとかなると思っていたんだ。

 

「ビビ様、道中お気をつけて。」

「ええ、生きて会いましょう、イガラム。」

 

―――国1つを狙う七武海の悪意を

 

 

 ドォーーン

 

 

 船が燃えている。

 火薬が破裂するような音。

 

 こんな風に。

 サボは焼け死んだ

 

「ァッ ァッ」

 

 ドクン ドクン と心臓がうるさい。

 

 なんで、サボのことが急に?

 

 サボはいなくなったけど、エースと海へ

 

 あれ、エースとは別だっけ

 

 憶えてるのにわからなくなっちゃった。

 

 なんだか視界が揺らぐ。

 

 こんな風に燃え盛る残酷な炎を見た。

 

「ぐれい……たーみなる……?」

 

 それってなんだっけ。

 

立派だった!

 

 ルフィの叫び声で私は我に返った。

 貴方はいつも私を救ってくれるんだね。

 

「大丈夫! あんたをアラバスタまでちゃんと送り届けるわ!」

 

 ナミが、ビビを抱きしめて叫んだ。

 

「ウソップたちを叩き起こしてくる!」

 

 ゾロが、サンジとウソップを起こしに行ってくれた。

 

「……ウタ、俺たちも船に戻るぞ」

 

 ルフィが、また私を支えてくれた。

 

「うん!」

 

 そうだよね。

 サボは1番に海へ出たんだもんね。

 

***

 

 

 月が落ちて、太陽が昇り始めている。

 

 私たちはバロックワークスってやつらから、ビビを守り通して、一刻も早くアラバスタへ送り届けるために船出を急いでいた。髪をポニーテールに結び直して、雰囲気がもっとお姫様に近づいたビビに、サンジは興奮しているけど。

 

 ほんの微かな音で、上手く船に潜り込んでいた女の人がいたなんて。

 

「キレーなお姉さんじゃねぇか♡」

「フフッ ありがとう」

 

「ミス・オールサンデー!?」

 

 手すりに座っているのもあって、これでもかってくらい美脚を見せつけていて、なんというかハレンチな格好だ。胸とか見えてるし、海賊ってああいう女性のほうが好みなのかな。でも今更、幼馴染の前であんな服を着るのは恥ずかしいし。

 

 ほら、私ってマキノみたいな清楚で大人な淑女を目指しているから。

 

「こいつのペアはミスター何番なの!?」

「恐らくボスよ! こいつを尾行して知ったことなんだけど、クロコダイルの正体を知っているのは、唯一そのパートナーだけだから!!」

 

 えーと、つまりこの女の人はクロコダイルのパートナーで、悪い人なのかな。

 

「正確には尾行させてあげた、かしらね」

「なんだいいやつなのか!」

 

 うんうん。……ん?

 

「騙されないで!」

「ビビの言う通りだよ、ルフィ!」

 

「あら、親切で協力してあげてるのに」

「ほら、親切でいいやつじゃねぇのか?」

 

 ねぇルフィ、こいつどう見ても悪女(あくじょ)だよ。

 貴方の純情を弄ぶ悪いやつなんだ。

 

「それに、お前がイガラムをッ!」

「そうだと言ったら?」

 

 その答えに、ビビは指に付けた紐を回転させながら、甲板を蹴った。

 

「ここで殺すッ!」

 

 ビビはその刃をオールサンデーの首に向けて届かせようとしてる。

 

「ウタウタ弓矢(アロー) セット」

 

 クロコダイルのパートナーなら油断できない強さだろうし、私は援護するべく(ウタ)って五線譜の弓を作っておく。

 

「そっちの()は能力者というわけね」

 

 そう呟きながら、腕を交差して迎え撃とうとしてる。

 

―――花びらが舞った気がした。

 

「なっ!?」

「えっ、腕!?」

「ビビちゃん!?」

 

 休符の矢をつがえようとしたら、いきなり生えてきた知らない腕に、私の腕は抑えこまれてしまった。ビビは右足首を掴まれて、甲板へ転びそうになって受け身をとった。そこを、紳士的なサンジが慌てて駆け寄って抱き起した。

 

「モンキー・D・ルフィ」

「ん? そうだけど? Dがどうかしたか?」

 

 再び、花が咲く。

 

 私とルフィの麦わら帽子はポンっと跳ねるように脱がされたみたいで、まるでトレイを持つように、側に生えている両手に乗せたんだ。

 

「てめぇ! よくも帽子を! お前敵だな!」

「そうだよ! あいつ敵! ぶっ飛ばしちゃお!」

 

 やっとルフィも分かってくれたし、私とルフィであの大人の女性の余裕さをぶっ壊してやるんだ。その麦わら帽子はシャンクスとルフィの約束だもん。

 

「不運ね。貴方達のログポースが示す進路は」

「「帽子返せぇ!」」

 

 プンスカ両手を上げて、激おこぷんぷん丸

 

「これをあげるわ。アラバスタの1つ手前の」

「「帽子返せ~!」」

 

 なんとかファイヤー!

 

「これを使えば安全に着く保障をあげるわ」

「「あっ、帽子!」」

 

 クルクルと返してくれた帽子は、パサッてちょうど私たちの頭に乗った。いざ麦わら帽子を被ってないと、なんだか頭が寂しいからね。

 

 グリグリと被り直す私たちはホクホク顔になる。ちゃんと返してくれたし、優しい微笑みだし、実はいい人なのかもね。

 

「じゃ、次の島行こうぜ!」

「追手が来るんでしょ? 迎え撃とうよ!」

 

「あら、いいの? 折角無事な航路を教えてあげるのに」

 

 船で戦うのは、溺れそうだからイヤだもん。

 それに。

 

「この船の進路は俺たちで決めるんだ!」

「私たち、東の海から一緒に来た仲間だもん! なんとかなるよね!」

 

「……そう。威勢がいいわね」

 

 ししし とルフィが笑う。

 

 オールサンデーは哀しそうな瞳になった。そして、高そうなコンパスを持ったまま、立ち上がって彼女は背中を向けた。

 

「1つ聞いていいかしら、歌のお嬢さん」

「ん? なに?」

 

 そして思いついたように、私へ声をかけてきた。

 

「ゴア王国に現れた魔王、貴女は知ってる?」

 

 ゴア王国ってフーシャ村の近くにあって。

 サボが生まれてしまった場所だったよね。

 

 魔王って夢に出てくる鍵盤がいっぱいついたヤツのことかな。もう1つ思いつくのは『ソレ』より可愛く作ったはずだし、だから魔王ってどういうことだっけ、そもそもいつウタで創ったんだっけ、ゴア王国のどこでウタったんだっけ。

 

「ちょっとタンマ、う~ん」

 

 あれ、さっきも頭をよぎったけど、不確かな物の終着駅(グレイ・ターミナル)って何のことだろう。私はそこでいっぱいウタった気がするけど。

 

 そうだ、みんなの代わりにウタった時だ。

 

 幸せになりたいみんなの感情をいっぱい乗せて。

 みんなの感情をウタにしたくて。

 

 えっと、いろんな感情をまとめたウタは。

 皆不幸になっちゃえ

 

そんなヤツ知らん!!

「えっと、どうしたのルフィ?」

 

 ゾロもウソップもサンジもナミも、大声を出したルフィに驚いてて、なんだか表情が固いよ。まあ、いろいろ思い出すの大変だったからか胸の奥がモヤモヤしてたのが、ルフィのおかげで晴れたけど。

 

「フフッ、お姫様の騎士(ナイト)が怖いから、帰らせてもらおうかしら」

 

 メリー号を並走していたらしい亀に飛び乗って、オールサンデーは去ろうとする。私がお姫様だとすると、ルフィがナイトってことだよね。ルフィに限ってはそれはないかな。だってエースと違って礼儀知らずだもん。

 

「次の島はリトルガーデン、追手も来るでしょうし、生きて出航できるといいわね」

 

 そう言い残して行った。

 なんだか普通に優しい人だった気がする。

 

 

「はぁ~……

 ごめんなさい私のせいで」

 

 ウソップもだけど、それ以上にビビは大きく安堵の息を吐いた。

 

「ビビちゃんのためなら海の中だって~♡」

「おいおい!相手は七武海なんだろ!?」

「どうせいつか超えなきゃならん壁だ」

「そうね。こいつらは強いわよ」

 

 ナミは、甲板に視線を落としているビビの肩をポンっと叩いた。

 

「だって、東の海をたくさん救ってきたもの!」

 

 ナミの故郷も救えたよね。

 

「フッ、俺の武勇伝を聞かせてやろうか」

 

 ウソップの故郷も守ったね。

 

「まっ、艦隊だって沈めたこともあるな」

 

 ゾロに会ったときは海軍の人を改心させたね。

 

「そりゃあ鷹の目がやったことだろうが」

 

 サンジの故郷の船も守ったね。

 

「ビビの国も幸せにしてみせるから!」

「よっしゃ! まずは朝メシだぁ~!」

 

 今日もルフィは太陽のように輝いてる。

 いつも私たちを照らしてくれる。

 

「うん、みんなありがとう」

 

 ビビの笑顔がようやく見れた。

 

 私たちは船を出して、また前へ進み続ける。

 

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