目の前に見えてきた火山があるすごく大きな島だ。
オールサンデーはリトルガーデンって言うから、どんなカワイイ島かと思ったけど、メリー号よりずっと大きい植物が生えていて、いろんな猛獣の鳴き声が聴こえる。
あの飛んでるやつなんて、トカゲさんなのか、トリさんなのか、初めて見る動物だ。
ともかく。
「「冒険の匂いがするっ!」」
「ねぇ、私も付いていっていい?」
ビビも付いてくるみたいだ。バロックワークスへ忍び込んだこともそうだけど、なかなか行動力のあるお姫様だよね。
ルフィは野菜抜きでお肉盛り沢山のお弁当、私たちは普通の愛情弁当を、サンジにそれぞれ作ってもらったし、カルーには特製ドリンクまで用意してくれた。手際の良さとかまだまだ勝てそうにないな。
あっ、変な虫に刺されるのはイヤだし、私はミニスカの探検服に身を包んで、ジャングルの奥地へと向かうことにするよ。
「お待たせ!」
「カルーも準備はいい?」
「ク、クェ~……」
「ナミもくるか?」
「行くかァー!?」
「「狩り勝負だ!」」
「お前らまでいかないでぇ~」
着替えてる間に、私とルフィくらい仲の良いサンジとゾロも楽しそうだし、冒険はワクワクするよね。ナミやウソップももうちょっと度胸を付けると楽しめると思うんだけど。
とりあえず私たちは海沿いに歩いていくけど。
早速ルフィはプカプカ浮かぶものを手に取った。
「見ろよ、イカガイだ! 食べれるかな?」
「ルフィさん、これって確か...」
博識なビビによれば。
イカガイじゃなくてアンモナイト?
海王類じゃなくて恐竜?
じゃあさっきのは始祖鳥?
「絵本で見るような世界ってこと!?」
「すっげー! あれたのしそー!」
「ええ。太古の島ということね。グランドラインでも珍しいと思うわ」
ルフィはわざわざ首長竜さんに登って滑り台してきたけど、首長竜は気にせず、木の葉っぱをムシャムシャしてる。ビビが破天荒さにツッコミ入れたり、カルーはしんだふりしたり、私は冒険の中で新しくウタを思いついたりしてた。
ドシン ドシン
なんだろう、この重い足音。
「おっ! かっけぇのが来たぞ!」
「てぃ、ティラノサウルスだわ……」
涎を垂らしながら大きな歯だね。
えーと。
「「たすけてぇ~!!」」
「クェーー!?」
私とビビはルフィの背中に隠れるけど、ほら、私はテクニックタイプだし、こんな猛獣恐竜の相手はルフィの出番でしょ。それよりももっとすごい足音が聴こえてくるのが怖い。
「ひ、ヒト?」
「いえ、巨人だわ!?」
「巨人すっげー!」
スパンッ
刃こぼれしてる剣を振るい、サックリ。
「ゲギャギャギャ 人が来るのは何十年ぶりか!」
大きな笑い声に、ルフィは見上げて、目を合わせた。
「俺ルフィ! おっさんでっけぇな!」
「ドリーだ! エルバフの中でも1番かもな!」
手に持った剣の長さだけでシャンクスの船くらい大きくて、それを持つ巨人さんはもっともっと大きい。
カルーなんて泡を吹いて気絶したし、ビビも顔面蒼白だし、でもルフィはニカっとしてあれこれ自己紹介してるし、私はゴクリと息を呑んで、前へ進む。
「私はウタ! よろしくね♪」
「よろしくだ、よく響く声のお嬢さん!」
笑顔を返してくれたドリーさんも、人間。
別に怖がる必要なんてなかったんだね。
「肉も手に入ったし、客人はもてなそう!!」
私たちはドリーさんの家へ案内してもらうことになった。
たぶんすっごく大きい海王類の骨だ。だから家というより、そこをキャンプ地としているみたい。木を贅沢に焚き火にしている。
「うめぇー! 恐竜ってうめぇんだな!」
「料理なんて何十年ぶりか! ちと少ないがな!」
ルフィとドリーさんはお互いのご飯を交換して、ルフィは自分より大きい骨付き肉をドンドン食べて始めた。
「美味しい! でも」
「そうね。恐ろしい美味しさだわ」
私やビビもお弁当を食べながら、味見程度に分けてもらったけど、ジューシーで美味しすぎるくらいだ。でもレディーとしてはこれ以上は危険なので程々にしておかなければならないんだよ。
「おっさん、この島でずっと1人なのか?」
「いいや、もう1人いるな!」
ドリーさんの話によると、故郷のエルバフを出て良さげだと感じたこの島には、たった2人だけで住んでいて、100年も決闘中なんだって。
それを聞いたビビはたぶん自分の国の境遇と重ね合わせて憤慨するけど、たぶんドリーさんたちにとって、決闘は単なる殺し合いじゃないんだろうね。
ドーーーン、と火山が噴火した音。
それが開戦の合図なのだと。
「待って! なぜ殺し合うの!?」
「ふむ。それはだな」
ドリーさんと、その親友のブロギーさんはお互いの武器を持って、島の中心へ歩いて行った。男同士の喧嘩に近いけど、100年という歴史はそれ以上に大きな意味を感じさせる。
「「誇りだ」」
ぶつかり合い、空気が震える。
全ての動物たちは本能的にその場を離れていく。
「「理由などとうに忘れたがな!!」」
ゲギャギャギャ
ガババババ
とにかく幸せそうに笑ってるんだ。
ドサッとルフィは地面に寝転がった。雄大な自然に囲まれて、2人の戦士が戦いを繰り広げる姿を目に焼きつけてる。
「でっけぇ~」
そんなルフィの隣へ、リラックスして私も寝転ぶ。見上げすぎて首も疲れたところだったし、本能的には離れたいけどそうしたくないし。
「すっごい音だね」
青空に剣と斧がぶつかってる。
防げなければ殺すレベルの一撃が飛び交う。
「俺もあれくらい大きくなれるかな」
「いっぱいお肉食べたらなれるかもね」
「すごいのね、みんな」
目をキラキラと輝かせて、私もルフィも笑う。そして、私たちを真似するようにビビも背中を地面に付けた。
決闘は、引き分けに終わったらしい。
昔から私とルフィもよく勝負してて、いっぱい私が勝ってきたけど、それとは桁が違うと思う。まあ、私たちのやつは仲良く遊んでるようなものだし、人外のルフィとは決闘しなくないし。
「また引き分けになってしまったな」
「ゴクリ おっさんたちすげーな」
ルフィが大きくなろうとしてまた残ってたお肉をバクバク食べてるけど。私なんて、かけっこの速さも、食べる量も、身長も負けちゃったしな。
でもルフィが大きくなってる証拠でもあって、最近は年下の幼馴染なのにカッコよく見えちゃって、いつも目でルフィの姿を追っちゃってる気がする。
「さて、ブロギーに貰った酒でも飲むか。久しぶりだ」
ドガンッ
「な、なに!?」
「爆発の音!?」
「なんだ!?」
ドリーさんは煙を吐きながら、背中を地面へぶしまった。
「おっさん!?」
「ドリーさん!?」
あのお酒って、あの樽って私たちの船のやつだけど。爆発しちゃうなんてあり得ない。
「まさか相手の巨人が!?」
「こんなことするはずねぇ!」
ブロギーさんや、ナミやウソップもこんなことするはずがないし、この島には他に何か悪意が存在するってことなのかな。
「キサマラ、だな……?」
ギロッと眼を向けられて、身体が凍る。
ここまでの殺意、初めて受けた。
「ど、どうか話を!?」
「それより早く治療しないと!!」
たぶん内臓にもダメージが入ってるから、血を吐いてるのに。
「ウタ、ちょっと持っててくれ」
ルフィは私へ麦わら帽子を手渡して、前へ出てくれたから、その背中を見てると、寒気は消えた。
胸に、彼らの麦わら帽子を抱えると、ポカポカする。
「まずはおっさんを落ち着かせる」
「小癪な真似をしおってッ!」
ドガーンと振り下ろされる剣を躱して、ルフィは高い木に腕を伸ばす。そして空へ向かって、ロケットのように勢いよく飛んでから、腕を構えた。
あれはピストルの構えだけど。
「ゴムゴムのぉ~」
「甘い!」
ルフィは盾で撃ち落されちゃって、さすがのゴムの身体でも軽減しきれないダメージを負ってる。
「悪魔の実の能力者かッ!」
「おっさんこそ、速いな」
ドリーさんも海賊らしいし、小さな人間相手に戦い慣れてるんだ。でもまだ口から血を吐いてるし、これ以上無理はさせちゃったら命にかかわるかもしれない。
私を一瞥してから頷いたルフィは、腕を地面に叩きつけた。だから私はあなたのために
「ウタウタの
「ギア
たくさんの音符がルフィの身体へ溶け込む。
負担が少しでも和らぎますようにって。
ルフィの足はポンプみたいに膨らんで、血液の流れを速めて、身体は熱を持って、蒸気を放ち始める。そして、ガンッて地面を強く蹴った。
私やビビにとって、ルフィが消えたように思えるくらい。
「JETロケット!!」
「速い!? アガァーー!」
ドギーさんの身体へルフィが体当たりで突っ込んで、その巨体はドガーンって地面に倒れた。
さっきの爆発のダメージがあるからこれくらい効いてるんだろうけど、落ち着かせるだけで荒療治になっちゃった。
「ウタっ!」
「わかってる! ウタウタの
いつも以上に大量の音符が出るように
「俺は怒ったぞッ!」
「ど、どうしたの?」
ギリリと歯を噛むルフィを、ビビは心配するけど。
「あのもう1人の巨人がこんなことするわけないし、俺の仲間もこんなくだらねぇことはしない。だから」
―――誰かいるぞ、この島に
ルフィの言う通りだね。
そんなとき。
最悪なことに。
私のウタをかき消すように、火山からドガーーーンと、開戦の合図が島へ轟いた。