麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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・今回の話、自分で何度読み返しても台詞が脳内再生されて、惚れそう。惚れた。


第27話 サンジ

 

 ルフィとウソップが釣りしてる。

 何か船のために仕事してるのえらいな。

 

 サンジとビビはコンパスをずっと見てるし。

 どっちの方角に島があるんだろうね。

 

 ゾロはまたお昼寝。

 最近夜の見張りをしてくれてるよね。

 

「わたし、も、がんばらないと……」

 

 天気が良くて明るい昼のうちに少しでも船は進まないといけないからね。だって、ナミがいないのに、月が照らす程度では、夜の真っ暗なグランドラインの海を進むことはむしろ迷子になっちゃうもん。

 

「はぁー おし……ごと……」

 

 船が揺れてるけど波が荒れたのかな。

 太陽が照らす綺麗な青空だけど。

 

 なんだか、寒いや。

 

「ウタ!? おい! しっかりしろ!」

「わ~ 船が揺れてるよ~ ルフィ~」

 

 もっと揺れが酷くなって、もっと視界がグルグルしてきたよ。こういう荒波の中もナミの指示があれば航海できたんだけどね。

 

「ダメ! あまり揺らさないで!」

「ひぃー、まさか感染するのか!?」

 

「どうせ俺たちは風邪引かねぇだろ! おいルフィ、ウタちゃんをベッドに運んどけ! 俺はいろいろ持ってくるから!」

 

「分かった! 急ぐぞ!」

「ルフィさん、もっと慎重にしてあげて!」

 

 わー、運ばれる~

 あれ? シャンクスだと思ったけど。

 柔らかいからルフィじゃん。

 

 女子部屋のフカフカなベッドにゴロンと寝かされると、張り付くくらいに身体が沈んだ。隣で眠ってるナミも、すごく辛そうだね。

 

「ウダじなないでぇ~」

「ウダぢゃんまでぇ~」

「すごく熱い。40度はあると思うわ」

「もうナミくらい出てるじゃねぇか!?」

 

 熱いのか寒いのか分からなくて、この気怠い感じは記憶のある事柄にあてはまる。ちゃんと手洗いうがいしてたのに、久しぶりに風邪を引いちゃったみたいだ。

 

 ルフィもサンジも泣いちゃって大袈裟だし、ビビやウソップも心配性なんだから。

 

「たぶん我慢してたのね……」

「グスン 火傷するくらい熱いぞ……」

「グスン そうしてろクソゴム……」

 

 ひんやりとおでこに触れている、ルフィのゴムの手のひらが気持ちいい。そうだ、ナミが苦しそうだけど、ウタえば氷も出せるよ。

 

「ぁ...」

 

 ごめん、上手くウタえないや。

 

「ちくしょう、今は船医がいねぇのに!」

 

 ウソップのお母さんも確か病気で亡くなったんだっけ。そりゃあ慌てて心配するだろうね。

 

「困ったわね。解熱剤はともかく、どの薬が効くか分からないから、根本治療ができないわ。最悪のケースとして、感染するものだとは考えたくないけれど」

 

「ああ。俺も栄養満点で食べやすいメシは作れるが、ナミさんも悪化する一方だ。こんなことならもっとしっかり薬膳料理も学んでおくんだったぜ。クソッ!」

 

 ヒソヒソと話してるけど、ビビやサンジはまた難しいこと言ってるや。そういうところが頼りになるんだけどね。

 

「なぁウタ、肉食えば治るかなぁ~

 ひっぐ、おれが我慢するからさ~」

 

 優しいルフィの涙を拭いてあげたくて、がんばって伸ばそうとする私の腕はパタンと簡単に落ちてしまう。ここまで元気じゃないと、こんなにも辛くなるんだね。

 

「へーきへーき、いつも、寝てたら、治るよ」

「いつもより、ぐすっ、ひどそうじゃねぇか~」

 

 ルフィへ、がんばって笑顔を返す。

 早く元気になるからねって。

 

「黒い雲が見えたぞ!! なっ!?ウタまで!?」

「はぁ!? ウソだろぉ!?」

「クソッ、ビビちゃん、進路を一旦変更しよう!」

「ええ。私たちだけじゃ嵐の中を進めないわ!!」

 

 みんな、バタバタと部屋を出ていった。

 

 皆も自分の夢があって、アラバスタのこともあって、忙しいのに、心配してくれてるんだ。でも、また嵐が来るらしくて、慌ただしくなって、ナミが倒れてる分も大変なのに、ルフィは残ってギュッと私の手を握ってくれている。

 

「ごめんね……早く治さなきゃ……」

「うん……私まで……ごめんね?」

「ナミも、ウタも、わるくねぇよ……」

 

 そうかな。

 なんだかいろいろ考えちゃうね。

 

「俺って、この船の船長なんだよな……」

「ハァハァ……もちろん……そうだよ」

「あんたじゃないと……まとめられるわけ……」

 

 ルフィは不器用だけど力仕事が1番得意だ。

 太陽みたいに皆を照らしてくれるし。

 

「おいルフィ! お前も手伝え!!」

「すまん! 今行くから!!」

 

 でも。

 

 たとえ音楽家(わたし)が、いなくても、船は進む、んだね。

 

 

***

 

 

 なんだか苦しくて、少しでも気を抜いたら黒い何かが胸の奥から込み上げてきそうだ。

 

 熱の気怠さもあって、呼吸が荒くなってるのが自分でも分かるけど、ルフィのひんやりとした手がおでこに触れると、楽になれるんだ。

 

「医者はどこにいるってんだ!?」

「すぐにでも呼んでくれよ!!」

 

 声が聴こえる。

 ルフィたちの声だ。

 

「見えるか。あの山々のうち、1番高い山の頂上に城があるだろう。今この元王国で唯一の医者、魔女と呼ばれるDr.くれはが住んでいる。たまに町まで降りてくるがちょうど昨日だったらしい。あとちなみに彼女は梅干しが好きだ。

 

「唯一ですか!? この国は医療大国のはず!?」

「魔女ってことはすげぇ良いやつなんだな!」

「や、お前の中で魔女の認識どうなってんだよ」

「だがなんであんなクソ高いとこにいやがる?」

 

「すまない。話せば長くなるが、この元王国はいろいろあって、今は他の医者が1人もいないんだ。魔女については気まぐれだとしか言えないな。ちなみに彼女はトナカイを飼っている。

 

 よし、と意を決してルフィはガタッと椅子から立ったみたい。

 

「ウタ、今から山登るぞ!」

「うん……おんぶしてね……」

 

「お前ルフィ! このクソ寒い中を行くつもりか!? お前だけなら行けるだろうが、ナミさんやウタちゃんの負担が半端ねぇぞ!」

 

「サンジさん、もう2人とも、その、すぐにでも診せたほうがいいと思うわ。ルフィさんの判断が正しいかもしれない」

 

「だがあの山、相当高いだろ!?」

 

「ああ。しかも垂直の山だ。ロープウェイがかつて動いていたから、あの城に務めていた私ですら自力で登ったことはないぞ。ちなみに修理の最終調整のためにそのうち登ろうとしていた

 

 昔は風車まで山登り競争とかしたよね。私が元気ならルフィと競争するんだけどな。いや、どうせもう勝てないかな。

 

「行く! 待っているだけはもう飽きた!」

 

「ハァハァ……サンジくんおねがい……」

 

「ナミさんはこのMr.プリンスがお連れ致します」

 

「船長たちも航海士もコックも無茶苦茶だな!?」

 

「少し待ってて、ちゃんと固定するから」

 

「本気なのか!? いやお嬢さんたちが覚悟ができているようなら、止めはしないさ。そうだ、せめて反対側のほうが登りやすいと思うぞ。あとちなみにラパーンには気をつけろ

 

「おじさん...いろいろ...ありがと...?」

 

 私の身体はヒョイと持ち上げられて、ルフィに背負われて、ガサゴソとギュッギュッとしてる。おんぶしてもらうなんて何年ぶりなんだろう。すごく温かいな。

 

「必ず連れてくから死ぬなよ」

 

 心に響く言葉に、コクリとしっかり頷いた。

 

 

 

***

 

 

 いろんな夢を見た気がする。

 たぶん悲しい夢だったと思う。

 

 視界は真っ暗で、吹雪の音がゴーゴーとうるさくて、身体はガタガタと震える。

 

 ルフィの身体も震えてて、たまにルフィから苦しそうな声が漏れるのが苦しくて、こんな辛い世界からは逃げたくもなるけど、がんばって生きなきゃね。

 

「「ハァ……ハァ……」」

 

「サンジ、起きてるか?」

「ああ、クソ最高の気分だぜ」

 

「なんか面白い話しろよ」

「あれだ、タバコが吸いてぇ」

 

「なら知ってるか。雪国の人は寝ないんだ」

「あん? そんな人間いるかよ」

 

「ホントだ。シャンクスたちが話してた」

「だったら何で家にベッドがあったんだ?」

 

「それはあれだ。ウタとナミのためだ」

「ならレディーにクソ親切な国ってことか」

 

「そっか……」

「……おいルフィ、起きてるか?」

 

「……あれサンジ、何話してたっけ」

「どうでもいい話なんだろ。それよりもだ」

 

「なんだ? 面白い話しろよ?」

「雪国の女性は肌が綺麗って話だ」

 

「ふーん。それはなんでだ?」

「そりゃ雪で白くなんだよ。雪化粧さ」

 

「じゃあ俺たちも白くなるよな」

「お前が白くなってもクソどうでもいい」

 

「なあ、あとどれくらいかな?」

「考えないほうがいいだろ、そんなこと」

 

「ふーん、そういう、ものか……」

「……おいルフィ!」

 

「なんだサンジ、メシか?」

「てめぇまた勝手に肉食べやがったな」

 

「あれ、サンジ、何のことだっけ?」

「あー、タバコが吸いたい話、だ……」

 

「おいサンジ! 寝るなよ!」

「……おっと、すまねぇな」

 

「あっ、なんか近くなってる気がするぞ!」

「気を抜くなよ!ここまで来て水の泡だ!」

 

「やべぇよ! サンジ!?」

「ルフィ、何かあったのか!?」

 

「なんか手が凍ってきてる!?」

「血でも出して溶かせってんだ!?」

 

「ガッ! ホントだ! 少し溶けた!」

「ホントにやりやがった!? だが俺も!」

 

「痛く...ねぇ!? なんかやべぇよ!?」

「足で踏ん張れ! 絶対手も離すなよ!」

 

「あと少し...だろ、なぁ!?」

「ああ。そう、だな...」

 

「おい! サンジ! 止まったらヤバいぞ!?」

「...クソ! なんでもいいから叫んでてくれ!」

 

「じゃあ不思議海の話をしててくれよ!」

「そりゃ、あれだ、行ってみてぇんだよ!」

 

「俺は海賊王に、なる!!」

 

「俺はオールブルーを見つける、ために!!」

 

「ウタは世界の歌姫に、なる!!」

 

「ナミさんは世界地図を描く、ために!!」

 

 

「「死なせるかァーー!!!」」

 

 

「「ハァ……ハァ……」」

 

「「いしゃ……医者……を……」」

「俺たちは医者だ」

 

「やれやれ、自分を疑っちまうとこだったが、吹雪の中で本当に倒れていやがるよ」

「酷い状態だ。凍傷、低体温症、それに炎症が酷くて両手は出血もしてる」

 

「ヒッヒッヒ、まさかここまで自力で登るバカが、2人もこの時代にいるとはね」

「そうか! 発熱が酷そうだけど、背負ってる2人をここへ送り届けるためにこんな無茶をしたんだ!!」

 

「「ぶだりぼだのぶ!!」」

 

「はっ、患者が名医に指図するんじゃないよ」

「絶対に4人共、治してやるからな!」

 

 

―――ドラムロック、標高5000m

 

 

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