くれはお姉さんとチョッパーの2人で住むには、すごく大きなお城だ。外は急に吹雪になるから雪遊びもできないし、暇な私たちはお城の中で遊んだり探検したりすることしかできなかった。
まだサンジもナミも病み上がりだけど。
他にもお城に滞在する理由もあるからね。
「仲間になれぇー!」
「抱きしめさせてぇ~!」
暖炉もないとこが多いので、桃色のモフモフコートを着て走り回っているけど、汗をかくことはないくらい涼しい。標高が高くて、空気が澄んでいるけど、でも疲れやすいんだ。リハビリがてらのいい運動にはなるんだけどね。
「た、食べないでぇ~!」
「食べないよ!? ねっ、ルフィ」
「お、おう! そうだな!」
鬼ごっこ相手のチョッパーはトナカイであってヒトでもあって、今の姿が1番かわいくて抱きしめたい。それに、4足歩行のトナカイの時は撫でたくなるし、クマさんくらいの大きさにもなると今度は抱き着きたくなる。
「ゴムゴムのミニロケットぉ!」
「風に乗って♪」
素早く階段を駆け上がるチョッパーへ追いつくために、ルフィは腕を伸ばして、私は
「ギャー! ゴムとウタのバケモノォ!?」
「俺の身体すっげーだろ!」
「これが
動物系ならではのチョッパーの3段変形も面白いけど、私たちの能力だって、オンリーワンな長所だと思ってる。慣れないことに振り回されながらも、自分たちで独自にいろんな使い方を考えてきた。
3人目の悪魔の実の能力者としても、仲間になってほしいな。
「なあ、仲間になれよ!」
「ねぇチョッパー、一緒に海賊やろうよ!」
「うっ、で、でも、俺トナカイなんだぞ!」
私とルフィは首を傾げて、コツンってやる。
「お前らは人間で、俺はトナカイで、青っ鼻だ!」
「ウソップなんて長っ鼻だぞ」
「いいじゃん、チャームポイントだよ」
私も赤白髪なところ、皆と違うけど、自信を持って好きだと言える。ウソップだってよく長い鼻を磨いてるし、とにかくチョッパーの青い鼻だってかわいいよね。
「お前はいいやつだし面白いやつだからな。船に医者も欲しかったとこだ。だから俺たちと一緒に海賊やろう!」
「海賊はいいよ。いろんな冒険をするし、皆でいっぱい歌うし、宴もやるんだよ!」
チョッパーは恩人から海賊の話を聴かせてもらったらしくて、しかもその話はピースメインというか、冒険メインだと思うから、私たちの海賊団はチョッパーに合うと思うんだ。
「うっ、いや、でも」
「じゃあ、いろんな冒険を聴かせてやるよ! えーと、あれだ、俺にはクジラのライバルがいてさ!」
生き生きとした顔でルフィは語る。
ラブーンという友達がいるんだって。
チョッパーは目を輝かせながら、その話を聴いてくれた。ルフィは擬音語たっぷりに喧嘩のことを語ったんだ。たぶんルフィは意図してないけど、たとえ相手がどんなヒトでも動物でも、私たちは気にせず仲良くなりたいもんね。
「巨人のおっさんたちならあの山、ドガーンって壊せるかな?」
「どうだろ、もっともっと大きくならなきゃかもね」
「でも、俺、そんな強くねぇぞ」
チョッパーは小さな蹄をコツコツと合わせて、もじもじとしてる。
「……俺だって」
ルフィがそう呟いた。
「剣を使えねぇし、料理もできねぇよ。地図や楽譜だって読めないし、ウソもつけねぇ」
ルフィは麦わら帽子を深く被った。
横顔は悔しそうな真剣な表情で。
「俺、船長なのに、何もできなかったんだ。病気の辛さはよく分からねぇし、看病だって見てることしかできねぇ。この山を登ることも、ウタやナミ、サンジにだって凄く負担をかけた」
『そんなことないよ』って口を挟みたい。
私はルフィのおかげで何度も救われてるから。
でも、今はチョッパーに話しかけているんだよね。
「ウタが歌ってなくて元気じゃないと、俺はサンジのメシでも美味しく食べれなかった。今回のことで俺たちの船には、世界一の医者が必要だって、よく分かった」
ルフィは膝を曲げて、チョッパーの視線に合わせて、そして頭を下げた。
「俺は船長として、仲間は全員守るから。
チョッパー、俺たちの船に乗ってくれ!」
「世界一の医者に……俺が?」
私も腰を落として、チョッパーに目線を合わせた。
「うん、だってルフィは海賊王になるもん。バカだから病気にはならなそうだけど、ここまでの冒険でもすごく傷ついて、いっぱい無茶もしてきてるから」
悔しいけど、私の
「おい、バカってなんだよ!」
「だって! ルフィ、バカだもん!」
お互いの頬っぺたをグニグニとする。
手加減してくれるけど頬が熱くなってくる。
バカカッコいいんだもん、私の
「……いいな。お前らの海賊団、楽しそうだ」
「「だったら!」」
「うっ、でも」
グイッと私たちはチョッパーへ近づいた。
「う~ ……あれ、あいつらはまさか!?」
チョッパーはチラッと窓の向こうを見たようだけど、いつの間にか吹雪が止んでる。それに、えっと、あの人たちは誰だろう。
防寒着だけどバギー海賊団みたいなハデな服装の人たちだ。ゾロがいるから大丈夫だと思うけど、ウソップとビビとカルーは無事なのかな。
「あー! あいつらァ~!」
「え?」
お城の外に向かっているチョッパーを追い越して、ルフィは全速力で駆けていった。拳を構えていたから、いきなり喧嘩を吹っかけてそうなんだけど。
「お前は! ぶへっ!?」
「やっとぶっ飛ばせるな、邪魔口ィ!」
私やチョッパーが追いついた頃には、ドラム王国の国王だとか、ワポル様だとか、たぶん家臣の人たちが、ルフィに対して激昂してた。
「あ~ スッキリした!」
まあ、破天荒なルフィもいきなり知らない人を殴るわけじゃないし、かなり鬱憤が溜まってるみたいだし、あいつらは悪いやつなんだと思う。
「弟が消えたぞ!? いつの間にそんな技を!?」
「あっちの雪に埋まっているだけです!」
「あいつに殴られました!」
キノコ頭のおじさんは、雪に埋まっている王様のお兄さんかな。
「ドクトリーヌ、あっちのやつって」
「ああ。ワポルの兄、ムッシュールだね」
お姉さんたちも知ってるのかな。
ていうか、いつの間に来たんだろう。
「毒の雪は今でも憶えているさ。その事件で、あいつらの父親に火の国へ追放されていたはずだけどね。ワポルのやつ、厄介な奴を連れてきたもんだ」
「つまりモーガニアってことだね!」
ドンッと雪を吹き飛ばして、ブリキっぽい王様が復活した。私の声が聴こえていたみたいで、こっちを向いて、頬を赤らめている。
怒らせちゃったかな。
「確かに海に居る間は海賊の真似事をしていたがな! 俺様は国王様だぞ! 誰が好き好んで海賊なんかになるってんだ!」
「おい! 海賊をバカにしてんのか!」
「「そうだそうだ~!」」
私とチョッパーはルフィに合いの手を入れて、偉そうなブリキの王様へ向かって、3人で両手を挙げてブーブーと抗議する。
「ええい! そっちのちんちくりんと、ついでにババアと、さっき俺様を殴ったカバは特に処刑だ!」
あれ、私は?
そう思っていたけど。
「綺麗だ…どこの国の姫だろうか…」
「どうした弟よ。顔が赤いぞ。風邪か!?」
何の能力なのか、ブリキの王様は口の中からブリキでできた花束を取り出して、こっちへ近づいてきて差し出してきたんだ。花束のデザインはともかく、目の前で口から出された物は、さすがに受け取りたくないかな。
テンション下がって、私の後ろ髪がペターンってなったと思う。
「美しい姫よ。俺様の王妃になってくれ」
「え、ムリ、タイプじゃないので」
身体の前で両手を向ける。
ビックリして反射的に断っちゃった。
「なんかまた邪魔口を殴りたくなった!」
「いってぇ! このぉ! てめぇまたぶったな!」
ドガンとルフィがぶん殴ってくれたことで、ブリキの王様との距離を離してくれたし、なんというか、スカッとした。
「賢い俺様は親にもぶたれたことねぇのに! 何様だてめぇ!」
「俺ルフィ、海賊王になる男
腰に手を当てて、ルフィはドーンと構えた。
「ほう、海賊王とな!?
……ま~っはっはっは!」
急に変な笑い方で嘲笑し始めたし、ちょっとこの人を見てると、さっきのこともあって、申し訳ないけど、引く。
「お前カバじゃねぇのか。王様ってのは選ばれた人間にしかなれねぇもんなんだ。お前みたいなカバが王になどなれるか。たとえ海賊の王でもな!」
それに、ルフィの夢をバカにするところがキライだ。
「なれるかどうか、俺が決めることだ!」
握った拳を見せつけるように、ルフィは宣言した。
その背中がとても心強いから、やっぱり私たちの船長は最高なんだよね。気を取り直した私は喉の調子を確かめながら、靴のつま先で雪をトントンと叩いた。