麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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第39話 クロコダイル④

 

 クロコダイルが凄く怒ってるのが伝わってくる。

 

 私は強大な気配を感じ取りながら、待っている場所に行くけど、地下にいるみたいだ。たぶんクロコダイルも私たちが来ることは分かっているからそこで待ち構えているんだと思う。

 

 コートを破いて包帯代わりにしたけど、私は手のひらがヒリヒリと痛くて喉はそれなりにガラガラだし、ルフィも全身ボロボロでお腹の傷も開いてしまって血で滲んでいる。

 

「よう、クロコダイル」

 

「わざわざ追ってくるとはな、ウタ人間、そして麦わら」

 

 何が起こったのかは済んだから気にしないけど、この遺跡、そのうち崩れ落ちそうなんだよね。

 

「えーと、今度は2対2で?」

 

「いいえ、元々利用していただけの関係だわ。むしろこの国にプルトンに関する情報がなかった以上、最優先は貴女になったみたいよ」

 

 まあ、それならいいや。

 

 クロコダイルは、この国の王様や、自分のペアのお姉さんにも殺気を向けている。今までよりずっと濃く感じて、余裕そうな笑みはなくて、もう慢心なんてしてくれないから、ここからが本番になりそう。

 

 お姉さんは無事みたいだけど、なんだか元気がなくて、大丈夫かな。

 

「この計画に何年かかったと思う?」

 

「えっ!? いーち、にー、さーん」

「うーん、正解は5年かな?」

 

 指で数えるルフィが可愛いけど、私は5年って予想でそう答えてみる。

 

「……チッ」

 

 クイズの答えは教えてくれないで、クロコダイルはますます怒っちゃったみたい。

 

「……まあいい。古代兵器プルトンの在り処を記したポーネグリフはここじゃないどこかにあるはずだ。その時は無理にでも読んでもらうぞ、ニコ・ロビン」

 

 この国の王様が存在は否定はしていないってなんとなく分かるし、たぶんどこかにはあるんだろうな。でも、そのためだけにビビたちの国をこんなめちゃくちゃにしてるんだ。

 

「フン、それに俺は運がいい。すでにウタウタの実と魔王が揃ってるんだ。最強の兵器を手に入れたも同然だ」

 

 両手を大きく広げてさ。

 

 私や、えっとロビンさんを、自分の物だーってやってるのかな。

 

 こういうのナルシストって言えばいいのかな。まあ、いいや。

 

「私って最強!? ビーム出せる!?」

「すっげー! ウタってビーム出せるのか!?」

 

 兵器って言われていい気分はしないけど、私がいつかドリルとかビームとか出せるかもしれないのはちょっと憧れちゃうな。

 

「……最後にチャンスをやるが、俺と手を組む気はあるか?」

 

「「やだ。」」

 

 ビビやこの国の人たちに、ごめんなさいしないと、仲良くはしたくないよね。

 

「いいだろう。海賊として、お前らを相手してやる」

 

 金の鉤爪をはずして、毒針が出てきたけど、あれを直接受けると、チョッパーがいないからゲームオーバーになりそうだね。

 

「ここは元々そういう構造らしいが、侵入者を生きて返さないらしい。さらに地上で爆破が起きれば、この地下は完全に崩れ落ちるだろう。」

 

 だが、と呟いて吸っていた葉巻を捨てた。

 

「俺は砂人間だ。この中で俺だけが生き残る」

 

「ずるいな」

「ずるいね」

 

 タイムリミットがあって、地面は砂で溢れていて、周りに水なんてないし、盾にできる柱とかいっぱいあって、崩れた岩があって凄く動きづらいし、ともかく私たちにとって不利な場所だ。

 

「海賊の決闘は常に生き残りを懸けた戦いだ。卑怯なんて言葉は存在しない」

 

「うん、よく知ってる」

「聖者を相手にしてるわけでもねぇしな」

 

 3度目の喧嘩をしよっか。

 

「私たちが凄く有利じゃん」

「こっちは最強のコンビだぞ?」

 

「ぬかせ。仲間なんざ、弱みにしかならねェ」

 

 もう慢心なんてしてないようで、クロコダイルのほうから動いた。足を砂に変えて向かってくるのは、私たちに大技の準備なんてさせないように、迎撃に専念させることが目的だろうね。

 

 乗るしかないか。

 

 私は(ウタ)って、指先に休符の音符を込めた。

 

「ゴムゴムの」

「ウタウタの」 

「「(ピストル)!」」

 

「もう小細工は通用しないぞ」

 

 ひらりと簡単に躱されて、特に伸びきったルフィの腕へ鉤爪が刺されそうになってる。

 

「やべっ」

 

 ルフィは手のひらで、腕を引っ張って戻す。

 

「水の護りを♪」

「ゴムゴムのスタンプ!」

 

三日月形砂丘(バルハン)

 

 水を纏ったルフィの足のキック、砂の刃で斬られて、一気に水分が抜け落ちてる。私が水の(ウタ)を重ね掛けして、ポンッと普通の足に戻ったみたいだけど、ゴム人間だからなのかな。

 

「あのドーピング技は使わないか」

「グッ……」

 

「ウタウタの バズーカァー!」

 

 クロコダイルの身体を無理やり吹き飛ばしたけど、ルフィの足を鉤爪が掠ったはずだし、咄嗟のバズーカのせいで私も喉に更に負担がかかっちゃった。

 

「助かった! 一旦離れるぞ!」

「ゲホッ……ありがとっ!」

 

「さっき見せた戦い方と違うのがやはり妙だが、覇気を纏っていないようだ。まぐれだったか」

 

 ドガーンって振り下ろされた鉤爪が、砂の地面を破裂させてるけど、ルフィに抱えて避けてもらわなかったら凄く危なかった。

 

「「ハァハァ……」」

 

「ククク どうやら無茶をしているようだな。直に毒も身体を回る」

 

 私もルフィも身体の傷だけじゃなくて、体力も限界が近い。それに、突破口をぐるぐると頭の中で考えてるけど、落ちてくる瓦礫を避けることにも注意してないといけないんだ。

 

 むしろ、タイムリミットや毒のことを考慮して、これ以上無理に攻めてこないのが、狡猾ってやつなのかな。

 

「こういうのはどうだ 砂嵐(サーブルス)

 

「っ! 旋風よ!」

 

 また先を読まれたみたいに鉤爪で、私の風は弾かれちゃう。クロコダイルが発動した砂嵐が地下の空間を何もかも巻き込んで、荒れ狂う。

 

「くそっ、ウタ! 無事か!?」

「な、なんとか」

 

 息を大きく吸い込めば砂を吸い込んじゃうし、視界も悪い。

 

 音もゴーゴーとうるさくて、ルフィの声も聴きとりづらい。

 

 でも。

 

 ルフィに、殺気が迫ってる。

 

「ルフィ! 後ろに跳んで!」

 

「おう!」

 

「……なに?」

 

 鉤爪が空を切るけど、全く同じ光景を一度視た気がする。それに、この国の王様を、ロビンさんが柱の陰に移動させて守っている姿もなんとなくわかる。

 

 やがて、砂嵐が治まった。

 

 クロコダイルの動きが急に止まっている。

 

 たぶん、何かを警戒しているんだ。

 

砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)

「旋風よ 押し上げろ♪」

 

 砂の刃を上昇気流へ飲み込む。

 

 ほぼ同時、たぶん様子見でクロコダイルが遠距離技に切り替えてきたけど、この距離(レンジ)は私の(ウタ)の速さが有利だ。

 

「ウタ人間、やはり見聞色を」

 

 風に乗って突撃しているルフィを、その鉤爪で刺そうとしているけど、船長に合わせてこその副船長でしょ。

 

「ウタウタ キーック!」

 

 鉤爪をキックで弾くけど、めっちゃ痛い。

 サンジみたいに上手くいくかと思ったけど。

 

「っ!? これでは避けれん!」

 

 今はルフィがメインだからね。

 

「ゴムゴムの! 銃弾(ブレット)!」

「グァッ!?」

 

 すかさずルフィの拳が、クロコダイルに撃ち込まれると大きく血を吐いた。

 

銃乱打(ガトリング)!」

 

 あいつ、なぜかスナスナできてない。

 ルフィのパンチを次々と受けてる。

 

「バズーカァ!」

「ガァッ!?」

 

 両手を合わせた技で、クロコダイルの身体が勢いよく吹き飛んで、壁にぶち当たった。

 

「ァ……」

「ルフィ!?」

 

 私は倒れそうになったルフィへ肩を貸すけど、やっぱり顔色が悪くて毒が回ってきてるんだ。特に掠った足はおぼつかなくなってる。

 

「チィ……麦わらのヤツは武装色を纏ってやがるな」

 

 私はいろいろ視たり聴いたりしてて特に頭が凄くガンガンと痛いし、ルフィはいつもより拳に力が入らなくなってきているみたいだし、エースも使ってた覇気って不思議パワーだけど、まだ多用するにはキツい。

 

「1人ずつならすぐに殺せるはずだが、半人前のルーキーが2人揃うと一人前だとでも?」

 

「お前は海賊なのに1人なんだな」

「ミホークさんと違って友達もいないでしょ」

 

 挑発はするけど、私もルフィも限界は近い。

 

 でも。

 勝機は見えてきた。

 

「……なぜそこまでする」

 

 クロコダイルも全身傷だらけだけど、私たちよりは元気そうなんだよね。まあ、明日の元気もひねり出して、あとちょっと頑張ろうかな。

 

「仲間なんてのはこの世で最も不要なものだ。その(みじ)めな庇い合い、いつか互いのために命を捨てる気か」

 

「そんなわけあるか。俺は仲間を(のこ)して死なねぇって誓ったんだ」

 

「そもそも、この国の何が欲しくて、死にそうな目で俺に立ち向かってきやがる。プルトンにも興味がなさそうだが、あの王女のためか?」

 

「うん、大切な仲間の故郷だもん」

 

 それに、自由がなくて幸せじゃない国なんて、そんなのイヤだし。

 

「ん?」

「解毒剤よ」

 

 クルクルと飛んでくる小瓶を私はキャッチしたけど、さっきより生き生きとした表情のロビンさんが、託してくれたんだ。

 

「今更、何を考えていやがる、ニコ・ロビン。まさか次はこいつらに付くのか?」

 

「さあ、どうかしら。でも賭けてみたくなったの」

 

 私から受け取った小瓶を飲み干したルフィは、効き目を実感したみたいだけど、相変わらず人外だよね。

 

「もう一度聞いてもいいかしら」

「なんだ?」

 

「なぜ戦うの? Dの名を持つ、あなたたちは」

「そういう名前ってだけだ」

「私なんてD付いてないし」

 

「そ。 でもそのうち付くでしょうね」

 

 ニコッと微笑んだ。

 

 ルフィは首を傾げたけど、私は熱くなる頬を振って、前を向く。

 

「若き海賊たちよ、どうかあやつを倒してくれるか」

 

「そんなもん最初からそのつもりだ」

「海賊の喧嘩なら任せておいて!」

 

 国王様、つまりビビのお父さんに頼まれたけど、この国を救う方法なんて、クロコダイルをボコボコにして、支配をやめさせることし思いつかない。

 

 だから、私はウタの力でこの喧嘩に勝ってみせる。

 

「1発デカいのいけるか?」

「あんたこそ、途中でバテないでよ」

 

 ルフィは拳を地面に当てて、私は息を大きく吸う。

 

「ギア2!!」

「ウタウタ指揮者(コンダクター) ギア2♪」

 

 残った力を振り絞るように、私たちの身体から熱が蒸気として出ている。

 

 フワフワと空中で見下ろしてるクロコダイルも砂を集めて、大技の準備をしている。

 

「俺はこの国の王となって、プルトンや魔王を手にして、再び新世界に舞い戻る。そして白ひげを屈服させ、海賊王として君臨する! その邪魔をするな!!」

 

「海賊王には俺がなる」

「私は世界の歌姫だけどね」

 

 支配なんて望む海賊王なんて、そんなのみんなが幸せな新時代には必要ないじゃん。

 

砂漠の金剛宝刀(デザート・ラ スパーダ) !!

 

 全方位に次々と襲いくる砂の刃、しかも覇気を纏ってる。

 

 だったら。

 

「暴風よ♪」

「ゴムゴムの!」

 

「一つ覚えの歌で防ぎきれるとでも! なにっ!?」

 

「嵐を巻き起こせ♪」

「JET 暴風雨(ストーム)!!」

 

 上昇気流に乗ったルフィが、雨を纏った無数の拳が砂の刃を1つ1つ破壊してくれている。

 

「やはり向かってくるか」

 

 クロコダイルは砂をどんどん集めて、覇気を纏って硬くなっていく砂の大きな塊だけど、もう大岩になっちゃってる。

 

「潰れろ麦わらァー!」

 

「潰れねぇ! ウタが俺に力をくれる!」

 

 私は、どんどん熱くなっていく赤い大剣を握り込む。

 

 シャンクスの剣技の1つと、エースの炎、そのイメージをこの(ウタ)に込める。今の私じゃ完全再現なんて程遠いけど、でもこの現実世界でも(ウタ)は最強だって信じているから、最強を以って最強に近づけるんだ。

 

せーのっ!

ウタウタの海賊剣 一閃!!

 

 両腕が壊れそうになるくらい大きく振りかぶると、メラメラとした炎の鳥を形創り、嵐の空気をさらに温めながら進む。

 

 推進力を得たルフィの無数の拳が、大岩に当たり始めた。

 

 ドガドガドガと。

 

 そして、砕けた。

 

「俺の覇気が超えられただと!?」

 

 天井に触れても、まだまだルフィは暴風雨のような拳を止めなくて、クロコダイルの砂の身体を覇気を纏って殴り始めているけど。

 

「いや、俺はもう、敗けねェ!!

 

 クロコダイルは防御に覇気を回してぶつかり合ってるから、凄い衝撃波だ。たぶんますます全盛期に近づいてて、見聞色で感じ取れる覇気がますます強くなってる。たぶん黒くなる硬化も会得し始めていて、相当強くなっちゃってるから、これで決めないといけないと思う。

 

「俺たちはお前を超える!!」

「いっけぇー♪」

 

 天井に罅が入って、太陽の光が漏れてきた。

 

ゴムゴムのJET長銃(アサルトピストル)!!

 

 ドーンッとルフィの伸びる拳によって空へ打ち上げられていく。

 

 さらにその身体を炎の鳥が太陽が照らす方向へ突き上げていく。

 

 クロコダイルの気配はどんどん弱まっていって、たぶん気絶したと思う。

 

 私のニカッとした笑顔に、ルフィが気づいてニカッと笑顔を、お互い白い歯をいっぱい見せて笑い合う。今回はもう何度目かになる勝負とかじゃなくて、私たち2人でいっぱい頑張って、七武海に勝ったんだ。

 

「「勝ったァ~~~!」」

 

 ヒュ~ってルフィは背中から砂の地面に落ちてくるわけで、私はその隣に大の字になって倒れた。

 

「ハァハァ、ウタいきった~」

「もう腕がほとんど上がらねぇや」

 

「……ありがとう」

 

「ブイッ♪」

「ししし どういたしましてだ」

 

 あとはビビとか、目の前にいる優しい表情のお父さんがなんとかしてくれるでしょ。

 

 瓦礫が落ちてきたけど。

 私たちのせいでもっとボロボロだね。

 

「ヤバい! 崩れてるんだった!?」

「てか、ここどこだっけ!?」

 

「こっちよ」

 

 柱から伸びている花のような手のひらを、私とルフィはそれぞれ掴んで、立ち上がった。

 

 ロビンさんの案内で無事に脱出した時に、すでに限界ギリギリだった私とルフィはバタンキューって倒れた。

 

 

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