パタパタと仰いでくれるのが気持ちよくて、ようやくのぼせていた頭が冷えてきたけど、またお風呂で溺れたところをナミやビビに救出されたんだろうな。でも、何か大事なものを見たのを忘れている気がする。
金色、お宝、そんな感じのやつ。
「ウタさん、もう大丈夫?」
「うん、もう平気」
起き上がって、用意してくれた寝巻きとかに袖を通すけど、真っ白で涼しくて軽い生地だ。鏡の前でクルリと回ってみたら裾がヒラリとなってまるでワンピースみたい。
膝が隠れる服ってあまり着ないけど、過ごしやすいし、これで外に出てもいいくらいかな。
「ナミは?」
「の、喉が渇いたから先に行くって言っていたわ」
髪はセットしていないし室内だけど、麦わら帽子がないと落ち着かないや。ルフィやシャンクスがいつも被っていた気持ちが最近ようやく分かってきた。
それにしても、ルフィとナミの気配が近くにあるのが気になるけど、もうすぐゾロたちと合流するみたいだからいいか。やっぱりあの2人って距離感が近い時があるよね。そういえば、私たちはもうそろそろアラバスタを出ることになるけど。
「ねぇビビ、ルフィの船に乗る?」
「えっと、私は……」
たぶん今は親愛くらいだろうけど、ビビも少なからずルフィに好意を持っているのが分かる。あの破天荒でとにかく自由で、放っておいたらどんどん人を惹きつけるあいつを、ただ待っているだけなんて凄くつらいと思うけど。
「今、メリーを取ったオカマさんから電話が来ているみたいで、それを取り返しに、えーと、とにかく今晩には出ると思う」
「ウタさんの耳って凄いのね。それに、ルフィさんと一緒にクロコダイルを倒してくれたとも聞いたし、私、船のために何かできたかしら」
出会いはラブーンのことで喧嘩しちゃったけど、みんなでジャングル探検もしたし、私やナミの看病もしてくれたし、他にも、お風呂で溺れてたら助けてくれるし、船で一緒にお菓子作りをしたり、歌を聴いてもらえたり、歌作りを手伝ってくれたり、とにかくビビはすでに大切な仲間なんだ。
「うん。気配り上手っていうのかな、凄く助かったよ。それに、女の子が多いのも楽しかったもん」
でも、この国の王女様でもある。
「船での役割とか強さとか、ルフィは全く気にしないし、気に入った仲間はすぐ船に乗せたがるでしょ。だから私たちも歓迎するよ」
「ふふっ、そうね。そういう人よね」
寝室で荷物の準備をしているルフィたちと合流して、詳しい事情はある程度聞いたけど、メリーの無事を確認しないと夜も眠れないし、あれだけの大事件から3日も経過していて海軍のことも気になるから、急がないといけないよね。
なぜかゴム人間のルフィの顔がボコボコなの、気にしたらダメな気がするから、ウタで出した氷で冷やしながらヨシヨシしてあげる。
国に残るか、海賊として冒険を続けるか、迷っているビビへ『12時間猶予をあげる。船を取り戻したら、明日の昼に東の港に一度だけ船を寄せるから』ってナミが伝えてくれたけど、ビビが来てくれるといいな。
私たちは今、夜の砂漠を移動している。
この1週間でだいぶ見慣れた砂の世界だ。
「ウタ、具合がわるいのか?」
「肉1個やろうか?」
「うん、食べる」
「いや、食べるんかい!?」
「相変わらず似た者幼馴染だな」
乗っているカルガモちゃんに頼んで近づいてもらって、ルフィからお弁当の骨付き肉を受け取る。深夜に食べると太るかもしれないけど、いろいろ思い詰めていたらお腹が空いちゃった。
「ウタちゃんやナミさんは、特にビビちゃんと仲良くしていたからな。思い詰めているのさ」
サンジはそういうとこポイント高いよね。
帳消しなくらいに浮気性だけど。
「……私、思い出したことがあるの」
そうだよね。
ナミも思い出を思い返してて。
「ビビのために、私、10億ベリーを諦めるわ」
違ったみたい。
「いや、金の話かよ!?」
「そういや言ってたな!」
「この女も相変わらずだな!?」
「そんなナミさんも素敵だ♡」
「だから代わりにあんたらが稼ぎなさいよね」
賞金首の海賊をボコボコにして海軍に引き渡すってのはかわいそうだし、船の家計のためにもどこかに凄いお宝とかあるといいんだけどね。
「皆すぐに10億ベリー稼いでくれるよ。 ねっ、チョッパー?」
「俺もぉ!?」
それに、チョッパーだって協力して幹部を2人倒したらしいし、誇らしげに語るウソップくらいに海賊として自信を持っていいと思うけど、もう少し時間がかかりそうかな。
「それもそうね。あと、ビビが来るかどうかなんて考えても仕方ないでしょ」
ナミの言う通り、いろいろ悩んでも仕方ないし、ビビの決断に任せるしかないよね。
「あっ、あっちに人がいる」
「おお。確かに船もあるぞ」
見聞色の覇気にピンと来たけど、かなり強い気配の人だ。オカマの人が海に停泊していたメリーをこの川まで移動させたらしいけど、ウソップもゴーグルでメリーが無事なことを確認してくれた。
カルガモちゃんたちのおかげで、快適な砂漠の移動ができたし、元気よくありがとうとさようならを伝えた。たった1週間だったのに、凄く長く感じたけど、これでこの砂漠の国とも一旦お別れなんだ。
「ちょっとォ~! 聴いてるゥ!?」
「「「あ、海で釣ったオカマだ!!」」」
「もう顔を見たくなかったぜ」
「船は無事のようね」
「一体何が目的だろうな」
「その白鳥の付いたコートかわいいね!」
どこで買ったのか、それとも自作なのか気になるところだ。
「あらぁ麦ガール、ありがとねん!」
パツパツなまつ毛が凄いウィンクをしてくれるから、私もアイドルとしてウィンクを返す。
「ってぇ~ なになにぃ~ 麦わらペアルックじゃな~い? 麦ちゃんのこれ?」
「ん? なんだその指? ウタはこれじゃねぇ。幼馴染で副船長だ。てか近ぇ」
「べ、別に、麦わら帽子はおしゃれの一環なだけだよ?」
クルクルとつま先で回っているけど、まるで白鳥のような華麗なダンスで、そういう踊り方もあるんだ。細い素足にすね毛が目立っているのがちょっと残念だけど。
「ああん! 麦ガールがかわいそォ~!」
「わっ、凄い。ホントにルフィの顔と声だ」
マネマネの実だっけ、自分の顔に触れるだけで変わるんだ。
「どう? どぉう~?」
「いや、別に」
私に顔を近づけてくるけど、別にドキドキしないや。
もしかして私ってルフィの顔がタイプじゃないのかと思って、焦りながら隣にいる本物のルフィを見るけど、やっぱり可愛くてカッコいいや。今はどこかむすっとしてるのすら可愛い。
「麦ちゃん、素敵な
「ん? 花なんかどこにもねぇけど」
フッと笑みをこぼして、マネするのやめちゃったけど、どこまでマネできるのか気になる面白能力だと思う。確かルフィたちが楽しそうに話していたし、もっといろいろ能力のことを聴いてみたいな。
「はいはい、荷物運ぶわよ」
「おら、クソ白鳥オカマ、さっさと降りねぇとまたぶっ飛ばすぞ」
「そ~~ゆ~~態度! しちゃうわけェ~!?」
顔を近づけてくるのを防ぐように、サンジは靴裏で押しとどめているけど、一度喧嘩した2人だから仲良しなのかな。
「耳をかっぽじって聴きなさい! あちしがここまで船を持ってこなかったら、海軍に取られていたのよぉ~!?」
「「「「なんと!?」」」」
私もルフィもウソップもチョッパーも、この白鳥さんが輝いて見えてきた。
「海軍がいたら自分も危ないのに!?」
「メリーを守ってくれたのか!?」
「なぜそんな危険なことを!?」
「もしかしてこいつ良いやつなのか!?」
「それは……友達だからよぅ!!」
「「「「ありがとぉー!」」」」
私たちはうるうるとした目で、白鳥さんと肩を並べて、大笑いして踊り始める。ナミとゾロとサンジも混ざってほしいけど、冷めた目で見てる。もしかして私たち騙されてるんじゃないかな。
「バカばっかり どう見てもウソっぽいでしょ」
「どうせ海が海軍に封鎖されているから、お前も島を出られなくなったんじゃねぇか?」
「要するに、俺たちを味方にする必要があったわけだ」
「ドキィー!? いいじゃない! イイじゃない!?」
やっぱり私たちを騙していたんだ。
そんな人とは思わなかったよ。
「こんな時代だからこそ! 集え! 友情の名の下に! 力を合わせて戦いましょ~~う!!」
「貴方の新時代ってこと!?」
「ああ! 力を合わせよう!!」
「お前は最高のダチだ!!」
「よっしゃー! 友情パワぁ~!」
「みんなでいくわよォ~!!」
「「「「うおおおおお!」」」」
私たちは叫びながら、月が照らす夜空へ向かって腕を突き上げる。やっぱりこの白鳥さんは友達思いの良い人だったんだ。そういえば私たちに海賊の友達ってまだいなかったじゃん。
「はいはい。明日の朝に出るんだから、早く寝なさい」
「てか部下の奴らもいたのかよ」
「まともに戦えるのが船長くらいなんだろうな」
確かにナミに言われた通り、明日に備えて早く寝ないといけない。宴を始めたがっているルフィたちにも伝えて、出航の準備をテキパキと始める。
たぶん、あの白鳥の船だけでは逃げきれないくらいの艦隊が待っていて、キツい戦いになると思う。今まで陸ではどんな相手にも勝ってきたけど、海の上というステージでは今の私たちでは攻撃手段が少なすぎるんだ。