「「「たどり着けよ!! 空島ーー!!」」」
嵐に負けないくらいの大声で、激励を背に受けて、私たちが乗った鶏メリー号は海を離れてギューンって飛びあがった。
空を突き破っていくことで跳ね返るような風が襲い掛かってきて、麦わら帽子を抑えることと、デッキの手すりで身体を支えることで精一杯だった。赤白髪が靡く方向をチラリと見るけど、他の皆も吹き飛ばされないようにすることに命がけだ。
誰も安全な船室に籠っていないのは、この先の海へ進む過程にはもっと命をかけた冒険が待っているって思えるから。
ようやく、もうすぐ、あと少しでフワフワな雲の中だ。
「「「へぶぅ!?」」」
「……っ!?」
一気に力が抜ける感覚だけど、雲の中で溺れるなんて。
口の中に入った しょっぱさが、ますます海だと認識させてくる。
「クソッ、全員無事か!? 特にナミさんとウタちゃんとロビンちゃん!!」
ザバーンって大きな音がしたと思ったら、滝のようにマストから水が降ってきて、さらに甲板へ大量の水でギューって押し付けられた。
麦わら帽子も濡れて重みが凄くて、縫い付けてあるビブルカードは濡れても平気なはずだけど、心配になってくるくらい。
「ウタ、大丈夫か~?」
「へーきだよルフィ……てぇ!?」
びしょ濡れなルフィがフラフラと来たと思って寝返りを打ったら。
力が抜けるように倒れてきて、ボスンって私の胸へ顔を埋めてきたんだ。
ぷしゅーって白い蒸気が出るかと思うくらい、身体が熱くなってきた。
「あ~ あいつらはいつも通りとして。ロビンちゃん無事かい!?」
「……フフ、ありがとうコックさん」
「こっちでチョッパーも無事だ!」
「ゾ、ゾロのおかげで助かったぞ……」
「しんでるウソップも生きてるみたい!」
「お、俺は勇敢な……」
ぴたんぴたんっと雫が落ちる音もしながら、8人誰も欠けることなく、空へたどり着けたことが確信できた。目の前にいるルフィが白い歯を見せるようにニカッとして、それに釣られて私も歯を見せる。
私たちは立ち上がって、興奮を隠しきれずに手すりに手を置いて周囲を見渡した。
見渡す限り、白いな。
まずはその一言だった。
「わたがしみたいにふわふわだ!」
「あぁすげぇ! 雲の上だ!」
「えっ! これ食べれるのか!?」
「イヤイヤ、雲って水の塊みたいなものだぞ?」
さっきまで嵐のように黒い雲だったけど、今は真っ白な雲の上を鶏メリー号が進んでいた。前を見てみると、船首の羊ちゃんもまだ濡れているから、喜びの涙みたいにポツポツと海面に雫を落としている。
「まだログポースがこの上を指してるわ」
「どうやらここはまだ積帝雲の中層のようね」
「今度はあそこから滝登りでもしろってか?」
「さあな。チッ、タバコが湿気てやがる」
見渡す限り、空の世界は見渡す全てが雲で出来ていた。
4人の会話をそれなりに聴きつつ、私とルフィとチョッパーとウソップは船の真下を見つめて、想像していたよりは雲が海だな~って思っていた。
ルフィは手をビヨーンって伸ばして手を海につけてみたり、私とチョッパーは手についた水を舐めて雲なのに甘くないって思ったり、ウソップは早速服を脱いで泳ごうとしていたり。
「第一のコ~~~ス! キャプテン・ウソップ! 泳ぎま~~~す!!」
「「「イエーイ!!」」」
ウソップが勇敢に、ザブーンって潜って行く。
「よくも臆せず堂々と。危機感ゼロだな」
「あいつらときたら……」
「そういやここって海底はあるのか?」
「そうね。もし深く潜りすぎたとしたら、空から落ちて海の藻屑ね」
ロビンさんが恐ろしい想像をさせてきたから、私たちはお口あんぐりだ。
「ヤバい。結構深くまで潜ってる! ルフィ!」
慌てて見物色の覇気を使ったら、慣れている気配はすぐに見つかって、ウソップが慌てている姿が読み取れた。
私は慌ててその向きを指で示すけど。
ルフィができるのは……
「くそっ! やってみるけど!!」
そこまでゴムの腕を伸ばすだけなんだ。
お願いウソップ、その手を掴んで。
「
腕を交差して、能力を発動したみたい。
ロビンの気配が海の中を突き進んでいくのは分かるけど。
「
「おう!」
明るい表情になったロビンを見て、ルフィは腕を戻そうとして、その途中でドンっと体勢を整えた。
「な、なんだ!? ウソップが重くなったぞ!?」
「何か大きいやつも上がってきてる!」
ロビンが咲かせた腕とウソップの身体がビヨーンって釣り上がり、大きな吸盤の欠片とか魚がルフィの腕に付いている。
「ギャー 巨大タコだぁ~~!?」
「こっちは巨大アナゴ~~!?」
「そうビビる程のものでもねぇだろ」
「三枚おろしにしてやろうか」
チョッパーやナミは叫んだけど、冷静にゾロが伸ばしてきたタコの足を斬り飛ばして、サンジが巨大アナゴを蹴り返してくれた。
「ギャアアア!! 嚙みつかれるぅ~」
「「今度は何だ!?」」
私も一瞬慌てたけど、ウソップの髪が小さな魚に噛みつかれていた。さっきと比べてスケールは小さいけど、痛そうだし、女の子としてはああいうことはされたくないや。
「そ、空島、コワい……」
「ウソップがまた気絶した!」
「これが空魚、ノーランドの日誌にあった奇妙な魚ね。海底のない海で生き残るため、独自の進化をしたんだと思うわ」
「鱗が羽毛みたいだわ」
「こっちのタコの足は思ったより軽いな」
「ソテーにしてみたぞ」
「「ガツガツ……うまい!!」」
ルフィに付いていた魚を早速サンジに料理してもらったけど、白身で淡泊で、それでいて鶏肉のような食感だ。とにかく美味しい。
「「おかわり!」」
「まだ検証中よ!!」
ナミやロビンがまだ1匹持ってるから、それも食べようとしたらなぜか怒られちゃった。まあ、呆れた表情でサンジに渡して、自分にも食べさせてって言っているから、ナミも食べたかったならそう言えばいいのに。
「ウソップを寝かせてきたぞ」
「ありがとチョッパー、ってあれ、誰か来るよ?」
「雲の上を走ってやがるな……敵か」
ゾロが刀を構えたように、私も覇気で敵意が読み取れた。
「ホントだ! 雲の上を滑ってるぞ!」
「なんだかちょっと羨ましい!」
雲を滑るための靴だけじゃなくて、角の生えた四角い仮面も民族衣装っぽくて可愛いし、手にはカッコいいバズーカ砲と、さらにおしゃれ模様の描かれた盾、それに何といっても、白い天使の羽を生やしている。雲の上で初めて会えた人なんだけど、やっぱり天使はいるんだね。
「排除する」
何かを守るように、彼は敵意を向けてきた。
だったら喧嘩になるかな。
「ゴムゴムの
いつもより技のキレが落ちているけど、鋭いパンチが伸びていく。でも打ち出した直後、いやその前から横に避けたように思えた。
「速い!」
「くるぞ!」
「分かってる!」
スケート靴から吹き出る風を強くして、一気に甲板まで登ってきた。ルフィだけじゃなくて、ゾロやサンジも迎撃に向かってくれたけど、次々とその硬い靴で蹴り飛ばされちゃう。
やっぱり、3人共いつもより動きが鈍い。
「あいつらが簡単にやられるなんて!?」
「次は私ね。女だからって甘く見ないでよ」
赤いレイピアを創り出して、相手の身体の中心へ打ち込む。
盾で防ごうとするのは読み取っていたよ。
「なにっ!?」
「ビリビリ ドッカーン!」
刺突した剣先からバチバチと電撃を流して、追加の風で身体を吹き飛ばす。
でも瞬時に受け身をとって空中で体勢を整えられた。
「やっぱり覇気?」
「マントラ使いか?」
距離を取ってお互い同時に喋ったから、シーンってなっちゃった。
ほ、ほら、たぶん見聞色の覇気でしょ。
言い方が違うだけで。
「さっきのは電撃……まさかな……だが女だろうが、青海人は排除するのみ!」
彼は船の甲板を蹴ってジャンプして、バズーカ砲の照準を特に私へ向けて定めた。
避けたら船に当たるってわけね。
「ウタウタの……」
「バーン……」
大きく息を吸って。
空気が薄いことにビックリしたけど。
「……」
「……」
覇気で読んでみるとあのバズーカ砲から出る攻撃、砲弾じゃなくて、火炎攻撃だと感じた。
だったらウタウタの
彼もいつでもバズーカのスイッチを切り替えるように指を添えていて、私のウタの種類を感じ取ろうとしている。
そして、私たちは新たな気配に一度行動を中断した。
「そこまでだーー!」
「こ、今度は何なのよもう~~!?」
おじいさんの声に、ナミの悲鳴が重なって、大空へ音が響いた。
「とうっ!」
水玉模様で ぬぼーっとした表情がかわいい鳥から飛び降りて、騎士のおじいさんがランスを構えてわざと真っすぐ盾に突き進む。
仮面の天使さんは、その避けきれないスピードに盾で防ぐことを選ばされたみたい。
「チッ……」
見聞色の覇気同士の戦いって、ああやって『選択させる』ことも重要なんだ。
とにかく2人は知り合いなのかどうか分からないけど、怒りの感情を見せるように舌打ちしてから、仮面の天使さんは再び海を滑るように離れていく。
「去ったか」
船の手すりへ立って、その隣へパタパタと降り立った水玉鳥が翼を折りたたんだ。
「おっさんは?」
ルフィたちはたぶん反射的に攻撃を受けきったから、特に怪我もなさそうで、それ以上に自分の動きが鈍かったことが気になって、ちょっと落ち込んでいるみたい。
「我が名は空の騎士、ガン・フォール、そして相棒ピエール!」
「ピェ~!」
何にせよ、空にも住む人たちがいるわけで、早速宝探しってわけにもいかなそうだよね。