麦わらのウタ   作:ヒラメもち

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クリスマス, 紅白, 新年, ...
ウタの新コスチュームいっぱいで嬉しい年末でした。


プロローグ その6

 

 コルボ山で修行したり狩りをしたり。

 ゴミ山を駆け上がったり。

 端町で不良と喧嘩したり。

 中心街では宝払いで食い逃げしたり。

 

 ダダンの小屋を拠点として、私たち4人で冒険してくるんだけど、エースとサボの強さには助けられてばかりだった。

 

 だからもっと強くならなきゃねって思って私たちは毎朝修行していた。

 

「ゴムゴムのたて~!」

「指伸ばしただけじゃねぇか」

 

 ルフィは相変わらずゴムの身体に振り回されているし、サボやエースの真似をして鉄パイプを持っても慣れない棒術も上手くいかなくて、あまり順調とは言えなかった。

 

 そして私も。

 

「えーいっ! ウタウタぱーんち!」

「もうヤケクソじゃねぇーか!?」

 

 エースは反撃する気もないようで、また手のひらで渾身のパンチがパチンと防がれちゃう。

 

「お前、その能力意味あんのか?」

「うっさい! ウタワールドならあんたボコボコだったでしょ!」

 

 落ちていた枝を拾ってから、ニヤニヤするエースの顔をぶん殴ってやりたいけど、鉄パイプはビクともしない。私も一度持たせてもらったとはいえ、それ結構重いんだもん。

 

「お前が歌い始めたら耳塞げばいいし、もう敗けねぇよ」

「ぐぬぬ...人が気にしていることを」

 

 エースに指摘された通り、ウタウタの能力はウタを聴かせた時点で発動するから、聴かないようにすればいいって発想は私でも思いつくことだ。そりゃあ殴ってでも無理やり聞かせることだってできるけど、そんなの私のウタをキラいになっちゃうよね。

 

 だから。

 

 枝をもっと握り込んで強い自分をイメージしてウタうんだ。少しでもウタワールドの自分に近づけるようにって。

 

「私はウタで強くなるの!」

「へぇ、ちょっとはマシになるじゃねぇの、ひょろひょろなのに」

 

 急に浮遊感と、顔に衝撃。

 

 バキッと枝が折れちゃって、私はビターンっと地面にぶつかったんだ。

 

「いったぁ~い エースが~!」

「あんま無茶させんなよ」

「エースのやつひでぇな」

「俺は何もしてねぇよ!?」

 

 泣きついたら撫でてくれるサボは、男子組の中でも紳士的で優しいよ。口が悪いエースにはあっかんべーしてやるもん。といっても、この2人の強さは同格だし、エースもそれなりに良いやつなんだけどね。

 

「よし、メシにでもするか」

「ダダンのところから米も持ってきたしな」

 

 朝の探検へ帰りに狩ってきたワニ1頭を焼いて夕食にする。最初はこんな野性的な食事はあまり気が進まなかったけど、カエルなんて食べたせいで、ワニですらご馳走に感じるようになっちゃった。

 

 ルフィもお腹が風船くらい満腹みたい。

 ゴムの身体ってホント枕にちょうどいいね。

 

「そういや、昼間のおっさん、サボのことを呼んでたよな?」

「「そうだっけ?」」

 

 初めて食べたラーメンの味しか憶えてないけど。

 サボはゴクリと息をのんで、ため息をついた。

 

「その、俺は貴族の息子なんだよ」

「「「へぇ~」」」

 

 聴きたがったエースですら、特に興味がなさそう。貴族ってことはお金持ちってことなのかな。勉強とか大変そうだ。

 

「あいつは父親なんだ。俺はあのゴミ山で生まれたわけでも、孤児ってわけでもないんだ」

「なんでわざわざ親がいるのに、あそこに住んでるんだ?」

 

 あれ、今度は急にエースが不機嫌になった。

 

「ゴメンな。どうしても俺はあいつらのところにいたくなかったんだ」

 

 優しいサボが拒絶するくらい、そういう父親もいるんだね。エースもルフィも本当のお父さんは知らないらしいけど、マキノや村長たち、それなりにダダンたちもみんな良い人だから。

 

「王族の女と結婚できなきゃ俺はクズ、だから毎日勉強と習い事の日々だった。俺は出来がわるいみたいでさ。何度叱られたことか」

 

 ギュッと握った拳は凄く強いのに、たぶん立ち向かうことができないんだ。結婚って、えーと、お父さんとお母さんになることでいいのかな。確かヤソップが結婚して息子がいるってみんなに自慢していたはず。

 

「お前らにはわるいけど、俺は父親がいても母親がいても1人だったんだ。俺にとって、あの町はゴミ山より息が詰まりそうなんだ。あそこに自由なんてない」

「そうだったのか……まっ、よく考えたら俺は悪ガキのサボしか知らねぇや」

「そうだ! 俺たちは仲間だ!」

「サボは私にとってお兄ちゃんみたいな人だもん!」

 

 イヤなことを思い出させちゃったみたい。エースに先を越されたけど、貴族の息子とか別に気にしてないし、サボがクズだなんて全く思わないし、むしろたった1歳年上なのに紳士で優しいからね。

 

「サンキュな。……よし! 俺は必ず海に出てやる!」

 

 立ち上がったサボが、笑顔で叫んだ。

 私たちは海が来る場所へ走って向かう。

 

「俺は自由になる。広い世界を見てそれを伝える本にしたい。航海の勉強なら何の苦じゃないんだ。もっと強くなってみんなで海賊になろうぜ!!」

 

「ハッ、当然だ。俺は海賊になって、勝って勝って勝ちまくる。最高の名声を手に入れて俺の生きた証を示す! 大海賊になって見返してやるのさ!」

 

「私も広い世界を回ってたくさんの曲を作る! 世界中のステージと私のウタでみんなを幸せにする! 私は新時代をつくるの!」

 

「俺も新時代をつくる! 世界中を冒険して、いろんな場所に行って、いろんなやつと出会って、いろんな食べ物を食べる!

 そして俺はなァーーー!」

 

 

 空気が興奮するように震えて。

 海の波が大きく音を立てた。

 

 

「「……は?」」

「……そっか♪」

 

 それが、ルフィの夢の果てなんだ。

 『そのうち決める』って言っていたけど。

 

「どこまでもあんたらしいわね」

「何を言い出すかと思えば」

「面白いな! 俺はお前の未来が楽しみだ」

 

 私たちが期待して待っていてあげるんだから、そのブカブカの麦わら帽子が似合う男になりなさいよ、ルフィ。

 

「あれ、お前らも船長になりたいのか?」

「なに? サボはてっきりうちの航海士かと」

「じゃあウタは俺の音楽家になれよ!」

「私はもう……いや、それもいいかもね」

 

 だって私たちは自由なんだから、選択肢はいっぱい欲しいものね。別に世界の歌姫なんだから、赤髪海賊団とルフィの海賊団の両方の音楽家をやってもいいし、そのうち決めればいいでしょ。

 

「さて、お前ら知っているか?」

 

 エースが秘密基地からゴソゴソと取り出してきたのは、1本のお酒の瓶だ。あれってダダンのものだし、子どもはお酒を飲んだらダメってベックさんが言っていたのに。

 

「盃を交わすと兄弟になれるんだ」

「兄弟!? ホントかよ!?」

「ならウタは俺たちの妹だな」

「えっ、私がルフィのお姉さんに?」

 

 あれ、姉と弟と結婚できたっけ。

 そもそもなんでこいつと結婚を?

 

 よく鼻水を垂らしてて、歌も音痴だし、サボほど紳士的でもないし、シャンクスから預かっている麦わら帽子はまだブカブカで、とにかく子どもっぽいままで。

 でもたぶん将来はシャンクスみたいに『普段はかわいいけど頼れる人』になってくれて。

 

 だから、その。

 

「私はいいわ。だってもうサボがお兄ちゃんだし、それならエースとも兄妹になるでしょ?」

 

「それもそっか!」

「「ん? あ~? え?」」

 

 なによ、サボとエースは、私とルフィを交互に見つめて。

 

「まあいいや。ほれ、お前はジュースでやれよ」

「さすがサボお兄ちゃん!」

「まっ、そのうち妹になったときでいいな」

「よくわかんねぇけど俺たちはずっと兄弟なんだよな!」

 

 4つの盃がコツンとぶつかり合う。

 

 生まれはバラバラだけど、この4人で兄弟になれた。たぶん出航する時は別々になるけど、この絆はずっと続いていくんだ。

 

 夢に向かって4人で日々を楽しんだ。

 あの時まで。

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