雲の運河を滑るように船は進んで。
そして見えてきたのは。
まさしく空の島だったんだ。
私たち全員、声に出せないくらいの感動を味わっていた。
「島だ! 島があったぞ!! 空島だ~~~~!!」
静寂を破るように、両腕を突き上げるように宣言するルフィの声は、目の前の島を見つけた喜びを目いっぱい表していた。それこそ、空の下で私たちを待っている人たちに届くかもしれないくらいの大声だった。
『やったぁ~~!』
私たちも抑えきれず声を出して、みんなで喜び始めた。
ここを冒険するのは凄くわくわくするし、クリケットさんたちにもお土産話をしてあげたいなって思うよね。
雲に囲まれていることでポカポカとちょうどいい温かさで、空島の中心へ向かって、なだからに雲が積みあがっていて、白い石の階段が町へ続いている。町があるってことは人が暮らしていて、天使のような羽を持った人がたくさんいると思う。
さらにずっと遠くまでツタが伸びていて、そこも雲の運河になっているから、空島は他にもあるかもしれないね。
「よしっ! 上陸だ、お前らぁ~!」
「「「あいさ~!!」」」
私とチョッパーと、ちょっと前に気絶から復活したウソップは、目を輝かせたルフィへ、片腕を突き上げて返事をする。
声に出して返事はしなかったけど、ナミやサンジも、ゾロも、そしてロビンも頬が緩んでいて、ワクワクが隠しきれていない証拠だね。
「見て! ビーチがあるわ!」
「砂浜はなさそう、でもあれはヤシの木かしらね」
うきうきとした声でナミが指で示した方向を見て、ロビンが楽しそうに考察しているけど、ヤシの木が雲から生えている不思議だね。
雲の陸に打ち寄せる海水があって、確かに純白でふわふわなビーチって感じ。
「「「やっほぉ~!」」」
「はしゃぎすぎだっての!」
「そういうお前もな!」
サンジやゾロまで子どもっぽく飛び出していって、男子たちは赤シャツの前を開けたり、上着を脱いだり、なんなら完全に上半身裸になったり、船の甲板に服が脱ぎ捨てられてるや。
嵐を抜けてきたからさっきまで雨合羽を着ていたし、私たちは一旦着替えることにした。
急いでいるからズボンはそのままに、上だけ着替えて、ナミは雲模様のビキニ、ロビンも縞模様のキャミソール、そして私も空島を意識しようかなって思ったけど。
「こ、これじゃ薄着すぎないかな。やっぱパーカーを羽織ったほうが……」
能力者だから泳げないのもあって、持っている水着は可愛いって思って買ったやつくらいでして。
ナミと同じくビキニだけど、白地にところどころ赤色が入っていて、紐は私の髪のように紅白になっている。背中で交差したところにチョコンと天使の羽が付いてるのがポイントなんだけど。
「別にいいでしょ。どうせ日焼けしないんだから。羨ましい」
「歌姫さんは意外と恥ずかしがり屋なのね」
「ちょ、ちょっとぉ~!」
船室にパーカーを置いたまま、私はナミに背中を押されていく。
男子たちがはしゃぐところへ連れ出されていったけど。その、肩がスースーするし、大きめな胸が歩く度に揺れるわけで。
「うひょぉ~ ナミさんも!ウタちゃんも!ロビンちゃんも!キレイだ~~!!」
「さっきより喜んでねぇか、このアホコック」
ほらやっぱり、サンジが鼻血を出しながら見られて、ますます顔が熱くなってきた。
ナミやロビンがいるからまだマシといっても、幼馴染補正で比較的女子に興味がないウソップやゾロも、 ほぅって小さく声を出していたし。
「お~いウタ~! はやく来いよ~」
雲のビーチに降りて、呼ばれたほうへ向かう。
まあ、どうせルフィは気にしないよね。いつも通りでいいや。
「こっちにおもしろ果物が……わわっ!?」
「ルフィが落ちたぁ!?」
「あいつが木から落ちることもあるんだな」
ツルって足を滑らせ、フカフカの雲に落ちて、その手に持っていた石みたいな果物をゴツンと頭にぶつけた。
チョッパーやウソップも驚いているけど、私だってルフィが木から地面に落ちるなんて見たことがないから、ビックリした。
普段は落ちそうになったらすぐ腕を伸ばして戻っていくし。
まっ、空島だからってちょっとはしゃぎすぎたんでしょ。
「へーき?」
「お、おう」
尻もちをついたままボーっとしてるから、私が差し出した手を取って立ち上がった。
てかルフィ、また腹筋の割れ目が増えた気がするし、ますます可愛いままでカッコよくなるし、なんで私だけ動揺させられちゃうんだろうね。ずるい。
「こ、これは?」
「これか? カボチャが木になってたんだ。食べようにも硬くてよぉ~」
頬が熱くなってきて、慌てて話題を変えるために聞いてみた。
ルフィはコンコンと叩いてみたり、歯を突き立ててみたり、ブンブンと振ったり。振った時にバシャバシャみたいな音が鳴ったね。
「カボチャに似てるけど、ヤシの木みたいなものなのかな」
「う~ん、よしっ! こうなったら! 」
ルフィは片手に持って、腕を振り上げて、拳を強く握りこんで。
「ゴムゴムの覇気ぃ~!」
ドスン! って。
武装色の覇気を込めて果物へ拳を叩きつけたから、破裂するように白い液体が周囲にばら撒かれる結果になって。
バジャー! ってなって目の前が真っ白になった。
「わわっ! 破裂させちまった!」
ベタベタと、私の紅白の髪とか、水着の上を垂れ落ちていく。
いや、確かに甘くて美味しいココナッツミルクなんだけどさ。
「ぎゃー! かけちまったぁ~!?」
「「うわぁ~……」」
ルフィの叫び声に、ゾロとウソップは声を合わせて引いたような声を出している。
「てめぇルフィ! なんてもん見せつけてきやがる!? お、俺なんてそんなハプニング、一度もねぇのにぃ...」
怒りながらもサンジは号泣を始めちゃった。
「はぁ~ 何やってんだか」
「フフ 仲が良いのね」
ナミやロビンが大人びた会話をしているけど。
「わりぃ! すぐ拭くから!」
余裕がない私は唇をプルプルと震わせながら、ルフィが慌てて脱いだ赤シャツで身体を拭いてくれることに、受け身になるしかなかった。
ルフィにいろんなとこ触られてるの、なんだか幸せだけど、恥ずかしいよ。
「なぁ、これすごく美味しいぞ!」
「ああ、そうだなチョッパー」
「それでいいぞ、チョッパー」
ルフィが落とした果物の欠片を舐め始めた普段通りのチョッパーの声に、ゾロとウソップが賛同して、場の空気はいつも通りなものになってきた、と思う。
「ふぅ~ なんとか拭けたけど、ごめん!」
「あ、や、いいよいいよ! 気にしないで!」
バシャバシャと海水で洗ってから、そんな濡れた赤シャツを着直すのはルフィらしいけど。でもあんたがそんなに動揺するとか、こっちがもっと動揺しちゃうじゃん。
サンジはともかく、他のメンバーに恋心がバレたらどうしてくれるの。
「おぉ! 天使だ! 天使がこっちにやってくるぞ!」
どうやら立ち直ったサンジが、喜びの声をあげたことで、雲の椅子でくつろいでいたナミやロビンも集まってくる。
こっちへ歩いてくる、薄い金色の髪をした女性はハープを背負っていて、何よりも背中から本物の白い羽が生えていた。その隣には雲のようなフワフワな狐が歩いている。
「……へそ。」
その言葉にルフィも私も慌てて、へそを隠す。
敵意がないから油断しちゃってた。
「もしかして、青海からいらしたんですか?」
「はい。ボクは君に会うために遥々と海を越えて」
警戒心の欠片もないサンジはワルツを踊るように近づいて行って、右腕をクイッと紳士的な挨拶をした。
やってることは紳士じゃなくて、ただのナンパだよね。
「ふふっ ようこそ、スカイピアへ」
大人の対応をされて、私たち全員へそう告げた。
空から降ってきた船にあった地図、確かスカイピアって書かれていたはずだよね。ドクロを掲げた船でやってきた海賊だけど、歓迎ムードには思わず頬が緩んじゃうね。
「イテテテ! ナミさん嫉妬かい!?」
「はいはいサンジ君、邪魔よ」
ナミにサンジは耳を引っ張られていて、ルフィみたいにゴムじゃないから痛そう。
「ねぇ、知りたいことがたくさんあって、いろいろ聞いてもいいかしら。」
「はい。何でも聞いてください」
まずは私たちが自己紹介をしていると。
コニスのお父さんがやってきて、『へそ。』ってたぶん挨拶を交わし合ったり。
木へぶつかったウェイバーって小型ボートのことを教えてくれたり、ルフィがやってみて溺れたり、ナミが使いこなしたり、空の海の幸を見せてくれたり、さらにはいろんな雲のことを教えてくれたり。
ともかく親子そろって、とても優しい人たちに出会えたみたい。
たくさん教えてくれた中でも特に。
『~♪』
「すごい!
感動でいっぱいで、原理も分からないけど、すごいって言葉が溢れてくる。空島に来て驚きと感動がいっぱいだったけど、1番の感動、とにかくすごい。
「ウタさん、本当に綺麗な歌声ですね」
「でしょ~ 生まれてからずっと練習してきたの!」
カチッとするだけで、声を録音と再生ができるんだよ。
だったら、私の
「良ければいくつか差し上げますよ」
「えっ、でも高そうなのにわるいよ!」
慌てて手を振って遠慮するけど、欲しいなって顔がバレちゃったかも。
「スカイピアではよく取れるものなんですよ。父によく取ってきてもらっています。それに、同じ音楽家なので」
「コニス、ありがとぉ~!」
嬉し涙を流して、思わず抱きついちゃった。
ルフィたちは風のダイアルや、明かりのダイアルで遊んでいるようで、その間にも私たちは音楽家として意見交換をず~っとした。
コニスのハープの演奏はスカイピアの曲をいくつも弾いてくれたし、弾きながら
それこそ、サンジたちがご飯を作ってくれて並べ終わるまで、会話は続いていたと思う。
ほんと、空島に来れてよかった。
ルフィと一緒に冒険できて、私の世界はどんどん広がってる。