そう言えば、ナミの帰りが遅い。
それが心配で私たちは一旦海岸まで戻ってきた。
メリー号で待っているかと思ったけど、なんなら覇気の範囲ギリギリ、つまりかなり遠くの海へ行っているみたい。
それをみんなに伝えると。
コニスたちが『立ち入り禁止の聖域の島があるから危険だ』って話を出して、じゃあ『俺たちも行こう!』って話になるのは当然のことだったかもね。立ち入り禁止なんて、絶対面白いことを隠している。
出航の準備をしていたら、なんか、ほふく前進で人が来た。
「へそ!」
「「へそ。」」
たぶん空島流の挨拶、それを敬礼をしながらコニスたちにした。コニスたちは冷や汗をかいていて、私たちへチラチラと視線を向けてくる。
どっちかというと、船から持ってきた壊れたウェイバーを渡そうとしていた私やルフィに用があるみたいで、おじさんたちは敵意を向けてくる。
「あなた達ですね!! 青海から来られた不法入国者8名というのは!!」
羽がない人、という特徴ですぐ分かるだろうね。それに、あの雲の運河に入る前に梅干しのお婆さんから写真を撮られたから、いわゆる手配書が作られたらしいし。
800億エクストルだとか、800万ベリーだとか、それを罰金で払えって言われても、船のお金はナミが管理しているからどこにあるかも分からないや。
てか、騎士のおじいちゃん、500ベリーでホイッスルくれようとしたんだ。
ルフィは『俺の懸賞金より安いな!』って可愛いことを言っていて、サンジは『米何トン買えると思ってるんだ!』って怒っていて。
戻ってきたナミは『払えるかぁ!』って予想通りキレたし。
「貴様らぁ! 神エネルの名において、雲流しに処す!」
コニスたちには申し訳ないけど、空島でもお尋ね者になっちゃったね。いわゆる空島の海軍って感じの人たちは、次々と弓に矢をつがえ始めた。
よく見ると、矢の先端に貝殻がついている。
「引っ捕えろ!!」
「「「
発射された矢は、雲の道を作るように突き進んでくる。矢尻がないのはどういうことかと思ったけど、道を作るための矢なんだね。
「「おぉ~ 雲だぁ~」」
当ててくる気はなさそうで、私とルフィは関心する声を出す。
「ナミ! 船に戻ってろ!」
「う、うん!」
「ウタウタ
私も赤い弓を創り出して、つがえた矢尻には休符の記号を用意する。
さらにムジカちゃんが
「なーるほどっ! ウタ、任せたぞ!」
「うんっ! いくよ、ルフィ!」
ルフィは雲の道をするりするりと抜けて、ヤシの木へ腕を伸ばしてから雲の道の上を取る。
スケート靴で雲の道を滑走し始めたおじさんたちは、思わず上を見た。
「腕が伸びた!?」
「おい! 前を見ろ!」
「せーのっ! アルペジオ
次々と発射される弓にダメージはないけど、雲の道でおじさんたちが止まる。それだと足でスケート靴を操作することもできないでしょ。
「う、打たれた!?」
「だが一体何をされた!?」
「動けん! まさか悪魔の実の!?」
ビックリしたかな。
私の矢は音の速さ、避けられないよね。
「ゴムゴムのぉ~! 花火!」
ぐるぐると回転して、そこから花火のようにパンチとキックがおじさんたちへ襲い掛かる。
「ぐわあああ!」
「こ、こいつら、強い!?」
空島でいうところのマントラ、つまり見聞色の覇気を使ってくるかなって思って、攻撃を受けることを『選択』させたけど、やりすぎちゃったかな。
まあ卑怯でいいでしょ、海賊の娘なんだから。
「バカどもが……貴様等はこれで第2級犯罪者……!! 泣こうがわめこうが、神の島の神官たちによってお前達は裁かれるのだ!! へそ!!」
「「へ、へそ!」」
気絶する前に言い残してきた挨拶だけど、それって『こんにちは』以外にも意味があるのかな。
ビックリして私とルフィはへそを隠したよ。
てか、早く水着から着替えたいや。どうせ泳げないんだもん。
「ど……」
さーてそろそろ冒険にいこうかなって思って、メリーに戻ろうとしたら、ナミが拳を腰の近くでぷるぷると震わせながら向かってくる。
「どうしてくれるのよ!?」
「「何が?」」
私たちは首を傾げて、こつんってする。
「これで私たちはお尋ね者でしょ! あの下層の海で会ったみたいなやつらと戦わなくちゃいけない! ウタ以外やられてたじゃない!?」
「あの時はまだ慣れてなかっただけだ!」
「でたでた、負け惜しみ♪」
両手をキュッキュッってやりながら、そう言ってあげる。
「なんだとぉ! 俺はあんな面白仮面に負けてねぇぞ!」
「まっ、私は勝ちましたけどねぇ~」
まだまだ子どもっぽく両腕を挙げて抗議してくるけど、冗談だよ。
ギア2は分からないとはいえ、さっきの大技で息切れだってしていないもん。もし次に戦うことがあったら、見聞色の覇気で苦戦はするだろうけど、ルフィなら機転で何とかすると思う。
「でも。コニスたちには悪いけど、ここでお別れになっちゃうね」
「ああ。こっちでも追われる身だな ししし」
「はぁ~ こいつらイチャイチャと……」
イチャイチャ? してたっけ。
「で? 最後に帰り道を教えてくれないかしら?」
「え、えっと、一度下層に降りて、遥か東から……」
「「何言ってるだぁ!?」」
ナミとコニスの会話にビックリして、思わず変なイントネーションになっちゃったよ。
「俺たちは今から入っちゃいけない場所に行くんだぞ!?」
「そうだよ! 入っちゃいけないなんて気になるじゃん!?」
「入っちゃいけないって自分で言ってるでしょうがぁ!?」
「あ、あの……危険ですよ? 早く、青海に戻ったほうが……」
私たちの口論に、優しいコニスは心配してくれるけど。
「せっかく空島まで来たんだ。ここで冒険しなきゃ後悔する!」
「今までだってね、大きな巨人がいる島、1年中雪が積もった島、砂でできた島、いろんなとこを冒険してきたんだ!」
いろんなところへ行って、いろんな人と出会って、いろんな食べ物を食べる、それも私たちの夢の1つだったから。
「そして空島へ来れて、私はコニスに会えてよかったよ!」
「わ、私も……」
その先からは沈黙が続いて、さらに空の先を見て怖がっているように思えた。
「あ、おっさん! 海賊弁当の食べ物もらっていいか!?」
「じゃ、じゃあさ、俺は船の修理の資材だ!」
静寂を破ったのはルフィで、一旦船を降りてきたウソップも、手のひらを顔の前で合わせて最後のお願いを始めた。確かにメリー号はだいぶボロボロだし、海戦もありうるから、冒険の準備は必要かもね。
「え、ええ、では一旦家に」
「ちゃんといくらかお金払うからね。えーっと、宝石払いでいいかな」
「ちょっとウタ、その話詳しく!」
「お前から隠し通すなんて、かなりのやり手だな」
シャンクスから貰ったお小遣いだし、あまり手をつけたくなかったけど、仕方ないや。
ナミやゾロが話をしているうちに、一度船へパーカーと一緒に取りに戻った。水着の上から羽織るけど、冒険の前には着替えたいな。
私とルフィ、サンジやウソップはまた家へお邪魔することになった。
そこで。
「おっと、ウタちゃん、ここに空豆を持ってくるといいぞ」
サンジのお手伝いをしながら、お弁当作りに挑戦させてもらう。
ルフィは興味なさそうに、相変わらずつまみ食いに忙しそうだけど。
ほら、いつかお弁当を作る機会は来るでしょ。
私……、の子どもに。
「こっちはナミさんとロビンちゃんに、愛をこめて~!」
サンジの盛り付けはまさしくアートで、芸術ってところは音楽と通じるものがある。普段は絵を描くことも少ないから、彩りとかを真似するので精いっぱい。
「ほら、コニスちゃん、君のだ!」
「……えっ、私の、ですか?」
まだ少し様子がおかしいコニスを元気づけるためなのか、サンジは天使をイメージしたようなお弁当箱を手渡した。ウソップも楽しそうにお父さんと会話をしているし、あと少しでお別れするのが寂しくなってきちゃうね。
「よしっ、できた!」
「お~ なんか美味そうに見える! 食べていいか?」
ダメに決まってるでしょ。
やれやれ、ルフィは相変わらずね。
「そっちにおにぎり作っておいたでしょ」
「そっかぁ~ ウタの弁当楽しみだなぁ~」
指で四角を作って、このまま達成感を味わっていたいけど。
でもこのままだと食べられそうだから、早く蓋を閉める。
「えっ……」
ちょっと待って。
さっき『私のお弁当が楽しみ』って言った?
『腹に入れば全部同じ』って言いそうなルフィが?
「ねぇルフィ、さっき……?」
「おい! なんか船のほうが慌ただしいぞ!?」
「なんだと! 宴か!?」
「ナミさんの危機!?」
ウソップの声にハッとして、私は覇気の範囲を広げる。
「ゴーグル借りるぞウソップ! あぁ!? ナミさん!?」
「なになにっ! 何が見えたの!?」
みんなが焦っているのは分かったけど、実際に様子を見たサンジが悲鳴をあげた。
「なんでTシャツ着ちゃってるの!?」
「お前は何見て泣いてるんだ!?」
「船が動いてるぞ!?」
「エビだよ! さっきのエビ!」
コニスたちが言うには、神の島へ先に連れていかれたみたいで、いわゆる人質なんだって。
サンジが嘆いたり。
ウソップが悲鳴をあげたり。
ルフィがおにぎりを食べ続けたり。
私もおにぎりを食べながら聞いたり。
地図を見ながら話してくれた内容を、短くまとめれば。
「んまー、神官倒せばいいんだろ?」
「んまー、1人で10人くらい倒せばいいでしょ?」
「話聞いてたのか!?」
「そんな簡単な話では……というか神官は4人です……」
「やることは変わりねぇさ。神官だろうが神だろうが蹴り飛ばして、ナミさんとロビンちゃんは俺が護る」
そうしてカッコよく立ち上がったサンジに続いて、私たちも立ち上がった。
あっちにはゾロとロビンがいるから、大丈夫でしょ。チョッパーやナミも決して弱くはないし。
「よしっ冒険するぞ! ついでに神をぶっ飛ばすぞ!」
「「おう!」」
「お、お~う……船も取り返さなきゃだし、い、いくかぁ~」
さて、まずは行く方法を考えなきゃかな。