ウソップがカラス丸から目を離さなかったおかげで、私たちは運河に乗ってメリー号がある場所までいけたけど。
「「「ぎゃああああ~~!?」」」
私たちはメリー号の惨状が目に入って、悲鳴を上げた。
「おいおい、こりゃあ…」
麦わら帽子のドクロを描いた帆どころか、支柱となるマストすら燃えて、完全になくなっていたんだ。
湖の真ん中の祭壇の上になぜメリー号があるのかだけじゃなく、いろんな話したいことも聞きたいこともあったのに、何もかも吹っ飛ぶくらいの衝撃だった。
「あ…あの…ごめんよ…俺が船番なのに…」
ナミ、ロビン、ゾロは無傷だけど、ところどころ包帯を撒いているチョッパーが申し訳なさそうに蹄をチョンチョンさせている。
ウソップがトタン板でツギハギになるまで直してくれたメインマストも、燃えてしまったらまた新しく作るしかないね。
「炎の槍のやつに、俺は何もできなくて、ホイッスルで助けてくれようとした空の騎士も重傷なんだ……」
「お、おう、燃える槍とはやべぇな。お前のケガは大丈夫なのか?」
どう直すかなぁ と呟いていたウソップが、冷や汗をかきながらチョッパーを心配する声をかけた。
「えっ、うん……」
「燃やされたのがお前じゃなくてよかったな。船のことは後で考えようぜ!」
そうやって、ウソップは私たちを代表して、チョッパーを慰めてくれた。
「そうね。神官の1人が来て、むしろこの被害で済んだのは船番のおかげね」
「ああ。お前は立派にやり遂げたぞ」
運悪く、ナミやゾロ、それにロビンが散策しているタイミングで襲われたんだね。チョッパー1人でよく頑張ったよ。
「お、俺はもっと頼れる男になるぞ!」
小さな腕を目いっぱいあげて、チョッパーはそう宣言した。がんばる男の子って感じで、かわいいしカッコいいね。
「チョッパー、ペガサスのおっさんは?」
「う、うん、今は安静にしてもらってる」
ナミは大丈夫? って私たちのケガも心配してくれて、包帯を撒いた手のひらをヒラヒラと元気よく見せる。ゾロやロビンは、今のルフィの調子が良くないこと、なんとなくバレているかもしれないね。
船室のお布団で眠っているおじいちゃんの覇気、会った時はあんなに力強く洗練されていたのに、今はかなり弱まっている。本来の鳥の姿でいるピエールも包帯を撒かれていて、心配そうに寄り添っていた。
包帯でグルグル巻きのおじいちゃんは、私たちの覇気を感じ取ったのか、カッと目を見開いた。
「む……お前たちも神官と戦ったか?」
「おう! 1人倒したぞ! 玉みてぇなやつ」
そうか、と何かを考えるように呟いた。
「ただでくれたホイッスルのために、ここまで戦ってくれて、ありがとう! おかげでチョッパーも船も助かった!」
「礼には及ばん。我輩は負けた身ではあるしな。……さて、どうだった?」
その質問に本音で答えるなら、私たちで力を合わせて、神官にギリギリ勝てたってところ。覇気だけじゃなくて、ダイアルの戦い方にも振り回されたし、隙もあまり見せない。
培った経験と、対人戦に慣れているところが厄介だと思う。
「……エネルは遥かに強いぞ。あれは
その言葉は重く、おじいちゃん自身も緊張を感じているようだった。遥かに強いけど、自分が倒すべき相手だと思っているんだろう。
「俺たち、ケムリンも砂のワニも倒したんだ」
「そうそう、これで会うのは3人目だから」
ここで私たちが
「いや、あの海兵のやつは倒してねぇだろ」
「いいだろそこは。 で、あの雷、また耐えれるのか?」
明らかにビビっているウソップのツッコミはともかく、サンジも雷を間近で見ていたからこそ、少なからず恐怖が芽生えているのかも。
「武装色の覇気なら、ぶん殴れる!」
「私が見聞色の覇気でサポート、完璧!」
一晩休んだら、ルフィの覇気が元に戻ることは祈るしかないのに、それでも私は虚勢を張る。
「鉄の次は、雷を斬るってのも悪くねぇな」
「あんた、雷を何だと思ってるのよ」
「雷に刀が触れた時点で終わりな気がするわ」
「ナミさんとロビンちゃんは、俺が雷から守ってみせるよぉ~♡」
「なら俺も雷だって耐えれる男になるんだ!」
「お、お前らなぁ……」
ごほん、ウソップが咳払いをして、どこからか黒板を持ってくる。
「まずは情報を共有しようぜ。なぁルフィとウタ、あれどうやって防いだんだ?」
「ん? そんなの気合だぞ! うおおおおってやって、ギューってやったんだ!」
「ちなみにエネルってやつの覇気、私の倍以上の範囲だから、急に雷が来たら避けれません」
私も手でブーってしながら、ウソップの質問に正直に答える。
「勝てる確証ないんじゃねぇか!?」
黒板のチョークの1文字目から、ズズ~って線が引かれた。
「でもでも、私とルフィなら最強だもん!」
「...だがルフィ、お前、あれはかなりの無茶だったんだろ? 何となくだが、2度目は簡単にできねぇ」
「……たぶんな」
タバコの火をつけたサンジがフーと白い息を吐くと、静寂の中でルフィはポツリと呟いた。
「な、なぁ、それも覇気ってやつなのか?」
「自然系の流動する身体すら、実体としてとらえる事ができる……だったな?」
チョッパーの質問に、ゾロがなぜか私にそう確認してきた。
「ん? え、私のは見聞色、マントラ? だよ?」
「そうだぞマリモ」
「そう言ったんだから仕方ねぇだろうが」
「ふむ。覇気とは懐かしい言葉を聞くものだ。我々は修行によって、
おじいちゃんの言う通り、コニスたちは怯えていたし、実際に雷は落とされた。つまり今この瞬間も、いつ雷が落ちてくるか分からない。
「じゃあ目をつけられたら、どこに逃げても無理ってことじゃない!? 逃げましょ!!」
「船が祭壇にある以上、逃げようとしたら雷が落ちるのではないかしら。それにお宝はいいの?」
ロビンの言葉に、お宝と安全、ナミの天秤がぐわんぐわん傾いていそう。
「俺は船を直して逃げることに1票!」
「でも黄金があるのよ。だって、この島はマシラさんたちが探していた黄金郷そのもの!」
安全を選ぶウソップに対して、ナミが重大発見を言っている。私の後ろ髪はぴょこんと立って、いつも以上に聞き耳を立てる。
「私の黄金のために、サンジ君とゾロでみ~んなぶっ飛ばしなさい! エネルはルフィとウタで倒す! それでいい!?」
お~ と私とルフィとチョッパーは、勢いよくドンと宣言するナミに拍手する。アーロンやクロコダイルにだって勝てたんだから、信頼してくれている証拠かな。
「海で会った仮面のやつもいたけど、そいつらも倒せばいいんだろ?」
「エネルに、神官3人、あとはゲリラが何人か、みんな結構な強さだよね」
ここに来る前くらいに、なぜか争っている音が聞こえたけど、明らかに敵同士だった。だから、3勢力対決になりそうかもね。
「そうだった~!? 敵は雷の神だけじゃなかったんだ!」
「うぐっ……あんたら! 1人で10人くらい倒しなさい!」
「は~い! ナミさ~ん!」
「言われるまでもねぇが、欲深い女だ」
「フフ、漁夫の利も狙えそうね」
「お、俺も3人くらいは倒すぞ!」
「これは誰が1番喧嘩に勝てるか勝負だねっ!」
「うおおお! 勝負なら負けねぇぞ!」
「ほう……やはり似ておるの、やつらに……」
「ピエ~?」
コニスたちの国を助けるついでに、黄金を手に入れる。
私たちの海賊団らしいよね。
「よしっ、まずはキャンプしよう! あそこでたき火するぞ!」
ルフィはそう提案したけど。
「メリー号の上では戦いたくないし、もし何かあったら火で視界確保もできる。それに、大きな木があるから、雷を1度は防いでくれるよね。ねぇルフィ、天才?」
「「や、そこまで考えてないと思う」」
ウソップやナミからそうツッコミが入るけど、意外にも大事なことはちゃんと考えてるんだからね。物事の核心っていうのかな、それには昔から鋭いから。
さてと。
「「宴だぁ~!」」
私とルフィは肩を抱き合って、そう宣言した。
ゾロは木を斬ってくれて薪にしたり。
チョッパーが果物を探してくれたり。
ロビンが岩塩を見つけてくれたり。
ナミは黄金の場所を考えてくれたり。
ウソップがテントを組み立てたり。
サンジがシチューを作ってくれたり。
「うめぇ~!」
ルフィが海賊弁当を食べていたり。
味わうように、ゆっくりと。
私はその笑みを浮かべる横顔を見て、頬が熱くなったり。
「そ、そう? よかったぁ~」
私とルフィは木を椅子にして、飲み水作りをしていたり。
私は腕をケガしてて、ルフィは体力を消耗していて、もっと探検したい気持ちを抑えて、今は大人しくしていた。
「あ、ルフィ、そろそろよさそう」
「おう。熱いから俺がやるよ」
タオルで特徴的な器を軽々と持ち上げながら、溜まった蒸留水を樽に入れていくけど、ほんの少しずつしか貯まらない。
私とルフィがコルボ山でサバイバルを始めた頃は、こんな余裕なんてなかったよね。川の水を飲みながら空腹を満たして、ねずみやカエルを見つけたら慌てて捕まえてから、小さな火種で炙って食べた。
シャンクスと別れるまで、私はこういう自然に囲まれた場所で夜を過ごすこと、なかったように思える。
柔らかいベッドなんてないのに、ルフィと一緒だからキャンプも好きなのかも。
「夜も更けたわ。用のない火は消さなくちゃね。敵に位置を知らせてしまうだけ」
みんなでシチューを食べて満腹になった後。
自然と声が漏れるようにロビンがそう言った。
「まあセオリー通りならそうね。でも相手が覇気を使える以上、明るくないと私たちが不利よ」
「……フフ、そうだったわね」
「そうだぞ。組み木はこんなものか?」
「ロビンちゃん、もっと明るくするよ~!」
ゾロとサンジも乗り気で、珍しく協力しながら、余った薪を組み上げてくれた。
「これがキャンプファイヤーなのか! でけぇ!」
「よっしゃ、俺が点火するぞ!」
「だからってやりすぎよ、男共ったら」
「おびただしい煙の量、もう手遅れね」
ねぇルフィ、シャンクスたちに負けないくらい良い
「俺たちも行くか、ウタ」
「あんたそれ、分かってやってるの?」
彼は先に立ち上がってから、私へ手を差し出してきて、まるでエスコートしてくれるみたいじゃない。
「ん? どうした?」
「なんでもな~い! いこっ、ルフィ!」
私はその手をとる。
夜が更ける。
夕闇は 明るい月夜へと変わる。
炎は天高く昇り、星空を赤く染める。
太陽を囲むように、宴の夜が始まる。
「ノッテ来い、ノッテ来い!!」
「お~う! のってこい~!」
「いただくぞ~お宝~♪」
「夢のお宝~♪」
いつの間にか。
森から狼や猿も一緒に踊っていて、鳥も共に歌ってくれて、気になって魚たちも湖から顔を出す。物静かな空島に賑やかな音が響く。
私のウタで、カラフルな音符がぴょんぴょんと跳ねる。
「ドンドットット♪」
「そら、ドンドットット♪」
大好きなリズムに乗って。
彼と私は愉快に踊る。
麦わら帽子を被って、お気に入りの靴を履いて、私は土の地面を叩くことができる。
スキップするかのように前を歩く彼が振り向いて、ニカっと笑顔を零した。