月が輝く空に、青白い雷が走る。
聴かれている感覚はあったけれど、雷の能力者は能力と覇気を合わせることで、私以上の範囲の音を拾うらしい。それはまるで神のようで、もしかすると能力もすでに覚醒の領域に達しているかもしれないわね。
コーン、コーン、と直す音は静かな森に響き続けていた。
「また、こんな無茶を…」
昼間も
ゴムのような身体へ変化したとはいえ、まだ不完全で発展途上で。この段階で、神のような奇跡を起こしたのだから無理もない。右腕も激痛だったはずだけれど、それを悟らせない我慢強さをいっぱい叱りたい。
麦わら帽子を胸の上に置いて、ルフィは膝の上で穏やかに眠り続ける。その腕へ
「……」
「また材料を創れ、ですって?」
直す手を止めて、こちらへニコッと微笑みながら、そう催促してきた。
メインマストをゼロから創ってあげただけでも、この身体にはまだ負担が大きいのに、それでもこの
船の構造には詳しくないけれど、その魂の様子からすれば、よほど摩耗しているでしょうに、あなたも無茶をするわね。本人がやる気ならば、休ませてあげるわけにはいかないのかしら。
「……必要のない材料と交換、それならいいわ」
鶏の装飾を、ムジカへ飲み込ませて、トタン板へ変換させる。
悪魔のような仮面、白く巨大な翼、禍々しいオーラを纏い、ムジカから黒い感情が溢れだしそうになりつつも、指揮された仕事をこなそうと働く。あれよりは遥かに戦闘能力が劣る分、扱いやすいのは助かるわ。
「ぎゃあああああ!?」
森のほうからウソップの悲鳴。
どうやら、こちらを見て気絶したみたい。
「さてと……」
これ以上は、この
「おやすみなさい。助けてくれてありがとう」
膝からゆっくりと頭を浮かして、代わりに創った雲を枕にしてあげてから。
グイッと彼の顔を、添い寝した私へ振り向かせる。
「ん……すき……」
そして、その唇へキスをする。
限界を迎えた私も意識を夢へ旅立たせる。
願わくば、彼も私もいない状態で、勝てますように。
ᛒᚾ ᚾᚾ
まぶしい
日の出だからかなり早い時間だ。
寝起きの目をパチパチさせながら、腕を動かそうとして。
「ん~?」
「よう。起きたか?」
目の前にルフィの顔があって。
しかも先に起きていて。
「おはよう、ウタ!」
「お、おひゃ!?」
結んだままの後ろ髪がピョーンって跳ねて、頬は熱くなって、私の頭から煙がボーンって出た気がする。
慌てて離れようとしたけど、私の右手は指を絡め合っているんだ。
あっ、そうだ、右腕のこと。
「ねぇルフィ、もう大丈夫なの?」
「おう! もうバッチリだ!」
それを聴いてホッとしたけど、私の息がルフィの頬へ触れたと思うと、ますます身体が熱くなってくる。
「う……うぅ~」
心臓の鼓動がますます早くなるじゃん。
ドキドキを聴かれるのが1番恥ずかしいかも。
「ウタも右手、治ってよかったな」
「にぎにぎっ!?」
ルフィの指がぐにぐにと私の指を動かしてくるから、じんわりと手のひらは汗で湿っていて、もっともっと恥ずかしい。
「傷ひとつねぇ、綺麗な手だ」
「にゃ、にゃぁ~!?」
なんでっ そんなことっ 言うかな!?
悶えるようにパタパタと足を動かしちゃって、足がちょこんとちょこんと触れ合う。
「は、はいっ! 起きよっ! 」
「そうだな。朝飯にするか」
ガバっと2人で起きて、ゆっくりと放していく。
指先に触れる感触を最後まで大切にする。
パサッと落ちた麦わら帽子が、私のに重なっていて。
それを見て。
もっともっと私は幸せが欲しくなって。
「ん! ん!」
私は両手を広げて、求めてみる。
「こうか?」
昨日助けてくれたとき、抱きついたように。
「うん、よくできました」
「これ、なんかいいな」
ルフィからハグをしてくれて。
ギューって程よく抱きしめてくれる。
私は黒いシャツで、ルフィは赤いシャツだから、お互いに心地いい体温とか、触れ合っている感触とか、すごくわかりやすくて。
ずっとずっと、ずっと、このままでいたいって思う。
このまま、私たちだけの世界で……
「あっ」
ルフィがそう呟いて。
ぎゅるる~ってルフィのお腹が鳴った。
私たちはゆっくりと離れつつ、こつんと額を合わせる。
ルフィの黒い瞳、宝石みたいに綺麗だ。
このまま、このまま、
私は永遠を求めていたいのに
彼は連れ出すように催促してくるから
再び鳴るお腹の音を聴いて、惜しみながら私は一旦離れる。
「朝ごはんにしよっか。私が作ってあげる」
「いいのか! 楽しみだなぁ~」
頬を冷ますためにも、パタパタと走ってキッチンへ私は向かう。
卵や牛乳があれば良かったんだけど、最近はお買い物できていなかったし、冷蔵庫にもほとんど食材がないや。サンジが昨日のシチューで新鮮じゃない食材はがっつり使ったんだろうね。
ベーコンの塊を取り出して、スピード重視でブロック状に切ってから、程よく焦げ目を作りながら、フライパンで焼いていく。
「うひょ~ いい匂いだ~!」
「ま……まだかかるから!」
キッチンで料理をする私の頭へ、麦わら帽子を被せてくれた。ルフィから被せてくれたことなんて、初めてだよね。
「なあ、焼けたやつ食ってもいいか?」
「ダメ~」
言うとは思ったけど、今日は一緒に食べたいもん。
「ん~、でもこれだけだとなぁ。乾パンでいい?」
出してくる! ってルフィはドタドタと食糧庫に走っていった。
いつもだと飽きるけど、たまに食べると美味しいよね。
フライ返しを使って、どっさりと1つの大皿に積み上げていって、その大皿をキッチンのテーブルに置く。ついでに何か分からないけど葉っぱの野菜を添える。そして、ミカンジュースをコップに注いだら。
ルフィが机へ綺麗な白い布を敷いてから、乾パンをざざざ~って撒く。
「ウタちゃん特製ブレイクファーストのできあがり♪」
「うお~ 朝飯だぁ~!」
それじゃあ。
「「いただきま~す!」」
席に着いた私たちは手を合わせて、取り合うようにフォークをベーコンへ突き刺して食べ始める。
じゅわ~って美味しい油が口の中へ広がる。
その塩気はちょっと強いけど、サクサクと乾パンと一緒に食べるとちょうどいい。ぱさぱさする口の中をミカンジュースで潤せば、その甘さと爽やかさはいつも以上に強く感じて、自然と美味しいって声が漏れる。
それでまた、ベーコンを食べるとさらに美味しい。
ナミが育てたミカン、サンジが作ったベーコン、感謝して食べないとね。
「ゴクッ そういやよ、船直ってたな?」
「ゴクッ ほんとだ、直ってる!」
キッチンの扉から見ると、確かにそうだった。
メインマストは帆を含めて元に戻っているし、それは天使ちゃんかなって思う。
でもその取り付けがトタン板でツギハギだけど、言っちゃなんだけど下手で、ウソップやチョッパーではなさそう。ナミやロビンにとってトタンは重いだろうし、ルフィかゾロなのかな。
「でもフライングモデルじゃないな」
「ニワトリは可愛かったけど、やっぱ羊だね」
そうなると、前のメリー号を知ってないと、こんな元通りには戻せないよね。例えば空島の妖精さんじゃないなら、やっぱりルフィかゾロがやったとか?
「んまー、メリーも直ってよかった!」
「んまー、そうだよねっ!」
なんだか、船は温かく感じる。
私はレッド・フォース号で育ったのもあって、たとえ荒波に揺れていたとしても、船の中にいるとすごく落ち着くんだ。根っからの海賊だよね、私。
食べ終えた私たちは、パンッて手を合わせて、ごちそうさまをした。
「ししし 今日は黄金探しだなぁ!」
「それとエネルとかをガツーンとね!」
ナミたちが起きたら方針を話し合うことになるけど、船が1回襲われた以上、また班分けはしないといけないかな。できれば、ゾロやサンジのどっちかには船に残ってほしいけど、神官との戦いも頑張ってほしいし。
ま、詳しい分け方はみんなで考えよっか。
それまでは、穏やかな朝の時間を楽しもうかな。